高遠弘美のレビュー一覧

  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~
    日常の何気ない所と、芸術についての考察。恋愛の流れのようなもの。それと過去の出来事。サロン文化とは、夕方から数時間メンバーを招いてお茶やお菓子、音楽などを楽しむ。それぞれ各自のうんちくや行動が長々しい文章で続く。その第一篇である。
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~
    マドレーヌを浸した紅茶の一口から、忘れていた少年時代の日々が色鮮やかによみがえる。あまりに有名なこの作品の醍醐味は、書き手の脳裏に次々浮かび上がる記憶の断片、全体として「コンブレーで過ごした私の少年時代」とでも題して時系列に出来事を並べることも可能かもしれないある時期の記憶を、あえて断片のままよみが...続きを読む
  • 失われた時を求めて 4~第二篇「花咲く乙女たちのかげにII」~
    「私」は、バルベックでアルベルチーヌと「花咲く乙女たち」に出会う。

    この物語を読んでいると、走馬灯のように人生の様々な出来事が思い出される。
    そして、読むほどに自分の姿が露わになってくる。
    もちろん、思い出すのは楽しい思い出ばかりではない、それどころか、むしろ「苦しきことのみ多かりき」なのだが、僕...続きを読む
  • 失われた時を求めて 2~第一篇「スワン家のほうへII」~
    スワンが高級娼婦のオデットにひたすら振り回されたあげく、通っていたサロンからも村八分にあうという悲惨な巻。
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~
    称賛の半分は訳業に対して。このくらい気取った日本語の方がプルーストに合っているし、何より光るのは解釈の適切さ。読みながらはっきり映像が浮かんでくる。そういう体験は今までの訳ではありえなかった。名訳。
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~
     「ときどき、せっかちな時鐘が前の鐘より二つ多く鳴ることがある。間の鐘をひとつ聞き逃したのか。現実にあった何かが私のなかで起こらなかった。深い眠りにも似た、魔術的な読書に対する関心が、幻覚にとらわれたかのような私の耳をはぐらかし、静寂に満ちた紺碧の空に刻まれた黄金の鐘の印を消し去ったのだ。」(213...続きを読む
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~
    光文社古典文庫の翻訳はどれも意欲的。すごいと思う。この本もそうだ。プルーストは何度も挑戦して1ページも読めなかったが、これなら読める。パリに居たときおじいさんやおばあさんが日向の公園のベンチでプルーストを読んでいる光景によく出くわした。長い話だけれど面白いからみんな読んでいるんだよね。日本のプルース...続きを読む
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~
    何度目かのプルースト。冒頭、夢と現実の境を彷徨いつつ子ども時代の記憶を思い出すシーンを読むといつも忘れていた大切な思い出が浮かび上がってくる気がします。

    この第1巻、一度最後まで読んでから再読するとよく分かるのですが、一見散漫でとりとめのないエピソードの羅列に思えるものが物語全体では重要な伏線にな...続きを読む
  • 物語 パリの歴史
     オーディブルだったけれど、パリという都市に焦点を当てた歴史なので興味深く聴くことができた。こういう本を読むと無性に行きたくなる。死ぬまでに一度はセーヌ川沿いを歩きたいと思いました。
  • 失われた時を求めて 4~第二篇「花咲く乙女たちのかげにII」~
    語り手は祖母と避暑地バルベックで過ごす中でヴィルパリジ夫人、サン・ルーそして花咲く乙女たちの一人アルベルチーヌと出会う。

    乙女たちに心惹かれる語り手がそりゃあもう思春期、青春真っただ中という感じでサン・ルーよりも乙女たちのそばにいたいという長々長々と言い訳めいた語りが続いたときには「男子ってやつは...続きを読む
  • 失われた時を求めて 5~第三篇「ゲルマントのほうI」~
    語り手のゲルマント公爵夫人に対する恋心と友人サン・ルー(ロベール・ド・サン=ルー侯爵)の恋が描かれている。

    ゲルマント公爵夫人との年齢差38歳というのは夫人から見た語り手というのはどんな存在だったんだろう??

