岸田秀のレビュー一覧

  • 歴史を精神分析する

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    官僚組織は本来国民のためのものであるにもかかわらず、自己目的化し、仲間内の面子と利益を守るための自閉的共同体となっている。p31

    日本国家の起源として、大陸および半島との現実的国際関係を否認して天孫降臨の神話、天から降りてきた神々が他国とは一切の関係をとらずおのれの力だけで独自に国造りをしたという嘘をでっちあげたところを出発点にしているのだから、歴史的必然性として日本で形成されるあらゆる共同体は自閉的共同体となる。

    他方でアメリカは文明の名においてアメリカ先住民を大虐殺するという欺瞞を出発点にしてはじまった国家であり、ときどき文明の名において野蛮な他民族(日本、ベトナム、イラクなど)を虐殺

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    2016年01月12日
  • ものぐさ精神分析 増補新版

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    前半の何章かは難しくて、なんとなく伝わってきても「ふーん」に留まってしまった。
    後半は興味深くて、物事の捉え方とか考え方とか、当たり前のようになっていたものに風穴を開けて考え直してみるキッカケをもらえた。

    これはまた歳を重ねた時に読んでみて、違う捉え方になっていきそうな本。

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    2024年09月27日
  • 希望の原理

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    久々の岸田秀。相変わらず他の著書と主論は全く変わらないが、本書は語りおろしという事で、これまで言ってきた論のオムニバス的集大成を一望できる趣向。
    「まあこれも正しくはないかもしれない」相対論的に語ることでリアリティがあり、好感が持てる。一年に一冊岸田することで精神衛生がある程度保たれる。健康診断みたいなものだな。

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    2015年06月05日
  • 希望の原理

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    唯幻ということを一旦カッコに入れて、岸田流の自我の扱いを見直してみれば、これは案外実用的なんだと改めて思った。

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    2013年07月31日
  • ものぐさ精神分析

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    2011/07/09

    最初は偏屈でいけ好かない本だと思っていたのだが、
    「性について」辺りから徐々に面白くなり、
    最後の「自己について」の章はするすると読み進められた。

    「自己嫌悪の効用 ──太宰治『人間失格』について」では、
    効用どころか、自己嫌悪がいかに自己欺瞞的であり、狡くて、
    自己中心的な詐欺の温床であるかを述べていて、
    少し行き過ぎとは思ったものの、内容は非常に痛快です。
    自分の純粋性を心底信じている人が読むと、酷く苦い思いを味合うかも。

    全体を通して著者の偏ったものの見方が目立つが、
    ある一面では、とても鋭く切り込んで物事を捉えているので、
    目を見開かされることも多かった本で

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    2011年07月09日
  • 不惑の雑考

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    おそらく出尽くした心理学の集大成で、これほど読み応えのある本はありませんでした。岸田洗礼を受けたのは私がまだ20歳くらいのとき。
    言いえてるのだけど、救いはありません。

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    2010年04月13日
  • 歴史を精神分析する

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    歴史を精神分析するって、面白い発想です。「自閉的共同体」は、官僚の行動原理の理解に役立つ整理だと思う。それにしても、極論だとは思うが、官僚行動が、300万人の日本人、1000万人の外国人を太平洋戦争で死に追いやってしまったわけで、恐ろしい話である。
    天皇は最初からお飾りであったとの分析は、結構強烈だ。日本人は滅亡した百済人の残党でもあるのかな。

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    2011年10月22日
  • ものぐさ精神分析 増補新版

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    「理性が発達したから、人間は良い知恵が増えた」と考えるのが普通であるのに、岸田さんは「理性が発達したから、人間は悪い知恵が増えた」とい言っている。
    この逆説には、何か、うさん臭いものを感じる。そのうさん臭さは何なんのか。しばらく、考えたり調べてりしていた。
    河合隼雄さんと岸田さんの対談も読んだが、河合さんは相手にしてない感じだった。岸田さんは、あくまでも評論家であって、学者ではないという感じの塩対応。
    しかし、私は岸田さんの言葉にはインパクトを感じる、これは若松英輔さんにも通じる感覚だが、要は教祖的素養というかタレント性ではないだろうか。
    しかし、冷静に考えると岸田説は退廃的というか進歩を感じ

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    2025年06月21日
  • フロイドを読む

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    著者がフロイトの思想に出会い、自己分析をおこなうことで、みずからの強迫神経症の原因である家族との葛藤を克服するにいたるまでのプロセスをふり返った本です。

    著者は、借金をしていないにもかかわらず、借金を返さなければならないという妄想に苦しめられたり、家に無断で外泊するという行動をくり返してきたといいます。そして、古本屋で見つけたフロイトの著作のなかに、自分とおなじような強迫観念に苦しめられている人びとを発見し、フロイトの理論を学ぶことで自身の強迫神経症の原因をさぐっていくことになります。

