田中裕のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「死のうとしても死にきれない。死にたいのに。違う、俺はむしろ生きたいんだ。自分という(癩病を患った)人間がここに存在していた という証を残したいのだ」
そんな訴えが聞こえてくるようだった。
これは北條民雄の魂の叫びだ。
癩病を発症し、面識のない人間にまで差別、偏見の目に晒された上、隔離病院へ押し込まれる。
そんな過酷な状況の中、声を上げることを止めなかった彼はカッコイイ。
人間らしさが詰まった声は文字になり、 それらはやがて文学となった。
癩病がなんだ。俺は患者である前に一人の人間だ。俺を見てくれ。みんなと同じ人間なんだよ。
彼は自身の作品を癩病患者としての色眼鏡で評価されることを最も嫌っ -
Posted by ブクログ
この先死にたくなって3分間本を手に取る余裕があったなら、この本の「断想」か「柊の垣のうちから 表情」の一節を読むと思う。
「美しい、まだ十五六の少女が現はれる。この少女を直ちに殺すことも、また限りない愛情をもつて抱きしめることも、可能となる。しかも凡ては美しく、なつかしい。」
「歪んだ表情。
生硬な表情。
苦しげな表情
浅ましい表情。
餓えた猿が結飯に飛びつくような表情。
これが宗教に頼ろうとする時の自分の表情である。苦しくなった。 書いてはならぬことを書いてしまったような気がする。」
読むと死にたくなるし、生きたくもなる。どこか俯瞰している。真ん中から両極を見ることのできる気がするこの -
Posted by ブクログ
西田幾多郎といえば、岩波文庫の『哲学論集』全3巻がとても気に入っていて、夜寝る前にときおり再読していると、あの独特の言い回し、「〜でなければならない。〜でなければならない。」といった畳みかけるような呪術めいた文体が催眠効果を持ち、よく眠れるような気のする魔法の本だ。
その西田哲学の、本書は講演を集めたもの。あのような特異な文章を書いた人が、話し言葉ではどのような平易な語り口になったのか、と興味を持って読み始めた。が、愕然とした。なんと、この話し言葉も書き言葉も、まったく同じなのである。
講演を聴いた人が筆記したようなことが解説に書いてあるので、後日いくらか修正されたにしても、どうやら本当 -
Posted by ブクログ
「マンガ ダーウィン進化論入門」
著者 画・瀬口のりお 作・田中裕 監修・渡辺正雄
出版 講談社+α文庫
p87より引用
“あくまで事実を追及しよう、たとえ何年かかろうと・・・。”
進化論を作り上げたダーウィンの人生を、
フィクションをまじえてマンガにした一冊。
以前紹介したニュートンのものと同様、
年譜がついています。
上記の引用は、
「種の起源」の最初の覚え書きが書かれたころの、
ダーウィンの考えとして書かれた一文。
事実から理論を作る方法を大切にしたダーウィンなら、
本当に言いそうな一言だと思います。
参考資料も巻末のほうに紹介されているので、
タイトル通り入門にぴったりだと思わ