あらすじ
日中・日韓関係を極端に悪化させる歴史認識問題。なぜ過去をめぐる認識に違いが生じるのか、一致させることはできないのか。本書では、韓国併合、満洲事変から、東京裁判、日韓基本条約と日中国交正常化、慰安婦問題に至るまで、歴史的事実が歴史認識問題に転化する経緯、背景を具体的に検証。あわせて、英仏など欧米諸国が果たしていない植民地支配責任を提起し、日本の取り組みが先駆となることを指摘する。
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嫌韓・嫌中、戦争責任など。極端な意見のぶつけ合いになりやすい問題について分析し、どう取り組みべきかをわかりやすく示してくれる。日本がこれまでやってきた戦後処理について自虐や独善に陥ることなく、日本が世界に先んじて進めてゆこうと。誠実な学者の仕事。とても良い本だった。
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日本の歴史認識は、この本が決定版だという事にしたら駄目かな。正直、外交における戦略的態度、国民向けのポーズ、平和主義的な偽善がごちゃ混ぜになって議論の質が下がって、分かりやすいように「右と左」にハッキリ離れていないと、その立論が難しい人たちが一定数存在する。
30万人の虐殺は無かったというのは国際的にも否定派が主流だが、戦争法への違反があったのは事実だし、賠償放棄した国に対し、その感謝は忘れて逆撫でするような世論形成もしている。仮に、戦争せざるを得ない状況に追い込まれていたとしても、そうした状況と結果的にそれを回避せずに戦争を起こした責任は免れない。
本書ではそうした中立的な言説が述べられる。自虐史観から抜け出た後に読むと、若干左寄りに感じるような気もする。しかし、記載内容はとても冷静で慎重、そして客観的だ。歴史の慣例で言えば戦勝国による即決処刑もできたはずだが、東京裁判を何故開いたのか。
ー 世界史のうえでも、日本史でも、長年の歴史のなかでは、負けた側の責任者を裁判なしで処刑する、あるいは自決させる、ということがおこなわれてきました。その人間に利用価値があれば、むろん生かしておくこともある。いずれにせよ、勝者の政治的裁量に委ねられていたわけです。こうした歴史のなかで、最初に国際裁判が試みられたのは、第一次大戦のあと、戦勝国側がドイツの戦争責任者であったカイザー(皇帝)のヴィルヘルム二世を裁判にかけようとしたときです。ところが、彼は敗戦後オランダに亡命してしまいます。戦勝国側は引き渡しを要求したが、オランダは「政治亡命者だ」として引き渡さなかった。それでカイザーを裁くことはできなかった。他のわずかな者の裁判はおこなわれたのですが、きわめて限定的・形式的で、有名無実といっていいものになってしまいました。ですから、国家の最高指導者を含む戦争責任者を国際法で裁く大がかりな裁判というのは、ニュルンベルクと東京の裁判が、史上初だったわけです。実は、連合国が戦時中ドイツの戦後処理について話し合ったとき、即決処刑を主張する意見もかなり強かったのです。イギリスのチャーチルも即決処刑を主張したのですが、意外なことにソ連のスターリンが、「裁判の手続きをふまずに処刑してはならない」と反対しています。
ー 日本はこれを自衛と主張しましたが、実際には不戦条約と、日本を含む関係九カ国が中国の主権、独立、領土保全を尊重することを約束した九カ国条約に違反した武力行使であることは明らかでした。こうした認識は当時の国際社会で広く共有されていました。東京裁判は満洲事変から四五年までの日本の戦争を全体として違法な侵略戦争としています。この判決は、その限りでは世界中の多くの国際法学者、歴史家によって支持されているといえるでしょう。ただ、違法であるということと、犯罪であるということとは、別問題です。日本が国際法上違法な戦争をやったからといって、国家指導者がそれについて刑事責任を問われることにはならない。罪刑法定主義という近代法の原則に立てば、どのような行為が犯罪に当たるのかは、あらかじめ法で明らかにしておかなければならない。不戦条約は戦争を違法としましたが、違法な戦争をおこなった者が個人として刑事責任を問われるということは規定していない。一九三一年の満洲事変だけでなく、三七年の日中戦争、四一年の真珠湾攻撃とマレー半島上陸作戦の当時も、国際法上達法な戦争をおこなった者が刑事責任を問われるという観念は確立していなかった。ですから、東京裁判は侵略戦争の認定という点では正しかったわけですが、「平和に対する罪」で被告人を裁いたという点では事後法による処罰であり、近代法の基本原則に反するという批判を免れない。
