クレアキーガンのレビュー一覧

  • ほんのささやかなこと

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    クレア・キーガンは「Walk the blue fields」と「Foster」は原書で読んでいて、読むのはこれが3作目ですが、これまで読んだ3作品の全てが本当に素晴らしい。

    丁寧な日常の描写の中にふと差し込まれる違和感と、主人公が自らの生い立ちを振り返って、後悔をしないための選択をするまで、彼の感情の流れを読みながら一緒に追体験できるような臨場感のある描写がすごく良かった。

    この先、彼には多くの困難が待っているはずだけど、それでもなお、その選択は「後悔しないための決断」というよりも、彼が彼である以上そうするしかなかったもののように感じられた。

    しかし、この出来事が1980年代だというの

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    2026年03月31日
  • ほんのささやかなこと

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    衝撃。1996年に施設が閉鎖されるまでこんな非人道的なことが国家規模で暗黙の了解でまかり通っていたなんて。2013年にようやく政府が公式謝罪したなんて。しかもこんな重大なことを記録に残すフィクションやノンフィクションがほぼ存在しないなんて。並行して読んでいるアトウッドの小説の世界とも完全にダブり、映画も現在上映中のようだからぜひみておこうと思う。犠牲になった女性たちの鎮魂のためにも。
    ある平凡で幸せな一家の穏やかで誠実な父親の勇気と正義が風穴を開けるがその後この一家はどうなるのか。彼自身も未婚の母親の子供だったにも関わらず母親の雇い主である気概のある女主人のおかげで悪の施設に行かされることもな

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    2026年03月28日
  • ほんのささやかなこと

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    早くも、2026年の小説のベスト候補となる小説に出会ってしまった。

    日本語に不自然なところが多く、英語版と並行して読んだが、伝統的なアイルランド小説の流れを汲むと思しい散文的というか、1人称に限りなく近い3人称で思索の流れを中心に読者が主人公の思考に没入して類推していくことを強いるような文体で、翻訳が難しいところもあったのかと思った。

    内容は、強い衝撃を受けた『ドイツ亭』を思い出さずにはいられない。社会的な事象を、一人の人間のあり方として具体化して示すことで胸がしめつけられるような思いを抱かせる。ラストも救うでもなく絶望させるでもなく、読者をただ複雑な現実に放り出す。ウイスキーをぐいっと飲

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    2026年03月20日
  • あずかりっ子

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    ネタバレ

    読みはじめてすぐ、アイルランド版赤毛のアンみたいなお話なのかなと思った。全然違った。
    「水が染み出すマットレス」のあたりで、キンセラ夫妻が大好きになっていて、そのあとはずっと、
    主人公や夫妻に傷ついてほしくなくて、幸せになって欲しいという期待と不安でドキドキしていた。

    主人公はおじさんとおばさんと一緒に過ごして、愛されて、手をかけられる経験をして、二人を好きになって、二人の喪失と哀しみの片鱗に触れる。かと言って、両親や兄妹と離れたいわけでもないし、まだ幼い彼女には自分の居場所を自分で決めることはできない。
    最後のシーンの大泣きには、二人から離れる(自分自身の)寂しさだけじゃなくて、自分がいな

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    2026年02月28日
  • ほんのささやかなこと

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    静かな物語です。
    けれど静かな中に、作者の強い思いが伝わってきます。ほんの少し前まで実際にあった「マグダレン洗濯所」をモデルにして、その非人道的な活動、実態を皆んなに知ってもらおうと小説のかたちで書かれたもの。
    カトリック教会とアイルランド政府が、手を結んで進めてきた社会の暗部に対し、主人公は自分たちの今の生活が、子供たちの将来も含めて厳しいものになるのをわかっていても、一人のキリスト教徒として見過ごせなかった。
    そのあたりの苦悩がよく伝わってきました。
    この作品に目を止めて、翻訳してくださった鴻巣さんに感謝します。
    ささやかな小説ですが、たくさんのものが詰まった本でした。良かったです。

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    2026年02月16日
  • あずかりっ子

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    『ほんのささやかなこと』に続き、この著書を読んだ。全編を通じて語りすぎず、かと言ってそこはかとなくメタファーやが散りばめられていて、想像の翼を広げることができる。きつい労働、厳しい自然に黙々と生活する大人たち。そんな中で「手をかけられなかった」女の子が、悲しみの中に生きる夫婦に預かられ、自分に手をかけることの始まり知ってゆく。それは完璧な愛でもなく、むしろ不器用な、行ったり来たりの揺れる愛だ。それゆえにこの夏が、彼女の不思議な気持ちへの気づきに繋がり、人間味ある情緒の芽生えになったと分かる。読後は何やら暖かい気持ちが、自分の中に滲み出てくる。果たして彼女は今後どうなるのか、わからない、そして私

