ラディゲのレビュー一覧

  • 肉体の悪魔
    主人公が人妻と道ならぬ恋に堕ちる、というあらすじそのものはありふれたものだけれど、この作品の背景には絶えず「戦争」という非日常が影を落としている。破滅の先を見てみたいという取り憑かれたような衝動、破壊を目にする時の高揚感、「子ども」というレッテルと自身の内側の感情とのギャップ。エロスとタナトスの甘美...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    人を愛することの喜びと哀れさ。2人の関係はどうなるのかとドキドキしながら読む。タイトルはこうだけど、性描写は一切なし。
  • 肉体の悪魔
    自分が心の中で取り留めなく思っていたことが、はっきりと文章として描写されていて、共感できる箇所が度々あった。感情描写が緻密な作品だと思う。文体が硬質なので大人びた印象の主人公だが、彼もマルトも精神が幼い(と言うか年相応?)のように思う。
  • 肉体の悪魔
    ■学び(見たもの・感じたもの/テーマ)
    (1)恋愛とは、各々のエゴイズムがぶつかり合うこと。ぶつかり合うことによるこの衝撃は何にも勝り、魅惑的な甘味をもって人間の心身を支配する。

    (2)フランス文学には、恋愛における人間心理を精細に分析する伝統(心理小説)がある。「精神の純潔」をテーマにしたもの、...続きを読む
  • ドルジェル伯の舞踏会
    三年半ほど前、高校生のときに古書店で古い文庫を買って
    積んだまま読まずに〈引っ越し処分〉していたことを思い出し、
    反省しつつ光文社古典新訳文庫を購入。
    早熟・夭折の天才と言われるレーモン・ラディゲの(短めの)長編小説。

    1920年2月、パリ。
    高等遊民の一種である二十歳の青年フランソワ・ド・セリユ...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    三年半ほど前、
    高校生のときに古書店で古い文庫を買って積んだまま
    読まずに〈引っ越し処分〉していたことを思い出し、
    反省しつつ光文社古典新訳文庫を購入。
    早熟・夭折の天才と言われる
    レーモン・ラディゲの(短めの)長編小説。

    作者の分身と思しい語り手〈僕〉の思い出。
    分けても15歳からの激動の日々に...続きを読む
  • 肉体の悪魔

    難しい

    難しいですね。
    若いうちに読んでたらなにか思うところもあったかもしれないけれど、
    今の私にはなんと言ったら良いのかわかりません。
    私の感受性の問題だろうか。
    ともかく一つ言えるのは、若いうちに読んだほうが良いと思います、そのときは理解できないとしても。
    初めて読むのが歳を取ってからだと、
    ...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    訳者中条省平さんの解説から引くと、筋書きは、

    早熟な少年が、人妻に恋をし、その夫が戦争に行っているのをいいことに肉体関係を続け、彼女の生活をめちゃめちゃにしてしまう、

    というもの。
    作者の実体験に基づいて、16〜18歳のときに執筆されている、というのが、まず驚き。
    ヒロインであるマルトの人格がよ...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    意図的に入りこまないで読んでしまったのは反省。態度の問題。

    心身がどうにもならない恋愛をしているとき、またその記憶が新しいときに読んだらすごいのだろうなと思った。そういう意味では時期も悪かった。この主人公の当事者感というのは当事者として感じれたらほんとうによかったのに。そういう意味ではサガンは読み...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    ラディゲと言われても良く知らない。コクトーと言われると「オルフェ」を思い出す。その程度の知識で読んでみた。
    物語自体は刹那的で破滅的なひたすら身勝手な若者の恋愛悲劇で、正直、だから何?的なものではある。だがしかし、一人称の語りが一貫して第三者的であり、なおかつ詩的で、この小説を単なる恋愛悲劇と呼ばせ...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    ★3.5。
    こんな若者が人間の内面、つまり行きつくところの自己中心主義をメロドラマに乗せて抉り出すとは。
    あくまで主人公の内面にのみ焦点を当てることで、読者にマルトはじめとした他の登場人物の内面を考えさせる構図もこの作品では成功しているのでは。
    マルトは当然ながら父親が凄く気になる、彼は息子を通して...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    P189「御者は三度のキスを見たと思っただろうが、最初のキスが続いていたのだ。」

    残酷な愛。
    この未熟な精神と行動を、冷酷に分析し直して書いている姿を思い浮かべると不気味な感じがする、、、それともあえて客観的なのかしら。


    さすが光文社文庫は翻訳がうまいと思う。
  • 肉体の悪魔
    二十歳で夭折した20世紀フランスの小説家レイモン・ラディゲ(1903-1923)による、自伝的要素を含んだ処女小説、1923年。

    本作品の舞台が戦時下であると語るところから、物語は始まる。

    「僕はさまざまな非難を受けることになるだろう。でも、どうすればいい? 戦争の始まる何か月か前に十二歳だ...続きを読む
  • 肉体の悪魔
    超クールな15歳の少年が19歳の人妻マルタと不倫愛に陥る話。
    少年が肉体に溺れることもなく覚めた目で観察してるのが怖いところです。妻を信じてるジャックが不憫。
  • 肉体の悪魔
    恐ろしい小説でした。

    あらすじは、15歳だか16歳だかの若造が、19歳の人妻に、
    旦那が第1次大戦に出征しているのをいいことに不倫する、といった内容。

    主人公の「僕」が1人称で淡々と語るという手法を採っているが、
    恐ろしいのはその起伏。大きそうでありながら、微動だにしないという印象。

    時にサデ...続きを読む