従軍慰安婦について。
ー 「強制」についていえば、朝鮮半島からの徴募については、物理的な力をもって強制的に連行されたというケースは、これまでの実証研究をみる限り例外的だったようです。この点で、韓国で一般的に抱かれている慰安婦のイメージは正確でないといえるでしょう。ただ、慰安婦制度は韓国だけの問題ではありません。実際、インドネシアのオランダ人女性の場合は、インドネシアを占領した日本軍に強制収容所に入れられ、そこから強制的に慰安婦にさせられました。フィリピンでは、戦場となった村などで日本軍が女性を強姦し、そのまま連れて行って慰安婦にした例が少なくない。中国でもそうしたケースがあったという研究がある。感安婦にさせられたオランダ人の場合は、明らかに強制があったし、朝鮮半島でも、民間業者の背後には日本の官憲の存在があったというケースが多かったと考えられます。
歴史的議論も結局は証拠を見ながら参加する事は叶わないから、誰かの意見を参考にしながら自分自身の意見を持たねばならない。その時「自分はこうした立場が好ましい」というバイアスがあったり、そもそも論理を掴めない場合は、参加が難しいのだろう。陰謀論に絡め取られたり、対立構造に飲み込まれるのは、そうしたケースが多い気がするが、悲しいかな、議論への参加意欲と立論能力のギャップが無用な闘争を生みだして止まない。
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歴史認識は、加害側被害側それぞれで見方が異なり、そこにイデオロギーが入るため真逆の認識となり、どちらが正しいかの答えが出るものではない。本書は今の世情で色分けするなら、左側の主張にも見えるが、論理主張が合理的かつ公平で、色分けして考えることがナンセンスに感じた。善悪二元論ではなく、自分なりの考えを持つには、客観的公平に書かれた資料から判断し、自分なりに咀嚼するしかないと改めて思えた。人間が書いている以上、当人の主観や価値観が入り込むのは当然で仕方ないが、本書は偏った思想に立脚しないように客観的事実と合理的な思考を提示する努力が感じられ、自虐でも独善でもなく、左右の色分けなしに言うべきことは主張しており、自分の考えを整理する一助になる良書と思われた。
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村山談話にも関わった著者なので偏りが大きいかと思ったら、非常にバランスの取れた批判が多く、特にリベラルや左派への批判はとても考えさせられました。
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韓国などと「歴史認識」問題について大もめにもめるようになった時、そもそも「歴史認識」とは何ぞや?そんなもの百人いれば百通りあるだろう?と謎に思って勉強しようと手に取った本。
「日本では1990年代以来、「歴史認識」はある特定の歴史にかかわる言葉としても使われている。」
(はじめに ⅰ)
第一次世界大戦以降の戦争と、日本の他欧米列強の植民地支配問題から、戦後日本がどのように戦後処理、戦争賠償問題にとりくんできたか流れがよくわかりました。冷静な文章でできるだけ偏りがないよう解説をされているのでとても読みやすく、謎に思ってたこともすっと頭に入りました。良書だと思います。
慰安婦問題は世界的な人権意識の高まりが背景にある(特に女性の人権)。
欧米諸国は植民地支配の責任は認めていない。(だからといって日本だけ批判されるのは不公平だという論もおかしい)
ドイツと日本の差はアピール力の差かな、と。
帯にある、「自虐でも、独善でもなく」という言葉にこれからの日本が進むべき道を示されているように思う。
