長谷川寿一のレビュー一覧
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ジャレドダイヤモンドの一般向けのデビュー作の本らしい。先に「銃・病原菌・鉄」と「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」を読んでいたのでデ・ジャブ感満載であったが、これらの本が本作の各章を切り出し一つのテーマに焦点を当てて書いた本であるので当たり前ではある。本作は、あくまで人間というもの全体にフォーカスを当てて、なぜ人間がチンパンジーと98%くらいの遺伝子を共有しているにも関わらずこのように特別な存在となっているのかを洞察している。博士の結論としては人間はある意味で特殊ではあるが、人間の特徴である言語、性生活、同種殺し(戦争)、薬物中毒、芸術などをテーマに実はこれらの特徴も類人猿はもとより他の生物にもみられるということを考察している。ただし、人間ほどにそれらの特徴を進化させたものは存在しないのでその意味ではやはり人間は特別ということ。最近のユヴァルノアハラリの人間考察の基底となるような本。こんな思想が30年も前に存在していたとは教学である。
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久々のジャレド・ダイアモンド。第三のチンパンジー「完全版」もう30年も経つとは… その後の研究成果で博士の予想が外れてたりもしてるが、今読んでも興味深いテーマ。他の動物と比べたヒトの特異点を探っていき、「大躍進」の秘密を探ろうという内容。700万年前に類人猿と分岐して以来、解剖学的に現代人と同じ人類は10万年前に現れているが、「大躍進」はたかだか1〜2万年前で、何がそのきっかけになっているのか。言語が最も重要で、それによって文化や芸術も発展してきたと予想。どの本でもそうだが、博士の博識ぶりに感嘆させられる。ユヴァル・ノア・ハラリがサピエンスを書くときに相談を持ちかけたのももっともだと思わせる。
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ヒトと動物の違いは何か、について人類学的な様々な角度から考察。実はホモサピエンスは類人猿類で最後に分岐されたわけではないこと、高度な技能を音声機能の進化により伝達できたことがはじまりであること、口伝だった時代に大事だった年寄り、高度な技術の蓄積が子どもの長い未熟期間につながり、オスもメスと協力して長い子育てをするようになることで、乱婚ではなくなること、などなど、仮説ではあるが壮大なつながり、構造の基、文化や社会が形成されているという、構造主義にもつながる考察が多くて興味深い。自らの遺伝子をいかに残すか、の共通したルールフレームから解釈できる体系を切り開いたダーウィンは本当に歴史を変えた転換点を作ったんだ、と改めて感嘆。
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非常に面白かった。
上巻は正行為に関わる論点が多く筆者の嗜好性が出てたり、古さを感じさせたり、冗長な印象だったが、下巻は面白い。
人類史みたいな部分が筆者の強みだと思う。
ヨーロッパの起源がステップ地域の遊牧民族にある話、ポリネシア人、ネイティブアメリカンのジェノサイドの話など。
非常に面白いし古さを感じない。
また巻末にある、人間の自然破壊に対する一般的な意見への反論が示唆深い。
人間による環境破壊は、長期目線で見たときに、隕石衝突などと比べて大したことはなく、地球温暖化も過去に何回もあったため、大したことない、と言う論に対する反論として、自然消滅のスピードが過去と比べて明らかに早いこと、隕石衝突で哺乳類は死ななかったことで反論している点。
また、人間の生活に貢献しない生物はいらないと言う論へは、複雑なエコシステムをとっている自然環境において、貢献しない種だけを選り分けることが構造的に不可能だと言っている点。
上記の論についてファクトを並べて説明するのではなく、一定ロジックベースで展開する点も非常に読みやすい。
ファクトはたくさん持っているのだろうがそこの開示だけにこだわらず、さまざまな領域の知見フル動員しながら(筆者は非常に幅広い分野に深い造詣がある)、論を組み立てており、知的好奇心が刺激され異常に面白い。
筆者の強みである人類史について書かれた「銃病原菌鉄」は必読だと思ったのでこれから読む。 -
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進化や人間の脳についてはとても勉強になった。
なので良著として色んな人に勧めたいのだが、文化や社会について書かれた章があまりにも雑なので誰にも勧められない。
かなり気をつけないと誤情報を元に女性差別を肯定し始めると思う。
脳の働きなど科学的な研究に基づいていることについては、記述も「そういうことが示唆される」「そういう説がある」ときちんと科学的に正しい説明になっているのだが、社会構造や性差に関しては統計的根拠を持ち得ないはずなのに突如として言い切りが入る。
例えば女性が優位の種「は比較的少数しか存在しない」と言うが、哺乳類6000種のうちどれほどについて子育てや群れの構造が判明しているのか?
社会構造については比較の対象が非常に変わっていて、大体先進国(欧米)と狩猟民族(のうち著名なもの)の例を持って「どこでも同じ」とまとめたりする。
文化や社会の章に関しては筆者の意見と科学的コンセンサスが書き分けられていないので、極めて注意する必要があると思う。
これらについて知りたければもっとデータを繊細に扱っている本を探した方がいい。 -
Posted by ブクログ
今の世の中の芸術ってなんのためにあるのだろう。と思った事がある。
絵画を見るにも技術が必要で、その技術は先天的に備わるものでは無く、身につけるもの。特に現代美術などその背景や歴史を知らなければ価値がわからない、という主張を読んでから、芸術の存在意義について不思議に思った。
では何故美術というのが何のために生まれたのか。その不思議に対して生物学的な視点から解していった本。
現在の芸術とは、芸術そのものの為の芸術であるが、そもそもの起源は自らの適応度を高める可能性に直結していた行動だった、という事がわかったような分からなかったような。
色々実証検証が難しい分野だと思うけど、我思う故に我あり、を超える普遍性を見つける問だと思う。これからもモニターしたい。 -
Posted by ブクログ
人類の進化と文明について本書で取り上げられた項目はその後、ヒトの性行動については『セックスはなぜ楽しいか』で、文明の勃興、崩壊については『銃・病原菌・鉄』や『文明崩壊』で詳細に論じられることになるが、本書は正にダイアモンド博士の原点とも言うべき一冊である。
本書の主題は次のように示されている。
ヒトという種が、短い間に
単なる大型哺乳類の一種から世界の覇者へと
どのようにして変化し、
また、その進歩を一夜にして
ふいにするような能力を
どのようにして身につけることになったか
上巻では、ヒトという動物と類人猿との系統関係や進化のありようについて、またヒトの性行動とライフサイクルの変化について取り上げられる。