森炎のレビュー一覧
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『死刑は必要かどうか』それは答えのない問いだ。本書は死刑判断、及び死刑の必要性を考える上で基礎となる考え方を具体的な事例をもとに提示してくれた。死刑判断はいろんな要素が絡み合って複雑化していくが、それを冷静に汲み取って考えていく必要があると思った。私は死刑は必要だと考える。たとえ殺人罪に問われた被告人に何人も侵害できない「生命権」があるとしても被告人がその権利を自ら侵害したことに変わりがない。すなわち、戦争に行けば、そんな権利はお構いなしのように人は人を殺した時、自分も殺される可能性があるということ、それを知るべきだ。だからこそ、私は死刑が必要だと思う。ここで初めの問いに戻るが、死刑は必要かど
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死刑と正義、本書を読み終わった後には誰もが「死刑」の必要性について、脳が永久ループにでも入ったかの様に、停止しないメリーゴーラウンドの様にグルグルと、神経が動き回る様な感覚に陥る。そしてそこには正しい答えは存在せず、ただひたすらに考えるしかない思考の階段を登っているような状態だ。世の中には死刑を廃止すべき、維持すべきとの存廃両論が存在する。どちらの言い分も正しさも誤りも無く(両者が深く考えた上での各人の出した結論なら。単に浅い知識で何れかに追随するだけなら意味はない)、この議論は永久に終わらないだろう。
本書は考え得る人間の最大の罪悪である「殺人」を題材として、それに対する最大の司法処置の「死 -
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日本では昨今、死刑基準に変化が生じている。国民の誰もが死刑裁判に立ち会う可能性がある今、妥当な死刑判決はあり得るのか。戦後の主だった「死刑判決」事件を振り返りながら、時代によって大きく変わる死刑基準について考察する(表紙カバー)。
本書は実にシンプルな構成となっている。第1章では、戦後日本のめぼしい死刑事件の解説により、時代の変遷とともに死刑判決が異なっていることを示している。第2章では、議論の取っ掛かりとなる現在の死刑判決の基準の解説をしている。第3章は死刑判決の根底にある人間観、社会観について述べている。そして最終章はこれまでの議論から、死刑判決に正義があるのかということを読者に問いかけ -
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ネタバレチェック項目20箇所。死刑の自由化とは、死刑の価値化でもある、これまでの職業裁判官制度のもとでは、死刑の基準はあっても、真の意味での判断はなかった、あったのは形式的な基準の運用だけで、実質的な正義の判断と言えるようなものはなかったのである、これまでの官僚司法が市民の司法に変わったことで、これからは正義の価値観を示すことができるようになった、また、それが求められている。死刑宣告である以上は、どうあっても、「こういう理由で死刑しかないのだ」とはっきり言えなければならない、それも、ここでとくに一つ注意喚起しておきたいのは、人命の価値は何ら理由にできないということである。最終の価値判断は個々の市民によ
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「法学・経済学・社会学の分野で幅広い業績を残したマックス・ウェーバーは、国家権力を「暴力の独占体」と定義しました。いくら、「福祉国家」とか「法治国家」などと言ってみたところで、国家権力(立法・行政・司法)は、つきつめれば、暴力、実力なのです。
法廷は、その原始的な姿があらわになる場でもあります。そのため、常に、国民による監視が必要になります。」p.38
「裁判所によって論理が大事なのは、法を原理として理性的に活動する国家機関であることが、国家の権力構成上大きな意味を持っているからです。「真実の裁きを目指して法の論理で動く司法権は、そのほかに、力を発揮しようとする意思を持たない」と言えるからで -
購入済み
犯罪の内容に対して量刑が軽すぎるだろ、と思うことはしばしばあるが、裁判官も過去の判例から大きく外れた判決をだすことはなかなか難しいとは思う。だからこそ裁判員裁判の結論をもっと重視するようにしたほうがいいと思うけど。禁錮と懲役の違いなどは初めて知った。
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裁判員制度に向けて、実際の裁判結果から、どういう罪がどういう刑になるのか、大体の基準や、軽減する際の判断のポイントなどを教えてくれる本。
同じ「殺人罪」でも、死刑と無期懲役で分かれるのはなぜ?殺した数によって変わるのか?
「放火」と「放火殺人」の違いは?
「強盗」と「強盗殺人」の違いは?
など、テーマ毎に、まず実際に起きた複数の事件の概要とその裁判結果を簡単に出される。その後、作家と弁護士の対話形式で、なぜそんな裁判結果になったのか、判断基準は何なのかなどの説明がなされるという構成。
裁判員裁判が行われる裁判は重要な裁判が多いため、死者がいたり、血生臭めの事件が多いのは仕方がない。 -
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裁判員裁判が行われるようになったことによって死刑のあり方が大きな変容を遂げた事実をふまえた死刑論である。
専門家の裁判官のみで行われていた裁判では死刑の認定はいわばポイント制であったという。いくつかの要素を満たしたものが死刑とされた。そのため死刑と無期懲役との境界線は一般人の感覚からは理解しがたいこともあったという。
裁判員裁判が始まってからは正義の基準はいわば同情の度合いになったという。そのために裁判の判例は多様になり、その統一性はしばしば破られる。
筆者は死刑の最終判断基準に関しては慎重ににして歯切れが悪い。ただ死刑制度自体は社会制度の維持に不可欠なものとして存在価値を認めている。 -
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未だに各方面が議題として挙げている『死刑』という制度について著者なりの見解を示したものです。
死刑となり得る(なった)事件を幾つかピックアップし、事件の性質に基づいて細分化することで、『死刑』について多角的な視点を持って眺めることが出来るようになっています。
事件のピックアップのみならず色んな哲学者の考え方なども引用してきているため、哲学の勉強にもなりました。
著者自体は中立的な視点を持っているような記載っぷりでごじましたが、若干死刑廃止派に傾いているような感覚を覚えました。
難しい部分もチラホラございますが、概ねスラスラ読み進めることが出来るため、暇な時に『死刑』について見つめ直すに -
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仕事のための読書。
裁判所の組織の概要が、雑学感覚で楽しく身につけばいいな、と期待して読み出すも、はじめの数頁で難しさにその思惑はこっぱみじんに。
そりゃそうだよね、楽に身につく知識なんかないよね……(遠い目)。
というわけで、気持ちをただして、読み始める。
元裁判官、現役の弁護士である著者が、裁判所という組織を解説した本書。
解説といっても、裁判所の種類、働いている人たちと組織の構成、民事・刑事といった取り扱う事件の種類etc、現実的な運営に関する説明は、本書のごく一部。
それよりも読んでいて全体から感じるのは、裁判所が法学的、政治学的に、どのような思想や問題点を抱えながら歩んできのかを包 -
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ネタバレタイトルが挑発的であるが、内容は単に「死刑肯定」ではなく、「死刑反対論」に対する穴をつく、ということに終始していて、単純に死刑を肯定する本ではない。
むしろ、死刑を肯定する側も必読であるかもしれない。
また、現状の政府の国家の死刑に対する姿勢への批判もある。
ただし、死刑に対する既存の論を並べただけの本である印象も拭えない。なるほどと思わせる所はあるが、最終的に結論が曖昧である気もする。
個人的には冤罪による死刑反対論がいちばん説得力があると思っているが、彼は「新幹線や車などの産業は、必然的に事故を起こす。まったくではないが、これは死刑制度にも同じことがいえる。ゼロにする努力はするが、そ