クレアキーガンのレビュー一覧
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ネタバレ短い物語ですぐ終わってしまうので、大切に丁寧に読んでいく。
はじめから、心に響く文章がいくつも登場する。
秘密は恥。
黙っていることは良いことだ。
信じて良い人は見極める。
手をかけて育てる。
丁寧な言葉遣い。
礼儀正しく。
嘘をつかない。
ギャンブルをしない。
噂話をしない。
教養。
子供を亡くした夫婦で、崩壊する話はたくさんあるが、ここでは夫婦のお互いの愛情と優しさで支えあっている。
周りに噂好きの友人達がいても、自分さえしっかりと愛を持って生きていたら、腐らない。
黙っとく。
人生って、苦行ではなく、心のままに愛を感じる素晴らしい日々。
腐ってる人の家は散らかっていて、顔もキツい。
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ネタバレクレア・キーガン2冊目。
映画「コット、はじまりの夏」の原作。映画は観てないけど。
ほんのささやかなこと、がとても良かったのでこちらも購入。
アイルランドの子沢山な農家の女の子、わたしがお母さんが赤ちゃんを産んで安定する前までに親戚のおばさん/おじさんに預けられて
愛情を受け、ケアされて成長するお話。
とても切なくて、悲しくて、泣きながら読んだ。
おばさん/おじさんは、子沢山で貧乏な…農家で育ったわたしをケアしてくれる。街に出て綺麗なお洋服を買い、言葉遣いを教え、体を綺麗に洗ってお風呂に入れて。
中盤、おばさん/おじさんには実は子どもがいて、不慮の事故で亡くなってしまったことがわかる。わた -
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自分の近くに社会的の闇があることに気づいたとき、どのような行動をとるべきなのだろうか。
果たして自分は、正しいコトができるのだろうか。『ほんのささやかなこと』を読んでそんなことを考えた。
1985年のアイルランドの小さな町のクリスマスシーズンの数日間を描いた物語である。
石炭と木炭商人のビル・ファーロングが配送先の修道院で見窄らしい恰好で働く女性を見つけて助けを乞われることで、その社会の闇に気づき、といった話である。
アイルランドの「マグダレン洗濯所」という悲劇をモデルにした物語であり、恵まれない境遇の女性を取り上げている。
本書を読むまでは「マグダレン洗濯所」という悲劇を知らなかった。ま -
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1985年、アイルランドの小さな町
クリスマスが近い十二月の話
主人公の石炭販売店を営むビル・ファーロングには、妻と五人の娘がいる。
これまで苦労も多かったが、今は何とかささやかで平穏な日々を手に入れている。
ところが配達先の女子修道院で目にした光景をきっかけに、どうしようもなく心が動いてしまうのだ。
その光景とは修道院の附属施設の〝洗濯所〟
これはアイルランドに1996年まで実在した教会運営の母子収容施設と「マグダレン洗濯所」をモデルにしているらしい。
洗濯所は政府からの財政支援を受けてアイルランド各地で営まれていたもので、ひどい女性虐待がおこなわれていたという。
こんな恐 -
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この淡く優しくそして決して消えることのない光を放つ小説は、低く雲が垂れ込めた空の下厳しい冬を迎えたアイルランドのスモールタウンを舞台として、四十歳の節目が近くなった男が主人公だ。
12月の第一日曜日から、クリスマスイヴまでの1か月足らずの間に、ビル・ファーロングの心が彷徨い、静かにそして大きく揺れ動いてゆく様子が綴られる。
その心模様に寄り添うように、丁寧にそして細やかに小さなディテールを積み重ねて日々の暮らしが描写されるのだが、これがとてもチャーミングなのだ。
きっとアイルランドの人々にはお馴染みなのだろう家電や食品、テレビ番組などが彩りを添え、一家がクリスマスの準備をして過ごす夕べの場面 -
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『ウェクスフォード県のニューロスの町では、煙突が煙を吐きだし、それが薄く流れてもわもわと長くたなびき、埠頭のあたりで霧消する時季になると、じきに雨が降り、バロー川はスタウトビールほど黒く濁って水嵩を増した。町の人びとの大半はため息をつきながらこの悪天に耐えた』―『第一章』
ふわふわと思考は漂ってゆく。初めての長期の英国出張。滞在先近くのコンビニで買うギネスのロング缶。パブで飲む泡の細かい常温の黒ビール。冷たい雨。鼻の長い二階建てバス。『汽車に乗って、あいるらんどのような田舎へ行こう』という詩の断片。牧歌的と言ってもよい雰囲気でこの一冊は始まる。
そんな風に連想に誘われる文章は、一読すると熱 -
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ネタバレ心が震えるラスト!
