薄井ゆうじのレビュー一覧
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空想医学小説かと思えば、神話のようでもあり、ちょっぴりいびつで優しい男同士の友情の物語かと思えば、不器用でピュアな恋に落ちる男と女の愛情の物語でもあります。読んでいると、場面ごとの映像が鮮明に浮かび、クロスバ交換機のカチ・カチという快い音が頭の中にくっきりと響きます。
なぜ、男と女、ふたつの性があるのか。どうして人は恋に落ちるのか。ふたつの性を併せ持つ人は、男なのか、女なのか、どちらでもないのか。ソモ・ソモ男女の性差をどこに見出したらよいのか。透明な科学の目と、繊細な文学の目の、両方の視点から深く性の謎に踏み込んだ興味深い作品です。吉川英治文学新人賞受賞作。 -
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両親を亡くした主人公が、久しぶりに父親の残した別荘を訪れる。そこで出会ったちょっと変わった母子。
潔癖症の母親は、処女でありながら男の子を出産。ひとりで産んで、出生届を提出しないまま、森の別荘地で密かに育てたため、その子は青年になった今も名前がありません・・・。物語はこの三人を中心に、思わぬ方向へ二転三転。
個人とは何か?社会とは何か?ひとはなぜ創造するのか?創造する意欲はどこから生まれるのか?そんなことを、従来とはまた違った視点で考えさせられるお話でした。
モノを創り出すということは、生きることに直結しており、心に負った傷を形にすることなのかもしれません。生きるということは孤独な作業なのです -
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【本の内容】
「僕は風子と結婚するつもりです」
「台風21号と結婚?方法はあるのかね」
「いまから考えます」
南の島でダイスケの胸に生まれた小さな恋の竜巻。
それは、コンピュータや人工衛星を駆使しての予想を遙かに裏切り、やがて超弩級の台風になっていく。
発達し勢力を増した風子はついに日本へ上陸。
この恋はもう誰にも止められない!
魅力的で荒々しい現代の女神の物語。
[ 目次 ]
[ POP ]
導入は山下達郎の「高気圧ガール」、クライマックスはニール・ヤングの「ライク・ア・ハリケーン」、そしてエンディングは村上春樹の初期3部作。
で、わかってもらえる?
日本文学は「わた -
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主人公がネパールの奥地で、偶然イエティを捕らえたことが物語の始まりでした。イエティは自ら捕らえられるために、深夜主人公が一人で眠る、長距離バスに乗り込んできたのです。ヒマラヤの森の生息域が狭められることへの危機感から、彼らは独立国家を打ち立てようとしていたのです。
イエティは孤独を愛し、けして自然の摂理に逆らわず、自然の一部のようにして慎ましく暮らしています。しかしながら、彼らの知性と能力は人間以上に優れており、至って気高い人格の持ち主なのでした。
独立を迫られる国家と、平和的解決のため調整に乗り出した国連。そして、イエティを利用して冨を増やそうとする悪徳商人・・・・イエティは人間社会の欲望の