西垣通のレビュー一覧
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基礎情報学の入門書、「生命と機械をつなぐ知」を先に読んでいたので、内容的にはすでに大体のところは把握済みだった。入門書と同様の内容が丁寧に書かれている。最後はインターネットシステムについての可能性について述べられて終わる。この本は2004年出版のものだから、入門書の方が基礎情報学としても先に進んでいるわけだ。
基礎情報学とは、オートポイエーシスという生物学の考え方を情報学に応用したものという認識だったが、この本を読んでみると、むしろルーマン社会学を情報学向けに考察しなおしている感じが強い。
内容としては、観察者のところで混乱した。具体的には「社会観察者はその機能に直接関連して専門的に活動し -
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クオリア,暗黙知,APS,HACS,ネオサイバネティクス,SEHS,分人,アサキモデル...色々な学説が出てきて、思ったよりヘビーな新書だったが筆者の要点としては、
①多様な価値観が混在する人間集団において閉鎖性・不透明性が保たれれば、メンバー同士の二人称対話(信用のキャッシング行為)にもとづき、社会は安定性と動的適応性へ向かう(→盲目的にオープン/フラット化した社会への反対)
②人間(生命体/心)はリアルタイムで閉鎖的な自律システムであり、機械は静的な時間で開放的な他律システムと、異なる性質ゆえに、ITエージェントはAI(Artificial Intelligence)からIA(Intell -
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正直、今の私には少し専門知識が不足していて咀嚼しきれない表現が多かった。通常、新書を読むペースより2倍の時間をかけ、目次を写してメモをとりながら2度読む方法をとった。
西垣通氏の著書は以前に何度か読んでいて社会学的な視点で興味のある眼差しを持っている方だという印象を持っていた。本書も、第一章で今沸き立っている一般意思2.0に安易に乗っかることへの警鐘を鳴らしている。この本を読む一年程前に読んだ『一般意志2.0』東浩紀氏著を読んだ時は、集合知の活用による新しい社会システムを待望したものだ。第三章・第四章と難しく感じたが、第六章は総まとめ的にわかり易く本書を振り返ってくれている。 -
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「グローバルでフラットなIT社会」を目指すというような最近の画一的な風潮に,「個人的な知」からの切り口で批判的に論じた一冊.めちゃくちゃ面白い.
全体的に少し感情的な表現に感じるところもあったけど,何より,「本当にコミュニケーション活性化とか,情報共有とか,徹底的に推し進めていいのかな?」という疑問を持ちながら推進していた自分にとっては刺激的でためになった.
集合知の他の本でも記載があったが,あまり緊密すぎる関係性は,多様性を損ない効率が低下する.というような話があったが,
ここでは「開放系と閉鎖系」の集団モデルの安定性の比較の例で紹介されていた.
