西垣通のレビュー一覧
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AIについては全くの素人なのですが、著者の本は何冊か読んだことがあり本書も手に取りました。結論から言うと非常に面白かったです。独特な視点からAIに切り込んだ書籍だと言えます。本書はAIの技術的な解説書ではありません。そのような本は巷にあふれています。著者がこの本で指摘するのは、日本でAIを研究している専門家ですら、AIの背後にある哲学的思想や宗教的思想について理解しておらず、それは非常に危ういという点です。
本書は、これまでのAIブーム(1950年代の第1次、80年代の第2次、そして2010年代からの第3次ブーム)について概観し、第3次ブームに火をつけたと言ってもよいカーツワイルの「シンギュ -
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西垣さんの本は「ビッグデータと人工知能」(2016年)を読み、とても面白かったので、少し昔に書かれている本書を手に取りました。個人的には集合知とは何で、ネット時代にどういう意義があるのかを知りたいと言うことで購入しましたが、読み終えた感想は、集合知以外のところというか、知のそもそものあり方についてとても勉強になり面白かったです。
また経営学の重鎮である野中郁次郎さんの「知識創造企業」との関連性をすごく感じました。野中さんは日本企業がいかに各従業員の暗黙知を吸い上げてイノベーションにつなげているかを分析されていますが、知は人間個々人に暗黙知として宿ること、そして暗黙知と暗黙知がぶつかりあって -
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2024/03/02 西垣通 「超デジタル世界」
デジタル基本書として類書にない傑作。「技術論+哲学」の構成。
デジタル技術の本は数多あるが、人類古来の社会哲学を踏まえた「デジタル文明論」は初めて。そもそも情報系の学者さんで、著者ほど古今東西の哲学に造詣の深い方は少なくとも日本には居ないと思う。
戦前の旧制高校にあった「教養主義・知性主義」は、戦後米国風のプラグマティズム=SKILL重視の拝金主義に駆逐された感じ。
著者は言う、デジタル革命のインパクトの大きさを踏まえると、社会の在り方まで踏み込んだ「本質論の議論」がなければ、日本はデジタル社会への変革は成し遂げられない。多分、枝葉末節の個別シ -
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AIが最近では大きな話題になり、人間はAIをどう使うのか、いやAIに人間は使われる時代がくるのではとの予想もありうるという時代になってきた。
本書では、AIはあくまでも人間が作りだしたものであり、人間の作るプログラムやアルゴリズムの元でのみ作動する機械であり「自律型機械」には決してなりえないと説く。納得のいく詳細な解説がある。
しかし、人間とAIがコラボするときそこに今まではあり得なかった新しい切り口の創造物が産まれてくる可能性も現実のものとしてありうると説かれている。
AIが自律型機械的に扱われて、人間にマイナスの効用をもたらすシーンは多様に予想が付く。そのとき、人間はだれに責任を取らせるの -
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著者の作品は記憶にあるだけで、過去に2冊読んでいた。
「マルチメディア」「マルチメディア」
多分そのときにはそれほど印象に残らなかったのだが、今回は非常に感銘を受けた。
80年代からAIをタイトルにした著作があり、コンピュータの専門家である。
本作は比較的平易に書かれわかりやすい。
最も興味深かったのが、シンギュラリティを含め、AI・ロボットの可能性をほぼ否定しているところだ。
一般的には近い将来AIに人間が取って代わられる、所謂「シンギュラリティ」が問題としてメディアを賑わせている。
どちらかというと、それは決定事項として語られる。
しかし、著者はそんな心配はしなくても良いと説く。
A -
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ずっと日本のコンピュータの進歩に携わってきた著者のAIに対する俯瞰した冷静な視点を知りたくて開いた新書でした。が、熱い熱いアンチ・シンギュラリティ論でした。その熱さは著者も関わった1980年代の日本の第五世代コンピュータプロジェクトの失敗体験から来ているのかもしれません。シンギュラリティを礼賛するカーツワイルの楽観主義をもともとコンピュータ開発の根本にあるユダヤ系普遍主義者たちの理想主義や宇宙観にあるとし、それを相対的文明論で批判していきます。そう、AIを理系の技術ではなく文系も巻き込んだ大きなテーマとしてみんなで考えることを提唱しています。AIと共生する時代のリベラルアーツの必要性を語る本で
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今のIT業界のホットトピックである「AI」と「ビッグデータ」(ついでに「IoT」も)について、客観的かつ分かりやすく説明している本。一般人向けに丁寧に書かれており、非常に読みやすい。でも、AIに関して奇天烈な夢や妄想、あるいは情熱に取りつかれている業界人こそ、本書をしっかり読んでいただきたいものだと思う。
個人的に本書が優れていると思うのは、計算機(コンピュータ)は出現した時点で本質的に人工知能を志向していたという解釈と、その考え方を遡及するとヒルベルトに辿り着くとしているところ。だから、第1次AIブームの人工知能が、巨大な演繹マシンとして構想されたのは極めて自然なことなのである。
確率・統計 -
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ネタバレ・ビックデータとプライバシー
ビックデータと個人情報保護の問題について。これはよく問題になりますが個人的には便利であれば人は自分の個人情報さらけ出すことに対して嫌悪感がそれほどないのではないかと思います。例えばスマートフォンをみんな所持してますよね。GPSがついているので、いつどこにいたっていうこと情報が世に流れており、それを追跡すれば誰がどの会社が働いてるなどいった情報はすぐにわかります。またfacebookやラインといったサービスなんて誰と誰がどのような繋がりがあるかということを簡単に提供しているわけですけれども便利さに魅了されてそんなこと気にしてない人のほうが多いと思います。それが何故か -
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さすが西垣通と言わざるを得ない。
視点が高いし、指摘が的確すぎる。
最近再来した人工知能ブームやシンギュラリティということが強調されることに、どう説明したら良いのか分からない違和感の様なものがあったのだが、それに対して正面からばっさりという感じ。
ああ、やはりそうなんだと。でも今まで誰もそう言ってくれなかったから。
シャノンの情報理論から端を発する、情報にまつわる文系・理系の問題等これまで長いことモヤモヤしていたことにもスッキリ答えを貰えた気がする。
これは、タイトル以上に社会情報全般を網羅した標準テキストだと言えるのではないだろうか。
別の目的で購入したのに、読んで非常に得をした、大当たり。 -
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Sun, 28 Dec 2008
5年前に出た前著,「基礎情報学」はちょうど博士過程2回生くらいの時で
かなり,影響を受けた本だった.
現代思想的である,オートポイエーシスや生命記号論,ルーマンなどを
上手く,つなぎ合わせ,情報・意味の基盤を作ろうという野心的企み.
この前著を読んで,僕の博論は西垣先生に読んでもらう為のものとなった.
そんな,僕の人生にも強い影響を与えた前著に引き続く続編.
前著を読んだときの自分の状態に比べると,かなり自分自身の成長があるためか,ギャップはほとんど無く,素直に読める.
思想的距離が非常に近いので,僕は日本でもっともこの本をハイスピードで読める人間の一人