工藤隆雄のレビュー一覧
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工藤隆雄『定本 山小屋の主人の炉端話』ヤマケイ文庫。
著者が山小屋の主人や山を訪れた人びとから丹念に集めた34編を収録。ホラー色は少なく、山での人間模様を描いた短編が多い。
第1章は『ネバー・ギブ・アップ』。様々な困難や不遇に直面しても、決して諦めない山の人びとを描く。なんと言っても『ネバー・ギブ・アップ』が良かった。人は人生の中で何度も挫折し、再び立ち上がる。諦めたらお仕舞い。この話に描かれた若い男女の不屈の精神は関わる人びとをも良い方向に導いてくれる。『ネバー・ギブ・アップ』と対極にある話が『車いすで木道を』。自分の地元、福島県の吾妻山の山小屋を舞台にした物語。今や山でさえバリアフリー -
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工藤隆雄『定本 山のミステリー 異界としての山』ヤマケイ文庫。
今月のヤマケイ文庫は、山の不思議を集めた作品が3冊も同時刊行。
著者が長年に亘り山小屋の主人や登山者たちから聞いて、集めた山の怪異56編を収録。2016年刊行の『新編 山のミステリー 異界としての山』を定本として文庫化。解説は田中康弘。山での霊体験や自然にまつわる不可思議などが紹介される。先に読んだ『マタギ奇談』と並び、面白い。
山では何故幽霊の目撃談や霊体験が多いのだろうか……まさか死ぬことを前提に山に登る人は居ないだろう。従い、幽霊となり、山をさ迷う人びとは全くの不慮の事故により図らずも命を落とし、自分が死んだことにさえ -
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工藤隆雄『マタギ奇談』ヤマケイ文庫。
今月のヤマケイ文庫は、山の不思議を集めた作品が3冊も同時刊行というから何とも贅沢で嬉しい限り。ちなみに先月のヤマケイ文庫は矢口高雄と手塚治虫の漫画を3冊刊行している。
本作は、2016年に刊行された同名傑作の文庫化である。マタギたちが経験した山の不思議な体験を著者が長年に亘り取材し、まとめ上げた奇談29編が収録されている。
非常に面白い。自然と一心同体で生きるマタギにこそ、日本人本来の姿があるのだろう。物質文化に汚され、自然を蔑ろにする現代日本人の暮らしと、自然を畏怖し、自然の中に生きるための知恵と技術を研鑽し続けるマタギの暮らしとを対比するのも面白 -
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熊を獲りすぎない、キノコを根こそぎ採ってしまわない、そうやって人間と山のバランスをとりながら生きる。のみならず、そうすることが山をメンテナンスすることにもなる、人を入れないようにしてしまうと逆に山が廃れる、という最後の章で語られていたことは印象的。
人間が自然の中で調整役を果たすということがあり得るのだろうか。いわば山と人間がお互いに頼りあう共存関係。ちょっと信じがたいが、マタギの歴史が先年も続く中でそのような特殊な関係が出来上がったのかも知れない。だとすればそれは人類の目指す先にもなり得る凄いことになのに、マタギ文化が消え行くのは残念。 -
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いやはや、面白くって買ったその日に一気読み!
すっかりブームになった「山の怪談」を含め、人智を越える畏怖、自然の不思議、人間の不可思議さ、「山」にまつわるあれやこれをまとめたお得な一冊。
怪談はきちんと怖いし、天狗か神かそれとも?な不可思議な話は味わいがあるし、自然の神秘を味わう話もあり、人間にまつわる話はあまりに胸糞なものからほのぼの暖かいものまで、ついにはUFOまで飛び出す!とバリエーションが豊かで、次!次の話!と読み進めてしまった。
「山の怪談」が実話怪談の一ジャンルとして確立して、山=異界というイメージも某公共放送がそれを冠した番組を作ってしまうくらいメジャー?なものになったけれど、
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書名に"奇談"と入ってはいるが、山を舞台とするミステリーやいわゆる怪談の要素はほぼなく、主に白神山地のマタギの社会や風習にまつわるエピソード等が収められている。
著者が取材し、聞き及んだ内容を文章化したものなので、例えば久保俊治氏の、当事者たる猟師自身が体験し、感じ、考えてきた事柄がダイナミックに綴られた著作とはある意味で対極を為すルポルタージュだが、一歩引いた客観的な立ち位置から語られるからこそ、都市部に暮らす私たちの胸中にすんなり入ってくるという部分もあって、特に山津波に関する項は、却って静かな圧が増したような…。
ラストに置かれた小話、"老マタギと犬&qu