白井恭弘のレビュー一覧

  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    第二言語習得の適性や習得する年齢による違いなどを科学的なデータに基づき分かりやすく解説している。

    第一言語習得はふつう成功するのに、大人の第二言語習得はふつう失敗に終わる。この違いはどのからくるのかを明らかにして、言語習得のメカニズムを考えるという手法には目から鱗だった。

    第二言語の習得には母国語との距離(文法や語彙がどれくらい似ているか)が大きく関係しているが、ほぼ同じ距離の他のアジアの国々に比べて日本人は英語ができないとされる。それは、日本は英語ができなくても困らない環境(翻訳書が用意されていたり仕事も日本語で完結する)が整っていて動機づけが甘いことが主な原因である。

    • 似通った言語を学習するときには、インプットを大量に理解することによってかなりのレベルまで習得が進む。
    • リスニングは聞いても20%しかわからない教材を聞くより80%以上わかる教材を何度も聞いたほうが効果がある。

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    2024年12月09日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

    購入済み

    こういう分野の本を飲むのは初めてだし専門でも無いので、内容の正誤については判断できませんが、第二言語習得という複雑な過程について色々な研究成果を紹介しながら、説明しています。インプットの理解とアウトプットの必要性が第二言語習得において大切ということですが、まあやはり近道はないのだなと思わされました。現在英語と中国語を勉強中ですが、意識するべき点を学べたという意味では読んで良かったです。参考文献も新書とは思えないほど豊富です。

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    2024年08月17日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    外国語としてどうやって学べば効果的か、という事を論文と検証結果を交えて考察。
    つまり、多聴多読と少しのアウトプット。

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    2021年01月04日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    面白い。かねてから英文学者とかが訳読擁護論をやることが多いのが気になっていたのだが、そういう話は科学的にやらないといかんのだな。

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    2019年11月01日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    第二外国語の習得が母語に比べて圧倒的に遅いのは、以下の2つの理由によると考えていた。
    1)圧倒的なインプット量不足。相当勉強している人でも朝起きてから寝るまでに見聞きする外国語の比率は半分にも満たない。普通は1/100から1/1000位ではないか?そうだとすると日本で1年間に習得する日本語知識と同レベルの外国語知識を獲得するには100年から1000年かかることになる。子供が言葉を覚える時も、最初は文法も発音も稚拙だが、親が付きっきりで正しい表現を都度教えていく。第二外国語を学習するのにもネイティブが24時間付きっきりで間違いを正してくれたら上達が速いと思う。
    2)記憶への定着が悪い。人は意味記憶よりもエピソード記憶の方が圧倒的に記憶しやすい。母語を覚えるのは一連の体験の中で文脈を持って覚えていくから言葉の意味や、それが使われた状況を含めて記憶している。一方で外国語はテキストを読んで覚えるから日常の文脈から切り離された意味記憶となり記憶が定着しにくい。自分の場合も海外で覚えた表現はいつまでも覚えているものだ。

    本書を読んでも上記の確信は変わらないが、これに加えて最初に覚えた言語がフィルタになって新しい言語の習得を阻害する可能性があることを知った。なるほど、確かにそれはありそうだ。

    第二外国語の習得に関する科学的なアプローチがこんなにも研究されているとは思わなかった。40年前に知っておけばと悔やまれる。

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    2018年10月18日
  • ことばの力学 応用言語学への招待

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    応用言語学とは、直接的に現実社会の問題解決を目指す言語学である。本書でも、母語習得、言語政策、第二言語習得、思考と言語、手話など、様々な言語と社会とのかかわりについて言及されている。言語は我々の思考をも規定する根本的なものであり、そこから生じる諸問題についてなかなか意識しづらい。例えば、普段日本語では主語や目的語を省略しても伝わるが、共通知識が少ない異文化圏では同様にすると誤解を生じうる。本書はこのような問題を改めて指摘しており、はっとさせられるものがある。言語学に興味がない人にも、一読をおススメしたい。

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    2018年07月22日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    第二言語習得に関してエビデンス・ベースに科学した本。母語習得はほぼ間違いなく成功するのに、第二言語はなぜ失敗することが多いのか。子供ほど成功しやすいが、習得に臨界期が存在するのか。適性や動機付けの影響はあるのか。また、言語を習得するというのはどういうメカニズムか。母語と第二言語で異なるのか。などなど、この分野での現在までの研究結果の到達点を解説しています。効果的な学習法を手っ取り早く知りたいという人というよりも、第二言語習得という言語学に興味ある人にオススメです。
    一番興味深かったのは、アウトプットが習得に与える影響の有用性に議論がある点。素人考えでは、効果あるのが常識かと思っていたが、内的なリハーサルだけでも効果があるので、インプットのみが習得に有用という見方もあるのだなと。
    個人的に、4月から管理部門の有志を集めて英語講座のストリーミング放送を聴いているのですが、学ぶ立場だけでなく教える立場としてもどうしたら効果的なのか考える機会も多く、ちょいネタとしての活用の余地も含めて非常に参考になりました。

