塚本邦雄のレビュー一覧
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『紺青のわかれ』に続いて1973年に発表された塚本邦雄の第二小説集。
◆ 「奪」
タイトルの〈奪〉は、塚本ワールドにおいてはおそらく〈愛〉を意味している。塚本の小説世界における愛と執着のかたちを盛りすぎなほど盛り込んだ中篇。読者は複雑な相関図を指で辿るように読み解き、縺れ合う人間関係の全貌が明らかになった瞬間に幕、というスタイルがここで既に確立されている。三島由紀夫『春の雪』の蓼科を思わせる紅子が大変良いキャラ。しつこく繰り返されるピエタのモチーフは「連弾」に持ち越される。
◆ 「連弾」
嫁と姑と老女中のキャットファイトから語り始める塚本さん、やっぱ男同士の愛憎なんかより女を書くほうが楽 -
Posted by ブクログ
男たちの秘め事と、それを嗅ぎつけた女たちの策略。前衛短歌の巨匠がその濃密な筆力を尽くして築き上げた、男と男の秘密と破滅の世界に浸る短篇集。
『十二神将変』復刊に続いて、『紺青のわかれ』文庫化、ありがとう!旧仮名遣いは変わらずだけど、新漢字になったおかげでずいぶん読みやすくなった。芸術の造詣深く、料理、ファッション、花からインテリアまで拘り抜く塚本好みにきっちりと設えた城のような文体は一見とっつきにくいけど、鏡花を崩したような講談調のリズムにのって意外とするする読める。
階段状にタイトルが一文字ずつ長くなっていく作品たちはほぼ執筆順に並べられていて、読み進むごとにクオリティが上がり面白くなっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ-2005.12.08記
塚本邦雄の「定家百首-良夜爛漫」は見事な書だ。
「拾遺愚草」3564首を含む藤原定家全作品四千数百首の中から選びぬいた秀歌百首に、歌人塚本邦雄が渾身の解釈を試みる。
邦雄氏の本領が夙に発揮されるのは、一首々々に添えられた詩的断章だ。
一首とそれに添えられた詩章とのコレスポンデンス=照応は、凡百の解釈などよりよほど鑑賞を深めてくれる。
たとえば、百首中の第1首ではこうなる。
「見渡せば花ももみぢもなかりけり浦のとまやのあきの夕ぐれ」
上巻「二見浦百首」の中、「秋二十首」より。新古今入選。
はなやかなものはことごとく消え失せた
この季節のたそ