片岡義男のレビュー一覧
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片岡義男 短編小説集 「階段を駆け上がる」
■階段を駆け上がっていった
高村夏彦
ライカのストラップ
分厚い板張りの遊歩道
途中に踊り場をはさんで、その階段は上下ふたつに分かれていた。
その女性の姿が飛ぶように彼の後方へと移動した。
写真家として身につききった習性
踊り場に足をとめて振り向きながらライカを右手にとらえてフィルムを巻き上げ、ファインダーを右目へ持っていき、ファインダーと五十ミリ・レンズごしに、階段を駆け上がっていく彼女の姿をとらえたときにはすでに、ファインダーのなかの二重像は完璧に重なっていた。シャッター・ボタンを押し下げた瞬間に次ぐ一瞬のなかで、高村はふたたびフィルム -
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ある時期、片岡義男の小説にのめりこんでいたことがある。棚に揃えて悦に入っていた。
その後、何作か映画化されメジャーになって、角川文庫で赤の背表紙で統一された本を本棚に並べていたが、タイトルも装丁も似たようなものが多くなって、しかも昔と違う装丁(赤背表紙で統一)で出たりしたものだから、同じ本を二冊買ったりして、途中まで読んで気づいてとか...そのうちに熱が冷めた。
その裏で、片岡義男が文中に表現されているような、細かなこだわりで、万年筆やインク、原稿用紙にこだわっていたんだということを知り、しばし思い出に浸ることができた。
昔、片岡義男をたくさん読んだ人にはおすすめ。
あと、昔の MADE I -
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著者がこれまで読んだもの、見た映画などから、英語らしさを感じさせるフレーズをめぐるエッセイ。
英語の論理では、動詞が中心となるということ。また、Iとyouがなくてはならないこと。
この辺りは、今までの私の読書経験からも、納得できる。
正直、この本を読まなくてもそう思うかもしれない。
ただ、この人の感じる、それ以外の英語らしさ、文法に由来するものらしいけれど、それが掴み切れなかった気がする。
忙しい時に読んだのがいけなかったのか…。
それから、こういう英語を主題とする本には、横書きをしてほしい。
NHK新書でも、横書きの本はある。
英文の所へ来るたびに、とても読みにくい思いをする。 -
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美しい文章が、トマトや沢庵、コーヒーを媒介に世界に溶け込んでいく
先日、麹町・赤坂見附エリアをお散歩していた際に
COOK COOP BOOKさんに立ち寄って、
食に関する本を眺めました。
それで、気になったのがこの本です。
申し訳ないのですが、お名前は伺うのですが読むのが初めての
作家さんです。
ごく短い、短編が続々と続く中、「トマトを追いかける旅」
でトマトを追って世界中を旅する姿、絵が浮かびます。
片岡さん本人も行ってない、空想の世界なのに、
その空想世界に引っ張られる文章です。
沢庵ひときれが冬になり、コーヒー一杯が短編小説になる。
食べ物や飲み物を媒介に、世界に溶け込んでい -
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片岡義男の名前を見ると、
青春時代に思いが飛ぶ。
彼の作品に感化され
一度は本気でバイクの免許を取ろうかと、思った位。
生きた英語の言い回しはおしゃれに感じたし、
少し乾いた目線から見た人々の日常の
切り取りかたが、特に好きだった。
南佳孝の♪ウォンチュー。。。と、音楽まで聞こえてくる。
ひとしきり何作も片岡義男の作品を読んだものだ。
昔から、きらりと光る言葉づかいで
特に短編に良いものが多かった。
そんな片岡義男のわりと最近の作品集
前は気がつかなかったが『俳句』が好きらしい。
何遍も登場する。言葉の捉え方がうまいのだろう。
本人は凡作と言い切るが、しゃれてる。
久々に青春時代を思い出 -
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エッセイや短編小説が並ぶ。
片岡さんがご自身のコーヒーの淹れ方を書いている。これははじめて聞く話で、興味深かった。
日本人でコーヒーに凝る人には、どこか茶道のように作法を感じさせるところがある。儀式的とさえ思える。究極とか至高とかを指向し、これがベストに近い方法だと主張しているような。
ところが、片岡さんのコーヒーの淹れ方は違う。シンプルであり合理的であり、実用的だ、と私は思う。だからこそ、毎日数杯のコーヒーを淹れるにしても、それほど面倒にはならない方法だ。とってもいいと思う。
ただし、コーヒー通を自任する方々に、この方法はどうだろう?
少なくとも、クリアなコーヒーを好む方には適さない -
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片岡義男の小説に出てくる女性はいつも精神的に独立している。今回の7篇の短編小説もそうだ。そのほとんどが小説家や詩人など、孤独を肯定的にとらえて暮らす都会の女性が主人公だ。かたわらに男性が現れ、よどみのない会話から絵画的なまぶしさのある場面へと続く。
表題作には、平日の夜、偶然同じ電車に乗り合わせたイラストレーターの女性と翻訳家の男性が登場する。そのひと月ほどまえ、夏の陽ざしの只中で、彼女は220円の誕生日プレゼントを彼に渡した。色違いの水鉄砲を2丁。まずは彼が2丁を手にして彼女を、次に彼女が彼を射ち、そして並んで残りの水の全てを頭上に向けて射った……。この場面を機に、男性は小説の創作を決 -
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好きです。この感覚。自分がとてもシブい男になったような気にさせてくれます。四半世紀前、片岡義男さんの文庫本を大学生協で1割引で買い揃え読んでいました。かなりの頻度で新刊がでていたので、本のコーナーを覗くのが楽しみでした。あの頃は物語の登場人物が自分より年上だったけど、今回は逆転しており現実の時の流れを感じてしまいます。そのかわり、バーで出てくる酒を自分が知っているなど、良い事もあったので「良し」としましょうか。昔から、片岡義男さんの本の中に描かれるような人になりたいと思っていましたが、それは相叶わぬ夢です。(たとえば、登場人物が良く飲むペリエは手が出ず、サントリーの炭酸水か久里浜の井戸水でごま
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懐かしい。
書店の角川文庫の棚に「片岡義男」の赤い背表紙がずらりと並んでいたあの頃、片っ端から読んでいった。
私が「電話ボックス」ではなく「テレフォン・ブース」と言うようになったのも、無地の競泳用の水着の、その色が自分の肌や雰囲気に合っているか、なんてことを気にするようになったのも、この人の影響だ。
この人が描くようなかっこいい女性になりたい、と身の程知らずなことも夢想した。
角川文庫の赤い背表紙が番号順にすべて揃ってしばらく経って、いったん卒業しよう、と傲慢にもそんなふうに感じて手放してしまったけれど、最近またこんなものを見つけると手に取ってしまう。
以前とは、ちょっと違って読めるような気も -
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わりと初期の作品?
全体的に文章が技巧掛かっていてめずらしい感じ。あと小道具が多い。
「夜はまだ終わらない」
デザイナーの須美子の長い夜の話。
登場人物たちのセリフのひとつひとつが意味深で読んでいて面白い。
この本の中では一番「片岡作品らしい」感じ。
(あくまでも私が今まで読んだものをものさしにして、だけど)
こういう週末の夜を過ごせる大人の女性に憧れる。素敵過ぎる。
「連絡は、とれないわ。金曜日の夜なのよ、いまは」
ってセリフ、言えないものかねぇ…
「真夜中のセロリの茎」
酒井哲男、岸田洋介、山本奈津子、佐原優子がそれぞれの車に乗って連なって走っているシーンから物語は始まる