愛川晶のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
劇場とか、寄席という場所が好きだ。
現在のものとは違う、と分かっていても、歌舞伎座に行けば、升席でちろりで燗をつけながら、一日ゆるゆると芝居を楽しんだ、江戸の人々の雰囲気を想像する。
寄席ならば…仕事が終わって、銭湯でひと風呂浴びた帰りにふらりと寄席に立ち寄った明治、大正の時代か。
今は田舎に住み、そういうところへめったにいけないから、余計に妄想が強まっているような。
さて、この作品は、寄席の舞台裏、それを支える人々がクローズアップされる。
寄席の席亭の仕事などはその筆頭だ。
出演予定の芸人が急病で代演を手配する。
マスコミからの取材の窓口になる。
芸人間のトラブルの仲裁をする。
従業員たち -
Posted by ブクログ
面白く読みました。
しかし、同じ作者の紅梅亭のシリーズと並べると、こちらの正蔵刺傷のシリーズ、ブラックな部分が多いなあ、と思います。それが読後のやりきれなさを生むのかと。
やりきれなさ、は言い過ぎかもしれませんが、切なさの方がよいでしょうか。謎解きやら師匠の描写やらはスカッとしてるのですが、読後感に薄闇のようなものが残るのです。
それでも今作は薄闇が最後に本当に薄くなった気はしました。
スカッとした感じが少なくなるのは、紅梅亭が狂言回し・主要人物が終生噺家であるのに、こちらは噺家でなくなる(なくなるように読める)からかもしれません。そこに至る過程が少々心を曇らせるのかな。
今回は通奏低音のよう -
Posted by ブクログ
昭和稲荷町らくご探偵シーズ3作目。
座布団探偵・林家正蔵(後、彦六)の登場する場面は多くははないけれど、鮮やかの一言。
3作の中では一番すんなり読めた。
弟弟子が高座で酔客に殴打され、眼球に大変な怪我を負う。彼の為に一肌脱ごうと相談の帰り、主人公、佃家梅蔵の目の前で兄弟子が暴漢に襲われる。
ここまで何の謎も感じなかったのだが、主人公が正三の長屋を訪ねた途端に、事件の様相がガラっと変わってしまった。
後半は話が悪い方へ悪い方へと進んで、終盤は早い展開で結末を迎える。苦い諦観を感じていたんだけど、ほっと息をつけた。
シンドイ状況でも洒落のめす落語家たちの会話が、心地よかった。
「まあ、ここで -
Posted by ブクログ
作者の座布団探偵シリーズはみな面白いのです。今回も一気に読み切りました。長編ではあるのですが、読んでいる感覚は連作短編のよう。予想しない展開に読む手が速くなるのですが、読み終わってみると、「こういう結末を予想していた。いやいや、こういう結末を期待していたんだ」という、これもまた、収まるところに収めてくれるほっとする話でした。
160ページに「あたしくが聞いた中では」とあるのが、誤植なのか、それとも高座の世界ではこういう言い方があるのか、勉強しておこうと思いました。
解説の中では座布団探偵シリーズの関連も整理され、スターウォーズと同じように、今度、時系列に並べて読み直すのも一興、と思ったところで -
Posted by ブクログ
ネタバレ出版社の編集員から寄席《神楽坂倶楽部》の席亭(社長)代理として『出向』という形で働いている希美子。
前作では寄席の習慣、業界用語に付いていくのに精いっぱい…というより振り回されていただけの希美子でしたが、今回は少しずつ慣れてきて『席亭代理』、略して『席代』と呼ばれることにも戸惑わなくなってきてます。
姉妹編(私が勝手にそう受け止めている)の神田紅梅亭シリーズは落語の話ばかりですが、こちらは落語だけではない、『色物』と呼ばれる手妻(手品)や太神楽(傘の上で様々なものを回す芸)という、落語以外の芸にもスポットを当てています。
そして前作のあとがきで作家さんが予告された通り、今回は事件も起 -
Posted by ブクログ
ネタバレ6月6日の表題にひかれて購読。
結構面白かった。
叙述ミスリードで、女性が二人いるのは割とすぐにわかったが、
過去だと思っていた回想が実は未来だとは思わなかった。
クリスマスイブが2回あるのと、女性が二人とも同じ名前で、
同じ過去を持ち、同じ男性を好きになっているから、ややこしい。
「イニシエーションラブ」、「葉桜の季節に君を想うということ」と並び称されるのいがわかる気がする。
ただ、一番主軸にもってきた女性の最後が悲しかったこと。
読み返して気づいた、クリスマスケーキの予約の名前。
あまりにも報われないので星4つにしました。 -
Posted by ブクログ
意外に評価が低いことにビックリ。個人的にはすごくおもしろかったです。
こういうトリックって今でこそわりとありがちですけど、初めて読んだ時はびっくりした。
そんでその謎を解くためのキーみたいなセンテンスは各所にきちんと散りばめられているんだけど、読んでて自分みたいな人間は「ん?」って一瞬なんか違和感覚えるんですけどその違和感がなんだったのか考えようとしてないから、後であー!って思う。それがすごい気持よかった。
あれです、鍵とかを無くした時って、よーく記憶を辿ると道を歩いてて一瞬「ん?」」って思ってる場所があるんですよ。なんか遠くで金属音を聞いたような気がしたとか、ポケットに手を入れた瞬間にあるべ