失敗の本質では組織のあり方、方向性について深く考えさせられたが、今作はそれを導くリーダーの在り方について極めて深く考えさせられた。
印象に残った箇所を抜粋しながら、感想を述べていく。
P159 戦場の指揮官
特に、現場をしらない新任指揮官は権威の葛藤に苦しみながら、舞台指揮の方法を学んで行った。
P
...続きを読む160 ガ島 38師団 中隊長 若林東一中尉の日記
「部下を持ちて」:「部下にさからひの気配ある時、弾丸の中にて部下行かざる時、かならず部下を叱るな、おのれの徳、おのれの勇、未だ足らざるを思へ」
P176から始まる「リーダー像の研究」では、圧倒的に秀でた能力を持ち、実際に数々の劇的な成果を挙げながらも、組織人としての能力の欠如、あるいは逆に現場からの信頼の欠如、はたまた組織の硬直性の壁といった様々な要因によって、最終的には勝利をもたらすことが出来なかったリーダーが多くいたことに気づかされた。
寡聞にして山口多聞司令官の能力については今回初めて知った所だが、そうしたリーダーをもってしても戦争の分水嶺となるミッドウェー海戦を勝利に導くことは出来なかった。
苦しい状況を打開し、最終的な勝利に導くことがリーダーの使命であるとしたら、その求められる能力は無限であり、半ば絶望的ですらある。
しかし、その事実に真正面から立ち向かい、己の全てを賭けて、部下を、会社を、国を守ることがリーダーには求められているのだろう。
壁は果てしなく高いが、そうしたリーダーに自分はなりたい。
P270 オリバー•E•ウィリアムソンの取引コスト理論
P276 イマヌエル•カントの人間の他律性と自律性の分析
そして、これらを用いた「派閥」や「空気」の分析は、組織や人間社会を理解する上で極めて示唆に富んでいた。
この本を読み、リーダーとなるには、学ぶべきことが無限にあると感じ、またそうした知識を溜め込めだけでなく、リーダー経験を積んで、「実践知」を身につけていかなかればならないと改めて感じさせられた。