和田純夫のレビュー一覧
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2022年ノーベル物理学賞が、ベルの不等式にまつわる量子力学の実験的検証とその成果に与えられたことは記憶に新しい。
一般に「量子もつれ」と呼ばれる、私たちが日ごろ当然のように理解している物体の存在の仕方を根底から否定するような、微視的空間における存在の振る舞いかたが遂に実験的に示されてしまった。
これは、私たちが日ごろ感じている存在に対する「在る」という認識が根本的に誤りであることを示唆している。少なくとも微視的な(つまりミクロレベルでの)世界では。
しかし、私たちの身体も身の回りのモノもすべては無数の原子の組み合わせから成っている以上、
私たち自身の存在のしかたもまた量子力学と切り離すことはできない。
存在する、とはどういうことか?
その答えを筆者は「量子力学の多世界解釈」という観点から丁寧に解説し、紐解いていく。
これは少なくとも現段階では複数ある解釈の一つに過ぎず、科学的にエビデンスが得られた内容ではない(そもそも科学的にエビデンスを得ること自体が可能かどうかさえ疑わしい)のだが、
存在理解について大きなヒントを与えてくれる書であることは間違いない。
量子力学の研究成果がもたらした最大の功績は、
従来の私たちが日ごろから信じて疑うことのなかった“存在そのもの”の認識について「コペルニクス的転回」を余儀なくさせたところにある。
そのエッセンスを数式に頼ることなく平易に実感させてくれる良書。
ただし、コペンハーゲン解釈に対して批判的な立場を取る著者による説明であることに注意を要する。
私にとっては多世界解釈のほうが個人的に納得感が強いので好感が持てたが、必ずしも科学的に公平に書かれた解説書とは言い切れないと感じた。 -
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総じて、前半は前期量子論の復習になるように思われた。高校物理だと、普通、一貫校でない限りは、高校3年の2学期頃に行うと思われる、原子分野(大概が前期量子論)であるが、時間がないので大概飛ばしがちであり、難しいテーマであるため体系的に学べないことにより微妙に勉強しづらい分野でもある。古典力学や古典電磁気学のようにあまり時間をかけて履修しないので、こういう本で復習するのもありかと。それにしても、電子の粒子と波の二重性については観測者の出方によって変わるということが信じがたい方もおられると思うが、その解釈については見ていないときは確率的な波として存在し、見ると一つの点に収束し粒子としてふるまうという、いわゆる「コペンハーゲン解釈」ということで一応棚上げされているが、「コペンハーゲン解釈」も当時の哲学(考え方)に影響を受けているらしく、現在ではそれが変わってきているようである。もう少し探究したい分野である。
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[ 内容 ]
ニュートンが17世紀に著した『プリンキピア』は、運動の法則や万有引力を基に自然界の仕組みを明らかにし、近代科学の出発点となった。
図形を使った幾何学的な手法で力学の様々な疑問を証明したニュートンのアプローチは、現代人が読んでも素晴らしく、その天才ぶりに驚嘆させられることだろう。
科学史上、最も有名な本のひとつである『プリンキピア』の醍醐味を味わう1冊。
[ 目次 ]
第1部 プリンキピアとは(プリンキピア誕生まで 知識に関する時代背景 「世界の体系」への道?プリンキピア第3編前半)
第2部 プリンキピアの諸定理(用語の定義と運動の基本法則 第1編Section1 準備 第1編Section2 向心力と面積速度一定の法則 第1編Section3 ケプラーの法則の証明 第1編Section6~8 時刻と位置 第1編Section9 軌道自体が回転する運動 第1編Section11 2体問題・2体問題 第1編Section12 大きさのある物体の重力 第1編Section13 球状でない天体の引力-ニュートンの積分 第2編Section1~9 抵抗を及ぼす媒質内での物体の運動 第3編 命題18以降 終わりに)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