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    2018年05月18日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    第2言語を習得する時のメカニズムを、様々な言語学の歴史を紹介しながらとてもわかりやすく解説した本。
    とても参考になった。

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    2017年05月30日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    同著者の『外国語学習に成功する人、しない人』の続編として書かれた本。
    同じような内容はあるものの、第二言語学の基礎が学べる王道の本。何度読んでもいい。読むに値すると思う。そして、この中から少しでも自分の第2第3の言語習得に役立てていきたいと思う。

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    2015年03月13日
  • ことばの力学 応用言語学への招待

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    大学の講義で使った教科書。
    言葉にどう私たちが無意識のレベルで影響されているのかなど、言葉に関することを考えさせられた一冊。
    外国語だけではなく、言語障害や手話など多岐にわたったジャンルについて書かれているので、一読する価値あり。

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    2013年10月26日
  • ことばの力学 応用言語学への招待

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    ことばの持つ力、それが無意識のうちにも様々な影響を及ぼし合いながら社会は動いている。ことばの孕む諸々の社会的な問題を俯瞰した知見を得るのに良い本。

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    2013年08月19日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    ネタバレ

    白井恭弘さんの「外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か」を読みました。
    この本のポイントは第6章の「効果的外国語学習法」に要約されている。いくつか書き出してみる。
    ・自分で学習教材を選ぶ時には、自分の興味があってよく知っている内容を、読んだり聞いたりするといいでしょう。
    ・リスニングは、聞いても二〇パーセントしかわからないような教材を聞くより、八〇パーセント以上わかる教材を何度も聞いたほうが効果があります。
    ・リスニング教材は、スクリプトがあれば、聞き取れないところを文字で確認してから、もう一度聞くといいでしょう。
    ・外国語「を」勉強するのではなく、外国語「で」情報を入手するレベルまで、なるべく早く到達するように努力することが大事です。
    ・日常言語のかなりの部分が決まり文句で構成されている。
    ・特に母語と第二言語の距離が遠い場合は、よく使う表現や、例文、ダイアローグなどを暗記することが効果的でしょう。
    ・インプットだけでは、インプットそのものの効果があまり高くならないからです。
    ・大人の学習者の場合、完璧な発音を身につけるのはほぼ無理だ、ということも意識しておくべきです。
    ・不快に感じない発音という観点からいくと、イントネーションとかリズムの方が個々の音の発音よりも重要だという研究結果が大勢を占めています。
    ・優れた学習者の特質は、「言語形式に注意する」「コミュニケーションを重視して言語を使おうとする」「学習活動に積極的に関わる」「学習プロセスを意識している」「学習ストラテジーを必要に応じて柔軟に使う」などだということがわかりました。
    ・外国語学習の成功は、主として、学習開始年齢、適性、動機づけによって決まるので、学習開始は早い方がよく、理由はどうであれ、動機づけを高めることが大事です

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    2026年03月30日
  • 新版 外国語学習に成功する人、しない人 第二言語習得論への招待

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    明確な目的はないが、去年から毎日短い時間でリスニングやリーディングを取り組んだり、英語で日記を書いてみたりと、ゆるく英語の勉強を始めた。現時点で楽しみながら英語に触れられているからこそ続けられていると思うが、レベルを上げていく方法を考えるようになったため、本書を手に取った。ページ数が少なく、内容も広く浅くで英語学習に躓いている人にとってはわかりやすいと思う。ただ、わかってない点も多く、今後のテクノロジーと研究の進歩にも注目していきたい。やり方はこのままでも問題なさそうだが、動機づけに関しては工夫していく。

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    2026年01月11日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    外国語をどうやって効率よく学ぶか」を、言語学・心理学・認知科学などの成果を用いて科学的に考察した本。

    成功する学習者
    ・学習を始める年齢が若い
    ・外国語学習の適性が高い
    ・インプットは習得、アウトプットは自動化の基盤
    ・正しい発達段階を経てる
    ・背景知識のある教材の使用
    ・強い学習動機

    目新しい情報は少なく、考えれば何となく想像がつく内容が多かった。しかしそれらを科学的に説明しているので信憑性が高い。
    結論、モチベある奴が無敵。

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    2025年09月21日
  • 新版 外国語学習に成功する人、しない人 第二言語習得論への招待

