あらすじ
マタギたちが経験した山での不思議な経験を、長年にわたって取材、書き下ろした実話譚。
第一章 歴史のはざまで
マタギが八甲田で見た人影はなんだったのか/菅江真澄と暗門の滝の謎/尾太鉱山跡で見つかった白骨/雪男を求めてヒマラヤに行ったマタギ
第二章 マタギ伝説
山の神様はオコゼと男根がお好き?/老犬神社由来/サゲフリ/神様になったマタギの常徳/兼吉穴/「鬼は内ー、鬼は内ー」
第三章 賢いクマ
演技をして逃げたクマ/クマに騙されたマタギ/トメ足をしたクマ/スイカ泥棒/真剣白「歯」取り/復讐するクマ/クマを育てる/クマは如何に岩壁の穴に入ったか
第四章 山の神の祟り
四つグマの祟り/大然集落を襲った山津波は山の神の祟りか/忌み数/クマ隠し/セキド石
第五章 不思議な自然
大鳥池の巨大怪魚/マサカリ立て/山が教えてくれた
第六章 人間の不思議な話
濡れ衣/呼ばれる/老マタギと犬
※『新編 山のミステリー』(山と溪谷社)の著者が紡ぐ、『山怪』(田中康弘・山と溪谷社)にも通じる山の民の体験録。お楽しみください!
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Posted by ブクログ
熊を獲りすぎない、キノコを根こそぎ採ってしまわない、そうやって人間と山のバランスをとりながら生きる。のみならず、そうすることが山をメンテナンスすることにもなる、人を入れないようにしてしまうと逆に山が廃れる、という最後の章で語られていたことは印象的。
人間が自然の中で調整役を果たすということがあり得るのだろうか。いわば山と人間がお互いに頼りあう共存関係。ちょっと信じがたいが、マタギの歴史が先年も続く中でそのような特殊な関係が出来上がったのかも知れない。だとすればそれは人類の目指す先にもなり得る凄いことになのに、マタギ文化が消え行くのは残念。
Posted by ブクログ
マタギの山での考え方や言い伝えと、それらが生まれた謂われが紹介されている。 本の終わりで、白神山地の老マタギが、同地が世界遺産に指定されることへの不安を語っている。 国は誰も人を入れないことで自然を守れると考えているが、それでは動物が増え山が荒廃してしまうため、マタギの調整が必要である。それを知らず知ろうともせず、机の上で考えているから見当違いなことをするのだ、と。 マタギは山の調整役なのだ。 老マタギの話を聞き、マタギの営為を行政に結びつける調整役こそが、今求められるだろうと感じた。
Posted by ブクログ
マタギはあまり地元では話を聞いたことがなくて、面白かった。白神山地の情景が浮かぶ。里山イニシアチブとか、SDGsなんて言葉のもっとずっと前から続く文化の話は、奥行きがあって良かった。
Posted by ブクログ
マタギ達と山の神さまについて書かれた内容で、あっという間に読み終えた。東北地方、特に馴染みのある白神山地や暗門の滝、鯵ヶ沢町といった地名も出てきて、以前訪れたときのことを思い出した。山や自然に対する感謝の気持ち、畏敬をあらためて感じた。
Posted by ブクログ
やや散漫だけど面白く読んだ。
マタギの知り合いはいないけど、
やっぱり山を畏怖する気持ちは強いから
お手軽なアウトドアや山登りには
未だに違和感。
神様は確かにいるだろうな〜と思うし、
それを信じて真摯に生きる人が
長く続いてほしいんだけども。
Posted by ブクログ
秋田や青森の猟師をマタギと言うのかな、日本に古くから伝わる伝統が絶えてしまったのは悲しい。それに自然を守ろうとしてやってることがかえって破壊に繋がるというか、白神山地はまさに人間と共存してたんだ。最初のホラーチックな話やクマの話とかも面白い。
Posted by ブクログ
著者が『マタギに学ぶ登山技術』を書き終えたのち、マタギたちから取材の合間に聞いた様々な奇妙な話をまとめたもの。
主に白神山地や、青森・秋田・山田がなど東北地方のマタギたちから聞いた話。
八甲田山雪中行軍遭難事件の、隠された真実。ネタバレでいうと、弘前第三十一連隊の福島大尉率いる弘前隊は、その土地その土地の道に精通した案内人に誘導され八甲田山麓に到着し、八甲田山麓でマタギをしていた数人の若者に案内をさせて雪中行軍をしたというもの。出発後に天候が悪くなりマタギは中止を進言するが拒否されさらに進むことを命令される。早朝から深夜11時すぎまで歩き続け、やっと休めると思いきや、マタギたちには休みをあたえず、先の小屋の主人を連れてこいと命令する。しかも弁当と仲間二人を置いていけ。これは逃亡を防ぐための人質。弘前隊は青森隊が遭難しているとは知らず、歩き続け、青森市側の入り口である集落が遠くに見えたとたん、マタギたちをお払い箱にした。ここで見たことは他言するべからず。破ったら軍隊の牢獄に入れる。
命をかけて兵士たちを案内してきたのに、山中で見捨てるのだ。
あとは、クマを獲ったことにより起きる祟り話、山の髪の話、マタギの風習や伝説など。
切なかったのは時代の流れとでも言おうか、白神山地は世界遺産に登録される。あるマタギが予言した。
「昔はよかった。今では無駄な道路が出来たりしてろくなことはない。白神がズタズタにされました。さらに数年たったら世界遺産にでも指定され、いろいろと制約が出て来てマタギが出来なくなる日がくるかもしれません。
『国は、自然を守るというのは、誰も入れないことと思っている。そうなると荒廃するだけでなく、動物が増えてたいへんなことになります。山のことを知っているマタギが調整してやらないとダメになります。それを知らないのですよ、机の上で考えているから検討違いなことばかりやっている。我々地元のマタギに話を聞こうともしない。白神が荒廃しないで今もあるのは、昔からマタギが守ってきたからんんです。それをわかっていない、とういかわかろうとしない。』
第1章でも遭難した青森隊は集落の長が『この時期に山に入るのは無謀だ。やめなさい。もし進むなら案内人を雇いなさい」と忠告したのに、「我々にはお前ら案内人ごときより優秀な地図とコンパスがある。案内人を雇えというのは金が欲しいからだろう」とつっぱね、結局遭難するのだ。
白神山地や鳥獣保護区にしていされた。その結果白神では一切の量ができなくなった。
1000年以上続いて来たマタギという文化が終わってしまったこと、残念に思う。
そして伝承として、このように本に残されること、とても大事だと思う。