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国際法学者の大沼氏にジャーナリストの江川氏が聞き役となり歴史認識について問う。日中、日韓において歴史認識の相違が大きな問題として残っている。加害者側、被害者側、それぞれの立場からお互いの立場を思いやる余裕があればと思うが、現実には疑心暗鬼となってしまうのだろう。問いに対する答えとしたスタイルで歴史認識の問題を取り上げて説明している。とても分かりやすい。
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某所読書会課題図書.1931年の満州事変から1945年の太平洋戦争敗戦を踏まえて、東京裁判とサンフランシスコ講和条約の概要を冒頭に述べ、戦争責任さらに戦後責任の議論が続く.戦後間もない時代は、戦争に対する被害者意識が全面で、加害者でもあったことを認識することはなかった由.その通りだと感じた.慰安婦問題の議論で、女性の人権を考慮することが主流化されてきた現代の動きを、改めて考えることの重要性が強調されていた.同様の考え方で、謝罪の時代が始まったとの指摘もあった.欧米列強は日本やドイツの謝罪には文句を言うものの、自分たちの植民地政策等は一切反省していない.その点を日独が諭して、彼らの発想を正しくするべきだとの主張は大賛成だ.
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江川紹子が慰安婦問題について 2013 に取材を申し込んだところから始まっている。大沼氏から江川氏に共同作業を申し込む形で、インタビュー形式の本書が成立している。主張が分かれ対立する主題に関するわかりやすい見取り図を提示している。
話題は、東京裁判、サンフランシスコ平和条約、日韓・日中の正常化、戦争責任と戦後責任、慰安婦問題にわたっている。2015 年までの時間の流れの中で、南京問題や慰安婦問題をどう考えたらよいかの指針となる。
現在騒がれていることは、本質を外していると思えてならない。
中共が賠償を放棄したこと、
一方、戦争と植民地支配の責任認識に関して、敗戦国の日独は進んでいて、戦勝国は緒にもついていないと感じられる。「知識人」とされる人でも、植民地支配を肯定的にしか捉えられずにいる様子。
日本にしても、戦後二十年ほどの認識は実に貧弱。
第一次大戦後に戦争が国際法で違法化された画期的時期に満州事変を起こすという情勢認識能力の欠如も目を覆うようだ。人種差別も、自分が差別されることには抵抗しつつ自分が差別する側に回りたいだけだったこと。
満州事変を批判した横田喜三郎は脅迫に遭って沈黙したが、国際連盟脱退に反対した石橋湛山は正しいことを言い続けて逮捕されずに生き延びたことも教えられた。
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確かに、現在「歴史認識問題」と言えば、韓国併合から満州事変、太平洋戦争を経て、その戦後処理に係る日韓、日中の対立を限定的に指している。靖国参拝、竹島や尖閣諸島、慰安婦といった問題は、それなりに報道に注視し、親と語らい、解説書や小説を読むことで、自分なりに認識しようと努めてはきたけれど、容易じゃない。感情を排するのは無理だから、多様な角度から学ぶことで素直な感情を抱きたい。けれども、他国の激しく執拗な批判や、自国の政治家の言わずもがなの繰返しに憤り、冷静を保てない。本書で改めて学ぶに、この問題は今後「きっぱりと加害と被害に分ける二分法的な物言い」に辟易しつつ、自負と呵責の狭間で揺れ続けることが大切に思う。
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日本と中国と韓国の間で起きてきた歴史的事実は、理想と現実のはざまで両国が国民の納得を得られる苦心を積み重ねられてきた約束事やいきさつ、取り決めがある。それを一言で言い表すこと、説明することは難しい。
そう感じさせる内容です。
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難しい問題「慰安婦問題」「侵略戦争問題」。その問題に対しての「歴史認識」の違いやこれからどう未来に進んでいくか。考えさせられる作品であり、語り手である大沼氏、聞き手である江川氏のやりとりも非常にわかり易く説明していただいていたと思う。