今しなくて後悔する苦しみを死ぬまで味わうより、自分で正しいと思う事をして、これから降りかかる問題の方が軽い。
暗い話だろうから、読むのを敬遠してたけど、読んで良かった。
昔々の事では無くて、結構最近、1980年代の話だから驚く。
戦争も教科書に載ってた話ではなく、今現在の話になっている。
見ないフリしている問題が今現在、色々あると思う。
解決するには小さな1人の1歩からしか、変えていけない。
最初の一歩は潰されるだろうけど、きっかけを作らないと一生変わらない。
その1歩が自分か誰かか。
気になったほんのささいなことを、自分のほんのささいな行動で、世の中という大きなものを -
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かつてアイルランドにあった「ふしだらな娘」の収容所に閉じ込められた少女をみた主人公が……の話。
アトウッドの「侍女の物語」とは違って、これは100%真実。
最近も、この種の施設から乳幼児数百人の遺体が見つかったらしい。
1996年まで実在していたそうで、私が最初の妊娠をした時にもあったんだと思うと恐ろしい。
自分の家族が不利益を被るとしたら、私はどう行動するだろうか……と思う。
ファーロングは、自分自身が「助けられた」ことを理解していたからこんな行動ができた。
「ウィルソンさんがいなければ、うちの母さんは十中八九、あの施設に入れられていただろう。自分がもっと昔に生まれていたら、いま助けよ -
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妖精や魔女の国、アイルランドのクリスマス。
カトリックの絶対支配の階級社会。
その中で誠実に生きる労働者の男性。
寒くて暗い中の仄明るいアイルランドのクリスマス。幻想的にも見えるクリスマスの様子が実態として浮かんでくる筆致がよい。
精一杯労働し、家族との生活を守る1人の男性の虐げられた女性の救済への葛藤が読んでいて苦しい。(これまで必死で守ってきたものが絶対的な権力に抗うことで失ってしまうかもしれない、これは普遍的なテーマだろう。)
キリスト教の暗部と共同体としての機能を明示しており、辺境の文学としての面白さもあった。アイルランドの空気感がよい。(イギリス児童文学への系譜を感じる。) -
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1985年、不景気で閉塞感漂うアイルランドの小さな町が舞台です。政治・宗教的な背景があるものの、簡潔な文章で分かりやすく、本編が130ページほどの中編小説です。その割に奥深く、当時の時代の空気感が上手く表現されていると感じました。
当時のアイルランドには、カトリック教会が運営する母子収容施設と洗濯所があり、洗濯場では恵まれない少女や女性が監禁、労働、虐待を受けていた史実(「マグダレン洗濯所」の闇)があったようです。
主人公は、40手前の石炭商を営むビル・ファーロング。妻と5人の娘がいて、家族思いで真面目に慎ましく暮らしています。ただ、彼の母親が未婚の母で、父親を知らないという出自があ -
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ネタバレ1985年クリスマス間近、アイルランド南東部の町ニューロスで燃料屋を営むファーロング。
婚外子の自分を身ごもった女中の母だったが、仕えていたウィルソン夫人の計らいにより、その出自に比して最低限の困難で今の生活にたどり着くことが出来た。
決して大金持ちでも大物でもないが、この不況の中、それなりの稼ぎもあり5人の娘にも恵まれ、望む教育を与えることができ、和やかで心温まるクリスマスを迎えることができている。
ある日、燃料を届けに行った女子修道院で出会った少女達の姿に、この町の暗部に気付いてしまう。。。
訳者鴻巣さんのあとがきでは5人の娘を育てる家庭像から若草物語への言及があったが、
自分的には直近 -
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1996年までアイルランドに存在していた「マグダレン洗濯所」。ここは政府からの財政支援を受け、協会が運営していた。未婚や婚外関係で妊娠した女性が無償労働を強いられ、ひどい女性虐待が行われていたという。
この物語には、この洗濯所をモデルとした施設が登場する。主人公ビルは、女子修道院に石炭を配達しにいった時にある少女と出会う。彼女がそこでずさんな扱いを受けているのを目にするのだ。
彼自身、母親は未婚で彼を産み、父親を知らない。しかし運よく母が女中をしていた屋敷で育てられ、キリスト教徒として真面目に生きて来た。
生活は決して豊かではないが、妻や娘たちに誠実なビルのセリフはいちいち心温まる。
ラストは