齊藤昇のレビュー一覧

  • ハツカネズミと人間

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    ああ……なんて切ない話しなんだろう。アメリカのノーベル文学賞受賞作家の代表作『怒りの葡萄』同様に、こちらも傑作。短いので新潮文庫版と読み比べてみました。

    あらすじ:
    カリフォルニア州で農場を転々とする二人の出稼ぎ労働者。ジョージは、小柄で抜け目のない性格。一方レニーは、体が大きく腕力もあるけど頭の方はアレな感じ。まるで正反対の凸凹コンビですが、レニーを育てたクララおばさんが亡くなってからは、ジョージがレニーの面倒をみて、レニーはジョージなしでは生きていけません。体だけ大きい子どもみたいな性格のレニーは、あちこち働く農場で問題を起こしては、ジョージの庇護のもと、一緒に次の農場を目指すのでした。

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    2025年04月13日
  • アルハンブラ物語

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    グラナダに行く予定があったので、その前に読んでみようと思った。初めの方は、著者がどのような旅をしたのかが説明的に書かれていて少し読みづらかった。でも、途中からアルハンブラの伝説の話になってどんどん引き込まれていった。特に3人の王女の話が印象的であった。

    ムーア人に征服されたことは、単なる侵略ではなく文化的に受け入れられていた面もあるのだなと思った。

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    2024年10月26日
  • ハツカネズミと人間

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    ネタバレ

    なんともいえない読後感が残る名作だと思う。
    貧しい渡り労働者のジョージとレニーは、いつか自分たちの土地を持つという夢を語り合う。現実には、労働者の多くが同じような夢を持つが叶わない。厳しい現実の中でもジョージが夢を語れたのは、相手がレニーだったからだろう。レニーはジョージの言うことを信じて素直に土地を手に入れるのを楽しみにしていて、否定的なことを言わない。それだけに、最後は切なかった。
    黒人の馬屋番のクルックスの部屋での会話が印象に残っている。
    「人間はあまり寂し過ぎると、病気になっちまう」(p.122)

    訳者解説で、タイトルの由来が知れたのも良かった。

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    2024年01月05日
  • スケッチ・ブック(上)

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    英語英文学科川口エレン先生お勧めの一冊。

    ぜひ、英語原語版で読んで欲しい短編小説パート2
    岩波文庫では上・下巻2冊にわたっていますが、特に上巻収録の「リップヴァンウィンクル」、下巻収録の「スリーピーホローの伝説」をお勧めします。「リップヴァンウィンクル」はアメリカ版浦島太郎と評され、日本では森鴎外が初めてこれを本格的に翻訳し、その際のタイトルが「新世界浦島」となっています。「スケッチブック」はワシントンアーヴィングのイギリス見聞記ですが、上記2冊は世界的に有名な短編小説となっています。英語学習にもこれら2冊をお勧めします。

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    2023年05月17日
  • ハツカネズミと人間

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    180ページと短いながらも、1930年代アメリカの貧しい労働階級の労働者の過酷な日常と主人公2人の友情が良く描かれている。あと小説全体からは土っぽさや埃っぽさなども醸し出されていて雰囲気がある小説であった。
    最後は何とも言えない切ない展開で、どういった気持ちでそのような行動を取ったのか?と読み手が考えさせられる終わり方だった。短いながらも心情に訴えてくる内容で翻訳も読みやすい。海外文学に興味を持ち始めた初心者にもオススメしやすい作品

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    2025年04月23日
  • ハツカネズミと人間

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    社会の底辺に属す渡り労働者を描いた本作は後に発表する「怒りの葡萄」へ繋がる一篇であり著者の持ち味たる写実的な表現が胸に迫る。特に結びでの堅実者ジョージと純粋な大男レニーの遣り取りは二人の心理が行間から滲み出るようだ

