愛川晶のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2025/02/17
ストーリーの雰囲気は全体的にシリアスさは無く、とっつきやすく読みやすい。
落語が好きな刑事っていうのが物珍しさがあり、ホームズ役が噺家というのもキャラが立っていると感じた。
事件の解決談の説明もわかりやすく、後から読み返せば、謎解きのヒントがちゃんと見つけられるので、ミステリー初心者の私でも楽しめた。
ストーリーはモチーフになっている落語の噺があり、作中には落語の用語や幾つかの噺が登場し、ちゃんと軽い解説があるので、落語を読んでみようという気持ちに自然とさせられた。
全体的に読みやすい文章とストーリー。難解すぎないところが楽しみやすいと感じた。 -
Posted by ブクログ
劇場とか、寄席という場所が好きだ。
現在のものとは違う、と分かっていても、歌舞伎座に行けば、升席でちろりで燗をつけながら、一日ゆるゆると芝居を楽しんだ、江戸の人々の雰囲気を想像する。
寄席ならば…仕事が終わって、銭湯でひと風呂浴びた帰りにふらりと寄席に立ち寄った明治、大正の時代か。
今は田舎に住み、そういうところへめったにいけないから、余計に妄想が強まっているような。
さて、この作品は、寄席の舞台裏、それを支える人々がクローズアップされる。
寄席の席亭の仕事などはその筆頭だ。
出演予定の芸人が急病で代演を手配する。
マスコミからの取材の窓口になる。
芸人間のトラブルの仲裁をする。
従業員たちの暮らしぶりにも配慮する。
太神楽の「ひとろく」(真打にあたるもの)に値するかを見極める。
…どれも生半可な仕事ではない。
これを、父親の回復までとはいえ、今まで全く寄席とは関わりがなかった主人公の希美子が引き受けることになったというのが本シリーズの設定。
第二作では、手妻と太神楽の芸人が中心となる。
それぞれの芸についてのあれこれが、さりげなくちりばめられているのもうれしい。
客席のお客さんを見てその日披露する芸の演目を変える。
よい芸人にはそんな細やかな配慮もある。
そんなことを知ることができるのも楽しい。
そういえば、昔、田舎から出てきた両親を連れて池袋の演芸場に行った。
亡き小三治師匠がトリを務める日で、大賑わいだった。
チケットは当日販売。
両親は足が弱っていたので、早く歩けない。
そこで一足私が先に行って、チケットを買って席をとっておこうと思ったのだが、本来はそれができないルールのようだった。
「テケツ」のお姉さんに事情を話してみたら、通路に臨時に作った席だったら、今席をとってしまっていい、と特別に対応してくれた。
両親はおかげで最初で最後の小三治師匠の高座を見ることができた。
こんな実体験があると、この小説にあるような世界も、きっと本当にあるんだろうな、と思えてくる。 -
Posted by ブクログ
面白く読みました。
しかし、同じ作者の紅梅亭のシリーズと並べると、こちらの正蔵刺傷のシリーズ、ブラックな部分が多いなあ、と思います。それが読後のやりきれなさを生むのかと。
やりきれなさ、は言い過ぎかもしれませんが、切なさの方がよいでしょうか。謎解きやら師匠の描写やらはスカッとしてるのですが、読後感に薄闇のようなものが残るのです。
それでも今作は薄闇が最後に本当に薄くなった気はしました。
スカッとした感じが少なくなるのは、紅梅亭が狂言回し・主要人物が終生噺家であるのに、こちらは噺家でなくなる(なくなるように読める)からかもしれません。そこに至る過程が少々心を曇らせるのかな。
今回は通奏低音のようにラストを見通せるような伏線と思わせるものがあり、なんとも読み進めるのが辛い、怖い頃がありましたが、ラストは見事、前作までのパターンも今作のための演出かと思わせる、その点ではスッキリする感じでした。その分、第1話の暗さが……
さて、次作はどう来るのでしょう。
とても楽しみです。 -
Posted by ブクログ
昭和稲荷町らくご探偵シーズ3作目。
座布団探偵・林家正蔵(後、彦六)の登場する場面は多くははないけれど、鮮やかの一言。
3作の中では一番すんなり読めた。
弟弟子が高座で酔客に殴打され、眼球に大変な怪我を負う。彼の為に一肌脱ごうと相談の帰り、主人公、佃家梅蔵の目の前で兄弟子が暴漢に襲われる。
ここまで何の謎も感じなかったのだが、主人公が正三の長屋を訪ねた途端に、事件の様相がガラっと変わってしまった。
後半は話が悪い方へ悪い方へと進んで、終盤は早い展開で結末を迎える。苦い諦観を感じていたんだけど、ほっと息をつけた。
シンドイ状況でも洒落のめす落語家たちの会話が、心地よかった。
「まあ、ここで小判の五十枚も叩きつけて姿を消せば本寸法だが、急だったから、懐都合があいにくなんだ」
名文句。
解説によると、このシリーズに登場する山桜亭馬八が、後の神田紅梅亭寄席物帳シリーズの寿笑亭福の助とのこと。 -
