金子光晴のレビュー一覧

  • どくろ杯

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    ネタバレ

    沢木耕太郎がたいていの紀行文には旅の目的地が設定されているが、しかし、金子光晴の放浪三部作は目的地が設定されていない稀有な例であると書いていたので、いつか読みたいと思っていた。この時代の知識人、詩人には、マルクス主義よりもアナーキズムのほうが影響力をもっていた。しかし、震災後に大杉栄、伊藤野枝などのアナーキストも大量に虐殺された。(朝鮮人の虐殺は金子には見えていなかった。)アナーキストにはつらい時代の到来によって金子光晴も海外に弾き飛ばされるように放浪に出たくなった、出ざるをえなくなったことが読み取れた。

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    2025年01月19日
  • 名ごりの夢

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    幕末の御殿医桂川家に生まれた女性の体験談。
    若き日の福沢諭吉をはじめとする各藩から勉学の為派遣されてきた武士に幼い著者がしたいたずらや、洋行した諭吉から石鹸をもらい、包み紙を宝物として保管していたというほほえましい話の一方で、幕府の終焉に伴って幼いながらも自害の練習をしたという話もある。その後の人生も起伏の多いものだったようで、当時を知る貴重な記録。語りを文章に起こしたものだからだろうか、文章も非常に読みやすい。全般にからりと明るい印象の本である。

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    2021年03月28日
  • 名ごりの夢

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    佐賀藩士にハマって色々文献を読んでいた頃、某サイトで
    “江藤新平・大隈重信・副島種臣などが語られている”
    とりわけ“副島種臣に関する回想が多い”
    ということが書かれてあったので、興味を持って読んでみました。
    結果。この本買って良かった…!!
    幕末の佐賀藩士に関する名著の多くは今や絶版もしくは入手困難となっている。そんな中でこの本はまだ購入すること出来る数少ない名著の一つなのです。

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    江戸幕府の奥医者で唯一の公認蘭方医であった桂川家という名門の家に生まれた 今泉(旧姓:桂川)みね という女性が語り手の回想録。昭和10年から約3年、80歳のみねの驚異

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    2017年09月20日
  • どくろ杯

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    関東大震災からはじまる、妻森三千代との5年に及ぶ東南アジアとヨーロッパ放浪の記録。
    ひさびさに読んでみたが、圧巻の迫力は変わらず。

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    2017年09月12日
  • どくろ杯

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    いつも思うことなのだけれど、この時代のひとたちは「恋愛をしてみよう」と決めてから恋愛をしているような気がする。感情としては同質のものだとしても、入り方が決定的に違うような気がする。それだから妙に冷静だというか、自分の感情や行為に対して客観的であるように感じられるのだろう。(『ねむれ巴里』に続く)

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    2013年09月13日
  • どくろ杯

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    山崎ナオコーラがオススメしてた詩人のエッセイ。昭和頭かな?第2次大戦が始まる前、中国に渡航した際の話。この人、気が小さい割にやることは大胆(笑)みたいな。けど、しがない男の気持ち満載で身につまされる。こういう、すこし前の日本人のエッセイとか読むと、今と違う文章文体に頭が開発されます。おもしろい。

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    2012年05月11日
  • イリュミナシオン ランボオ詩集

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    金子光晴訳。学生時代、一番ランボオに嵌っていた時に好きだった訳です。
    初めてランボオを読む人にとってもこの訳は分かりやすいし、ランボオの世界に入っていきやすいのではないでしょうか。
    様々な訳者によって訳詩集が出版されていますが、金子氏の描いたランボオは等身大の少年に見えます。放蕩者でも天才詩人でもなく、一人の少年のありのままの姿が浮かぶようです。

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    2011年11月21日
  • どくろ杯

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    「こがね虫」の詩人・金子光晴の、関東大震災で全てを喪失してからの生活を書いたエッセイです。この人の暗さは、安吾のカラッとした冷たさと違って、ジメジメうじうじしているのですが、読んでいると何だか一緒に泣いてあげたくなってしまいます。この人も文章が巧い!
    (関係無いですが、↓下にある「みんなのタグ」欄に石田衣良とあるのが気に入りません)

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    2010年10月01日
  • 名ごりの夢

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    幕府のオランダ流外科医の家に生まれたみねが、維新後に少女時代のことを振り返り孫らに語った内容を嫁が筆記して出版された本。江戸の雰囲気が生き生きと美しく臨場感あふれて語られています。本当に江戸時代を生きた女性の口から語られた言葉。たくさんの古文書をよんでもなかなか得られない生きた江戸の姿に感動しました。

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    2010年01月14日
  • どくろ杯

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    金子光晴の自伝的小説。
    どろっとしたものがずっと流れているよな、
    そんな小説。
    わくわくドキドキまるでなし。
    淡々とすさまじい人生。

    結婚して、奥さんが不倫して、
    その奥さんと恋人を引きはなすためにパリを目指す。
    激☆貧乏旅行。
    上海→香港→シンガポール
    そしてパリへ。

    他にもジャカルタや蘇州にも足を伸ばす。
    詩人が絵をかいてお金を得る。
    『どくろ杯』は言ってみれば出発編。
    『ねむれ巴里』、『西ひがし』と続編がある。