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    2026年01月23日
  • ほんのささやかなこと

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    1985年、寒さ厳しい冬のアイルランド。家族とのつつがない暮らしを守る実直な石炭商人の男。世界が誰にとっても完全に良いものになることはないのかもしれないし、どんなに善く生きたいと願っていても誰ひとり取りこぼすことなく全ての人に手を差し伸べることはできないが、彼の選択に勇気をもらう。

    自分を驕るでもなく、他人を羨むでもなく、これまでのささやかなことの積み重ねで今の自分があると知り自分でこれから進む方向を決めるって何よりも豊かなことだ。クリスマス飾りのように煌めく文章や描写の全てに、心が潤される。

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    2025年12月24日
  • ほんのささやかなこと

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    ケルティッククリスマスというコンサートに行き、アイルランド関連本として会場で販売されていて、売り子さんがイチオシだったので手に取って読んだ本。ただ、ただ良かった。贅沢な暮らしをしているわけではないが、愛する妻と娘たち、重労働だがやりがいのある仕事をする主人公に、ふと、こことは違うが地続きの、裏の世界が見えてくる。それは自分の生い立ちにも関わる世界だった。そこに一歩を踏み出すことは、幸福な自分の足元が崩れてしまうかもしれない危うさを含んでいる。。。クリスマスのこの時期に読んで本当に良かった。ディケンズの『クリスマス・キャロル』を彷彿とさせる、新しいクリスマスの物語。日本語訳の素晴らしさは言うまで

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    2025年12月23日
  • あずかりっ子

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    ネタバレ

    短い物語ですぐ終わってしまうので、大切に丁寧に読んでいく。
    はじめから、心に響く文章がいくつも登場する。
    秘密は恥。
    黙っていることは良いことだ。
    信じて良い人は見極める。
    手をかけて育てる。
    丁寧な言葉遣い。
    礼儀正しく。
    嘘をつかない。
    ギャンブルをしない。
    噂話をしない。
    教養。

    子供を亡くした夫婦で、崩壊する話はたくさんあるが、ここでは夫婦のお互いの愛情と優しさで支えあっている。
    周りに噂好きの友人達がいても、自分さえしっかりと愛を持って生きていたら、腐らない。
    黙っとく。
    人生って、苦行ではなく、心のままに愛を感じる素晴らしい日々。
    腐ってる人の家は散らかっていて、顔もキツい。

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    2025年12月01日
  • ほんのささやかなこと

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    自分の近くに社会的の闇があることに気づいたとき、どのような行動をとるべきなのだろうか。
    果たして自分は、正しいコトができるのだろうか。『ほんのささやかなこと』を読んでそんなことを考えた。

    1985年のアイルランドの小さな町のクリスマスシーズンの数日間を描いた物語である。
    石炭と木炭商人のビル・ファーロングが配送先の修道院で見窄らしい恰好で働く女性を見つけて助けを乞われることで、その社会の闇に気づき、といった話である。

    アイルランドの「マグダレン洗濯所」という悲劇をモデルにした物語であり、恵まれない境遇の女性を取り上げている。
    本書を読むまでは「マグダレン洗濯所」という悲劇を知らなかった。ま

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    2025年09月30日
  • ほんのささやかなこと

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    1985年、アイルランドの小さな町
    クリスマスが近い十二月の話



    主人公の石炭販売店を営むビル・ファーロングには、妻と五人の娘がいる。
    これまで苦労も多かったが、今は何とかささやかで平穏な日々を手に入れている。
    ところが配達先の女子修道院で目にした光景をきっかけに、どうしようもなく心が動いてしまうのだ。

    その光景とは修道院の附属施設の〝洗濯所〟



    これはアイルランドに1996年まで実在した教会運営の母子収容施設と「マグダレン洗濯所」をモデルにしているらしい。

    洗濯所は政府からの財政支援を受けてアイルランド各地で営まれていたもので、ひどい女性虐待がおこなわれていたという。

    こんな恐

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    2025年09月28日
  • ほんのささやかなこと

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    この淡く優しくそして決して消えることのない光を放つ小説は、低く雲が垂れ込めた空の下厳しい冬を迎えたアイルランドのスモールタウンを舞台として、四十歳の節目が近くなった男が主人公だ。
    12月の第一日曜日から、クリスマスイヴまでの1か月足らずの間に、ビル・ファーロングの心が彷徨い、静かにそして大きく揺れ動いてゆく様子が綴られる。
    その心模様に寄り添うように、丁寧にそして細やかに小さなディテールを積み重ねて日々の暮らしが描写されるのだが、これがとてもチャーミングなのだ。