    その結果、著者が発見したのは、彼に惜しみない愛情をあたえつづけてきたと思い込んでいた母親が、自分のもとに

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    2020年03月25日
  • 出がらしものぐさ精神分析

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    サリンジャーや太宰治の作品をパトグラフィの観点から分析した論考のほか、著者が学生時代にスリ師の男と一晩酒を飲んだ体験など、心理学とはまったく関係のない話題をあつかったエッセイも収められています。そのほか、中公文庫版の『ものぐさ精神分析』正・続には収録されていない、著者の書評や、早稲田大学に提出された修士論文とストラスブール大学に提出された論文も収められています。

    早稲田大学に提出された「フロイド理論の発展と批判」では、フロイトの機械論的なリビドー説を批判し、人間の心理の発達を観念体系の発達としてとらえる見方が示されています。また、ストラスブール大学に提出された「ある一つの精神分析的人格理論」

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    2017年12月23日
  • 幻想の未来

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    唯幻論の観点から「自我」の解明に挑んだ本です。なお、文庫版の「解説」を執筆している小此木啓吾は、本書を「最も体系的な岸田理論の書」としています。

    近代以降、日本では「近代的自我」の確立の必要性がくり返し論じられてきました。しかし著者は、西洋の自我は唯一絶対の神によって支えられており、それを抜きに「近代的自我」だけを導入できると考えるのは誤りだといいます。

    人間は本能の壊れた動物であり、幻想的なナルシズムの状態でこの世界に生まれてきます。その後人間は、幻想的なナルシズムと現実との折り合いをつけるなかで、「自我」を確立しなければならず、この点では日本人も西洋人も変わりはありません。ただし、従来

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    2017年12月23日
  • 二番煎じものぐさ精神分析

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    『ものぐさ精神分析』の続編です。

    正編に比べると、テーマが多岐にわたっている印象がありますが、アメリカの精神分析をおこなった論考、唯幻論の立場から人間の性を考察した論考、笑いや憎しみ、怒りといった感情についての考察、そして、三島由紀夫や芥川龍之介、太宰治、サリンジャーらの精神分析をおこなった論考などがあります。その他、数学者の森毅や精神科医の小此木圭吾との対談も収録されています。

    著者の立場に完全に同意するわけではないのですが、著者の立場からどのような風景が見えてくるのかということに興味を覚えました。とりわけ性にまつわるさまざまな事象を、著者の観点から考えてみたとき、いったいどのような帰結

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    2017年03月18日
  • ものぐさ精神分析

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    著者の代表作であり、その思想のほとんどが、この本ですでに完成したかたちで提出されています。

    著者の出発点になっているのは、人間は本能が壊れた動物であるという認識です。本能が壊れたことで人間は現実から私的幻想の世界へと遊離するようになってしまったと著者はいいます。そして、そのような人間をどうにかして現実と折り合いをつけさせるために、各人の私的幻想の一部分を抽出して共同幻想をつくりあげる必要が生じたと主張します。

    国家や言語、性など、人間の諸文化を共同幻想として解釈する論考や、近代日本が、誇大妄想的な内的自己と場当たり的な対応に終始する外的自己に分裂してしまったという主張が展開される「日本近代

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    2017年12月23日
  • 史的唯幻論で読む世界史

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    「史的唯幻論」によれば、歴史とは、国家や民族が持つ幻想によって突き動かされるものである。共同体の幻想の中でも、「劣等感」というものこそ、人々を残酷な行動へと駆り立て、迫害や侵略を生んできたものであった。ヨーロッパによる黒人やユダヤ人差別の根底にあるのも、「劣等感」であるという。そうした感情が、やがて自己を正当化し、相手を「敵」とみなすことにつながっていく。

    極端な論調の部分もあったが、私個人はとても興味深く読めたし、歴史を読み解く重要な視点であるように感じられた。

    ただし、注意しなくてはならないのは、著者自身が述べているように、思想には常に個人的な背景というものがあり、それによってバイアス

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    2016年03月12日
  • 唯幻論大全

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    論法は昔とまったく変わっていなかった

    むかし昔の「ものぐさ精神分析」を読んで以来の再会だったが、このひとの論法はまったく変わっていなかったので、そこがかえって新鮮であった。

    フロイトの理論を踏まえて、「人間は性本能をはじめすべての本能が壊れているために現実を失い、茫漠とした幻想の世界に迷い込んだ哀れな動物である」という前提を是認すると、そこから著者が大展開する血わき肉おどるかの性的唯幻論、史的唯幻論世界に飛び込んで行くわけであるが、臆病かつ不敏な私はなかなかそこまでは明快に割り切れないので、いつまで経ってもこうやって現実界(外的自己)と幻想界(内的自己)のはざまをうろちょろしている仕儀とな

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    2013年05月06日