西垣通のレビュー一覧
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【ノート】
・西垣センセーの情報学のテキストは、難しそうな面構えの割に読みやすい印象があったので、本書も期待して読み始めたのだが、人間と人工知能との比較検討が乱雑。特に中盤から終盤にかけてはその印象が強い。
例えば。
芸術は過去にないものを創り出すものだが、人工知能は過去のパターンから持ってくるだけなので、よって芸術は人間によってしか可能たり得ないというくだりがある。著者のお仕事と本書の性格から言って、では、人間が芸術を創り出す時の知能のプロセスが、人口知能のそれと、どう違うのかということを提示してくれて然るべきでわ?
・ただし、人工知能肯定派(カーツワイルとか)は、まだ解き明かされていない人間の知能の働きを、モデル化という形で単純化したまま、処理速度の向上を以ってシンギュラリティの強力な論拠としているが、それでは知能の働きの大事な部分がこぼれ落ちたままになるという主張には強く同意。とは言え、色々なものの解像度が粗くなっていくのは、例えば音楽のアナログ→デジタルへの移行やインスタント食品なんかとも共通な現象なので、文明の発展の必然なのかもという気持ち(諦念に近い)もあるけど。
・それと同時に、人工知能に感情や心がないと断定はできんでしょうとも思う。人間だって、人体を構成している物質は分かってるけど知能や心の働きは未解明。もしかしたら未知の物質なり引力・斥力の働きによる動的生成なりで動いているのかも知れない。だから、トランジスタやシリコンでできているものにも「心」の動きがあるかも知れない。戦国魔神ゴーショーグンで「機械は友達!」とかって言ってたアレだ(違うか)。
・AI礼賛なバラ色SF未来への批判的論旨をふむふむと首肯しながら読み進めていったら、あれれ?肝心なところの紐解きはスルーですか?というのが散見される印象。ただし、読む価値はある本だと思う。 -
Posted by ブクログ
この人はITなどという言葉で呼ばれる前から
この業界にいる人ですが、正直、僕には全然合わない。
AIの知性というものに限界があるのだから、
万能であるかのように思ってはいけない、
という主張それ自体は受け入れましょう。
というよりも、それはむしろ当たり前なんです。
ただ、その主張をする時に
万能AIという夢想が一神教的なものに通じているとも述べるのは
あまりに粗雑な議論です。
少なくともその夢想がヨーロッパから来たという証はなく
同時発生的に同じような概念が自生するという
可能性をほとんど顧みていない。
また、これは議論の中核ではなくて、単に言ってみた程度の話であり
要は万能ではないという主張を補強する為の小話です。
まぁ、こういうのは手癖でやってしまって自覚はないんでしょうが。
人間と同じでないから人間と同じ知性にならないのは当たり前です。
どこまで成長してもそうでしょう。
それでもなお、シンギュラリティは起こりうると私は考えています。
何故なら、人間とは違う形の知性が存在しうるからです。
優劣とは関係なく、理解が不可能であっても
意思を持っているとみなすことが、
それが人間の能力のひとつなのです。
ヒューマニズムにとらわれるのでなく、
絶えず人間という概念を拡張しようと試みることの一端に
シンギュラリティの夢想は揺らめいているのです。
(ここはとても危うい言い回しですが)
まぁ、情報処理の発展史については概説を抑えていますよ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[集合知定理]
集団誤差=平均個人誤差−分散値 p50
生命体である人間は「オートポイエティック・システム(autopoietic system)」、機械であるコンピュータは「アロポイエティック・システム(allopoietic system)」というわけだ。p104
(前者は「閉鎖系」で、後者は「開放系」p105)
Cf. ルーマン「機能的分化社会理論」
きわめて粗っぽく図式的に整理すれば、規模が小さいときは共同体主義が有効だが、大きくなるにつれその有効性は急激に減少し、相対的に自由主義の有効性が増していく。そして功利主義は、両者の中間的性格を持っている。より正確にいうと、自由主義は規模によらず普遍的な有効性を持っている。そして功利主義は、原理自体は共同体主義ほど規模の影響を受けないが、規模があまりに大きいときは事実上使えなくなってしまう。p167
【本書が提案する“集合知民主主義”のアプローチ】p184
自由主義の制約条件を念頭におきつつ、功利主義の効用関数にもとづいて公共的正義のあり方を検討するものである。共同体主義の共通善はそこで、人びとの道徳観にもとづく判断として、非明示的に作用することになる。 -
Posted by ブクログ
「基礎情報学」から4年経って出版された本。階層的自律システム(階層的オートポイエティックシステム)と呼ばれていたものは、HACSという新たな呼び方になった。そのHACSは、心的システム、社会システムを表すものだという認識だったが、生命体や神経システムなども表せるという新事実が明らかになり、非常に混乱した。ちょっと無理があるというか何でもありな感じがしてしまう。HACSの概念を、他の学問との類似点や相違点を挙げつつ説明していくのだが、これが同じことが何度も繰り返し述べられていて非常に冗長に感じた。既視感におそわれること数十回。なんだか疲れた。期待されるタイプIIIコンピュータについては、具体的なイメージがつかめず。
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Posted by ブクログ
情報にまつわるさまざまな問題を包括的に扱う情報学という学問の立場から、人間の心について論じた本です。
本書では、人間を単なる情報処理機械と考える立場が退けられ、みずから情報を創生するオートポイエーシス・システムとして捉えるべきだとされています。ただしそれは、歴史的に形成される自己循環的な閉鎖系であり、それゆえ人間の心を理解するためには、生物の進化史をたどる必要があるとされます。こうして、動物の心から検討を始めて、人間の意識がどのようにして形成されたのかという、大きな問題についての見取り図が描かれることになります。