本書は、古典力学から量子力学に至るまでの内容を、それらを説明する主役としての数学的視点に立って、全体としては理系専攻の大学学部生に読みこなせるようなレベルで説明されている。ここで、全体としてと言ったのは、前半部分と後半部分で難易度に差があるからである。言うまでもないかもしれないが、近代科学黎明期として位置づけられる古典力学はガリレオガリレイ、ケプラーの時代からである。彼らの仕事は現代では高校生が学ぶ範疇の物理・数学でかなり理解が可能である。一方、最終章で取り上げられている量子力学は、誕生から今尚100年の経過を見ていない。一定の完成をみている古典力学よりも、さらに発展途上にある。この分野は大学基礎課程を上回る(3年目以降)レベルではじめて学ばれる世界といってもいいであろう。ゆえに、たとえ理工系専門でも、一部の人間を除いては理解に必要な背景知識が薄くなるのである。ただ、総論としては大学基礎課程の力学と解析を了解していれば、なんとか想像で間に合わせられる(ホントか?!)と思う。
まずどのような数学が紹介されているか想像を容易にするために、目次の大分類を示そう。
第一章 微分法が解き明かした運動の法則
第二章 変分法が解き明かした運動の法則
第三章 曲がった空間の幾何学が解き明かした相対性理論
第四章 複素数が解き明かした量子力学
第一章と第二章は、高卒程度の物理数学知識でかなり理解が可能である。というのは、文章で記述されている説明の切り口や引用される用語は大学レベルに達しているのであるが、説明に引用されているモデルが、常に「慣性系」「摩擦は考慮しない」「質点(質点系は登場しない)」で統一されているので、基本的に平易になっているからである。また、説明の切り口が大学レベルに達していることで逆に理解が容易(高校のように数学と物理を分離した状態のほうが説明に無理が生じる)になっている側面も見逃せない。著者がなるべく多くの読者に楽しんで読めるように、かつ本筋を外さないようにするための配慮であろう。一点だけいうと、第二章の「変分法」これは実は高校数学の範疇ではない。大学でも理系だから全員が学ぶというものでもない。しかし、一言でいえば、微分法の親戚みたいなところがあるから、微分法の意味するところを了解さえしていれば、変分法の意味は比較的容易に理解できるのである。
第三章と第四章は、扱っているネタ自体が大学専門課程レベルになっているので、理系の一部の学生以外はほぼ背景知識がない話題であろう。しかし、第三章の相対性理論のほうは、それを解き明かした数学として登場するのが幾何学であるため、想像に訴える説明が数学の中では比較的容易なために、文章で(誤解が生じるのは目つむって)直感に訴えて理解するのがまだ易しい。
さて、遅くなったが如何に数学が物理法則の謎の説明に大活躍したか、その一端を説明しよう。ただ、具体的な内容説明は本書に譲るとして(説明すると、とても数千文字レベルの書評では収まりません)本書の訴えかけたかったはずの要点を述べてみる。
自然を支配する法則はいかに記述されるか? 「物理法則はどのように数学的に説明可能か」を言い換えるとこのようになるであろう。ここで一点注意しておきたいのは、「なぜそうなのか」と根本は問わないことである。なぜかわからないけど「このように説明したら、実際現象と無矛盾であるからこの説明方法は確からしいと言える」という姿勢が科学的に正解である。実際上の現象に数学的説明を当てはめてみて正しさを確認し、さらに当てはめられた数学的説明から演繹的に導出された結果も実際上の現象(物理現象)と例外なく合致していることが確認された時点で科学的説明としては完璧なのである。
一般に、物理と数学は相補的である。ある物理現象から、「あれはどういうこと(数学的にどう記述できるのか)だ?!」→「数学技術が発展」という方向性があれば、「斬新な数学的テクニックが存在」→「このテクニックがあてはまるような物理現象は実際にはない、机上の空論である。」→「このテクニックで説明可能な物理現象の発見」という方向性もあるからである。まさに、数学は物理的な諸現象を記述する芸術品である。数学という体系化された全宇宙共通特殊言語を使って、あらゆる諸現象をスッキリと説明することの美を伝えるのが本書の第一義的な目的であったろうと思う。本書は読み物、もしくは物理数学教材の副読本的な色彩があるが、内容の厳密な理解には各論を専門に扱った書籍において、数式と本格的な会話が必要であることは論をまたない。
