落合淳思のレビュー一覧
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今から3000年以上昔に実在した「殷」王朝。その実態は、当時の文字資料が少なく、また後世の創作的な歴史書のために分かりづらくなっていました。それを数少ない文字資料である甲骨占卜の古代資料から、出来るだけ公平に導き出されています。読んでいて分かるのですが、その論理の導き方、整理の仕方などは、非常に地道で粘り強い根気の必要なものだと思います。その根気を読んで追いかけることで、「殷」という王朝の真実に対して大分迫ることができました。
古代は、確かに現代とは違った文化がありますが、その現実的な部分は今に通じるものであり、古代人の思考なども理解できますし、現代でも似たような事象があることは、著者も最後に -
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序章は漢字の歴史、第一章は部首の歴史。
自分の勉強のために、少しその内容をまとめてみる。
殷代の甲骨文字から説き起こされる。
その後成立した周王朝は殷の字を継承する。
そのころの字は青銅器に刻まれた銘文である金文から知ることができる。
加工が大変な青銅器に刻むから形が簡略化するかというとそうではなく、むしろ複雑化する傾向があるというのは面白い。
高価な素材だからだろうか?
周では象形性が薄まり、既存の字の組み合わせの方法が用いられ、理論化が進む。
春秋戦国時代になると、官僚制が発達し、法律の整備も進む。
字を日常的に読み書きする層が厚くなったため、象形性はさらに薄れ、字形の簡略化が進む。
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ネタバレ 購入済み
説得力に欠ける点も
史記に書かれてる逸話を次々否定していく
管仲は鮑叔は実在を示す発掘資料はないという指摘は新鮮だった
一方説得力もない記述も
始皇帝が不老不死を求めて水銀を飲んだと言う話も否定してたが
始皇帝が信望する法家では不老不死を認めないからと言う論法だったが
一生物の本能として死にたくないと思うのも不思議ではない気もする
事実不老不死の薬を探せと言われたけどそんなのないと困惑している役人のメモ書き見たいな文献も発掘されてるし
始皇帝陵からも調査で周辺の土は水銀濃度が高いことも確認されている(これは別に水銀飲んだ証拠にはならないが)
史記に書いてるから、歴史書に書いてるから本当だと言う根拠はないと言い -
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最新の甲骨文字資料による研究の成果をふんだんに盛り込み、中国最古の王朝とされる殷王朝について、王の系譜、支配体制、祭祀、軍事、歴史的位置などの全体像を描いている。ただ、著者は、『史記』等による文献史学には批判的なスタンスを貫いており、「酒池肉林」のような説話は後世の創作に過ぎないと切り捨て、あまり文献史学の成果は取り入れていない。
本書を読んで、甲骨文字資料であっても、現在の漢字、漢文と基本的に変わらずに読解できることに、まず驚いた。また、龍や十干など、現代にまで続く中国文化の原形が殷王朝の頃に少なからず存在していたことにも感慨を持った。
当時は占いや祭祀による政治が行われていたが、当時の占い -
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面白かった、けど論理が飛躍してるように思えてならなかった…著者は他にも色々な資料を手元に置いて分析してるんだろうけど、もうちょっとページ増やして説明して欲しいという所が結構あった。
・歴史は勝者が作る。都合のいいように作る。
・「三国志」は歴史的価値があるけど、「三国志演義」は小説なので歴史資料としてはそんなに信憑性がない。面白さ重視。
・イメージアップのために、豪族とのコネで出世した人も、貧乏という設定にされている場合があった。
・始皇帝以前にほぼ秦の中国統一は確立されていた。
・「孫子」という書物が先にあって、孫子という人物が作られた可能性が高い。
・「酒池肉林」などの言葉を生んだ、中国古 -
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[ 内容 ]
甲骨文字を読める人が少ないのは、甲骨文字に対する印象以外にも原因がある。
それは、日本語で書かれた入門書が存在しないことである。
甲骨文字を文字の単位で解説した書籍はそれなりにあるものの、文法にまで筆をのばして実際に文章を読めるように解説したものは見当たらない。
そのためだろうか、中国史や中国文学を専攻する大学生が甲骨文字の研究を始めても、早々に挫折するケースが目立つ。
著者は甲骨文字の研究に携わる者として、こうした現状を前々から不満に思っていた。
それが動機となって執筆したのが本書である。
そういうわけで、本書は、一般読者にむけた甲骨文字の解説書であると同時に、本邦初の甲骨文字