増田義郎のレビュー一覧

  • ペドロ・パラモ

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    亡き母との約束を守るため、顔も知らない生き別れの父を探す青年が辿り着いたのは、ひとけのないゴーストタウンだった。女たちのささめきに導かれがらんどうの町をさまよう青年の父探しと、父ペドロ・パラモが町を支配していたころの記憶が交錯し、地上の煉獄のように死者が留まり続ける円環的な世界を描いたメキシコの名作。


    マリアーナ・エンリケスやベンハミン・ラバトゥッツを通して南米面白い!となっていたところに、ネトフリで本書の実写版映画(2024)を発見してそちらを先に見た。眩い太陽の下でゴーストタウンと化した20世紀のメキシコの町が美しく、女性たちの演技も印象的で、これは原作も好きな気がする、とすぐに注文し

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    2025年12月22日
  • 物語 ラテン・アメリカの歴史 未来の大陸

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    ラテンアメリカの歴史を、古くは古代から説明する書籍。
    各テーマは新書なので簡潔だが、当然学校教育で学ぶ以上の知識と洞察の深みがあった。

    近代・現代のラテンアメリカ諸国の政治について、共通点とその原因、また変化の動向を知ることができた。

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    2021年11月28日
  • 完訳 ロビンソン・クルーソー

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    膨大な情報をもとにひとりの人間の記録を書き切った作品で,当時のイギリス市民の精神がよく反映されている。漂着後は持ち前の知識と信仰心で困難を越え,捕虜をうまく飼い慣らし,やがて戦いに勝利する姿は,当時の理想像にも見える。

    かつてスペインやポルトガルが握っていたカリブ海へ,イギリスは進出しようという時代。海の向こうに夢見た人々に,本作はうまく適合したのだろう。

    1719年に59歳で『ロビンソン・クルーソー』を出版したデフォーは,もとはジャーナリストとして諷刺詩を数多く書き,トーリ党の幹部ハーレーの下で週刊誌『レヴュー』を発行し実質的な政府の広報官として活動していた。

    全体的に,予定調和ではあ

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    2021年11月02日
  • ペドロ・パラモ

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    文体と物語、過去と未来、生と死、全てが渾然一体となっている。独特の読み味に病みつきになって、いつまでもコマラから出たくなってしまう恐れがあるので注意。

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    2021年06月02日
  • 完訳 ロビンソン・クルーソー

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    ロビンソン・クルーソーと言えば、誰もが子ども時代に縮約版で親しむ作品だが、その実は文庫で400ページを越える長編小説なのであった。青年時代に親に反抗して家を出て以来、海賊に捕われて奴隷となり、脱出してブラジルに渡って事業で成功し、さらに貿易船の航海中に嵐によって無人島辿りついて、ようやく誰もが知っているサバイバル・ストーリーが始まる。

    直面した苦難や無いものを嘆くのではなく与えられているものに感謝すること、足るを知ること、現状の暗い面よりも現に楽しんでいることに注目することなど、21世紀の自己啓発書にでも書いてありそうな知見を孤独な生活の中で獲得していく様と、その後の波瀾万丈を描く。子ども時

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    2021年01月30日
  • 完訳 ロビンソン・クルーソー

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    めちゃくちゃ好き。
    自らの身を持って、中庸が大事なんだなと学ぶ体験。
    無人島でのたくましいサバイバル生活には、少しだけ憧れる。

    自分も何かをめんどくさいと思ったり、辛い時があったときに、ロビンソン・クルーソーを思い出して奮起しよう。

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    2020年10月10日
  • 図説 探検地図の歴史 ──大航海時代から極地探検まで

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    楽しかったー
    スタフォード の「実体への旅」を読む前に読んでおきたかった
    マルコ・ポーロから20世紀まで、探検地図を辿ることで、探検の歴史がみえてくる

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    2020年01月17日
  • ペドロ・パラモ

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    初読は高校の課題図書。

    メキシコの片田舎、父を探して主人公がたどり着いたのは死者の町だった・・・といった話なのだがストーリーは当時全く意味不明。ただ、砂ぼこり舞う真っ白な道、陽炎に揺れる怪しげな街、という描写は異様に頭に刷り込まれている。
    「燃える平原」にひっくり返り再読。