さらに著者は、人間の心をアフォーダンス理論を手がかりにして考察しています。ただし、アフォーダンス理論では、情報は環境世界にあらかじめ実在すると考えられているため、情報は自己循環的な閉鎖系の中にあるとするオートポイエーシス理論と衝突します。そこで著者は、環境世界の中で行動することによって意味作用が生まれるという仕方でアフォーダンスを理解し、オートポイエーシス理論と補完的な関係にあることを示そうとします。
とはいえ、人間の心は他の生物と大きく異なっています。著者は、人間は言葉によって構築された文化的環境の中に身を置いていると考えることで、アフォーダンスの想定する「リアリティ」の内実を拡張し、人間の心の特異性を説明しようとします。
新書のサイズで扱うにはかなり大きな問題が扱われていて、理解が追いつかないところもあったのですが、刺激的な本でした。 -
Posted by ブクログ
3つの章に分かれていますが、とくに人間の心は、論理的な推論をおこなう機械として捉えることはできないということを解説している第2章が、興味深く読めました。といっても、すべてが理解できたわけではありませんが、自分なりにまとめると次のようになるかと思います。
生物は、外部からの情報に反応する機械ではなく、身体を通じて生きることで固有の環境世界を創生しているオートポイエーティックなシステムだという考え方が、紹介されます。しかし、オートポイエーティックなシステムは「閉じたシステム」だと考えられています。では、私たちが相互に意思を通じ合っていることは、どのようにして説明されるのでしょうか。この問題について著者は、心とは身体感覚を脳がモニタリングすることで生じるということを手がかりにして、そうした身体のありようを脳がシミュレーションすることで、社会のメンバー相互の「身体的共感」が生じるという考えを提出しています。
そして、意識は3千年前に人間に始めて宿ったとする心理学者ジュリアン・ジェインズの仮説を、そこに接続しようと試みています。ジェインズは、自己意識をもつ前の人類は、「右脳からの幻聴」に従って行動していたと考えます。著者はこれを、群れのメンバーたちが身体的共感によって結ばれているとき、右脳から聞こえてくる「神々の声」によって統制されることとみなそうとするのです。
最後に、こうした身体的な共感をも含み込んだ、新たなコンピュータの可能性について語っています。
やや問題が大きすぎるようにも思いましたが、刺激的な内容の本でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「知とは何か」という問いかけは、決して、暇つぶしのペダンティックな質問などではない。むしろ、命がけの生の実践にかかわる問いかけなのだ。
前書きの1文を見ただけで、購入して失敗したと実感
小難しい単語を並べて、自己満足している学者チックな著者なのだと。案の定、本書は権威がありそうな他人の主張を参照するのみで、著者の意思が感じられない、いわゆるつまらない論文チックな文章となっている。
題名だけを見てネットで購入すると、たまに買ってしまう残念な一冊でした。
ペダンティック:pedantic
物知り顔の、学者{がくしゃ}ぶった、学者{がくしゃ}ぶる、知識{ちしき}をひけらかす (www.alc.co.jpより)
まさに、あんたのことだと著者に言いたい。 -
Posted by ブクログ
相変わらず難しいけれど、他に似た本に出会ったこともないくらい独特で刺激的な内容。情報という切り口から、生命や社会を考察している。前著では、生命活動のレベルで終わっていたのが、今回はもう一歩進んで社会システムまで階層的自律コミュニケーションシステムによって基礎付けられている。
情報というと、ITをはじめとしてクールなイメージなのだけど、これを読むとそうではない側面が見えてくる。情報こそが、生命活動や社会システムを駆動させるもので、それによって生命や社会が絶えず再構成されていく動的なシステムになっていることがわかる。こういう視点からすれば、生命を機械のように扱うことも、生命の絶対的な優位性を主張する立場も、どちらも一方的で独善的なものに思えてくる。
ただ、こうした情報の視点から、社会に対してどうアプローチできるか、ということまではたどり着けていないと思う。今はまだようやく情報とうものが生命、社会にとってどう位置づけられるかが見えてきた段階で、そこからどんな生命観を導きだすのか、どんな社会像を描き出すのかというのは、まだまだこれからの問題になってくるんだろう。
【メモ】
・複雑な拘束/制約のもとにあっても、ともに自立性を失わず、しかも相互作用しあうことが、階層的な自律コミュニケーションシステム(HACS)の基本的特徴をなす。
・人々のあいだの情報伝達とは、とりあえず、人々が属する組織におけるコミュニケーションの継続発生としてとらえられる。
・生物とは、過去によって定められた大枠のなかで、試行錯誤を重ね、許容度を模索しながら生きているのである。 -
Posted by ブクログ
安い、たったの720円+税
税込み表示してないとこから、ちょいと前の本だってわかる
個人的には、タイトルは胡散臭い感じちょっとですが
中身は値段以上のものを提供してくれます。
「新書」という内容な事は忘れずに あくまで新書です
情報という観点から、1900年代初頭あたりから現代までの
各分野の中での出来事を取り上げながら、丁寧に説明していきます。
そういう意味で、哲学や科学の分野の理論書に初めて触れる人には比較的、良書と言える気がします。これを読んで、ここに出て来る人名を検索エンジンで調べてと、知識を広げるきっかけを強く作ってくれる本と言えるでしょう。
また、同時に一回りしてから読むと違った視点で
この本を読める その点でも良い本であると思います。
「情報」「情報化社会」というフレーズに興味がある方は
ちょいとお金を出してみてはいかがでしょう。