第四章は著者もひょっとしたら不満が残っているのかも(想像だけど)しれないが、説明に部分部分に飛躍が感じられた(単に私の基礎知識がないだけか!)。というのも第四章の前半がほぼ複素関数と、それの極座標系を使用した表現の説明(おかげでかなり複素関数に関しては理解が進む)に費やされるが、後半になると怒濤のように物理現象の簡略的な説明が矢継ぎ早に並んでいるように感じられたからである。しかし、これは量子力学の発展途上性を暗に示唆しているのかもしれない(もっとスッキリとした単純で美しい新しい数学でもあれば、スッと読めるはず!)と、これまた飛躍して妄想した次第である。
最後になるが、本書は物理と数学の切っても切り離せない関係性を実感できる書となるであろうことを付け加えて終わりとする。 -
Posted by ブクログ
偉人の書いた有名な著作を、ここまで簡潔にまとめられているのに感嘆しました。ページ数も250ほどと短く、掲載するべきところとしないところの区別がはっきりとしていて、とても好感です。
ところどころ、文が変だったりボールド体が途中で切れてたりしていて不自然なところ(校閲ミス?)はありましたが、そんなことを差し引いても大満足です。ちなみに、解説を読んでも「ん?それ成り立ってるか?反例ある気がするなぁ」となる命題もありました。私の知識不足かもしれません。
以後、内容について。
冒頭にも述べられていたように、慣性と力の作用を2つの力として作図する方法が面白いなと思いました。特にこの作図の仕方は、全編通して繰り返し表れます。
今回は初めてということで、証明はただ頭の中で読み上げるだけ、といった読み方をして、結論にフォーカスしていました。
ということで今から、プリンキピア本体を読んで、気になる命題の証明を追ってみます!
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多世界解釈派の著者が、コペンハーゲン解釈他の歴史的推移を踏まえて解説。異なる状態が共存するということを乗り越え、各状態がデコヒーレンスが成り立ち干渉しなければ現状の観測データからもっとも説明しやすいとする。
以下Wikipedia
コペンハーゲン解釈といっても差異はあるがノイマンが1932年に行った定式化は、
量子系と観測者(観測装置)を分離する。2つの境界はどこに引いてもいい。
量子系の状態は、観測していないときはシュレディンガー方程式に従う
観測により波動関数が収縮して、1つの測定値が得られる
どの測定値が得られるかは確率的であり、ボルンの規則に従う
多世界解釈
シュレディンガー方程式から予測される重ね合わせ状態は全て実現し、干渉性を喪失した世界が分岐していくと考えることで波束の収縮を回避する。多世界解釈はある意味で決定論的であり、初期条件が与えられれば未来の分岐する全ての世界の重ね合わせに相当する量子状態は一意に決定される。 -
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量子力学の本を読んだり勉強したときに、例えば二重スリットの実験結果を説明するのに、電子の状態は波動関数で表されて確率的な広がりを持っている、というところはまあなんかよく分からないけどそうなのかな、と思えなくはないのですが、ただその波動関数が測定をすることによって一つの状態に収縮する、というところがさっぱり分からなくて、いったい波動関数の収縮ってなんなんだい、と思ってました。この考え方をコペンハーゲン解釈と言うのだということは割と最近知ったのですが、本書はこの、現在量子力学の解釈の標準と言われているコペンハーゲン解釈に対抗する、多世界解釈についての本です。難しい数学は使わずに、分かりやすく多世界解釈を説明しています。
多世界解釈は、ウルトラマン世界やMARVEL 映画でおなじみのマルチバースのベースになっているものと思いますが、波動関数の収縮なんてものは起こらない、という立場で量子力学を解釈しようとするものです。二重スリットの干渉縞の実験結果も、波動関数の収縮という概念を用いずに説明するので、たいへん受け入れやすい考え方でした。業界(学会?)ではまだまだコペンハーゲン解釈が主流なようなのですが、多世界解釈論者の方々はぜひぜひ頑張って欲しいです。 -
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量子力学の何が不思議で、観測事実は何であるかが ある程度系統立てて説明されていて、一般向け入門書としては良い本だと思う。
コペンハーゲン解釈と多世界解釈のどちらが良いかはさておき、粒子と波の両方の性質を示す実験結果から、辻褄の合う理論体系をつくるのは大変だ!