    ジョージから何度となく警告されながら結局人を殺めてしまうレニーの姿は、母親の心配した通り諍いに巻き込まれ罪を犯す「怒りの葡萄」の主人公トムと重なって映る。偶然の必然とも云うべきこれらの件は私に強い印象を残した

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    2025年02月18日
  • ハツカネズミと人間

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    ネタバレ

    1930年代のカリフォルニアを舞台に、貧しい渡り労働者のジョージとレニーを主人公とした小説。あらすじだけ読んで労働者の悲哀を描いた作品かと思っていて、じっさい厳しい境遇は出てくるのだが、あまり労働そのものを描いた場面は登場せず、どちらかというと人間関係で苦労する様子が描かれる。結論もまた人間関係に起因するものである。レニーは読んでいてややもすれば肩入れをしたくなるような無垢な人物であることがわかっているので、その彼が殺されてしまうというこの結論は結構つらかった。「夢オチ」ではないかと期待してしまったほどである。しかし、(作中でそうとは明言されていないが)知的障碍を抱えているが無垢であるという一

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    2024年01月03日
  • スケッチ・ブック(上)

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    ネタバレ

    思い切りネタバレで。

    19世紀アメリカ人によるイギリス関係のエッセイが中心のなかで、


    ドイツロマン派風の物語、幽霊花婿が気に入った。この種の話はあちこちにあるけれど、まず間違いなく先立った恋人のあとを追うか、連れ去られて生き残った片割れも死んでしまう悲劇。
    それがこの話はおおーっと驚く(ほどではないか)ハッピーエンディングにしてくれた。いいねいいね。
    しかし、死んだ本来の花婿の立場は一体?
    そして、いずれ天国で顔合わせたときにどうするんだろう彼ら?

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    2021年03月03日
  • ハツカネズミと人間

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    あとがきには「荒んだ心にじんわり染み入る不思議な物語」とあるが、私はむしろ噛んだ瞬間に血の味が拡がるような物語だと思った
    容赦ない現実や資本主義社会から溢れ落ちた人間たちの悲哀を描いた本作、弱者が弱者を傷つける様相は現代も同じだろう

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    2025年11月15日
  • ハツカネズミと人間

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    ネタバレ

    スタインベック、というと、名前は知っているけれども、どういう本を書かれているのか、まったく知らずにはじめて読んだ本でした。
    アメリカの田舎、労働者の生き様。

    読み終えてから解説を読むと、1930年代の大恐慌の影響を受けたアメリカ社会を描いているようでした。

    大恐慌の時代では慢性的な労働過剰の傾向がみられ、人件費などを変動費化することが求められ、貧しい渡り労働者たちを生み、格差と貧困が拡大、精神的な疲弊が身近に火即状況下にあったと言える、と解説されています。

    レニーとジョージというコンビというか、

    2人で農場などの仕事場を渡り歩いているのですが、

    それ以外の登場人物もそれぞれ孤独を抱え

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    2025年08月30日
  • ブレイスブリッジ邸

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    19世紀イギリス、地主を中心とした片田舎での日常が穏やかに、愛着をもって語られている。特に挿絵が当時の雰囲気をそのまま伝えていてとても良かった。有閑階級だけでなく、村の教師やジプシーといった人々の描写も丁寧。

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    2011年12月04日
  • ブレイスブリッジ邸

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    古き良きイギリスの田舎の大地主と村の人々の話。作者のアーヴィングは、起伏のある物語ではないけど、丁寧に人々の暮らしぶりを描いている。上手い作家だと思った。
    そういえば、カズオ・イシグロも『日の名残り』でイギリスの昔の執事を書いてたなぁ。
    貴族とか執事がいた世界は、もはや今となっては、アーヴィングが考えたように、ほとんど跡形もなくなってしまったのかもしれない。でもこの作品を書いてくれたおかげで、自分たち後世の人間が少しでも知ることができる。そういう意味で、本にして残す、というのは素敵なことだと思った。

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    2009年12月24日