ラディゲのレビュー一覧

  • ドルジェル伯の舞踏会

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    10年前に肉体の悪魔を読んだときから本書を読もうと決めていたが時間があいてしまった。やはり人間の心の解像度がバケモンすぎる…たった20年の生涯で、著者は一体どれほどの経験をしてきたのだろうか。
    本編に対して解説の文量が多いなと思ったが、読んで納得というか、これがあることで本書の魅力が倍増しているなと感じた。(アンヌとフランソワの"同志"関係によって嫉妬が留保される等)
    通勤中に一人で読んでいるとニヤニヤしてしまうので、女子会みたいに複数人で「この気持ちわかる〜!」とかキャッキャ騒ぎながら読みたい。

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    2025年03月31日
  • 肉体の悪魔

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    ネタバレ

    10代で書かれたものとは思えなかった。
    傍からみるとどうかしていると思うくらい強烈な感情を抱いている主人公の様子が淡々と綴られている。コントロールできない強い感情が愛情とは矛盾した行動をとらせるが、それが「僕」の未熟さや利己的な執着心を感じさせた。
    最後、ジャックと子どもの行く末に希望を見つけたように思うが、寂しさが漂っていて印象的な終わりだった。

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    2023年09月02日
  • 肉体の悪魔

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    ストーリーは非道徳的であることは間違い無い。愛情に狂わされていると言うより10代の自分の感情に自分自身が驚きながらも冷静に女性を弄ぶ主人公(作者の実体験でもあるところがエグい)に嫌悪感を抱く人もいるだろう。そんな小説がなぜ古典として読み継がれるのか。文章の切れ味。感情の描写の巧みさ。戦時下という特別な時間の普通ではない時だからこそ起きたことかもしれない出来事とその悪魔的な引力。全てが奇跡的に組み合わさって書かれた小説。

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    2023年09月01日
  • 肉体の悪魔

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    人妻に恋をした少年の倒錯的かつ不安定になるほどの情熱に身を焦がしていく心理が見事で、愛しさだったり憎らしかったり、人間味溢れた情動に加えて不倫という禁忌的な関係にスリルさ・破滅しか待っていないであろう未来への不安・2人だけの特別で確かに幸せを感じられた時間など心にダイレクトアタックしてくるのがたまらない。

    また、エロくないようでエロさを感じさせる表現も素晴らしく、思春期の少年が経験するには早熟過ぎる肉欲やマルトが妊娠してしまってからの後戻りできない片道切符、夫の愛に背いた果ての結末に魂奪われました。

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    2023年04月05日
  • ドルジェル伯の舞踏会

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    でぇえ…本当に20歳(執筆している間は10代)でこれを書いたの、すごいな……自分が20歳の頃なんて思い出したくもないから比較はしたくない(できない)が…「早熟」なんて言葉では括れない才能な気がする…

    解説も読みごたえあって面白かった、何となくコクトーと仲良かったみたいなイメージしかなかったからもう少し詳しく知れて良かったな(コクトーが手直ししてるとこ想像してしまいました…)

    言い回し好きすぎる、どうしてそんな比喩引っ張ってこれるの?終わりかたも好きだなぁ、まさに舞踏会が終わってしまう感じ。
    でもやっぱり『肉体の悪魔』より、文体がより洗練されてキレキレになってた感じがした(ちゃんと文体につい

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    2020年08月24日
  • ドルジェル伯の舞踏会

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    久しぶりに素敵な小説に出会えました。
    登場人物の心理描写を1人の語り部が優れた洞察力でもって豊かに表している
    中でも三角関係という泥々な恋愛シーンは殆ど少なく、主人公は2人の夫婦を丸ごと愛しているように思える所から思いやりに溢れるシーンがたくさんあり、癒された。
    クライマックスのセリユーズ夫人にマオが恋心を打ち明ける所は心を打たれるのであるが
    その手紙を読んだことによりフランソワが恋心をさらに確信してしまうという奸計も見逃せないロジカルな構成となっている。

