【感想・ネタバレ】史的唯幻論で読む世界史のレビュー

あらすじ

古代ギリシア文明は黒人の文明であり、古代インド文明を築いたとされるアーリア人は存在しなかった――。ヨーロッパが語る白人中心主義の歴史観が彼らの誇りを支え、今なお世界を覆っている欺瞞と危うさを鮮やかに剔抉、その思想がいかにして成立・発展したかを大胆に描き出す。史的唯幻論が、白人によって作りあげられた「幻想の世界史」を鋭く告発する。

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Posted by ブクログ

「史的唯幻論」によれば、歴史とは、国家や民族が持つ幻想によって突き動かされるものである。共同体の幻想の中でも、「劣等感」というものこそ、人々を残酷な行動へと駆り立て、迫害や侵略を生んできたものであった。ヨーロッパによる黒人やユダヤ人差別の根底にあるのも、「劣等感」であるという。そうした感情が、やがて自己を正当化し、相手を「敵」とみなすことにつながっていく。

極端な論調の部分もあったが、私個人はとても興味深く読めたし、歴史を読み解く重要な視点であるように感じられた。

ただし、注意しなくてはならないのは、著者自身が述べているように、思想には常に個人的な背景というものがあり、それによってバイアスがかかるものだということだ。この本にももちろんそれはあてはまる。「史的唯幻論」を生み出した岸田さん自身の背景についても本の中で述べられている。

そうしたバイアスをつねに自覚し、自分を客観的で中立だと思い込まないことが大切だ。この本のもっとも重要なメッセージはそこにあると思う。

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2016年03月12日

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