どちらにしろ,単純に数値のサマリーを行う -
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ネタバレ集合知とは何か、というタイトル通りの本です。
生命体の集合知では、クオリアという感覚質によって外界の情報を無意識にインプットされ、個体の記憶を基にして情報が再編される閉鎖的自律システム(オートポイエティック・システム)。時間や場所や心理状態が変われば、同じものを見ても感じ方が変わるのは当たり前。そしてその感じ方はその人個人のものなので閉鎖的である。
閉鎖的ならばどうやって他人とコミュニケートできるのか?完全なコミュニケートは不可能(個人の痛みを他人が完全に理解するのは無理!)だが、意識に上ったものは会話等によって意志疎通ができる。
人間個体を理解することで集合知を深く探求することはできる。
ま -
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ネタバレ人間の心を機械で作る試みはまだ発展途上で、失敗の原因は言語的自己ばかりを求め、身体的自己を蔑ろにしているからである。
心のはオートポイエティック・システム(自己創造)である。
インターネット(殊バーチャルリアリティ)の問題は、人間の知覚(嗅覚や触覚や味覚)を使っていないことである。主に言語脳しか使わないため、所謂ネトゲ廃人は虚無感や虚脱感等の精神疾患になりやすい。
精神よりも肉体に重きを置きましょう、という主張は、甲野善紀さん、池谷裕二さんと同じです。頭で考えるより、先に身体を使って行動せよ。これには賛成します。でも日本には余裕がない。だから失敗は許されない。許されないならどこで経験を積むの -
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1948年 ウィーナー「サイバネティックス-動物と機械における制御と通信」
ウィーナー「人間機械論」
サイバネティックスとは、本来、生命体が生き続ける為に、いかに電子機械を活用すればよいか、という実践知に他ならない。
生物の主観世界を考慮した革新的なサイバネティックス1970年代から現れた「二次サイバネティックス(サイバネテックスのサイバネテックス);観察行為を観察する」。(ウィーナーは「一次サイバネテックス」)
二次サイバネテックスの創始者は、ハインツ・フォン・フェルスター。
生命体(人間)は、「作動するシステム」(自分で自分を創り出す)ので、「自律的なシステム」、「オート -
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「情報」「知識社会」「知」「パラドックス」「自己言及」「クオリア」「心身問題」「オートポイエーシス」「自己組織化」「時間」「生命体」「生物」「秩序」「分人」「平野啓一郎」「ベルクソン」「モナド」等々最近、気になっていた言葉が次々に現れて驚いた。
内田樹さんが、「人は何を知りたいかわからないままに知ろうとする。」と言われていたように記憶しているが、まさにそうなのではなかろうかとこの本を読みながら思った。「そうか!私が知りたかったのはそういうことだったのか!」という思いがしたからである。
先日読んだ『リーダーシップとニューサイエンス』で情報の本質が気になりだし、それと同時に水野先生から情報学の -
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西垣通の新刊。集合知は、ゼロ年代のweb2.0のときに微妙に流行って、オープンとかシェアとかあのへんのネットカルチャー的な耳あたりのよいバズワードとも相性が良かった。ノマドだとか新しい民主主義だとか一般意思2.0だとか、10年代の議論にも連なるかもしれない。
しかし、著者はそんな意識が高くナイーブな理想論に与しない。その一見新しく見える思想自体が、20世紀を通じて支配的であった論理主義的な前提に依拠していると指摘する。それらは20世紀においてさんざん議論されたことの変奏あるいは焼き直しでしかなくすでに限界が見えているとして、彼らのユートピア的な幻想ははっきりと否定される。
そうした問題意識のも -
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ネタバレ情報論の西垣さんの本。
原発事故との絡みも多く、面白い。
過度の専門分化と予算不足からくる産学協同の推進が専門知のレベルを落とした。
専門知の普遍性と一般性の崩れ。
正解のない問題
正解の推測より「物事の決め方」へ
依然として「みんなの意見」より専門的権威を信じているという事実
数理社会学者スコット・ペイジ「多様な意見はなぜ正しいか」
一番問題なのは客観的な世界が存在し、しかるべき評価作業をおこなえば透明度がまして世界の様子がわかってくるという単純な思い込み。
...もっと大切なのは、自分が生きる上でほんとうに大切な知を、主体的に選択して築き上げていくことのはずである。
近代知ー普 -
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情報学的転回は「人間中心ではなく生物中心」で、「人間の機械化を否定」し、ITと生命活動との新たな可能性を探る。組織の生命的な活性度を上げるためのタイプIIIアプリケーションを模索せよ。大量生産/大量消費と個人間の熾烈な市場競争にもとづくいわゆる知識社会とは異なる、集合知と共有財にもとづく近未来社会のイメージ。野中郁次郎の知識創造企業論、公文俊平の情報社会論との共鳴。
# 本書のテーマ
- 個人と組織の学習(知識の形成)
- “人間=機械”複合系
# キーワード
- 階層的自律コミュニケーション・システム (Hierachichical Autonomous Communication