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    2020年05月09日
  • 肉体の悪魔

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    フランス文学。
    第一次世界大戦の時期にも重なってくる約100年前にラディゲが著した。

    結末にショックを受ける。
    誰にとっても救われない淋しく切ない恋の物語。

    戦争というのは直接的なだけでなく、間接的にこんな不幸の爪痕も残すのか。

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    2018年11月25日
  • 肉体の悪魔

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    少年の愛と性欲に翻弄され葛藤しながらもがく心理状態がすばらしく描写されている。そのなかに時に恐ろしい冷酷さも入ってきて、人間の底知れぬ怖いものも垣間見える。
    コクトーといいラディゲといいこの時期のフランス文学いいですね。

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    2016年01月10日
  • 肉体の悪魔

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    お話の内容は単純でした。でも主人公の感情が痛いほど伝わってきて、その単純さをいい意味でぶち壊した。ラディゲが私と同じくらいの歳でこの小説を書いたなんてとても思えない…。深すぎます。

    こんなにすごい小説久しぶりに読んだ気がします。次はもう少し大人になってからまたこの本を手に取りたいです。

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    2012年10月27日
  • 肉体の悪魔

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    若気の至りの耽溺と言ってしまえばそれまでかもしれないけれど、痛々しく、深く飲み込まれるような恋愛の記録。
    あらすじだけで言えば、若い青少年が夫が出征中の人妻との不倫に溺れ妊娠させてしまう。ただそれだけの話なのに、人間存在そのものとは何か、愛とは何かを問う重厚な小説。

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    2025年05月05日
  • 肉体の悪魔

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    解説に邦訳に悩むエピソードがあり、もう1つの候補の方が確かに意味合いは近い気がしたが、これは正解。数多の本の中で目を引く強い単語。組み合わせ。

    そして本編とはギャップがあって、精神の魔王とでも言おうか。肉体の悪魔にそれが輪をかけていて、さらに強力な大魔王に仕上がっている。
    硬く攻撃的で冷たい。恋を凝縮して無機質めいたものにした筆致は、その淡さ弱さは見せず洗練され、もはや爽快である。

    若者の恋であるが、大人も愛に至るまでに類似の葛藤や愚かさに弄ばれることが大いにある。
    人間の欲望は、高次なものと本能的なものが混在してできているのが面白い。

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    2025年03月15日
  • 肉体の悪魔

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    ネタバレ

    18にしてこれを書いたということで、大人になってしまった今読んでみると主人公があらゆる面で青すぎる。家具屋でのやり取りなど、未熟なくせにコントロールしようとするところに不快感はある。ただ若いからこそフレッシュに描けているのだろう。心理描写は非常に巧み。

    タイトルからエロティックな印象も受けるがそれほどそんなことはない(マルトが肉感的に描かれているということもない)。『魔に憑かれて』が適訳であろうという解説に納得。

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    2024年10月19日
  • ドルジェル伯の舞踏会

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    この小説において"誤解"は重要なキーワードになるのではないかと思った。
    他者への誤解、または自分自身の心の誤解。
    語り手の焦点が定まっていないため、全登場人物の内面を覗き見ることができるが、皆なんらかの誤解をしながら物語が進んでいく。
    一方で、自分自身の心を素直に読み取れている人物もいる。しかし、それは貞淑な人妻への恋心…。
    純粋無垢な恋心は決して成就することはない。成就したところで、それは邪な関係性となり、信頼している人物を裏切ることになる。それは誰も望まないこと。
    登場人物の素直な恋心と自分の気持ちを誤解して受け取ってしまった恋心、それぞれ揺れ動く内面の描写がなんとも激

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    2022年04月29日
  • 肉体の悪魔

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    青い麦と違い、あまりにも自堕落なストーリー。こちらは16歳の少年と19歳の人妻の物語だけど、なかなか16歳少年が狂っている。まさにフランス文学!あまりにも面白くいつもや読まない巻末の解説を読んでしまった。
    少年だけではなく、周りの家族もおかしくそんな馬鹿な!って思ったが、この物語、ほぼほぼラディゲの体験談そのものと知り二度びっくり。
    人妻との禁断の恋というのは何もフランス文学だけでなく、日本でも甘美な色物としてよくある話なんだけども、主人公のへその曲がった性格がこの物語の主軸となり関係するすべての人間関係を狂った方向へ導いてしまった。エンタメ要素は少ないながら結末をワクワクしながら読めた。やっ