・波の収縮:コペンハーゲン解釈では、人が見たら(認識したら)波の性質はその時点で消える
・エンタングルメント:一つのミクロな粒子が二つに崩壊すると、二つの粒子は必ず反対方向に飛び出す。片方の粒子の方向を観測すれば、もう片方の粒子の方向も判明する。
・デコヒーレンス:多世界解釈では、観測後も波は収縮せず、あらゆる状態は共存する。しかし観測した人を含めた状態は他の状態から干渉を受け無くなり独立に振る舞う。観測した人を含めて、状態は分岐したと考える。
・確率則:一回限りの出来事の確信度(競馬のオッズ)と、無数の対象についてのもの(相対頻度)がある。
昔から不思議に思っていることに、競馬のオッズは相対頻度に近づく事象がある。これも量子力学で説明できないのだろうか? -
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多世界解釈でデコヒーレンスが発生する時に、コペンハーゲン解釈での波の収縮が起きると考えれば、どちらも同じだと思ったが、デコヒーレンスは、干渉がなくなるだけで、どちらかを選択するわけではないので、波束は必ずしも収束しないらしい。とはいえ、どちらの経路を通ったかは決まる。多世界解釈が解釈者の立場で世界を見、コペンハーゲン解釈は、観測者の立場で世界を見ているのだから、解釈に違いがあって当然で、どちらも正しいと思った。
シュレディンガーの猫問題は、核分裂が検出機で検出された直後に、猫の生死が確定(デコヒーレンスまたは波の収縮)するのであって、人間の認識とは関係ない。
Qビズムについては、よくわからなかった。
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Posted by ブクログ
量子力学は一般常識では理解困難な現象を取り扱うが、その解釈の仕方に人間の認識に伴って波の収縮が起こったという実証主義的なコペンハーゲン解釈と、観測者としての人間の存在など関係なく観測機器も含めた宇宙全体が量子力学の対象であるとする実存主義的な多世界解釈があるという。
本書の著者は後者の立場だが、理論の中核に認識したかしないかという人間の主観を位置づける前者よりも、シュレジンガー方程式という中核定理を以って全てを説明しようとする後者の方が純粋理論的に真摯で自然だとする著者に共感する。
量子コンピュータや量子通信の元となる量子もつれとの親和性も高い後者にいずれは収斂しそうにも思うが、キリスト教の人間中心主義を考えると簡単でもないかもしれない。 -
Posted by ブクログ
決して易しい内容ではないが、量子力学について丁寧に解説されており、量子力学自体の入門書としても分かりやすい。
量子の振る舞いは、ニュートン力学が通用するマクロの世界の住人である人間には中々理解しにくいが、その不思議な現象はコペンハーゲン解釈と言われる説明が一般的で、他の量子力学の入門書でもこの説明がメインになっている。これに対し、著者は多世界解釈と呼ばれる別の解釈を採用しており、こちらの方が無理がないのだと主張する。たしかに、場面によってはコペンハーゲン解釈より良いようにも思われるが、世界が分岐するという考え方は、あたかも無限のパラレルワールドが現れるSF小説のようで、こちらも直観的には納得しにくい。
結局、どちらを取ってもマクロの世界に生きる人間には理解しにくいのであるが、多世界解釈は、量子力学でミクロの世界だけでなくマクロの世界をも説明しようという考え方があり、多世界分岐の気持ち悪さを除けば統一感があるようにも思われる。
ただ、まだまだ量子力学について学んでいかないと、そういう境地には達しそうもないが。 -
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量子力学の副読本
標準的な量子力学の教科書を初めて読むときに様々な疑問が湧き出てくるのは自然なことだ。しかし多くの標準的な量子力学の教科書では計算の仕方については詳しく書かれているが、多くの学生良く分からないと疑問に思う概念的な事柄について詳しく説明されていないことが多い。
そのキャップを埋めるのがこの本である。故に量子力学を初めて学ぶ学生が教科書と共に読む本としてお勧め。