    1920年代後半からはじまるたび。
    不思議なのは、80年近く前のことなのに、
    金子光晴の感じていることが、
    すごく生き生きしていて、

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    2009年10月04日
  • どくろ杯

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    美しい言葉を読むのは

    食べ物を
    体内に取り込むような

    むさぼるのではなく
    少しずつ浸透するような

    そんな気持ちで読みました

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    2009年10月07日
  • 世界見世物づくし

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    この人の腹が据わっている文章と生き方がとても好きだし、本書も実際とても面白く「支那」関係の洞察は今でもよく通用すると思う。
    貧乏についての文章にはとくに笑った。曰く「貧乏も、ひとり身でやっているのだったら、からだがひきしまって、そんなにわるいものでもない」。「貧乏に平気な女がいたら、と僕はあくがれたほどだ。それほど例外なしに、女は、貧乏ぐらしの苦しさが辛抱できない」。「中西悟堂君は、米や、パンを排して、しばらく松葉を摘んで常食にしていた。蛙をつかまえて、あたまから呑んでしまうのをみていて三歳位だった僕の息子が、わっと泣き出したことがあった」。「真の貧乏人とは、もっと筋骨の通った堂々としたもので

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    2009年10月07日
  • どくろ杯

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    虚飾さえめんどくさくなった老人の半生記。もう本当にどこを読んでも面白い。詩人ならではのやわらかく切れのある文章。

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    2009年10月04日
  • 名ごりの夢

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    徳川将軍家の奥医師の娘から見た、幕末から明治にかけてのいろいろな人々や生活ぶりが、いかにも生き生きと語られている。特に、当時の隅田川は透き通るように美しかったという語りが印象的。

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    2021年10月13日
  • じぶんというもの 金子光晴老境随想

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    ネタバレ

    私もこういう爺になりたいです。意外だったのは孫に結構デレデレなところ。私には当分望めそうもありませんが。「生きることの真意は、日常のごく卑近な、食べたり、着たりをゆったり味わうところにあり、重大そうにみえてることがかえって第二義的なこととよくわかっているのだが、さて。」「わずかにおもいあがった理想-冷静になって考えればまちがいであったかもしれないイデアのために生命を断つなどということはいかにそれがうつくしい行動などと銘うってみても私には、うつくしいなどとは感じられない。」みなさん、肝に銘じておきましょう。

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    2016年07月16日
  • どくろ杯

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    なんていうかこの時代の魔都上海にめっちゃ行きたいし興味がわいてきた。詩人金子光晴の7年にわたる目的のない旅の軌跡。「どくろ杯」の正体には本当にびっくりだけど、当時の上海らしいアイテムだなあ。

    あと、比喩が素晴らしい。美しさとはまた別だけど、何かピースがかっちりはまりこむような爽快さがあるきれいな比喩が多かった。

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    2015年05月29日
  • どくろ杯

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    知人の勧めで読むことに。なんと言ったらいいのか言葉が出ない。暗い淵に今にも顔を押し付けられそうで、ただただ読んでいて苦しかった。が、途中で本を放り出すこともできなかった。

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    2013年10月22日
  • どくろ杯

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    圧倒的だった。正直、何と感想を述べるべきか判らない。

    著者が詩人として世に出た後、関東大震災が襲う。胸が塞がれるような記述が冒頭に続く。
    夫人となる森美千代との出会いがあり、婚姻、子供の誕生。夜逃げを繰り返すような生活の中、家族を放って上海へ遊ぶ。帰国すると、彼女に若い恋人出現。結局、妻と彼が復縁しないように距離を置くことを目的に旅が始まる。
    洋行すると宣言しながら、大阪、長崎に長く留まり、なんとか上海へ。いかがわしい文章をガリ版刷り、いかがわしい売人に託したりする、綱渡のような生活。旅情など望むべくもない。放浪、風天というか、逃避と呼ぶべきか。そして著者を含め、何処にも居場所のないような人

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    2012年03月18日
  • 京都守護職始末 1

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    ネタバレ

    大抵のこの時代のフィクション、主に新選組を扱った物になると思うが
    容保さんがしょっちゅう具合が悪いというイメージで
    療養だとか具合が悪いとか倒れたとか
    そういう描写がとても多い。
    病弱な方かのような印象なのだが
    これを読んで納得した。
    こんな激務の最中にあって、具合が悪くならない方が寧ろ可笑しい。
    現代で言うなら、過労によるストレスだろうと思う。

    激務、という単語は他の書物で見かけたが
    やはり会津藩の家臣の方が著者であるだけあって
    微に入り細に入り書かれていてあらゆる点で納得した。
    また、この史料で初めて知ることも多かった。

    当然飽く迄も会津藩サイドから書かれている為会津寄りの視点ではある

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    2013年01月26日
  • どくろ杯

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    「めりけんじゃっぷ」の谷譲次を彷彿とさせるファンキーな生き様、そんな生き様にはおよそ似つかわしくない詩人らしい流麗な文体。時代背景を考えれば考えるほど、この金子光晴ってオヤジの海外放浪記は素敵すぎる。自らの血の一滴を振り絞るように、人間の底知れぬ奥深さを抉ってみせます。続編の「ねむれ巴里」「西ひがし」も一気読みだな、これは。

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    2011年02月02日