工藤隆雄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
熊を獲りすぎない、キノコを根こそぎ採ってしまわない、そうやって人間と山のバランスをとりながら生きる。のみならず、そうすることが山をメンテナンスすることにもなる、人を入れないようにしてしまうと逆に山が廃れる、という最後の章で語られていたことは印象的。
人間が自然の中で調整役を果たすということがあり得るのだろうか。いわば山と人間がお互いに頼りあう共存関係。ちょっと信じがたいが、マタギの歴史が先年も続く中でそのような特殊な関係が出来上がったのかも知れない。だとすればそれは人類の目指す先にもなり得る凄いことになのに、マタギ文化が消え行くのは残念。 -
Posted by ブクログ
いやはや、面白くって買ったその日に一気読み!
すっかりブームになった「山の怪談」を含め、人智を越える畏怖、自然の不思議、人間の不可思議さ、「山」にまつわるあれやこれをまとめたお得な一冊。
怪談はきちんと怖いし、天狗か神かそれとも?な不可思議な話は味わいがあるし、自然の神秘を味わう話もあり、人間にまつわる話はあまりに胸糞なものからほのぼの暖かいものまで、ついにはUFOまで飛び出す!とバリエーションが豊かで、次!次の話!と読み進めてしまった。
「山の怪談」が実話怪談の一ジャンルとして確立して、山=異界というイメージも某公共放送がそれを冠した番組を作ってしまうくらいメジャー?なものになったけれど、
まだまだ「異界」の一端を見たに過ぎない、と山登りもしない平地にいきる人間は思った次第。
そしてそんな平地人にとっては、何年も山小屋を経営し、人の死にも毎シーズンたちあうことになる山小屋の小屋番さんというのもまた不思議な存在に映った。 -
Posted by ブクログ
書名に"奇談"と入ってはいるが、山を舞台とするミステリーやいわゆる怪談の要素はほぼなく、主に白神山地のマタギの社会や風習にまつわるエピソード等が収められている。
著者が取材し、聞き及んだ内容を文章化したものなので、例えば久保俊治氏の、当事者たる猟師自身が体験し、感じ、考えてきた事柄がダイナミックに綴られた著作とはある意味で対極を為すルポルタージュだが、一歩引いた客観的な立ち位置から語られるからこそ、都市部に暮らす私たちの胸中にすんなり入ってくるという部分もあって、特に山津波に関する項は、却って静かな圧が増したような…。
ラストに置かれた小話、"老マタギと犬"は、まさしく本書の掉尾を飾るにふさわしい、普遍性を備えた名文である。
「国は、自然を守るというのは、誰も入れないことと思っている。そうなると、荒廃するだけでなく、動物が増えてたいへんなことになります。山のことを知っているマタギが調整してやらないとだめになります。それを知らないのですよ、机の上で考えているから見当違いなことばかりやっている。我々地元のマタギに話を聞こうともしない。白神が荒廃しないで今もあるのは、昔からマタギが守ってきたからなんです。それをわかっていない、というか、わかろうとしない」
1993年、白神山地は世界遺産に認定され、その11年後の2004年には全域が鳥獣保護区の指定を受けて、当地におけるマタギの文化は潰えたという。