井上浩一のレビュー一覧

  • 生き残った帝国ビザンティン

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    ビザンツ帝国の概説通史。
    ビザンツ帝国盛衰のポイントを明確に整理した上で、論ずべき点を上手く絞り込んでおり大変分かりやすかった。
    そして何より、読んでいて面白い。
    帝国の興亡がしっかりストーリーとなって綺麗に流れてゆく。

    構成としては古代ローマ帝国のコンスタンティヌスがコンスタンティノープルを都としたところから、オスマン帝国によるコンスタンティノープル制圧まで、しっかり1,000年超の歴史を扱う。

    ローマという建前を保持しながら、文明の十字路にあって生き延びるたびに幾たびも柔軟に体制を変更していった強かな帝国の生き死にが、実に小気味よく活写されてきる。
    バルカン政策や宮廷内部の勢力争いなど

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    2025年06月15日
  • ビザンツ帝国 生存戦略の一千年[新装版]

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    ローマの神々を捨て、キリスト教に改宗しながら、西のローマ帝国から東のビザンツ帝国に移っていく時代からスタート。コンスタンティノープルを中心に代々皇帝の周辺を眺めながら、ビザンツ帝国の盛衰を一気読みできる”教科書”。

    ところどころ挿入されるエピソードが殊の外面白い。初期ビザンツ時代のコンスタンティノープルでは、競技場で行う戦車競走に緑と青の競技団体があり、彼らが頻繁に喧嘩したり、暴動や政治的反乱に発展することもあったという。不謹慎かもしれないが、現代のフーリガンを思い浮かべてしまった。
    初期のキリスト教の強引さも印象的。古代の神殿を教会に変えようとするキリスト教徒の暴動をはじめ、ガザでの衝突は

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    2023年11月25日
  • ビザンツ帝国の最期

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    これはとても面白かった。名著だと思う。ビザンツ帝国の最期50年ほどの歴史をロマンではなく人々が自分たちの生活のために行う駆け引き、保身、国内の権力闘争の結果として生き生きと書いていて、カトリック、イスラームとの宗教上の軋轢もあくまでそれらの手段であり、戦争と交渉によって使ったり引っ込めたりされる様子は面白い。ビザンツ帝国、オスマン、ジェノバやヴェネツィアなどの諸都市、ローマ教皇、それぞれの内側に派閥や駆け引きがあるかなり複雑な過程なのだが、引き込まれてするすると読まされてしまうのはすごい。同じ名前の人が何人もいるのでたまに混乱はするし、もちろん個々の人物の内心まですべてが分かるわけではないけれ

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    2023年01月21日
  • ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史

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    ラヴェンナの栄光の時代、400年頃から800年頃までを扱う。ガッラ・プラキディア、東ゴートのテオドリック王、ユスティニアヌス大帝、さらに歴代のラヴェンナ司教や逸名の世界誌家、カール大帝などーーラヴェンナに大きな足跡を残した人物を軸に歴史が描かれる。ラヴェンナから見たローマ、ビザンツ、東ゴート、教皇、フランクの歴史とも言える。一つ一つの章を積み重ね、ヨーロッパの誕生につながる終章へと導く記述。聖ヴィターレのモザイクもヨーロッパ誕生に関わる重要な要素であった。ラヴェンナはまさに「ヨーロッパという合金を生み出した坩堝」だったのだ!

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    2023年01月09日
  • ビザンツ帝国の最期

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    最末期のビザンツ帝国の構成した様々な個人の動向を中心に、15世紀始めの首都包囲から滅亡までを描く内容。単純化できない多様な意思決定の叙述や滅亡後の離散の状況など非常に興味深い点が多かった。

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    2022年08月19日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    要衝の地に位置しながら約千年に渡って存続した帝国の歴史を、コンスタンティヌスから滅亡まで辿る内容。存続の要因となった各時代における帝国の変容が分かりやすく叙述され、ビザンツ史の概要を掴むことができる良書。