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ある意味、日本人としては読みにくい著。
愛国心や日本人として自認する中で、批判的に書かれているものの、事実がこうで、何故日本やドイツだけがこのように叩かれるのかということも書かれている。ネトウヨ本などが出る昨今に於いては何がfactなのかを確認しないものも増えている。この本は国際法の学者によるものであり、権威でもある方の著。信用なる内容で、自分の経験なども書いている。歴史認識問題を解決する中でマスメディアや各種のイデオロギー対立なども鮮明に書かれており、良書だと思う。
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聞き手語り手の形で書かれているのでとても読みやすかったが、考え続けるべきことをたくさん受け取った本。
自分と違う意見なも耳も傾けて考えていくこと。
論破、というのがもてはやされている今、考えるために大事な1冊。
次の日世代に少しでもましな状態を引き継いでいくには。
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著者は2004年に東大で慰安婦問題を通して歴史を考えるゼミを実施、村山富市や上野千鶴子などそうそうたる講師を招くが、当初ご受講登録者はたった1名。焦って二次募集を行いやっと9名集めたらしい。そのゼミの内容をもとに慰安婦問題に関する本を発行したらしい。
東京裁判、サンフランシスコ講和条約などについて、アメリカや中韓の認識など書かれていてわかりやすい。A級戦犯が祀られている靖国神社を参拝すると中国から猛烈に批判されることについては、周恩来が「感情で政策を決めてはならない。日本の人民も一部の軍国主義者の犠牲者だ」と言って戦後賠償を放棄したから中国人民と日本人民の共通の悪であるはずのA級戦犯をなぜ参拝するのかという認識、と分かりやすい。でも著者の認識で説明が終わっているところも結構多い。「東京裁判は寛大な判決だった」は東京裁判に関する本がいくらでも出ているから良いとして、サンフランシスコ講和条約はこの本で読んでも中国韓国インドが参加しなかったり、ソ連が調印しなかったり、アメリカが独善的に進めたことがわかるのに、「寛大だった」で終わっている。日本は市民を無差別に大量殺害した原爆や空襲についてアメリカに賠償請求をするべきではなかったのか?このことについては著者の考えだけで完結しないで先勝国の歴史認識という観点でもう少し掘り下げてほしかった。
ところで、東京裁判では7人が死刑、有罪は25人。BC級戦犯が1000人以上死刑になったことを思うと寛大な処置。世界で日本のBC級戦犯がそんなに死刑になっていたことを今さら知った。
戦勝国による裁判なのでアメリカの原爆投下などは弁護側が取り上げようとしても許されなかった。
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第5章「21世紀世界と歴史認識」の素晴らしさよ。
世界の近現代史をこれほど的確にまとめ、それぞれの立場の歴史認識がいかに不確実であるかを説いている内容に感銘を受けた。
右派左派的な自らの立場に囚われすぎた本や報道が多い中で、貴重な本だと思う。
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どちらかと云えば自分は右寄りなので、最初から日本の侵略戦争を前提としたお話には、読み進めるのに抵抗もあったが、何と言っても日本軍が1000万人以上の人々を殺戮したという事実は直視するしかないというスタンスに立ち戻れば、しごく真っ当なお話でした。
そんな著者でも、韓国メディアの反日姿勢の強さは異常だと感じておられたようで、我々俗人と同じで安心しました。
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東京裁判、日中国交正常化なども重要論点だが、慰安婦問題にも紙幅を割く。
「強制連行」などの史実にかかわる部分については、「ないものはない」と歴史学者としての冷徹な分析を徹底しつつ、一方で問題そのものについての日本の道義的責任は回避できない、との立場。