    2017年12月14日付The Economistによると、魔術的リアリズムの元祖でもあるルルフォは、実はフォークナーの影響を受けているらしい。あれだけ土俗的なラテン・アメリカ文学が北米の作家の系譜に連なるのも意外と言えば意外。

    “The reader gradually realises that all the

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    2019年01月03日
  • ペドロ・パラモ

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    2008年11月27日~28日。
     結構な数の登場人物。男も女もいる。ほとんどは死者。そんな死者が時空をあっちこっちヒョイヒョイと駆け巡る。語り口も一人称からいきなり三人称に変わったりする。最初は面喰う。
     それぞれの断片が大きな流れになって物語を織りなす。そして最初に戻る。終わらない。ウロボロス。
     ちょっと気を抜くと振り落とされるか迷子になるかおいてけぼりを食らう。でも心配はない。一度はまってしまえば気を抜くことも許されない。
     間違いなくもう一度読み返すだろう。久しぶりに心底面白い作品に出会えた。

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    2018年01月06日
  • ペドロ・パラモ

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    「たくさん悪いことをしたこの地上からあの男を連れていってくださった神様に感謝しよう。いま天国にいるかもしれないが、ま、そんなことは問題じゃない。」

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    2017年03月11日
  • ペドロ・パラモ

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    ネタバレ

    ささ‐めき【私=語】
    ささめくこと。ひそひそ話。ささやき。また、男女のむつごと。
    「貴妃の―、再び唐帝の思ひにかへる」〈海道記〉

    初めてこんな言葉を知ったが、これほど的確にこの小説を表す一言はない。
    ささやく。ひそめく。
    まずは翻訳の文体の素晴らしさ、語のセレクトの素晴らしさ。
    少ない文字数から滾々と湧く抒情。

    次に構成のしかけ。
    ただシャッフルしているのではない、ひとつの言説が連想を呼び過去を掘り起し広がり深くなる。

    最後に語られる内容。
    極悪な奴なのにスサナへの思いが、たまらなく切ない。
    すべてを手に入れようとしてそれだけ手に入らず。

    これだけの男の行き詰まりは街の行き詰まりを呼び

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    2014年02月13日
  • ペドロ・パラモ

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    ネタバレ

    奥深い、底知れぬ物語。
    死んだ男をめぐる噂話が、死んだ人間たちの間で語られ、死んだペドロ・パラモの人物像がうすぼんやりと形作られていく。伝え聞きの集合体として物語が建設されており、それらを細胞に、町の盛衰が語られる。鮮やかな小説。
    ガルシア=マルケスに「百年の孤独」を書かせた小説という、ある意味で究極の評価を得ているようだが、そういう文学史的注釈を抜きにして面白い。

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    2016年07月03日
  • ペドロ・パラモ

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    死者が埋葬され土と石に帰るのなら、私たちは堆積した死者の上に生きているのではないか。彼らの記憶も積み重なり、それは時間の進行という枠組みを超えて断片的に交差する。本書が南米文学の起源であると同時に到達点だと言えるのは、決して循環する構造が故だけではない。土地と血縁、そして革命と血生臭いモチーフが用いられているのにも関わらず、それらが全て断片的な構成として提示されるからこそ幻想的な魅力を帯びてくる。死者の記憶に耳を傾け続けることが生者の努めだとするならば、本書はまるでレクイエムそのものなのだと言えるだろう。

    (2013/10/08追記)
    再読。積み重なる死者の記憶が印象的な故に初読時はレクイエ

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    2013年10月08日
  • 物語 ラテン・アメリカの歴史 未来の大陸

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    ネタバレ

    なかなか勉強する機会がなかったラテンアメリカの歴史をしることができました。

    モンゴロイド、白人、黒人がいりまじった社会を形成し、現代社会の坩堝と化しているラテンアメリカ。
    そこから、新しい文化のいぶきを嗅ぎ分けるには、歴史を知ることが手がかりになるだろう。

