山室信一のレビュー一覧
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概要
わずか13年間中国に存在した日本の傀儡国家「満州国」。満州の建国背景、国家理念、統治機構を明らかにし、そこに表れた近代日本の中国や韓国に対しての差別意識、天皇制という国家体制についてが語られる。
感想
文章に風格があり、歴史もので有りがちな淡々とした描写ではなく小説のような読み味。
正直難しい言い回しや熟語が多く、読むのは中々骨が折れた。
満洲国を実験国家として理念をぶち上げておきながら、結局それらは欺瞞まみれで中国人や朝鮮人を日本の様式に無理矢理従わせ、待遇や金銭面など色々な場面で差別する歪な構造にしかならなかった。
近代日本の歪みがわかりやすく形になっている -
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ポストモダンという言葉によって超越されちゃっているからなのか…お好み焼きのモダン焼きな感じで過去の最先端みたいなイメージがついちゃっているからなのか…モダンには、ちょっと微妙なニュアンスがります。だから、本書で流行語でもなく新語でもなく「モダン語」という初めての括りで日本人が使ってきた言葉を総覧すると、肯定的という訳でもなく否定的という訳でもなく日本人が新しい出来事に対して何を語ろうとしてきたか、の地に足がついて血が通った記録になったような気がしました。舞台は1910〜30年。第一次世界大戦が始まり、そして終わり第二次世界大戦が始まるまでの時代。日本に資本主義が定着し、マスコミが成長し、識字率
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京都大学人文科学研究所教授(近代日本政治史)の山室信一(1951-)による「満洲国」の成立と変容。
【構成】
序章 満洲国へのまなざし
第1章日本の活くる唯一の途-関東軍・満蒙領有論の射程
第2章在満各民族の楽土たらしむ-新国家建設工作と建国理念の模索
第3章世界政治の模範となさんとす-道義立国の大旆と満洲国政治の形成
第4章経邦の長策は常に日本帝国と協力同心-王道楽土の蹉跌と日満一体化の道程
終章 キメラ-その実相と幻像
驚愕の歴史研究である。
「満洲国」と呼ばれる国は、わずか12年の間しかこの世に存在していなかった。にも関わらず、その実相についてある日本人は王道楽土を追求した理想郷と -
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「昭和の戦争だって、満州から撤退すればいいのに、できなかった。『原発を失ったら経済成長できない』と経済界は言うけど、そんなことないね。昔も『満州は日本の生命線』と言ったけど、満州を失ったって日本は発展したじゃないか」 と、小泉純一郎元首相は脱原発に転じて言った。
1929年に「満蒙問題の解決は、日本の活くる唯一の途なり」と言ったのは石原莞爾。しかし、満州国建国がなぜわが国にとって経済的救世主たりうるのか、そしてなぜ満蒙が起死回生の新天地と目されたのか、それは確固たる裏づけに基づいての展望ではない。単なる希望的観測にすぎなかった。そうした過剰な期待が吐露されたのは、世界恐慌に巻き込まれ、冷害や -
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加藤陽子 満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)からの展開
満洲国についての概説書として、満洲国の国制や建国の流れ、その根底にあった思想について網羅しつつ、一方で掛け声ばかりの民族協和とその実態がもたらした不条理について迫力を持って描いている。
満洲国初心者としては非常に読みやすかったし、物語的にも非常に興味深く読むことができた。
一方でかなり筆者の満洲国に対するものの見方という点においては、満洲国の二律背反的な部分を認めながらも、基本的には批判的な立場をとっているため、一般的には十分に中立的だと思うが、読む人が読めば受け入れられ難いかもしれない。
少なくとも読ん -
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まず初めに、新書レベルとしてはかなり専門的な内容であり、大学受験程度の知識を持っている人間でも予備知識なしに読むのは難しい。巻末の増補解説がかなり分かりやすいのでまずはそちらを読むことをすすめる。本編は学術的でありながらも(良くも悪くも)感情の起伏に富む面もあるが、増補解説についてはかなり冷静な分析がなされているので、そういう意味でも増補解説から読んでもらいたい。
その上でこの本は満洲国がどのような実体を持つ国家体であったのかについて非常に示唆に富む内容である。一部に関して被害者側に重きを置いている感はあるが、それは仕方のないことであろう。
満洲国がなぜ傀儡政権と言われたのか、その実情がどの -
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満洲国の肖像をギリシア神話の怪獣キメラになぞらえて描くことで、その建国の背景、国家理念、統治機構などの特色を明らかにし、そこに表れた近代日本の国家観察や民族観、アジア観を抉り出している。
新書だが重厚で説得力のある内容。満洲国の理念として語られてきた「民族協和」「順天安民」「王道楽土」といったスローガンが、(当初それらを本気で信じて取り組んでいた人々が一部いたとしても)総体として口先だけの欺瞞に過ぎなかったということがよく理解できた。「満洲国にも良い側面があった」などという言説で目を背けてはいけない近代日本の醜悪な側面が凝縮されていると感じた。著者が指摘するように、満洲国崩壊時の中国人学生が語 -
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試し読み
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<目次>
はじめに ようこそ、モダン語の世界へ
第1章 モダン、そしてモダン語とは?
