沖縄を愛するがゆえに沖縄の現状を憂え厳しく批判する。沖縄出身の恵氏であればこそできることだ。沖縄問題の本質に鋭く迫る良書であり、故郷沖縄と祖国日本への熱い思いが伝わってくる。
本土の人間には多かれ少なかれ沖縄に「負い目」があり、沖縄の人間には被害者意識がある。沖縄の置かれた境遇の背景には極東の戦略
...続きを読む的要衝という地政学的な現実があるが、それだけでは沖縄への基地の集中を説明することは困難だ。沖縄以外に基地という「迷惑施設」を受け入れる地域がないというのが政治的現実なのである。だから本土は腫れものにさわるように沖縄を扱い、最終的には金で解決しようとする。沖縄はそれに依存し、甘え、しまいにはタカるという悪循環だ。ここに左翼と外国勢力が付け入るスキが生まれる。恵氏の危機感もこの点にある。
琉球独立という絵空事をちらつかせて日本政府と中国を天秤にかけ、有利な条件を引き出そうなどと沖縄が本気で考えているとすれば常軌を逸している。喉から手が出るほど沖縄を欲しがる中国がそれを支援するのは当然ではないか。しかし沖縄の一部の、とは言え決して無視できない勢力のこの非常識は、国防の主軸を他国の軍隊と一県に丸投げし、自らの責務を直視しようとしない日本国民全体の非常識を写す鏡でもあるだろう。恵氏の沖縄批判は的確だが、それを本土の人間が痛快に思うとすれば筋違いも甚だしい。
恵氏の叔母君は「ひめゆり学徒隊」に志願して亡くなったそうだが、沖縄戦で日本軍と共に自決することを決意していた女学生にある青年将校が言ったという。「貴方達は沖縄の復興のために生き延びて下さい。だから壕を出て投降しなさい。」女学生が拒むと将校は抜刀して「出ないなら斬る!」と叱責した。女学生は米兵に救助され将校はそこで自決した。大田実中将が自決の直前に沖縄県民の敢闘を讃えて打電した「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」はあまりに有名だが、こういう光景は沖縄戦の至る所にあったはずだ。大田中将はじめ命を落とした軍人の大半は本土出身者である。軍人も民間人もそれぞれの持場で同胞のために全力で戦ったのだ。それは日本の誇りであり同時に沖縄の誇りである。このことはどんな左翼のプロパガンダも簡単に消し去ることはできない。その記憶の上に沖縄と本土の正しい関係が築かれんことを願う。