あらすじ
星の随筆家として活躍し、当時太陽系第9番惑星として発見された星の和名を「冥王星」と名付けた野尻抱影。いまなおその功績は輝き愛され続けているが、厖大な著作を世に放った野尻が大正13年に初めて刊行した本はエッセイではなく、若者たちに向けた小説集だった。少年の心を占めるオリオンの光が印象的な表題作「三つ星の頃」ほか自然の息吹を感じる11篇を収録。解説 名取佐和子
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解説で名取佐和子さんが「野尻抱影の名を見て、肩書きより先に<星>が浮かぶ人は多いだろう」(p200)と書かれている。私もそう思っていた。この『三つ星の頃』は一九二四年に研究社から出た短篇小説集で、初の単著だったとのこと。貧しくも精一杯生きている少年たちの姿が印象的で、たとえ東京が舞台であっても土と木々の濃い匂いが立ち込めているような作品がならぶ。病床にある少年が亡き義姉のことを思う表題作、博物学という分野がまだ現役だった頃の学校に迷い込んだ山椒魚の悲喜劇「悲しい山椒ノ魚」、学問を続けたいけれど周囲の大人に恵まれない少年の成長物語「職工の子」、親を殺した奴への復讐が天狗伝説を背景に行われる「天狗の罰」、奉幣使街道を舞台に追い剥ぎに追い詰められる中学生たちのハラハラドキドキの一夜「追剥団」が印象に残る。
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冬の星座といえばオリオン座。真ん中の三つ星が目立つ形で、冬の寒さと相俟って、とても印象的。
俊輔にとって、義姉の思い出と重なって、毎年見上げるのだろう。
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冥王星の名付け親、野尻抱影がしたためた、短編小説集。人間にとって抗いがたい、自然や病の脅威の中で、しかし強く、そして情に厚く自然を尊び生きる人たちの、生きる営みが、血の通った語りを通して描かれる。古めかしい言葉が多いけれど、そこまで読みづらくはないのは、やはりそこに血が通っているからではないかと感じます。序文で著者自身が述べていることですが、ここにおさめられているどの作品も、著者自身の経験や見聞に出発しており、まったく空想で描かれた小説とはやはり歯応えが違うなと思います。なんとも滋味深い一冊です。
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この夏は、大佛次郎記念館に野尻抱影の展示を観に行けたことがとても良い思い出になった
『三つ星の頃』は、星の文人として知られる抱影先生の自伝要素も濃い短編小説集。記念館の展示で先生の来歴や人となりに触れたからこそ、これらの作品をしみじみと味わえたのが良かった
どの作品も、自然描写が大変美しい 素朴な登場人物達にも、先生のお人柄を感じた