第2章 百花繚乱~モダン語のパノラマ
第3章 行き交う言葉と変転する文化
第4章 モダンの波頭を切るガール
第5章 モダンを超え、尖端へ、その先へ
第6章 エロとグロとその後にくるもの
第7章 アジア、ローカル、アメリカとの往還
おわりに 終わりなき「始まりの思詞学」
<内容>
第一次世界大戦から第二次世界大戦の間を中心に、流行語(モダン語)を意味、使い方、使い方の変遷、時代との関連などを分析することで、政治家や軍人などの動きではなく、庶民の考えやうねりなどを見て行こうとするもの。著者は「思詞 -
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当時の文書を徹底的に掘り起こした本格的論文。よく新書で出版したなという感じ。
読んで改めて思うのは、列強の圧迫の中で生き残る、という日本なりの言い分はあったとしても、満州への日本の進出は当時の基準で見てさえ明白な国際法違反だったと言わざるを得ないこと。
日本軍内部でも「さすがにこれは持たないんじゃないの」という議論がさんざんなされている。当初直接占領を理想と掲げた石原莞爾は、妥協策として考え出した「五族協和の満州国」という建前にだんだん本気で惹かれていく。そして、民族の壁を越えた理想国家、という理念に貢献しようとして海を渡った善意の日本人が多くいたことも事実。
しかしその実態は、日本人が官 -
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本のタイトルにあるように、日本に今後戦後80年は
くるのかという議題で、現政権を中心に批判する
下記の講義集
内田樹氏ー比較敗戦論
東浩紀-本と新聞と大学は生き残れるか
木村草太-集団的自衛権問題とはなんだったのか
山室信一-戦後が戦前に転じるとき
上野千鶴子-戦後日本の下半身
河村小百合-この国の財政・経済のこれから
姜尚中-総括講演
このなかでも、山室信一氏、上野千鶴子氏、河村小百合氏の
3本がとても興味を引きました。
どれも、日本が破綻し、または戦争の道に進むのでは
ないかという潜在的な恐れを感じる内容です。
支持率は高いですが、本当に今の政権でいいのでしょうか?
他人事ではないような -
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フォトリーディング&スーパーリーディング
満州帝国の歴史の概要を知ろうと思って読んだ。理解したポイントは以下の点:
満州帝国建国は日本の防衛のため。(赤化防止の防波堤。)
第一次大戦以後の戦争は総力戦。その総力戦を意識して日本は資源や食糧の自給自足体制を目指した。満州国建国は欧米のブロック経済の日本版。
満州国の理想は高かったが、現実の指導原理は日本のための支配という概念で動いた。そのため理想と現実のギャップを誰もが意識した。
満州国は時代の必然から生まれたあだ花のような存在で、多くの人々に傷を与えた。
関東軍は日本のために満州を支配した国民無き兵団だった。
以上 -
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ネタバレ[ 内容 ]
一九三二年三月、中国東北地方に忽然と出現し、わずか一三年五カ月後に姿を消した国家、満洲国。
今日なおその影を色濃く残す満洲国とは何だったのか。
本書は建国の背景、国家理念、統治機構の特色を明らかにし、そこに凝縮して現れた近代日本の国家観、民族観、そしてアジア観を問い直す試みである。
新たに満洲・満洲国の前史と戦後に及ぼした影響など、その歴史的意義を想定問答形式によって概観する章を増補した。
[ 目次 ]
序章 満洲国へのまなざし
第1章 日本の活くる唯一の途―関東軍・満蒙領有論の射程
第2章 在満蒙各民族の楽土たらしむ―新国家建設工作と建国理念の模索
第3章 世界政治の模範とな -
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■満洲国の成立と消滅までを、膨大な資料と著者の思念を持って書かれた「生きた」満洲についての歴史が語られる。当時は「五族協和」の「理想国家」でもあり、多くの者たちが夢と希望を持ち、満洲を眺めていたこと。米国大統領ウイルソンの「民族自立論」言い換えれば西欧的「膨張主義」から自国主義の影響で、中国の抗日戦線の活況があった。関東軍の捻じ曲げられた満州論、石原莞爾の「世界最終戦争論」から見た満州論の排除の過程と石原と板垣征四郎の確執。中国を知悉しその上で中国と日本の関係の理想を満州国に描いた橘撲(しらき)の理想であるが故の<変節>の過程。満州国建国の民族協和と王道政治理念と現実の満洲の「指導者層の齟齬
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今日は令和4年8月15日だ。正午少し前から毎年の様に戦没者への哀悼を示す番組が国営放送(NHK)で流れ、武道館には天皇皇后両陛下だけでなく岸田首相も訪れ、正午の時報がなれば1分間の黙祷が捧げられる。1945年8月15日は昭和天皇による玉音放送が流れた日であり、ラジオで初めて聞く天皇の言葉の前に、何やら難しい事を言っている様だが、日本が戦争に負けた事だけは確からしい、と膝をついて泣き出すもの、心の中では生き残れたと安堵するもの、様々な感情が渦巻いた日でもある。特に戦争遂行の最前線にいた軍部には腹を切って自決するものも多数いた。
終戦記念日と呼ばれるこの日は、この様に先の大戦において国民が戦争に負