西垣通のレビュー一覧
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AIと人間の思考原理の根本的違いとして、AIは「他律的」、生き物は「自律的」として原理的にAI(ここでは汎用AI)は生き物になることはできないということを解説した書籍。
生き物だということは他者からは「不可知的」であるとし、その生き物の行動原理(人間の思考原理も含む)を哲学者メイヤスー「思弁的実在論」の「偶然性」の概念を参照しつつ「自律的」とは「偶然性が必然」であるという考え方から解説。
そもそも西洋人が汎用AIを人智を超えた存在として位置付けたがるのはキリスト教の三位一体の考え方が染み付いているのではないか、とその西洋人の思考原理も紹介。一方でAIはいずれ人間を知能を超える賢い機械になる可能 -
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AIに関して哲学的な議論を展開しているが、難しい。第6章に総括があるが、気になった言葉を列挙してみる.疑似的自律性、不可知性、ニューラルネット・モデル、深層学習、フレーム問題、記号接地問題、オートポイエーシス理論、シンギュラリティ仮説、クラウドAIネット、暫定的閉鎖系、IA(Intelligence Amplifier)、などなど.一神教からきている「創造神/ロゴス中心主義/選民思想」という独断的な思想に対して、反省の意味で文化的多元(相対)主義が生まれてきた由."AIの宗教的背景を知っておれば、「やがてAIロボットが人間のように自律的に、主体として賢い判断を下せるようになる」などと
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専門知・客観知への疑念が持たれるようになった原発事故以降、ネット上の集合知が見直される風潮があるが、それに対して警笛を鳴らしているのが本書。
興味深いのは、本書の著者がコンピュータやソフトの開発に携わったこともあり、現在は情報学の第一人者とも言える人物であるということ。IT礼賛に傾いているかと思いきや、著者の主張はその反対。安易なIT化は人間に不安定をもたらす、と指摘する。「知とは本来、主観的で一人称的なもののはず」で、「客観知の方がむしろ人為的なツクリモノなのである」という指摘は、ネット上の集合知への向き合い方に重要なヒントを与えてくれる。IT礼賛・ネット礼賛どころか、人間礼賛だ。
正直、想 -
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情報工学の専門家によるビッグデータと人工知能に関する本。主として人工知能について、どういうものかが説明されている。今後どうなっていくかについては、人間の脳に並ぶとか超えることは考えられないというのが結論。人間の脳と同じような仕組みを目指すというような研究開発は失敗する可能性が高く、安易に乗らないことを警告している。説得力があった。ただ、自らが関与した研究や哲学的な論述など、回り道が多いようにも感じた。
「ビッグデータ分析の最大の魅力は、当初の使用目的とは異なるさまざまな角度からデータを眺めることで、思いがけない発見が得られることに他ならない」p30
「(人工知能キーワード「論理」→「知識」) -
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新書だったが、ちょうどいま気にしているイシュー、例えば人工知能や生命についての哲学事項、が整理されていて、意図せずとても参考になった。
デカルトの二元論の否定から始まり、生命システムの定義や、「言葉」の心的システムに対する意味や、社会体制に対する意味など、大いに参考になった。
特にアフォーダンスとオートポイエーシスの理論の補完的結合は自分としては新しい知見だった。
また、「中心と周縁/詩人と異化」の論についてはよくかみ砕きたい。
未来に対する考察としては次の2点をよく考えたい。
1)言語性について、王の身体性(声)から新聞のような言葉への変化が社会の変化とリンクしていたとして(情報の -
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2045年 人工知能が人類を越えるーーシンギュラリティ(技術的特異点)仮説。
中公新書にしてはやけに感情的な文章。
著者の主張を端的に言うと、人間と機械はどこまでいっても違うのでシンギュラリティなんて来ないよ、といったところか。
1956年 米国ダートマス会議から人工知能ははじまった。
以降、厳密な論理であったコンピュータは、曖昧な知識との矛盾に苦しんだ。2010年代に入って、それを克服させつつあるのが「深層学習(Deep Learning)である。
深層学習とは、(本来コンピュータが苦手としていた)パターン認識のための機械学習の一種。その特徴は「ニューラルネット(神経細胞網)」と「特徴量 -
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自分が大学生の頃に携わった人工知能研究は、第2世代のブームだったようだ。
当時は、素直にプログラムを書いて、コンピュータに処理させれば良いことを、自然言語処理をさせて、プログラムを書かなくてもコンピュータが人間の意図を理解して、処理するという状況を目指していたと思う。
第3世代のブームである現在は、ビッグデータ、集合知と統計処理の活用。気をつけなければならないのは、相変わらず^、コンピュータには、プログラム(予め、書いたもの)が、必要だということ。自己学習すると言っても、その自己学習の仕方は、予めプログラムされている。そのことを忘れては、ならない。 -
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「ビッグデータと人工知能」
しばらく前から社会にあふれるデータをビッグデータと言って話題にはなっていた。そこに来て、囲碁でコンピューターが人間に勝ったと言うことで人工知能が急に脚光を浴びるようになってきた。
その上、2045年にシンギュラリティが起こるという予測を楽観論、悲観論を合わせてマスコミが煽っているので、ますます注目されて来ている分野である。
しかし本書は技術的に冷静に分析していて、特にシンギュラリティ仮説は欧米のキリスト教的な価値観によるところが大きいと指摘して、欧米人は人工知能は神が与えたものとして信じ込むかも知れないと言う。
一方著者は知能とは生命が生きていくために発達させてきた -
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ネタバレあとがきの日付が「2012年11月」となっているので、3年と5ヶ月前になる。
この間にITがいかに進歩したかを感じる。
なんといっても今月、AlphaGoがリ・セドル九段を破った事実は、ディープラーニングがITの世界にパラダイム・シフトをもたらした。
本書は、このディープラーニングという閉鎖システムがIT上で実用的になることを前提にしていない。
著者は従来の開放システム(=与えられたプログラムで処理するだけのもの)だけですべてが処理される世界になることを望んでもいないし、予想もしていない。
ディープラーニングによるパターン認識と学習は、主観知の相互作用による合意形成と根本的なところは同じもので -
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情報-その本質は生命による「意味作用」であり、意味を表す記号同士の論理的関係や、メディアによる伝達作用はむしろ派生物にすぎない。言葉の意味はいかにして私の心から他者の心へ伝えられるか。意味内容が他者間をまるごとそっくり移動するなどほんとうに可能なのか。社会的コミュニケーションはいったいなぜ可能なのか。著者はHACS-階層的自律コミュニケーションシステム-に基づいて、「情報」そのものを根底から問い直すことから出発する。生命が、閉鎖的かつ自律的な「システム」であるとしてとらえ、その上で生命の「意味作用」を「情報」であると再認識した上で、生命/心/社会をめぐる情報現象を、統一的なシステム・モデルによ