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    2022年08月02日
  • 歴史学の慰め:アンナ・コムネナの生涯と作品

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    西洋中世の女性歴史家、アンナ・コムニナの生涯と作品を一冊にまとめている。第一部では、彼女の生涯を辿り、第二部ではギリシャ以来の歴史学の伝統、作法を踏まえて、アンナ・コムニナが『アレクシアス』を書いた内容を精細に分析する。

    歴史学が男性の学問であるが故に、歴史学の正統を標榜しつつも、歴史学から逸脱し、そして歴史学に名を残すことになったアンナ・コムニナの偉大な業績を知ることができた。

    特にアンナ・コムニナの誤謬とされている年号についての誤りを、史料から丹念に辿り、アンナ・コムニナの執筆態度、執筆方針、そしてギリシャ以来の戦法とトルコ人の戦法までも絡めながら、一つ一つ読み解いていくのが、歴史学の

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    2022年07月19日
  • ビザンツ皇妃列伝 : 憧れの都に咲いた花

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    8人の皇妃の生涯とその生きた時代を通して描くビザンツ帝国の歴史。彼女たちは出自も生き方もばらばらである――
    異教徒の出だったり、踊り子だったり、酒場の娘だったり、あるいは外国人だったり――おじの皇妃となってその精神的支柱になった人物、権力の魅力にとりつかれて自分の息子の目をくりぬき自ら即位した人物、稀代の悪女のイメージが根付いてしまった人物、政略結婚ながらやがては夫のやすらぎになった皇妃などなど――
    それは、その時代の象徴とも言える生涯だった。これまでよく見られた皇帝中心のビザンツ史とは違う皇妃を通して見る歴史は新鮮。
    可能な限り史料に基づきつつ、しかし、その史料には大幅に制約があるために、著

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    2020年09月02日
  • 歴史学の慰め:アンナ・コムネナの生涯と作品

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    皇帝の娘にして西洋古代・中世で唯一の女性歴史家アンナ・コムネナーーその生涯に迫り、彼女の手になる歴史書『アレクシアス』について分析を加え、歴史学の目的や手法について考察する。

    彼女は自らの不幸を嘆く。彼女の不幸とは、そして幸福とは? アンナはなぜ歴史書を記すことになったのか? 彼女は何を遺したかったのか? そのために彼女がとった手法とは?

    良くある『アレクシアス』への批判にも緻密な分析が加えられる。

    昨冬日本語訳が刊行された『アレクシアス』とともに読みたい内容。そして歴史学とは何かについて考える良質の一冊。

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    2020年09月02日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    東ローマ帝国とも呼ばれるビザンティン帝国の歴史、その社会制度、国際環境の変容について、数名の皇帝をピックアップしながら概説している。建前と現実を噛分けたビザンティン皇帝たちが、巧みに帝国のあり様を変化させたからこそ1000年にわたって存続できたことを、分かりやすく理解させてくれる。また、ビザンティンだけに留まらず、他国、他地域の社会・歴史にも応用される示唆にも富んでおり、非常に読みごたえがある。歴史好き、歴史学習を志すなら読めばオトクな一冊だ。

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    2020年04月07日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    どうもあまり好きじゃなかった東ローマ帝国だったが、どうやら食わず嫌いだったようだと気づかされた。変わらない建前と、解釈の融通というのは、古くて新しいテーマではなく、1000年以上前に成功例があったとは!ビザンチン帝国に学ぶべき展は多々ありそうな気がしてきた。歴史の仇はなのようなラテン帝国の存在はちらっと知っていたが、その間の小アジアへの亡命世間の顛末は全く知らなかった。そして、どうしてイタリア(ベネチア)にビザンチン系の美術品がやたらあるのかと思ったらそうゆう事だったのかと!

