野尻抱影のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
◼️野尻抱影「三つ星の頃」
星の文人の短編集。明治・大正の時代を感じる素朴な話。惹きつけられるものがある。
私は、宇宙好き。なのに野尻抱影のことは寡聞にして知らなかった。星の文人として知られ、星の和名を調べ、冥王星の名付け親となった。そのロマン溢れる表現は日本のプラネタリウムの解説文に影響を与えたとか。小惑星の名前にもなってるらしい。
この短編集では星に関係した話は冒頭の表題作くらい。出版は1924年、大正13年で著者が39歳までに書き溜めた短編を集めたもの。「序にかえて」によれば、年ごろ学生のために、いずれも見聞した材料をもとに書いたものだそうだ。だからか、特に風俗の細かいところまで時代を感じるリアリティやおかしみがあり、構成・成り行きにテクニカルと相反する素朴な感じがある。ただ、妙に惹きつけられる。
14歳の俊輔は窒扶斯(チフス)で高熱を発し、ひと月も入院していた。ようやく熱が落ち着いたころ、夜中に目が覚めた俊輔は窓からオリオンの三つ星を見つけ、同時に自分を可愛がってくれた義姉の死が、胸に浮かび思わず「義姉さん!」と呟くー。(三つ星の頃)
表題作は優しい義姉への強い憧れと、冴えざえとしたオリオンの存在感、死の予感が深く重なる佳作だと思う。他の作品も学生向けに作ったからだろう、少年や学校、青年の話、ワクワクする、クスッとなる、また苦労する少年の、ハッピーエンド的な訓話めいた話も多い。
中では「悲しい山椒ノ魚」が面白い。山の学校に山椒魚が現れ、捕獲されて学校で飼育することに。ラストがなんか落語の結末みたいだ笑「追剥団」もいかにも子供向け読み聞かせのお話。
海軍の者が出てきたり、子供たちが軍歌を歌ったり、浴衣での山越え、学校の合図は喇叭、などなど自然に当時の様子が描かれ、読んでいてすっとなじむ。山の設定が多く、不思議と宮沢賢治を思い出す。解説は「銀河の図書室」ほかの作品の著者・名取佐和子氏。
星の文人の存在を知ることが出来たのはありがたい。長年本読みをしていても、星好きを自認してても、まだまだ耕すところは多い。野尻抱影の他の著作をぜひ読んでみたいと思う。お楽しみは、これからだ(^^) -
Posted by ブクログ
初めて読んだ随筆。
冥王星の、和名の名付け親だそうだが、星のエッセイが散りばめられている。
星というのは、時を経て今尚、人間が重ねる時間軸の中ではほとんど変わらないものに思える。
だからこそ、歴史上の人物たちが見上げた空に我々もまた、近いところには触れられる。
それでも、場所によって見られる星、そうではない星があったり。命を燃やした星の姿であったり。
違いがあって、面白い。
この本に収められている随筆の多くは1945年に書かれたものだった。
日本が大変な事態になっているときにしては、なんだか不似合いに静かで美しい話ばかりだ。
野尻抱影の視線を、もう少し追いたくなるのであった。