あらすじ
山とは即ち異界なり。
山小屋の主人や登山者たちが経験したこの世の現象とは思えない奇妙な56の実話拾遺集。
登山歴40年を超える著者が、山小屋の主人などから聞いた、
ときに恐ろしく、ときに神秘的な、奇妙な山の体験談56話を収録。
2016年刊行の『新編 山のミステリー 異界としての山』(山と溪谷社)を定本として文庫化!
解説「知らない世界への誘い」(田中康弘)
(内容)
I 山の幽霊ばなし
真冬の幽霊/体が透ける/屋久島の幽霊/窓辺に座っていた幽霊/看板のなかの顔/車のドアを閉めた謎の手/人間が怖い/幽霊に助けられた女性たち/甲斐駒ケ岳の幽霊/避難小屋の怪
II 人智を超えるもの
浮かび上がる遭難遺体/夢に現れた遭難現場/「拝み屋さん」の予言/血を引く/霊が見える人たち/UFOの降りた山/もうひとりの登山者/謎の火の玉/静止する蠟燭の炎/幻のかりんとう/消える山小屋 /山の神に守られる?/大きな天狗/おいらんのかんざし/不思議な観音様
III 自然の不思議
森のなかから助けを求める声/死者を悼むリス/空飛ぶキツネ/水筒に助けられた登山者/逃げなくなった野鳥たち/寒気/ダケカンバの夢/七転び八起木/雷で育つアズマシャクナゲ/天狗が木を伐る/天狗のテーブル/消えた戦闘機/風穴に響く愛犬の声/七年に一度山中に現れる幻の池/雲が教えてくれたこと/「更級日記」と富士噴火の謎?
IV ひとの不思議
ザックの中身/謎のバンダナ/黒ずくめの遭難者/水晶山の遭難/消えたキスリング/オカリナ/山中の車/山上のストリーキング/中高年登山ブームのかげで/死相/赤い帽子/ツチノコより不思議な男/それでも医者か/水場のミステリー/山の仲間が支える命
あとがき
新編のためのあとがき
文庫版のためのあとがき
解説 知らない世界への誘い 田中康弘
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
工藤隆雄『定本 山のミステリー 異界としての山』ヤマケイ文庫。
今月のヤマケイ文庫は、山の不思議を集めた作品が3冊も同時刊行。
著者が長年に亘り山小屋の主人や登山者たちから聞いて、集めた山の怪異56編を収録。2016年刊行の『新編 山のミステリー 異界としての山』を定本として文庫化。解説は田中康弘。山での霊体験や自然にまつわる不可思議などが紹介される。先に読んだ『マタギ奇談』と並び、面白い。
山では何故幽霊の目撃談や霊体験が多いのだろうか……まさか死ぬことを前提に山に登る人は居ないだろう。従い、幽霊となり、山をさ迷う人びとは全くの不慮の事故により図らずも命を落とし、自分が死んだことにさえ気付いていなかったり、この世に未練を残すあまりに山に居着いてしまっているのだろう。
山にまつわる伝説や言い伝え、不思議な話も興味深い。時折、自然や動物が見せる奇跡のような数々の不可思議や人間の想い。中でも『第22話 山の神に守られる?』にはジンと来た。
本体価格800円
★★★★★
Posted by ブクログ
いやはや、面白くって買ったその日に一気読み!
すっかりブームになった「山の怪談」を含め、人智を越える畏怖、自然の不思議、人間の不可思議さ、「山」にまつわるあれやこれをまとめたお得な一冊。
怪談はきちんと怖いし、天狗か神かそれとも?な不可思議な話は味わいがあるし、自然の神秘を味わう話もあり、人間にまつわる話はあまりに胸糞なものからほのぼの暖かいものまで、ついにはUFOまで飛び出す!とバリエーションが豊かで、次!次の話!と読み進めてしまった。
「山の怪談」が実話怪談の一ジャンルとして確立して、山=異界というイメージも某公共放送がそれを冠した番組を作ってしまうくらいメジャー?なものになったけれど、
まだまだ「異界」の一端を見たに過ぎない、と山登りもしない平地にいきる人間は思った次第。
そしてそんな平地人にとっては、何年も山小屋を経営し、人の死にも毎シーズンたちあうことになる山小屋の小屋番さんというのもまた不思議な存在に映った。
Posted by ブクログ
著者が山小屋の主人や山に関わる人たちから聴いた山で体験した不思議な話、全56話を“山の幽霊ばなし”“人智を越えるもの”“自然の不思議”“ひとの不思議”と分類して収録。
実際にあった話なので、オチが特にない「へぇ」と思う単純な小粒なものから、ゾッとするもの、後味がスッキリしないものや、イヤなもの等様々。不思議な現象だと思っても、「それは木が裂ける時に出す音」等、自然現象で解決できる話もあるが、それらすべて都会のビルの山に囲まれて生活する私には体験できない、山のミステリーな出来事だ。
Posted by ブクログ
必ずしもオカルト的な怪異譚ばかりではない、というかむしろその類の挿話は少なく、人や自然、動物等にまつわるちょっと不思議なトピックス、といった趣が強い。
その分、山小屋の主たちの飾らない日常が身近に感じられるような構成になっている。
巻末の解説は田中康弘氏が請け負っており、この二人の競演? には密かに心躍った。