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    2018年11月04日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    ビザンティン帝国の興亡を描いた一作。「本音と建前の帝国」という面を描いていて興味深い。

    第四回十字軍のコンスタンティノープル攻撃に関する記述が多かったのが、個人的には嬉しかったところ。ただ、その原因については『十字軍という聖戦』の説明と食い違いがあり面白い。

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    2017年12月29日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    古本ワゴンで見つけた新書。ビザンティン(東ローマ)帝国というと、高校世界史の知識で大雑把に言うと「東西ローマ分裂からコンスタンティノープル陥落まで1000年以上緩やかな没落を続けた」ってイメージ。まぁローマ法大全のユスティニアヌスとかたまに上向くことはあっても基本下り坂、という。
    極めて大雑把に言うと間違っちゃいないんだけど、ただ下るだけじゃ1000年ももたない訳で(モンゴルだのティムールだの見ればわかるように)、まぁ下り坂の歴史を学ぶことで今の日本がどうこうという意識高い人ではないので純粋に歴史として読んでおもしろかった。あと、通史なんだけど、所々に著者の自分語りが出てくるのがちょっとかわい

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    2014年08月30日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    貸していた本が久しぶりに返ってきたので再読です。
    コンスタンティヌス一世のキリスト教公認とコンスタンティノープル遷都から、オスマントルコによる滅亡までの千年以上続くビザンティン帝国の歴史。ユスティニアヌスの再征服、イスラムによる侵食、8~11世紀の再興、第四次十字軍による占領・奪還など、少しずつ姿を変え、栄枯盛衰して存続した国の歴史をたどるのは非常に興味深いです。

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    2013年01月27日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    知られざるビザンチン帝国の歴史を一気に駆け抜けることができた。
    とても読みやすく、特に現イスタンブールの歴史的背景を知ることができて良かった。
    トルコに行く前に一読を。

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    2012年12月30日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    ビザンチン帝国を、ほぼ独立して描いていて、1000年を一気に駆け抜けられた。

    年表を見ながら、同時期の西欧、アジアの状態を追いたい。

    読むべき本。出会えてよかった。

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    2012年05月21日
  • 生き残った帝国ビザンティン

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    ビザンティン、つまり東ローマ帝国(ビザンツ帝国)のこと。


    学者が書いた本とは思えない程、とてもわかりやすい。高校生でも読めます。

    マケドニア朝初期等、意外なところが抜けていたりするが、大体のツボは抑えている。


    学校の世界史ではスルーされてしまう、面白い時代がここにある。

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    2009年10月04日
  • 歴史学の慰め:アンナ・コムネナの生涯と作品

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    ビザンツ皇帝アレクシオス一世の治世を対象とする歴史書「アレクシアス」を著した、皇女アンナの実像に迫る一冊。その生涯と作品検証を通して、歴史学というもの自体について考えさせられる内容。

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    2022年08月05日
  • 歴史学の慰め:アンナ・コムネナの生涯と作品

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    予備知識なしでも興味深く楽しめる、しかも専門的な内容だった。ビザンツ帝国の皇女アンナの思い、考え方、歴史学に対する姿勢とそれをどう実践したかが語られる。著書の個人的な思いが含まれるのも、そうとわかって読めるので、むしろ全体を理解しやすくしている。歴史学とは何かを、垣間見ることもできる。「アレクシアス」を通じてアンナという存在が現代のひとりの歴史家に深く理解され、その歴史家により現代の一般読者である私も、アンナという人を知ることができる。

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    2022年01月10日
  • ビザンツ皇妃列伝 : 憧れの都に咲いた花

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    ビザンツ帝国の皇妃の中から8人をピックアップし、史料に基づく形で彼女らの人生を描く一冊。
    各時代を象徴する皇妃たちの生涯を追うことによって、1000年にわたるビザンツ帝国の歴史をも描きだしている。
    取り上げた皇妃の中には、多くの記録が残されていない人物も多いのだが、残されたわずかな史料に誠実にあたり、その人生を浮き彫りにしていこうとするところに魅力を感じた。
    ビザンツ帝国に関しては正直あまり知識がなかったのだが、大変楽しく読めた。ビザンツそのものについて、さらに詳しく知りたいと感じた。

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    2016年01月19日