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    外国語学習法を扱う本は、著者の意見が一本化されてそれに合わせて理由やデータがつけられるが、本書はとても客観的な本である。
    どれが正しいかは断定せず、具体的な実験や証言を合わせてどういう学習法が良いのかを読者に決定してもらう書き方で好感が持てた。
    昨今のAI学習についてもだらだらと書かず、簡潔にまとまっている。付録も読みやすかった。

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    2025年04月15日
  • 新版 外国語学習に成功する人、しない人 第二言語習得論への招待

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    第二言語習得(SLA)について一般向けに分かりやすく書かれたもの。

    非常に端的にまとめられているのですぐに読み終えることができる。
    英語学習者としても、英語指導者としても外国語がどのように習得されていくのかを知っておくとより効果的・効率的な学習、指導ができることを科学的根拠を示しながら教えてくれる。
    また、これまで分かっていることと注意が必要なことも分かりやすく示してくれている。

    一方で、本書の中にも書かれているが、あくまで入門書のため、ある程度SLAを学んできた人は「ん?」と思うような詳しい説明が必要な箇所はある。

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    2025年03月12日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    外国語学習の研究史とプロセスについて書かれた本。
    これを読むと、学生時代はこの本に書いてあることとまさに真逆のこと(文法優先、単語を単語として覚える、極端なまでの和訳読など)をやって見事に英語嫌いになったのが分かるし、その後社会人になってからTOEIC695点(全く自慢にならないからこそ書ける)までなんとか底上げできた理由(シャドーイング中心の勉強)もなんとなく分かる。
    結局のところ、子供の頃にどれだけ興味を持てるかが勝負になる現実は避けられないのだなと。言語に限らないかもしれないが…。

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    2024年06月19日
  • ことばの力学 応用言語学への招待

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    ことばの力学というのを改めて考えさせられた。
    方言やバイリンガルに対しての無意識の偏見などは、だれでも心当たりがあるのではないかと思う。
    言葉は人間のコミュニケーションや思考に必要不可欠のものである。だからこそ、言葉に対しての態度を考えることが大切だと思う。
    著者の本は、本当に読みやすくて分かり易い。

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    2024年04月29日
  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

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    言語学の知識がほんの少しあるからか、とても分かり易くスラスラと読めた。
    新書って、書かれている内容の知識が少しあればこんなにも簡単に読むことができるんだなと初めて思った。

    第二言語習得のメカニズムが第二言語習得論を通して書かれている。
    その中で、具体的な第二言語習得方法として
    1.アウトプットよりインプット
    2.単文よりもダイアローグの暗記
    3.アウトプットも毎日少しでもやるべき
    の3つが重要ポイントなのではないかと思う。
    言語学について学びながら、言語習得についてもためになる一冊。

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    2024年04月11日
  • ことばの力学 応用言語学への招待

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    サブタイトルは「応用言語学への招待」です。応用言語学とはどういう分野か。プロローグによると、「現実社会の問題解決に直接貢献するような言語学のこと」とありました。差別などにつながる言葉はまずそうですが、言葉自体が社会問題になることがあります。また、言葉が、人間の無意識に働きかけていたり、その逆に、無意識が作用して表出されている言葉があったりします。そういった、現実との摩擦を起こしているような部分を扱う言語学といっていいのかもしれません。

    十章にわかれていて、そのなかでも比較的短い分量の項で小さく分けながら、それぞれのトピックが論じられていきます。文章自体のわかりやすさはなかなかのもので、読解しやすい体裁になってて読み心地もよかったです。

    それでは、いくつかのトピックを紹介しながら感想を書いていきます。

    まず、方言やなまりが、自分のそれと同じか近いか遠いかで、その相手との距離感は異なってくるし、帰属意識の働き方も違うというのはそうだなあと思いました。このことの難しいところは、無意識的かつ自動的に、たとえば自分とは違ったなまりの人を気付かないうちに差別するところです。言語感覚によって、そうとう僕たちの意識は規定されているようです。ちょっと怖いところですよね。

    次に、言語と認知機能について。バイリンガルのほうがモノリンガルよりも認知症になりにくく、なったとしても進行は早くなりにくいのだとあります。理由は単純に、日常的に頭をよく使うことになるからだとされています。また、二か国語を使用するにしても、その共通となる言語領域があるのだと解説されていました。人間は、まるきり別ものの二つの言語を頭に詰めるというよりも、そういった共通項を共有して母語と第二言語を発達させていくようです。名詞とか主語とか、そういう分類は共通です。うまく整理して覚えていくものだとあります。

