あらすじ
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小説より奇なる自己分析の物語。精神分析の話をさせたら、その面白さにかけて右に出る者のいない著者が、フロイドに初めて真正面から挑む。自らの生い立ち、母との愛憎などを素材として、ユニークな「自己分析」を展開、フロイド理論の基礎から核心までを具体的にあとづけ、「本能の壊れた動物」としての人間精神の深層に迫る。
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Posted by ブクログ
著者がフロイトの思想に出会い、自己分析をおこなうことで、みずからの強迫神経症の原因である家族との葛藤を克服するにいたるまでのプロセスをふり返った本です。
著者は、借金をしていないにもかかわらず、借金を返さなければならないという妄想に苦しめられたり、家に無断で外泊するという行動をくり返してきたといいます。そして、古本屋で見つけたフロイトの著作のなかに、自分とおなじような強迫観念に苦しめられている人びとを発見し、フロイトの理論を学ぶことで自身の強迫神経症の原因をさぐっていくことになります。
その結果、著者が発見したのは、彼に惜しみない愛情をあたえつづけてきたと思い込んでいた母親が、自分のもとに息子である著者を縛りつけ支配することを無意識のうちにもくろんでいたという真相でした。著者は、母親から愛されていないという真実を否認し、それを無意識のうちに抑圧してしまったために、さまざまな強迫観念に悩まされることになったのだといいます。
本書のフロイト解釈は著者独自のものとされていますが、自分の置かれている状況を了解するための手がかりとしてフロイトの精神分析学を解釈した著者の自己分析を通すことで、一見したところ荒唐無稽に見えるフロイトの理論のおもしろさに触れることのできる本ということができるかもしれません。