    この巻は個人的にはサン・ルーや部下のやり取り、当時の男子の会話、当時の青春をを体感でき...続きを読む
  • 失われた時を求めて 6~第三篇「ゲルマントのほうII」~
    ドレフュス事件によって分断されてゆくヴィルパリジ夫人のサロンの様子と、死にゆく祖母の様子が描かれる。/

    祖母の最期を描くこの巻は、老いた母を抱える身には、この物語の胸突き八丁かも知れない。
    どうしてもプルーストが描く祖母の末期の様子が、母の姿と重なって見えてしまうのだ。
    こんなことは四年前に吉川一...続きを読む
  • 失われた時を求めて 3~第二篇「花咲く乙女たちのかげにI」~
    語り手の初恋、スワンの娘・ジルベルトとの恋についてあれこれと語り手が考えを巡らせるが、ジルベルト自身の印象は薄く、スワン一家、特に第一部のタイトル「スワン夫人のまわりで」が最初から最後まで通底している印象の第3巻。

    ジルベルトは語り手の中のこうあってほしいと思う理想のジルベルトが描かれ、スワン夫人...続きを読む
  • 失われた時を求めて 2~第一篇「スワン家のほうへII」~
    ~P475「スワンの恋」、P476~「土地の名・名」という475頁まで語り手の私ではなくスワン(と高級娼婦オデット)の恋が綴られている。

    スワンの恋情のすべてが綴られている、恋に落ち、夢中になり、嫉妬し、そして唐突に心が変わる。人の気持ちだけで475頁!普段読んでいる小説だと考えられないボリューム...続きを読む
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~
    私(語り手)の幼少期から物語が始まり、美しい風景描写、当時の貴族社会の人間模様、それらが語り手の世界のあちこちに漂っていてそれが順序関係なく語られていきます。

    形式に慣れるのに時間がかかりました(´∀`)文章一つ一つは長いものの訳文は読みやすいです。訳者さんが粉骨砕身されたことがうかがえます。

    ...続きを読む
  • 失われた時を求めて 2~第一篇「スワン家のほうへII」~
    小説の中の恋愛というと、ロマンティックでドラマティックで…という先入観にも似たイメージがあり、実際そうした小説も多い。フランス小説となればなおさら。けれど、この『失われた時を求めて』第二部「スワンの恋」で描写されるスワン氏の恋愛は、とことんリアルである。恋の始まり、思いが通じて盛り上がる蜜月期間、相...続きを読む
  • プルーストへの扉
    「失われた時を求めて」への案内本ということになるのかな。この本自体はとても分かりやすい。ちゃんと「プルーストの文章はなぜ分かりにくいのか」まで解説してる。
    でもテーマごとの解説で「失われた時を求めて」から引用される文章が、ホントに分かりにくいんだ。「コンブレー」を読んでた時の悪夢が蘇ってきたよ。
  • 物語 パリの歴史
    仏文学者が語るパリの歴史と普段着の街。歴史の部分より後半の部分の方が面白い。

    長い歴史のある街について語るとどうしても話は単調になる。ローマ時代から現代までを駆け足で巡る。

    第二部の筆者自身の経験によるパリの方が魅力的。
  • 物語 パリの歴史
    パリを訪れたのはもう15年以上前だけれど
    とても印象に残っている都市です。
    そのパリの歴史、フランスの歴史を今一度
    読んでみると、やはり現代史はまったく分からず…(^^;)
    勉強不足が露呈した読書でした。
  • 失われた時を求めて 3~第二篇「花咲く乙女たちのかげにI」~
    恋についてプルーストの触れ方は私にとって異質で興味深い。ジルベルト、アルベルチーヌの2人への思いが違ってみえる。恋をなくしても、悲愴ではない。プルーストの紡ぎだす連綿とした、章立てしてない文は読みにくくもあるが、「私」の語りは慣れてくると心地いい。 私も若いころ「乙女たち」とひとときを会話したり、散...続きを読む