斉木香津のレビュー一覧
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派遣の仕事で行った倉庫で知り合った蒼太と桃里は会ったその日から一緒に暮らしている。蒼太目線の「Blue」の章と桃里目線の「Pink」の章が交互に綴られる物語は、二人の一見平穏な日常を描きながら、どこかざらついた印象がぬぐいきれない。
蒼太が幼い頃から母から受けた仕打ちが徐々に明らかになるとき、それが無差別殺傷事件を起こした犯人の境遇と重ね合わさり、何かが起こりそうな不穏さに読むのをやめられない。
当初は、穏やかで気配りのできる優男の印象だった蒼太が、章が進むごとに違う一面を見せるその過程が同じ斉木さんの作品である「凍花」を彷彿とさせる。
どこか狂気じみた母親からの虐待ともいえる仕打ち、父親の -
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ネタバレ恵まれた容姿をもって生まれ、すべてにおいて完璧と思われる百合の、息苦しいまでの胸の内を書き綴った日記の部分を読むのは辛かった。
人の心のうちは誰にも推し量れないのに、勝手に虚像を描いてそれと違う部分を見せられると裏切られたと怒る。人って勝手だよね。自意識が肥大し、他人に映る自分の虚像にがんじがらめになって苦しむ百合が切ない。
重苦しい作品だったけど、エピローグの柚香から百合への手紙に救われた。
「私たちは傷ひとつないツルツルのきれいなままで一生を過ごしたいと思っているけど、実際にはいろんなところが欠けたり、傷がついたりして・・・それでも、生きつづけるんだよね。生きるってことそのものが、そうい -
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まだ100年にも満たない昔、日本は戦争をしていた。
普通に暮らしている場所が戦場になって、飛行機がたくさんの焼夷弾を落としたり機銃照射で多くの人が殺されていった。
非戦闘員が住んでいるとわかっている場所を、何のためらいもなく「戦争だから」という理由だけで攻撃できる。
それこそが戦争の悲劇なのかもしれない。
戦時下であるにも関わらず悠々自適の生活を送る貴子。
みんなが食べるものにも困っているときに、働くわけでもなく、ただ食べて絵を描くだけの生活。
雑草を摘み、ひよこを育て、真砂代が祖父との生活のために苦労しているときも、貴子がいる家だけは別世界だった。
掃除を引き受ける代償が貴子からのお礼の言葉 -
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「最強の三姉妹」のつもりだったのに、長女・百合はなぜ次女・梨花を殺してしまったのか?
三女・柚香はその謎を追い、百合を理解するために、百合の本当の姿を探し始める。
「お姉さんてどんな人?」
父親でもいい、母親でもかまわない。
身近にいる家族の誰かについて聞かれたとき、どんなふうに答えるだろうか。
父親としての顔しか知らない自分にきっと気づくに違いない。
会社で働く社会人としての顔、親しい友人たちと過ごす中年のおじさんとしての顔、対外的に示す家長としての顔。
どれも慣れ親しんでいる父親としての顔とは違っていることだろう。
いつでも自分を守ってくれる存在。
自慢の姉であり、ずっと一緒に暮らしてきた -
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40歳を迎えた年に久保健一は高校3年生の時の約束を思い出し、同窓会の幹事をすることに。
同窓会の返信には、参加となっているのに開始時間になっても会場の居酒屋に現れない同級生たち。
彼ら彼女らを待ちつつ、返信はがきを見てどんな人だっけ?と思ったり、あいつなら、と思ったりしつつ時間が過ぎていく。
一方で参加の返信をしたものの、【ある事情】があって会場に行けなくなっている同級生、恩師のまさに今!が同時進行で書かれています。
高校生から23年。40年たった今、同級は一人も参加できないのか?それとも旧交を温めることができるのか。
それぞれの人生、いろいろが書かれています。
はじめて読んだ作家さん -
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ネタバレおもしろかった~
なんかちょっと泣けてしまった
仲の良い美人三姉妹(みんな成人)
やさしくておしとやかな長女が
はなやかで元気な次女を殺してしまう
三女は長女の力になろうと、もっと姉のことをよく知ろうとして日記を発見し
そこに書かれていた暴言悪口の数々(ちょうこわい)に驚愕し距離を置こうとするけれど
よーーく読めばあらふしぎ
そこに書かれていたのは・・うんぬん
ホラーであり、戦慄の日記と
姉の苦悩と孤独と
起きてしまった悲劇
みたいな
おもしろかったー
ひとが何を考えてるかとか自分をどう思ってるかとか
わからないといいつつ
わかってると思いがちだけど(きょうだいや家族なんかとくに)
そ -
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ネタバレ最初、タイトルの意味を踏んでも→いい女(踏まれても尚)と勘違いしました。。。
踏まれてもいいと思われている、みじめな女、という意味でしたが、主役はどちらかというと「貴子」という風変わりな美人に重点が置かれているような気がしました。
時代背景が現代でなく、戦時中がメインで、とろいと言われていた真砂代が貴子と出会って意識に変化が。絵ばかりかいて人に家事をさせて、贅沢ばかりが目につき、自分勝手に見えて高飛車な貴子に反感を持ちつつも最後は好きになっている。
現代を生きる私からすると、真砂代のほうが最初からあまり好感を持てない気がした。
対照的な二人を描いているので、どうなっていくのか先は気になりながら