Posted by ブクログ
作者の座布団探偵シリーズはみな面白いのです。今回も一気に読み切りました。長編ではあるのですが、読んでいる感覚は連作短編のよう。予想しない展開に読む手が速くなるのですが、読み終わってみると、「こういう結末を予想していた。いやいや、こういう結末を期待していたんだ」という、これもまた、収まるところに収めてくれるほっとする話でした。
160ページに「あたしくが聞いた中では」とあるのが、誤植なのか、それとも高座の世界ではこういう言い方があるのか、勉強しておこうと思いました。
解説の中では座布団探偵シリーズの関連も整理され、スターウォーズと同じように、今度、時系列に並べて読み直すのも一興、と思ったところです。
次の活躍を待ち望んでいます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ出版社の編集員から寄席《神楽坂倶楽部》の席亭(社長)代理として『出向』という形で働いている希美子。
前作では寄席の習慣、業界用語に付いていくのに精いっぱい…というより振り回されていただけの希美子でしたが、今回は少しずつ慣れてきて『席亭代理』、略して『席代』と呼ばれることにも戸惑わなくなってきてます。
姉妹編(私が勝手にそう受け止めている)の神田紅梅亭シリーズは落語の話ばかりですが、こちらは落語だけではない、『色物』と呼ばれる手妻(手品)や太神楽(傘の上で様々なものを回す芸)という、落語以外の芸にもスポットを当てています。
そして前作のあとがきで作家さんが予告された通り、今回は事件も起きてます。
一つはタイトルの通り、高座の上で起きた事件。
紐で封をされた葛籠の中から脱出するという芸の最中、葛籠と客の眼という二重の密室から消えた少女。
母親でもある手妻師は、別れた元夫が少女を誘拐したのだと騒ぎ出します。
蓋を開ければ、そう複雑でもない話なのですが、芸の世界に生きる人たちの苦労が分かる話です。
もう一つは独り立ちの試験として芸を見せている最中、やるはずのことをやらず、予定にならないことをやりだした太神楽師。
こちらは所謂日常系という感じ。
ただテレビ収録ではない、生の『寄席』という舞台ならではのことで、とても興味深かったです。
神田紅梅亭シリーズでも出てきますが、突然出てくれるはずの芸人さんが来れなくなってしまったり、寄席が始まっている最中に慌ててほかの芸人を探したり。その間前の芸人さんが話を長引かせたり。
こういうトラブルが日常茶飯事の『寄席』という世界が印象深く感じた話でした。
愛川さんの作品をいくつか読んでいる身としては、ところどころに他のシリーズのキャラの名前が出てくるのも楽しかったです。
今回は『ヘルたん』からあの人の名前が登場。元気で頑張っているようで良かったです。
あとがきによると、これからもそういう遊びをやってくれるようで、楽しみです。
父親の体調が良くなるまでという約束で勤めている『席亭代理』ですが、希美子の気持ちは少しずつ変化している様子。
元彼の出現もあって、これからの展開がますます気になります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ6月6日の表題にひかれて購読。
結構面白かった。
叙述ミスリードで、女性が二人いるのは割とすぐにわかったが、
過去だと思っていた回想が実は未来だとは思わなかった。
クリスマスイブが2回あるのと、女性が二人とも同じ名前で、
同じ過去を持ち、同じ男性を好きになっているから、ややこしい。
「イニシエーションラブ」、「葉桜の季節に君を想うということ」と並び称されるのいがわかる気がする。
ただ、一番主軸にもってきた女性の最後が悲しかったこと。
読み返して気づいた、クリスマスケーキの予約の名前。
あまりにも報われないので星4つにしました。 -
Posted by ブクログ
意外に評価が低いことにビックリ。個人的にはすごくおもしろかったです。
こういうトリックって今でこそわりとありがちですけど、初めて読んだ時はびっくりした。
そんでその謎を解くためのキーみたいなセンテンスは各所にきちんと散りばめられているんだけど、読んでて自分みたいな人間は「ん?」って一瞬なんか違和感覚えるんですけどその違和感がなんだったのか考えようとしてないから、後であー!って思う。それがすごい気持よかった。
あれです、鍵とかを無くした時って、よーく記憶を辿ると道を歩いてて一瞬「ん?」」って思ってる場所があるんですよ。なんか遠くで金属音を聞いたような気がしたとか、ポケットに手を入れた瞬間にあるべきものが無いとか。
そういうのってその時は注意してその違和感に意識を向けないから、後であー!あの時か。って思う。それとすごく似てる。
違和感を感じれるか。その違和感がどこから来るものか探し当てることができるか。そういう小説。