金子光晴のレビュー一覧

  • どくろ杯

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    しらけわたった天地が、悠久につづいて、かなしさが霧のように茫々と立ちこめている。感傷だけが、ひそひそと溝河のせせらぎのように底にながれている。

    ↑5年前の自分が線を引いていた箇所

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    2010年08月12日
  • どくろ杯

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    日本て変わったなぁという気持ちと
    人間て変わらないなぁという気持ちと、両方。
    大正から昭和初期にかけての時代の空気に触れて単純に今との違いに驚いた。
    成功も失敗も自己責任だよというドライな個人主義がないかわりに
    目も当てられないような貧富の差や階級の差がある。

    40年も前のことを振り返っているからか、
    あくまで淡々とぶれも乱れもない確かな筆致で、
    波乱万丈な内容とのギャップが素敵。
    漢学の深い教養に裏打ちされている硬質な文体の合間に
    詩心爆発の溢れる寸前で抑制された情緒を湛える色気のある文章が混じって
    魅力的。この人の観察眼と文体は大好き。

    続編の『ねむれ巴里』、『西ひがし』も読みたい。

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    2010年05月09日
  • どくろ杯

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    すさまじい、としか感想の浮かばない、とんでもない放浪記だ。昭和のはじめ、金子光晴は、生まれたばかりの子供を日本に置いたまま、妻の森三千代を伴い、上海を皮切りとする5年間におよぶ放浪をはじめる。潤沢に資金があるわけではない、どころか、旅先でお金を稼がないと暮らしてもいけないような状態での放浪である。放浪する、というより、むしろ、どうやって「生きのびる」かがテーマになるような貧困の中での放浪だ。そのようなすさまじい放浪であるにも関わらず、筆者はそれを、あっさりと、むしろ淡々と記述している。それは、筆者がこの放浪記を書いたのが、旅を終えてから40年を経た後の筆者の人生の晩年であったからだろう。まるで

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    2011年07月25日
  • どくろ杯

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    『こがね蟲』で詩壇に登場した詩人は、その輝きを残し、夫人と中国に渡る。長い放浪の旅が始まった青春と詩を描く自伝。〈解説〉中野孝次

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    2009年10月04日
  • どくろ杯

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    主人公とその妻の放浪。戦前の話でまだ海外に行く日本人は少なかったであろうが、活路を見出そうとする貧困者に交じり上海に上陸する。無銭に近い状態で縁故を頼り、また見捨てられもせず、香港やジャワにも渡る。目的地はパリなのに費用がなく遠い。自然だけでなく、女衒や影の実力者など生々しい。街のすえた匂いまで漂ってきそうだ。2025.7.14

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    2025年07月14日
  • どくろ杯

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    大正期の詩人が妻と共に上海へ旅立つ話。

    子供を日本において、金もあまりなく上海に行ってしまうクレイジーな筆者が、当時の混沌とした上海の生活を描く。

    改行が少ない文字がびっちりの本だが、美しい文体でなせまか読めてしまう。

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    2022年06月15日
  • どくろ杯

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    自伝三部作の第一弾。

    詩集『こがね蟲』でデヴューをかざるも、先ゆきが見通せない境遇にあった著者が、妻となる森三千代と出会い、彼女とともに上海へわたり放浪生活を送った経緯をつづっています。

    関東大震災のあと、画家の卵だった牧野勝彦のさそいにおうじて彼のいる名古屋に寄宿することになった著者は、文学や芸術に傾倒する若い仲間たちに囲まれて暮らしていたところ、牧野から三千代を紹介されます。女流詩人となることに願っていた彼女は、『こがね蟲』によって詩壇に登場した著者に寄り添うことになったものの、貧乏な生活は彼女のあこがれていたものとは異なり、著者のもとを出てしまいます。しかし著者は、そんな彼女に対する

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    2022年03月31日
  • じぶんというもの 金子光晴老境随想

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    最晩年(40年以上前)のエッセイを編集したもの。時代を示す言葉がなければ、そうとは気づかないぐらい、言葉も文体も若々しい。Ⅰ部は高校生向けなので、やさしく書き起こしているが、かえってわかりにくいところもある。自殺、反抗については共感できますが、恋愛については言いきれてないように感じられました。Ⅱ部は本を巡って、Ⅲ部は老境を巡ってとでもなりますか。ヤマザキマリさんのイラストがすばらしい。

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    2016年04月10日
  • どくろ杯

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    お金がなくても働かなくてもなんとかなるもんだ。底辺の生活が凄まじいのに、のらりくらり。ついてく三千代さんがすごい。
    人間の料理法って、支那人怖いなぁ。

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    2014年05月21日
  • どくろ杯

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    ネタバレ

    「こんな人間には(金子光晴本人)、誰もかかりあわないことだ。避けることだ。」でこの小説は終わっている。私もそう思う。谷崎潤一郎の痴人の愛」
    の主人公を彷彿とさせる。「うんこの太そうな女」には腹をかかえて笑った
    不意打ちを喰らったのだ。写真の風貌も飄々としていて面白い。
    どん底と言うよりは能天気な金子ワールド

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    2012年12月15日
  • どくろ杯

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    高田連のライブで、吉祥寺のさかえ書房がAUショップになってしまったときいて再読。

    爪をたてて生きる。

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    2011年10月29日
  • 這えば立て

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    ちょっと小娘には読むのが早かったかな。
    老境を想像してみようとしたけれど。
    でもやっぱ文章うまい。

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    2009年10月04日
  • どくろ杯

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    詩人が残した自伝めいた紀行文。タイトルに象徴されるように、おどろおどろしくも生命力に溢れた一時期の上海のイメージが言葉から立ち上がってくる。

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    2009年10月04日