    僕が義務教育で英語を学んだときは、無味乾燥な学び方をしたものでした。本書にも例がありますが、「I am a student.」という文章を否定形にしなさい、など。「I am not a student.」とやって正解と言われますが、自分は生徒なのに生徒じゃないと言わないといけない。技術・文法面しか見ない教育方法でした。意味を汲んで理解してっていう学習じゃないと身につかないことが教育の分野でやっとわかって、今日では僕の時代のような学習・教育の仕方はされていないそうですね。後の世代の人たち、ひとまずよかったですよね(とはいえ、勉強そのものは大変でしょうけれども)。

    規範主義、という主義思想についても扱っていて、著者はこれを批判してもいます。たとえば標準語を正しいとし、その正しさというものが価値を持ち、その正しさから外れるものを蔑み、差別するという帰結になる。これが規範主義です。規範、お手本、そういったものに沿って社会を秩序立てていく方法はメジャーですし大切ですが、その副作用として好からぬ効果がはっきりとあることも意識しておかないといけない。そういったことを、本書ではこの規範主義という言葉とその意味から学び取ることができるのでした。

    プライミング効果、という「なるほど!」な知見についても解説がありました。これは、無意識的に抱いている私たちの先入観が、微妙にその行動に影響を与えることを示唆します。たとえば、一流学術雑誌にすでに掲載された論文を、一流大学所属の著者というもとの肩書を外し、無名大学の肩書に書き換えて再度投稿してみた実験があります。12本送ってみて、そのうち3本は再投稿されたものだと発覚してしまい弾かれるのですが、残りの9本のうち8本が不採択になったのです。つまり、無名大学だと採択率が低くなるというものでした。

    まあ、プライミング効果なんていう言葉を知らなくても、僕たちはそういった心理バイアスがあることを経験的にわかっていますよね。僕は小説を投稿するときにいつも考えてしまうのですが、応募原稿の1ページ目に学歴や職歴を記載しないといけいなくて、その欄があることで僕の小説の価値が低く見られるだろうな、というのがあります。なにせ、学歴も職歴もたいしたことがないわけで。そのバイアスを突破するにはもう、ベラボーに力強い作品を作り上げるしかないわけです。

    ……と、それはそれとして、本の中身に戻ります。

    認知機能が落ちていると診断された人が、それでも昔と変わらずきちんとしゃべることが出来ていたりする。本書の例では、要支援2の人です。周囲からは、その人の言葉がしっかりしているから、医師に認知機能が落ちていると言われていてもたいしたことはないんじゃないか、なんて判断されたりなどするのです。これ、人間の「知識の二重構造」に理由があるようです。

    大雑把に言えば、認知機能に関係する知識の部分と、言語の能力に関する知識の部分は別ものだということです。このことについてちらっと、「宣言的知識」と「手続き的知識」が解説されています。この分野、かなり重要だし奥が深そうに感じました。

    たとえば鬱状態でも執筆仕事はできました、といった例を僕はSNS上で読んだことがあります。「そんなの鬱じゃない」とか「執筆って楽ちんなんだ」とか、他者からそういった解釈をされてしまいがちだろうと思いますが、知能が一枚岩で機能しているわけではないとわかれば、鬱状態での執筆は「あること」になります。そして、だからといって「楽ちんということでもない」ことにもなります。

    僕個人の例で言うと、過労状態(鍵をかけるときに毎度鍵を落っことす、会計の時に財布を落っことす、仕事が覚えにくいあるいは覚えられない、買ってあるものを別の日にまた買ってしまうなど)にあっても、本の簡単なレビューくらいならまず書けるし(掘り下げようとするとなかなかきつくはあります)なんとか創作もいける。でも傍からは、疲れてなんていないだろう、と見られる。

    そういう齟齬を埋める知見だと思うんですよ、「知識の二重構造」って。厳密に言うと、二重どころかもっと分割して捉えているものらしいです。こういうのって、「好きなことだけはやるわけだ」とか「遊べるくらい元気なのに」と人の心を問題視して個人攻撃することを、それは間違いだと正せるきっかけになる知見なのではないでしょうか。無知や無理解が、個人を攻撃したり心のせいにしたりする原因になっていることって、けっこうありがちではないかなあ、と思います。

    というところです。200ページ弱の新書ではありますがしっかりした中身で、ページを繰るたびに知る喜びを得ながらの読書でした。テンポよく知見や知識を知ることができたのです。応用言語学という分野自体もおもしろそうですが、英語圏にくらべて日本では関連書はほとんどないそうです。残念に思いました。

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    2023年10月15日