大沼保昭のレビュー一覧
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日本の歴史認識は、この本が決定版だという事にしたら駄目かな。正直、外交における戦略的態度、国民向けのポーズ、平和主義的な偽善がごちゃ混ぜになって議論の質が下がって、分かりやすいように「右と左」にハッキリ離れていないと、その立論が難しい人たちが一定数存在する。
30万人の虐殺は無かったというのは国際的にも否定派が主流だが、戦争法への違反があったのは事実だし、賠償放棄した国に対し、その感謝は忘れて逆撫でするような世論形成もしている。仮に、戦争せざるを得ない状況に追い込まれていたとしても、そうした状況と結果的にそれを回避せずに戦争を起こした責任は免れない。
本書ではそうした中立的な言説が述べられ -
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歴史認識は、加害側被害側それぞれで見方が異なり、そこにイデオロギーが入るため真逆の認識となり、どちらが正しいかの答えが出るものではない。本書は今の世情で色分けするなら、左側の主張にも見えるが、論理主張が合理的かつ公平で、色分けして考えることがナンセンスに感じた。善悪二元論ではなく、自分なりの考えを持つには、客観的公平に書かれた資料から判断し、自分なりに咀嚼するしかないと改めて思えた。人間が書いている以上、当人の主観や価値観が入り込むのは当然で仕方ないが、本書は偏った思想に立脚しないように客観的事実と合理的な思考を提示する努力が感じられ、自虐でも独善でもなく、左右の色分けなしに言うべきことは主
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ネタバレ韓国などと「歴史認識」問題について大もめにもめるようになった時、そもそも「歴史認識」とは何ぞや?そんなもの百人いれば百通りあるだろう?と謎に思って勉強しようと手に取った本。
「日本では1990年代以来、「歴史認識」はある特定の歴史にかかわる言葉としても使われている。」
(はじめに ⅰ)
第一次世界大戦以降の戦争と、日本の他欧米列強の植民地支配問題から、戦後日本がどのように戦後処理、戦争賠償問題にとりくんできたか流れがよくわかりました。冷静な文章でできるだけ偏りがないよう解説をされているのでとても読みやすく、謎に思ってたこともすっと頭に入りました。良書だと思います。
慰安婦問題は世界的な人権 -
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某所読書会課題図書.1931年の満州事変から1945年の太平洋戦争敗戦を踏まえて、東京裁判とサンフランシスコ講和条約の概要を冒頭に述べ、戦争責任さらに戦後責任の議論が続く.戦後間もない時代は、戦争に対する被害者意識が全面で、加害者でもあったことを認識することはなかった由.その通りだと感じた.慰安婦問題の議論で、女性の人権を考慮することが主流化されてきた現代の動きを、改めて考えることの重要性が強調されていた.同様の考え方で、謝罪の時代が始まったとの指摘もあった.欧米列強は日本やドイツの謝罪には文句を言うものの、自分たちの植民地政策等は一切反省していない.その点を日独が諭して、彼らの発想を正しくす
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日本と韓国の関係悪化が止まりません。
従来から懸案だった竹島問題や慰安婦に加えて、徴用工訴訟における日本企業への賠償命令判決、レーダー掃射問題と課題続出です。
両国政府とも先方の責任を主張するのみで、出口が見えないスパイラルに陥っています。
本書は、国際法の泰斗による市民向けの入門書。とはいえ、国際法を体系的に理解しつつ個別論点についても幅広にカバーしていて読み応えのある内容になっています。
国際法の成り立ちから始まり、国内法との相違点や、環境や人権など新たなトピック、戦争と国際法など、興味深い知見がたくさん披露されます。
〇国際法は二国間の条約や協定だけでなく、ガットなどの多国間協定、国 -
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江川紹子が慰安婦問題について 2013 に取材を申し込んだところから始まっている。大沼氏から江川氏に共同作業を申し込む形で、インタビュー形式の本書が成立している。主張が分かれ対立する主題に関するわかりやすい見取り図を提示している。
話題は、東京裁判、サンフランシスコ平和条約、日韓・日中の正常化、戦争責任と戦後責任、慰安婦問題にわたっている。2015 年までの時間の流れの中で、南京問題や慰安婦問題をどう考えたらよいかの指針となる。
現在騒がれていることは、本質を外していると思えてならない。
中共が賠償を放棄したこと、
一方、戦争と植民地支配の責任認識に関して、敗戦国の日独は進んでいて、戦勝国 -
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確かに、現在「歴史認識問題」と言えば、韓国併合から満州事変、太平洋戦争を経て、その戦後処理に係る日韓、日中の対立を限定的に指している。靖国参拝、竹島や尖閣諸島、慰安婦といった問題は、それなりに報道に注視し、親と語らい、解説書や小説を読むことで、自分なりに認識しようと努めてはきたけれど、容易じゃない。感情を排するのは無理だから、多様な角度から学ぶことで素直な感情を抱きたい。けれども、他国の激しく執拗な批判や、自国の政治家の言わずもがなの繰返しに憤り、冷静を保てない。本書で改めて学ぶに、この問題は今後「きっぱりと加害と被害に分ける二分法的な物言い」に辟易しつつ、自負と呵責の狭間で揺れ続けることが大
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著者は2004年に東大で慰安婦問題を通して歴史を考えるゼミを実施、村山富市や上野千鶴子などそうそうたる講師を招くが、当初ご受講登録者はたった1名。焦って二次募集を行いやっと9名集めたらしい。そのゼミの内容をもとに慰安婦問題に関する本を発行したらしい。
東京裁判、サンフランシスコ講和条約などについて、アメリカや中韓の認識など書かれていてわかりやすい。A級戦犯が祀られている靖国神社を参拝すると中国から猛烈に批判されることについては、周恩来が「感情で政策を決めてはならない。日本の人民も一部の軍国主義者の犠牲者だ」と言って戦後賠償を放棄したから中国人民と日本人民の共通の悪であるはずのA級戦犯をなぜ参拝 -
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東京裁判、日中国交正常化なども重要論点だが、慰安婦問題にも紙幅を割く。
「強制連行」などの史実にかかわる部分については、「ないものはない」と歴史学者としての冷徹な分析を徹底しつつ、一方で問題そのものについての日本の道義的責任は回避できない、との立場。
同時に、アジア女性基金の設立、歴代日本国首相による直筆の「手紙」の被害者への手渡しなど、国際的な類例(典型的にはナチス政権を反省するドイツ)と比較しても決して恥じるべきではない、むしろ先進的で踏み込んだ謝罪も行ってきている、という点も強調(そしてそのことが韓国国内で全く知られていないことのPR不足への指摘も)。
右派左派双方の論客から批判的に