R・F・クァンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
上巻の前半部、所謂日常パートのようなものに退屈を感じ、ここまでくるのにかなりの時間を要してしまった。上巻の後半部に差し掛かってからあっという間だった。およそ2週間で下巻まで読みきってしまった。そのくらい物語は急展開を迎え、のめり込んでしまう魅力が詰まっていた。
あとがきの末尾に、バベルは何かを抽象化、あるいは比喩していると述べられている。個人的な想いではあるが、自分にとってそれは「社会」だと考えた。学生時代、自分が働いている姿を全く想像できなかったが、社会に出て働くことは当然だと考えていた。自分が与えられるもの、何らかの支払える対価も持ち合わせていないというのに、どうして社会から必要とされる -
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翻訳は単なる言葉の置き換えではない。歴史的、文化的背景のもとに、似たような言葉でも別のニュアンスを持っていることがある。その差が具現化する銀工術、一種の魔法のような技術がある世界の話。この魔法を使えるのは複数の言語に習熟した専門家のみ。バイリンガルだとさらに良い。19世紀、三角貿易で栄えていた英国が舞台。ようやく奴隷制度は廃止されたけれど、アジア・アフリカ諸国からの搾取は続いている時代。オクスフォード大学で学ぶことになった留学生たちの物語なのだが、人種差別に苦しむところから始まり、多くの社会的矛盾に直面する。200年近く昔の話なのだが、現代にも通じるものがあるし、もしかすると世界情勢は逆行して
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Posted by ブクログ
ネタバレ当初思っていた内容とは違っていて、初めはあまり進まなかったのだけど、上巻の中盤くらいからグッとギアが上がって、そこからはもうグイグイと引きずり込まれて、怒涛の展開に翻弄され、読み終わったいまではぐったりと虚脱しながらこの感想を書いています。
広東で幕を上げるこの作品、なにが起こっているのか明らかにならないまま、あれよあれよと物語は進み、舞台はイギリス、ロンドンからオックスフォードへ。
ほぼ史実通りのなか、たった一つのフィクションが紛れ込まされ、主人公はそのフィクションにまつわる大きな事件へと巻き込まれていきます。それは、「銀」を媒体とした「翻訳の魔法」。異なる言語で、同じ言葉を刻み込んだ -
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寝食を忘れて物語に没頭したのは何十年ぶりだろうか。
それほどまでにこの物語は、ここ十数年で読んだ本の中で特別に素晴らしい。
舞台は十九世紀のイギリス。銀と翻訳を支配する者が世界を制する時代。その中枢機関・オックスフォードのバベルで学ぶ一人の学生が主人公。
中国の広東の港で育ったことから複数の言語が得意という能力をもち少年の頃に教授に拾われる。その生い立ちがまさしくこの本の作者の人生そのものだ。
伝統と格式を重んじるイギリスにおいてアジア人はあざけられ不当な扱いを受ける。その様子が同じアジアの日本人である読者に共感を呼ぶ。
たいていの翻訳SFものはカタカナが多く人の名前は覚えられず世界に -
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ネタバレ二つの言語での単語の意味のずれから生じる翻訳魔法が支配する世界の中で、多数言語を学ぶ学生たちの物語という導入設定から、ハリポタを大人向けにしたブラックファンタジーと誤解して読み始めたが、開始とともに違和感満載(笑)。その裏には、アヘン戦争時の植民地政策末期での帝国主義のほころびを描いた骨太の展開があった。DEIと真反対の環境下で4人のオックスフォード大学生の視点から描かかれる反乱の萌芽は上巻を通じてゆっくり育っていき、一気にクライマックスへ。上巻と下巻の分量的バランスがこうなったのもよくわかる。嫌な予感がしつつ、これはすごく面白い。下巻へ。
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本が出る前からSNS流れてきて気になっていた。帯の「言語の力」「ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法」というのに惹かれてた。
単行本上下巻はなかなか勇気が必要で、まずは上巻だけを味見して失敗…上下で買うべき本でした。読んで良かった。
翻訳の力が魔法として働く19世紀の大英帝国。大英帝国の植民地支配は広大で、日の沈まない国と言われた時代。
翻訳の魔法は、銀の棒に同じ意味を含む対になる言葉…適合対…を刻み、それを唱えると発動する。
扱えるのは言語に精通した者、外国語も英語もネイティブと同じくらい扱える者だけ。その銀工という技術の研究と製作を担うのがオックスフォード大学に -
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ネタバレまさかのバッドエンド!
そう来たか。主人公が生き残るわけじゃないんだな。予想できる結末じゃない点には満足。人種差別が何をどうしてもなくならないことも伝わった。
ダークアカデミアな雰囲気、大人よりの魔法、勉強、語学、オックスフォードが好きなので、設定は間違いなかった。
ただ、読むに従ってここまで人種差別が描かれているとは思わず、後半で「もういいよ」と満腹になってしまった。また、私はレイシストなので、主人公が中国人という時点で、実は本屋でTBRリストには入れなかった本でもある。
イギリス人が読んでいるのを見たけど、どのように捉えるのだろう。私は損得感情が大きいので、自分が少しの得をするなら、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ書評を見てからずっと読みたかった本。いっきに読んだ。
翻訳がテーマなので、翻訳について何度も議論が交わされている。翻訳は原作そのものにはなりえない。原作のニュアンスを真に伝えることはできない、といった主張や言葉が通じることで広がる世界など否定や肯定が重なり合っている。
話自体は時々読み進めるのが苦痛になるような虐待や差別が書かれている。
主人公の行動や仲間、周囲の人の様子などありきたりな部分もあり、話の流れもどこかでみたような話だったりもする。こうなるんだろうな、という方向に最後まで話が流れていく。
悪者側の人物たちがカリカチュアライズされすぎているように思える。でも、こういう小説に出てくるよ -
Posted by ブクログ
タイトルからノンフィクションかと思っていたらパラレルワールド的ファンタジーだった。
大学、マント、世界中から集められたエリート学生たちの寮生活…とちょっとダークなハリポタっぽいところも。
一応魔法っぽいのが出るけどこの作品では派手な回復や攻撃が出来るわけではなく、産業革命時の技術に代わるものであって商業商品みたいな意味合いを持っており、それを生み出せたり扱えるのがオクスフォードのエリート、という設定。
魔法よりもメインになっているのは、扱っているテーマが帝国主義とマイノリティであり、搾取する側とされる側であり、虐げる側と虐げられる側と言う構図であり、幼くして有無を言わさずイギリスに連れてこら -
Posted by ブクログ
19世紀、大英帝国がその巨大な力を以て世界に君臨していた時代。
大英国の力の源は銀と翻訳にあった。同じことを表す複数の異なる言語の単語を銀に刻むと、その言葉の意味の微妙な相違による歪みが力を生み、馬車の速度を早め、船の運行を円滑に行い、大砲の狙いの精度と威力を増していた。
オックスフォードには世界各地から少年少女たちが集められ、大学構内の王立翻訳研究所バベルの塔で働く翻訳家となるために育成されていた。
中国の広東省から連れてこられた少年ロビン・スウィフトは中国語の翻訳者としてオックスフォードに入学する。
しかし、そこにはバベルから銀や蔵書を盗む秘密結社ヘルメス社があることや、英国は中国から銀と