あらすじ
「初めてお手紙さしあげます。個人的なことで、お話したいことがございます」。始まりは、亡父に宛てた差出人不明の手紙だった。「毎週土曜日の午後6時ごろ、レストランでお待ちしております」彼女の目印は、テーブルの上の黄色いくじら……。心を癒してくれる現代の神話。気鋭が描く感動長編。
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Posted by ブクログ
『本当にくじらが降ってくるよ〜』と友人に薦められたのがかれこれ8年くらい前かしら。
以来、ずっと気になってはいたものの、古本屋で見つけることができずにあっという間に時が過ぎてしまってた。
電子化されていることに気づいて即購入、二日で完読。
ある日、シンタロウは森の中で亡き父にそっくりな青年に出会う。
その後、ポストに亡き父宛ての手紙を見つけたシンタロウは、差出人であるケイコという女性に出会う。
名前を持たない変わった生い立ちの青年を通して、ルールと自由についてシンプルに描かれている。
Posted by ブクログ
どこにもかしこにもくじら。
きわめて潔癖症のコイケケイコ。
テントウムシの家。
心が癒されるメルヘン。
でも、彼はクジラは癒すために書いていたわけじゃないんだ。
利用する人間への敵対芯があって当然。
人間はすぐ、利用したがる。
Posted by ブクログ
全く予測がつかない展開に、ついていけなくなりそうなほどのスピードでめくるめくストーリー。
一体どこに着地するのか?
と、一人一人の主人公はなかなかの地味な目立たない孤独な人間たちなのに、こんなにも自由にそれぞれストーリーを展開していくのか?と、どの人間からも目が離せない。
出てくるメンツの個性的すぎる独特なキャラクターに目を奪われている間に、いつの間にか漂流しているようなそんな不安定な気持ちに終わるまでさせられ、先々が気になるそんな一冊です。
ハラハラしないのに、ゾクゾクしないのに、不思議と目が離せない魅力のある作品です。
Posted by ブクログ
全然予期できない作品でした。
ただ、東京から吐き出されたマサルに会った時、学校で白鯨に会った時、手の届かない所へ行くのはわかった。
消化せず、胃に溜めていたい話だった。
Posted by ブクログ
両親を亡くした主人公が、久しぶりに父親の残した別荘を訪れる。そこで出会ったちょっと変わった母子。
潔癖症の母親は、処女でありながら男の子を出産。ひとりで産んで、出生届を提出しないまま、森の別荘地で密かに育てたため、その子は青年になった今も名前がありません・・・。物語はこの三人を中心に、思わぬ方向へ二転三転。
個人とは何か?社会とは何か?ひとはなぜ創造するのか?創造する意欲はどこから生まれるのか?そんなことを、従来とはまた違った視点で考えさせられるお話でした。
モノを創り出すということは、生きることに直結しており、心に負った傷を形にすることなのかもしれません。生きるということは孤独な作業なのですね。
Posted by ブクログ
そうだなぁ…面白くないことはないんだけど、うーん主人公が、物を作る奴にありがちな自己中心的な人物で最後あたりもやっとしたな。彼がすごく魅力的なのもあったからかも。あと女の人に良い人がいなかったのもちょっとなあ。(良い人って陳腐すぎるけどそれ以外の言葉が見当たらない。)あんなに醜く描かなくてもいいのに。強いってことなのかもしれないけど。しかしあんなに子どもが欲しい気持ちは私にはわからないからちょっと薄ら寒い、というか恐ろしいというか…。
Posted by ブクログ
薄井ゆうじ…この作家さんの本は初めて。
鯨ばかり描いている名前のない男の子の、なんとも不思議な話。
「心を癒してくれる現代の神話」と紹介文があったが、そうなの?
癒されるどころか疲れてしまった私は、へそ曲がりなのかなぁ!
Posted by ブクログ
最初の感じでホンワカなお話かと思っていたのですが、後半の展開ではちょっと重さを感じるストーリーでした。 何て言えばいいのか、感想を書くのが難しいな。 今までに読んだことのないタイプかも。
ここに出てくる人たちは皆、「常識人」と呼ばれるようなタイプからはどこか外れている部分があります。
誰にでもそういう所はあると思うけれど、その外れている部分が際立って描かれている感じ。
登場人物たちは、それぞれその部分を大切に生きているんだなと思いました。
裏表紙には「心を癒してくれる現代の神話」と書いてあります。
たしかに神話っぽいイメージがあるかも。
でも、ただ単に癒されるという内容ではありませんでした。
キディランドに置いてある「くじら」の商品の記述や、シンタロウがマサルを見つけられずに戻ってきた時の「くじら」のありかの表現は、実験的だなあとは思ったけれど私はあまり好きではないかもしれない。
表現の方法ばかりに気を取られて、読み飛ばしたような状態になっていた気がします。
この作品は2作目(1991年単行本化)だそうなので、他の物(特に最近の)も読んでみたいなあと思いました。