井上浩一のレビュー一覧
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ビザンツ帝国の概説通史。
ビザンツ帝国盛衰のポイントを明確に整理した上で、論ずべき点を上手く絞り込んでおり大変分かりやすかった。
そして何より、読んでいて面白い。
帝国の興亡がしっかりストーリーとなって綺麗に流れてゆく。
構成としては古代ローマ帝国のコンスタンティヌスがコンスタンティノープルを都としたところから、オスマン帝国によるコンスタンティノープル制圧まで、しっかり1,000年超の歴史を扱う。
ローマという建前を保持しながら、文明の十字路にあって生き延びるたびに幾たびも柔軟に体制を変更していった強かな帝国の生き死にが、実に小気味よく活写されてきる。
バルカン政策や宮廷内部の勢力争いなど -
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ローマの神々を捨て、キリスト教に改宗しながら、西のローマ帝国から東のビザンツ帝国に移っていく時代からスタート。コンスタンティノープルを中心に代々皇帝の周辺を眺めながら、ビザンツ帝国の盛衰を一気読みできる”教科書”。
ところどころ挿入されるエピソードが殊の外面白い。初期ビザンツ時代のコンスタンティノープルでは、競技場で行う戦車競走に緑と青の競技団体があり、彼らが頻繁に喧嘩したり、暴動や政治的反乱に発展することもあったという。不謹慎かもしれないが、現代のフーリガンを思い浮かべてしまった。
初期のキリスト教の強引さも印象的。古代の神殿を教会に変えようとするキリスト教徒の暴動をはじめ、ガザでの衝突は -
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ネタバレこれはとても面白かった。名著だと思う。ビザンツ帝国の最期50年ほどの歴史をロマンではなく人々が自分たちの生活のために行う駆け引き、保身、国内の権力闘争の結果として生き生きと書いていて、カトリック、イスラームとの宗教上の軋轢もあくまでそれらの手段であり、戦争と交渉によって使ったり引っ込めたりされる様子は面白い。ビザンツ帝国、オスマン、ジェノバやヴェネツィアなどの諸都市、ローマ教皇、それぞれの内側に派閥や駆け引きがあるかなり複雑な過程なのだが、引き込まれてするすると読まされてしまうのはすごい。同じ名前の人が何人もいるのでたまに混乱はするし、もちろん個々の人物の内心まですべてが分かるわけではないけれ
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ネタバレ西洋中世の女性歴史家、アンナ・コムニナの生涯と作品を一冊にまとめている。第一部では、彼女の生涯を辿り、第二部ではギリシャ以来の歴史学の伝統、作法を踏まえて、アンナ・コムニナが『アレクシアス』を書いた内容を精細に分析する。
歴史学が男性の学問であるが故に、歴史学の正統を標榜しつつも、歴史学から逸脱し、そして歴史学に名を残すことになったアンナ・コムニナの偉大な業績を知ることができた。
特にアンナ・コムニナの誤謬とされている年号についての誤りを、史料から丹念に辿り、アンナ・コムニナの執筆態度、執筆方針、そしてギリシャ以来の戦法とトルコ人の戦法までも絡めながら、一つ一つ読み解いていくのが、歴史学の -
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8人の皇妃の生涯とその生きた時代を通して描くビザンツ帝国の歴史。彼女たちは出自も生き方もばらばらである――
異教徒の出だったり、踊り子だったり、酒場の娘だったり、あるいは外国人だったり――おじの皇妃となってその精神的支柱になった人物、権力の魅力にとりつかれて自分の息子の目をくりぬき自ら即位した人物、稀代の悪女のイメージが根付いてしまった人物、政略結婚ながらやがては夫のやすらぎになった皇妃などなど――
それは、その時代の象徴とも言える生涯だった。これまでよく見られた皇帝中心のビザンツ史とは違う皇妃を通して見る歴史は新鮮。
可能な限り史料に基づきつつ、しかし、その史料には大幅に制約があるために、著 -
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古本ワゴンで見つけた新書。ビザンティン(東ローマ)帝国というと、高校世界史の知識で大雑把に言うと「東西ローマ分裂からコンスタンティノープル陥落まで1000年以上緩やかな没落を続けた」ってイメージ。まぁローマ法大全のユスティニアヌスとかたまに上向くことはあっても基本下り坂、という。
極めて大雑把に言うと間違っちゃいないんだけど、ただ下るだけじゃ1000年ももたない訳で(モンゴルだのティムールだの見ればわかるように)、まぁ下り坂の歴史を学ぶことで今の日本がどうこうという意識高い人ではないので純粋に歴史として読んでおもしろかった。あと、通史なんだけど、所々に著者の自分語りが出てくるのがちょっとかわい