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    2021年03月30日
  • 肉体の悪魔

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    15歳と19歳の人妻の不倫の話。現代でもそんな話があったらセンセーショナルなのに、第一次世界大戦の時代にはさらにセンセーショナルだっただろう。しかもこの小説は作者が16歳の頃に書き始めたという。私が忘れつつある青春の感情がたくさん詰まった本だなと思ったが、実際に体験している「今」を描いているのなら納得だ。

    作者は20歳で亡くなってしまったらしい。第一次世界大戦という普段とは違う状況が、夫の長期不在という状況を作り出し、そこに普段とは違う状況が生まれる。では戦後長生きしていたらどんな作品を生み出してくれたのだろうと推測してしまう。

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    2021年01月13日
  • 肉体の悪魔

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    本文に描かれる恋愛観が、私のものととても似ていた。
    そのため、「僕」の持つ嫉妬心や残酷さが表出するたびに、私自身の本性を暴かれているような気分になった。
    ラディゲは約100年前のフランス人だというのに、現代の日本にも通じる「人を捉える力」を持っていたのだろう。
    男の内面に向き合える本。

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    2020年10月07日
  • 肉体の悪魔

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    引用。

    僕はマルトにキスをした自分の大胆さに呆然としていたが、本当は、僕が彼女に顔を寄せたとき、僕の頭を抱いて唇にひき寄せたのはマルトのほうだった。彼女の両手が僕の首に絡みついていた。遭難者の手だってこれほど激しく絡みつくことはないだろう。彼女は僕に救助してもらいたいのか、それとも一緒に溺れてほしいのか、僕には分からなかった。

    平静に死を直視できるのは、ひとりで死と向かいあったときだけだ。二人で死ぬことはもはや死ではない。疑り深い人だってそう思うだろう。悲しいのは、命に別れを告げることではない。命に意味をあたえてくれるものと別れることだ。愛こそが命なら、一緒に生きることと一緒に死ぬことの

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    2020年08月12日
  • 肉体の悪魔

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    フランス文学は読みにくくわかりにくい、という偏見がありました。
    コクトーとか、ちょっと苦手で。
    でも、この本はすごく読みやすく、共感もでき、面白かった。
    若いな、と。
    向こう見ずで、刹那的で、疑い方も愛し方もまっすぐで。
    おなかに子供ができたと知って、男は逃げ出すのかと思った。
    そうでないところに真剣さを感じた。
    時をおいて、もう一度よみかえしてみたい。

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    2019年01月02日
  • 肉体の悪魔

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    ネタバレ

    話の展開はそんなにないものの、独特で美しい比喩表現があちこちにあって言葉選びに感心してしまった。
    第一次世界大戦中で、夫不在の家が多かったとはいえ、不倫に対して双方の家族の対応が甘すぎる気もしたけれど、当時このようなことはよくあったのか。
    早熟だけど未熟な15歳の心理表現がすごい巧みだった。

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    2018年04月01日
  • 肉体の悪魔

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    【本の内容】
    第一次大戦下のフランス。

    パリの学校に通う15歳の「僕」は、ある日、19歳の美しい人妻マルトと出会う。

    二人は年齢の差を超えて愛し合い、マルトの新居でともに過ごすようになる。

    やがてマルトの妊娠が判明したことから、二人の愛は破滅に向かって進んでいく…。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    作家が若いときでないと書けない物語があるように、読者もまた若いときでないと感じ得ない衝撃があると僕は思う。

    そういった意味で、『肉体の悪魔』は10代の頃に読んでいたらもっとぶっ飛んでいただろうなと悔やまれる一冊だ。

    これでもかというほど一人称で書かれていて、景色はあまり意味をなさない。

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    2014年10月03日