同時に、アジア女性基金の設立、歴代日本国首相による直筆の「手紙」の被害者への手渡しなど、国際的な類例(典型的にはナチス政権を反省するドイツ)と比較しても決して恥じるべきではない、むしろ先進的で踏み込んだ謝罪も行ってきている、という点も強調(そしてそのことが韓国国内で全く知られていないことのPR不足への指摘も)。
右派左派双方の論客から批判的に読まれているようでもあるが、マスコミで取り上げられる「歴史認識問題」について、「学者」の冷静な整理をコンパクトに読みたいというニーズにふさわしい本と思う。
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特別なニュアンスを持ってしまった「歴史認識」という言葉。
特に、著者が注力したアジア女性基金が批判にさらされた経緯と行間からにじみ出る苦悩が印象的であった。聞き手の江川紹子氏がさすがの力量と思われる。
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最近よく見られる日本の近代史についての本は、かなり偏った下品な論調の目立つものが多いが、本書は日本の近代史について、バランスの取れた意見がまとまっていて、とても勉強になった。特に著者が直接関わっておられたアジア女性基金について、一般の報道などでは語られない事情にも触れていてかなり参考となる。
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「歴史認識」とは、日本人として、日本の近代史をどう考えるのか、ということだ。著者は、この問題について頭で考えただけの人ではない。アジア女性基金理事として多くの人との対話を重ねる中で試され、磨かれた末に得たであろう、実の詰まったことばで、この難しい問題をていねいに説明してくれている。
とくに慰安婦問題については、韓国の問題ばかりがクローズアップされるが、オランダやインドネシア、台湾などの慰安婦もいたこと。それらの国々には「アジア女性基金」などの取り組みを通じて、首相の手紙を渡したり、資金的な援助をしたり、いろんな活動を行ってきたこと。ただ韓国だけは、「国家補償」にこだわる支援団体の頑なな対応がゆえにうまくいっていないことなど、交渉に当たった当事者としての言葉だけに重みがある。
日本はたしかに近代化の過程でとくにアジアの諸国に多大な迷惑をかけた。それを「解決」しようと思ってはいけない。「侵略じゃなかった」とか否定するより、間違いは間違いと認めてはじめて、かつての植民地支配について「謝ってもいない」欧米諸国とは違う立ち位置に立てるのだという指摘、実にそうだなぁと思う。
Posted by ブクログ
国際法学者としてのキャリアが、史実を恬淡として読み解いておられると感じた。
歴史修正主義者の発する言動は、少々暑苦しいところがあるが、大沼氏の説明には肩の力が抜けており、戦前戦後の日本の歩んだ道の概略として解りやすいものがあった。
第5章 二十一世紀世界と「歴史認識」において、英仏・米などの植民地責任が今後問われる可能性に言及されている。
日本が戦後取った戦争責任は堂々と世界に誇れるものだとの認識に国民も胸を張れという。
江川紹子さんの聞き方もさりげなくていいものでした。
Posted by ブクログ
戦後70周年の今年(2015年)、先の大戦が再び注目されている。特に周辺諸国との関係で歴史認識は重要な要素になっている。太平洋戦争とそれに付随する様々な問題。日本は加害者と被害者の両側面を持っており、認識が複雑になっている。著者は基本的に東京裁判史観を肯定的だが、過度に自虐史観に陥るのではなく、戦後の日本の取り組みで誇れる部分もあるとしている。特に強調しているのは俗人に視点というもので、よく議論でありがちな非現実的な思想を批判している。個人的に共感する考え方だった。
Posted by ブクログ
「歴史認識」に関わる見取り図。戦争・植民地支配・人権への国際社会全体の捉え方が20世紀を通じて大きく変わり、法的に解決されたつもりだった問題に見直しが求められるようになったこと。日本国民に、反省をしつつも不公平さへの割り切れない思いが存在していたこと、中国韓国の被害者意識の矛先が日本に向けられやすいこと。
よくある反論ポイントをきっちり質問し、納得できる回答。捉え方や考え方が示されていてわかりやすかったです。