藍上央理のレビュー一覧
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文学フリマで購入した1冊で、「近畿地方のある場所について」に似たモキュメンタリー形式のホラー小説。インタビューを受ける鷹村翔太は幼い頃、北九州市に存在する廃墟に足を踏み入れ、ある不気味な「家族写真」を拾う。直後に背後から「完璧な家族になろう……」という不気味な囁きを聞く。インタビュアーはこの廃墟の謎を探る中で彼がその家に足を踏み入れた「目的」や「宿命」に迫っていく。
呪怨 (家に起因)+リング (伝播する呪い)+モニュメンタリーをがっちゃんこした感じ。怪異が直接的に危害を与えてくる感じではなく精神蝕む系で恐怖感よりは不快感を与えるような作品になっていた。
クライマックスにかけて明かされる謎が弱かったかもしれない(読む中で予想できる)。また急に明かされない謎が出てくるのは好みが分かれるところで読者の想像にお任せしますというやつなのかも。個人的にはもうちょっと伏線と明かされるカタルシスが欲しかったところ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの小説は、ホラー小説のネタを探す取材者が、九州にある一家惨殺事件の現場(廃墟)を訪れ、関係者である鷹村翔太にインタビューしながら進む。
物語はふつうの小説というより、音声の文字起こし、犯人の手記、取材メモなどの「資料」を読む形式で、モキュメンタリーっぽく作られている。
犯人は宍戸篤。最初は「こいつが全部悪い」と感じる。
でも読み進めると、篤がそうなるまでの家庭環境がひどく、同情できる部分もある。
父は会社社長だが借金を抱え、家族に暴力を振るう。
家は丁字路の突き当たりに建てられていて、風水的に良くない場所らしい。
さらに、呪いを鎮めるための石敢當を父が撤去してしまい、家に「黒い何か」が出入りするようになる。篤はそれが父の中に入るのを見た、と語っている。
家の中では、父の暴力で母は気絶するほど痛めつけられ、姉も篤も殴られる。
篤の手記を読むと、篤は満足な教育を受けていないのか、もともと知能が低いのか、判断力が弱く、状況を整理したり冷静に考えたりするのが苦手な人物に見える。
ある日、父は首吊り自殺する。
しかし宗教にハマっていた母は「父の魂をつなぎ止める」と言って、父の遺体を放置する。
遺体が腐って溶けるまで、そのまま家に置かれる。
篤は姉のことが大好きで、姉との間に子どもを作る。
これについて篤も姉も知識がなかったんだろうか……。
その子は母によって養子に出されてしまう。
篤が姉とヤッたことを母に隠していたせいで、母が「完璧な家族の上で必要がない」と判断したんだろうと思う。
姉はだんだん壊れていき、ついに母を惨殺して自殺する。
篤は帰宅して二人の遺体を見つけるが、母の考え方の影響もあって、魂が戻ると思い込み、遺体と一緒に1か月暮らす。
その後、逮捕されて入院する。
退院して家に戻ると、そこには別の家族が住んでいる。
でも篤にとっては「自分の家」なので、母と姉の死をなぞるように、その家族を惨殺し、遺体と2週間過ごす。
また逮捕・入院し、再び戻った篤は、最後はその家で自殺したようだ。
その遺体を発見したのが、冒頭でインタビューされていた当事者(=鷹村翔太)だった。
全体としてかなり残酷で、資料形式でリアルっぽく見せている。
ただ、私はリアルさが足りないと感じたし、終わり方もはっきりせずモヤモヤした。
母の宗教も意味不明で、篤や姉も判断が幼く、読んでいてイライラする場面が多い。
結局この物語は、誰も救われず、誰も幸せにならないまま終わる話だった。 -
Posted by ブクログ
静かな恐怖が心にガツンとくる。
血みどろのホラーじゃない。けど、「完璧な家族って何?」って疑問が、ページをバンバン捲らせた。
最初は洗脳の話かと思った。人の心を操る策略の小説かと。
だが、こいつはちゃんとしたホラーだった。モキュメンタリーの偽りのリアルが、まるで夜中に聞こえる誰かの足音みたい。
普段、モキュメンタリーは避ける俺だけど、この物語は読みやすく、するっと心に絡みついた。
ただ、独身男としては、この本読んで、結婚とか家族への憧れがますます遠ざかった気がする。
完璧な家族。その言葉、今の俺にとって、頭の中で色んな意味で不気味にざわつく。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ怖かった…けれど、
とにかく、今昔いつの世も結局悪いのは人間なのだ。
ひとりの狂人の手によって歪に成らざる得なかったある家族、外への救いが望めない状況の中、内へ内へと進む中で子供たちは閉じた円環を結び、
その輪こそが完璧な家族となる。
やがて全員が死に絶えてもその輪は残り、新たな家族をその内に次々と取り込んでゆく。
そして、
そこで起こったそれらの事件の語り部こそが、我知らず円環の中央に座する者だったとは!
怖さは勿論、それ以上に気分の悪い物語だった。
作者自身も恐らくはそれを意図してこの作品を紡がれたのだと思う。
それも一つの悪意なのだろう。
2025年現在そしてその界隈、世界ではあちこちで暴力とそれに伴う怨嗟が渦巻き、日々それらの情報は刷新されて地球上を席巻する。
我々にとってセンセーショナルだったニュースはやがて耳慣れたただの情報へと変わり、心は麻痺を起こす。
麻痺するという事は知らず知らずのうちにそれらを受け入れているに他ならない。
静かに悪意と暴力を咀嚼しているのだ。
かくして、新たな悪の胚芽が誕生する。