    気候、風土、資源、ラテンアメリカをしるのに、この3要素にもっと切り込んでもらえるとうれしいかもしれない。
    ラテンアメリカに対抗する文化は、中東のイスラム社会だろう。

    さらに、インドと中国の4つを加えれば、BRICSのブラジル、インド、中国の3つの主要国が押さえれたことになる。

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    2012年02月21日
  • 完訳 ロビンソン・クルーソー

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    聖書の御言葉が要所、要所に散りばめられてをり、「放蕩息子」であつたロビンソンが悔ひ改める姿に「然り、然り」と頷きながら読みました。

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    2012年01月15日
  • 完訳 ロビンソン・クルーソー

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    いつものように、なにげなく書店の文庫新刊棚を眺めていたら、ロビンソン・クルーソーという文字が目に飛び込んできました、

    わあなつかしいと思わず手に取って、ふと訳者の名前をみてとても驚きました。
    増田義郎・・その人は私にとっては特別の意味を持つ、いってみれば神のような存在でした。

    というのはちょっと大げさですが、それでも高校生の一時期、熱狂的に没頭したラテンアメリカとりわけインカ帝国やアステカ王国について、この文化人類学者・ラテンアメリカ歴史学者=増田義郎教授のお世話にならなかった日はなかったのです。

    もともと西部劇が好きで、いつも悪者扱いのインディアン=ネイティブ・アメリカン(アメリカ原住

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    2011年09月19日
  • 西太平洋の遠洋航海者

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    ネタバレ

     この本は、ポーランド出身の人類学者ブロニスワフ・マリノフスキが、1914年から1918年にかけてニューギニア島東部のトロブリアンド諸島で行われたフィールドワークに基づいて著した民族誌である(原著の出版は1922年)。
     よく語られることであるが、この本がもたらした人類学への貢献は、「フィールドワーク」という方法を、人類学にとって不可欠なものとして「定着させた」ことである。この本が出版される以前は、旅行者や宣教師からの「伝え聞き」によって集められたデータに基づいて、当該の「民族社会」が描かれる、ということがあった。
     当時の西洋人たちの多くは、「西洋」の側に属さない人々に対する偏見が強かった。

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    2011年06月21日
  • 完訳 ロビンソン・クルーソー

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    子供向けのダイジェスト版ではなく、大人のための完訳版。
    この本をよむと、ダイジェスト版がいかに「お子様向き」に単純化されているかが、よくわかります。
    「増田先生がなぜこの本の翻訳を?」とも思いましたが、丁寧な解説を読んで納得。翻訳文も読みやすいものでした。

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    2011年03月10日
  • ペドロ・パラモ

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    どういうわけか、自分の周りに大きい鳥が無数にいて、ばさばさと羽をばたつかせ風で煽られているところを想像してしまった。そのばたつかせた羽から向かってくる風が本作で扱われる「死」のようであり「時」のようであり、鳥菌やら砂埃やら乗せてばさばさと私の顔やら体やらにぶつかって過ぎ去って行く。鳥は無数にいるのであちこちから風はやってくる。それは一定のリズムを保っていない。顔にも風はくるので、つい顔をしかめてしまう。しかめると言っても不快だから、というのではなく奇妙だからである。鳥菌にやられてお熱。

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    2011年03月03日
  • ペドロ・パラモ

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    ラテンアメリカ文学において、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』と並ぶ傑作だそうで。

    そこまで分量があるわけではない中篇だが、夜中に読み始めたにもかかわらず、どうしても止められなくて一気に読み切った。

    読むのを止められなかったのは、複雑な構成なので間を開けたくなかったこともあるが、何よりもこの独特の世界観に浸り続けたかったからだ。

    会ったことのない父親ペドロ・パラモを探して訪れた田舎の街でのファンに起こる出来事を中心に描かれるかと思いきや、話は過去にも飛ぶし、目の前で話している人間が読み進めていくと死者だったりする。

    70の断片からなる物語だそうだが、その断片は時間軸も、生死の境も、すべ

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    2011年01月03日