イプセンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2022年4月17日(日)に読みはじめて、同日読み終える。文学カフェのため。戯曲なのでページ数の割に分量は少なく、私のように本を読むのが極端に遅い人間でも半日で読める。
70頁あたりから盛り上がってきて、適度な緊張感を保ちつつ最後まで読むことができた。最後の展開そのものはよいのだけど、それまでのノラの言動と最後の雄弁で知的なノラの言動とのあいだに想像力ではなかなか埋めがたい溝があって、リアリティを感じられずに興醒めした。
確かに、それまでのノラが人形として欲求や言動を抑圧され、自らも意識的・無意識的に抑制して生きてきたというのはあるだろう。『それでも夜は明ける』に登場するソロモン・ノ -
Posted by ブクログ
ネタバレ舞台part2を観に行くので、予習。
発表された当時の雰囲気はどのようだったのだろう。最後のシーンの絶望と胸がすく感じ、70年近く経ってもまだ共感できてしまうところが凄みであり、救いのなさも同時に感じる。
ノラの秘密に対して、その迂闊さや無知さに若干の苛立ちを覚えたけれど、誰も教えてくれず、教えないようにして、抑圧してきた時代は暗闇の中手探りするようで、完璧な立ち回りなんて出来るわけがない。そう思うと、ノラの勇気と知性──実は幸福ではなかったこと、既に愛していないことを認め、伝えることができる強さは清々しい。
イプセンの現実を切り出す明晰さが全てだ。解説では問題提起としては時流を過ぎ、既に -
Posted by ブクログ
夫ヘルメル=野間口徹・妻ノラ=深田恭子・悪役クロクスタ=北村一輝・友人リンデ夫人=尾野真千子・友人ランク医師=江本祐、こんな感じでキャラを置き換えて戯曲を読むとイメージ湧きやすいのではないかな。
砂糖より甘い世間知らずの妻との無意味ないちゃいちゃが続く第1幕、夫に知られてはならぬ秘密を暴露されたくなければ便宜を図れと悪役から妻が脅される第2幕、にもかかわらず夫がその秘密を知ったとたんに物腰柔らか態度が急変した夫の本性に接した直後に秘密の暴露がなされないことを知って安堵した夫が猫かわいがりに戻ろうとしても目が覚めた妻が断固拒絶して夫も子供も捨てる行動をとった第3幕、たった数ページで夫婦の性格が -
Posted by ブクログ
ネタバレずいぶん昔に読んでいたが、内容をすっかり忘れていた。
ノラは確かに可愛いのだけど、愛情の為にやった事なら罪ではないと考えるようなお目出度い人。しかしある事をきっかけに夫に対する不信感が芽生え家を出て行く事に。戦前の日本でもこの芝居を見た年配のご婦人は「しょうのない嫁」だと嘆いたんだとか。
ノラの気持ちもわからなくもないが、その時代に女が1人で生きて行くなんて並大抵の事じゃなかったはず。それまでまるで子どものママゴトのような日常を送ってきた人が果たしてやってっけるのかと余計な心配をしてしまう。
社会をまったく知らない箱入奥様のノラに対して自力で生きてきたリンネ夫人は逆に家に入るという選択を -
Posted by ブクログ
現代のトレンディドラマで扱ったとしても、全然違和感を感じないだろうテーマの新しさにびっくりした。自分の周りの友達からも、この物語の中で起こったことと非常によく似た話しを時々耳にしてきた気がする。
主人公ノーラと同じようなことを考えて唐突に目覚める女性は、現代にこそますます多くなっているだろうし、この「人形の家」という素晴らしい参考書(過去問題集)があるにも関わらず、その突然のアクシデントの勃発に面くらう男もやはり多くいるにちがいない。
「人形の家」という言葉の意味が最初わからなかったけれど、読み終わってみて、とても秀逸なタイトルだったことに気づいた。
時代や国を越えて、多くの人に共感を与え -
Posted by ブクログ
10年ぶり。同窓会で久々に逢う知人は、
それぞれ、様々な人生を送っています。
結婚/離婚、出産/死別。
良いことも悪いことも人それぞれです。
最近、
「離婚した」、もしくは
「離婚しそう」、といった人が、
何人か周りにいます。
どんな理由でそう至るのか、
当事者同士の中で、それぞれ言い分があるのでしょう。
イプセンは、結婚についてこう言っています。
●「結婚とは―諸君が諸君の全精神を注ぎ込まねばならぬことである」
この「人形の家」は、
女性の自覚と解放を取り上げています。
幸せな家庭も、円滑な夫婦仲も、
妻が自己を犠牲にすることで、
成り立っていること -
Posted by ブクログ
劇の台本のようなかたちで、セリフが書き連ねられ、場面も居間から動かず、淡々と進む物語。私は、女性がこのように男性の都合よく家庭に縛り付けられ、その支配の下で人形のような扱いをうける差別的社会の様子が、あまり実感として得られずに生きているが、それとは別に、この作品から、性の別に関らず自分の足で生きていくことの力強さと孤独とを感じ、またその中で精神が卑屈にも自由にも、また優しくも汚くもなりうることを感じた。また、こんなに互いに疑い合いながら生きて、信頼も裏切りへと簡単に覆ってしまうのでは、心が常に殺伐としているのだろうな、と思い、同時に私自身の生きている世界の狭さを感じた。