    きっとアイルランドの人々にはお馴染みなのだろう家電や食品、テレビ番組などが彩りを添え、一家がクリスマスの準備をして過ごす夕べの場面

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    2025年07月27日
  • ほんのささやかなこと

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    なんだろう。読み終えた時は、そこで終わるのという感じだったが、少しづつなんとも言えない気持ちになってきた。
    これからが大変になるのは目に見えるだけに、とても心に刺さる小説でした

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    2025年07月02日
  • ほんのささやかなこと

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    とてもよかった。映画も楽しみ。『青い野を歩く』、「コット、はじまりの夏」、「マグダレンの祈り」にも触れたい。

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    2025年05月22日
  • ほんのささやかなこと

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    ネタバレ

    心が震えるラスト!
    今しなくて後悔する苦しみを死ぬまで味わうより、自分で正しいと思う事をして、これから降りかかる問題の方が軽い。

    暗い話だろうから、読むのを敬遠してたけど、読んで良かった。
    昔々の事では無くて、結構最近、1980年代の話だから驚く。
    戦争も教科書に載ってた話ではなく、今現在の話になっている。
    見ないフリしている問題が今現在、色々あると思う。
    解決するには小さな1人の1歩からしか、変えていけない。
    最初の一歩は潰されるだろうけど、きっかけを作らないと一生変わらない。
    その1歩が自分か誰かか。

    気になったほんのささいなことを、自分のほんのささいな行動で、世の中という大きなものを

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    2024年12月28日
  • ほんのささやかなこと

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    北海道恵庭市で元市会議員が経営する牧場で3人の知的障害者が、長い人では40年近く食事もまともに与えられない劣悪な環境で奴隷のように無給で働かされていた。恵庭市はことを荒立てないために虐待事案としての申し立てを無視し続けた。この人たちが解放されたのはなんと2022年のことだ。全く同じ話だし、昔の話ではない。この短い小説は社会の問題を外側から糾弾しているのではない。そんな社会のなかで生きていく中で、どうやって己の倫理を守り通せるのかということだ。そのための行動は確かに未来において大きな難題を産むかもしれない。でも、少なくともいまその倫理や徳を守るための行動はささやかなことなのだ。

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    2026年03月31日
  • あずかりっ子

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    短いのに、読み終えたあとにじんわり余韻が残る物語。多くを語りすぎない文章だからこそ、行間から家族の事情や少女の気持ちを想像しながら読めた。両親も悪い人ではないのだろうけれど、少女に愛情を注ぐ余裕がなかったのだと思う。特に父親にはがっかり。おじさんとおばさんのもとで、少女が少しずつ本来の明るさを取り戻していく様子がよかった。人に大切にされる経験の大きさを感じた。『コット、はじまりの夏』も見てみたい。

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    2026年03月31日
  • ほんのささやかなこと

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    見て見ぬ振りをするべきか、果たして見なかったことになんて出来るのか。

    自分だったらどうだろう。きっと家族は見なかったことにしろって言うんだろうな。あなたひとりが動いたからってなにになるのって。
    でも、あの時助けられなかった、声を上げなかったから辞めてしまった会社の後輩の顔、今でも思い出すよ。声をあげればよかったし、ちゃんと味方になればよかったと思う。
    罪滅ぼしにもならないけど、今はおかしいことはおかしいというし、飄々と、でも長いものに巻かれないように自分なりに抗って生きている。小さなことだけれど、小さなことから。

    映画も楽しみです。

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    2026年02月19日
  • あずかりっ子

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    ここの湧き水はこれまで飲んだどんなものにも負けないぐらいひんやりして、澄んでいる
    お父ちゃんがいなくなった味、ここに一度もいなかったような味、なにも残していかなかったあような味がした

    あとがきにあるように徹底して贅肉をそぎ落としたミニマルな語り それでも想像力を湧かせる言葉がありました

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    2026年02月02日
  • ほんのささやかなこと

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    かつてアイルランドにあった「ふしだらな娘」の収容所に閉じ込められた少女をみた主人公が……の話。

    アトウッドの「侍女の物語」とは違って、これは100%真実。
    最近も、この種の施設から乳幼児数百人の遺体が見つかったらしい。
    1996年まで実在していたそうで、私が最初の妊娠をした時にもあったんだと思うと恐ろしい。

    自分の家族が不利益を被るとしたら、私はどう行動するだろうか……と思う。

    ファーロングは、自分自身が「助けられた」ことを理解していたからこんな行動ができた。
    「ウィルソンさんがいなければ、うちの母さんは十中八九、あの施設に入れられていただろう。自分がもっと昔に生まれていたら、いま助けよ

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    2025年11月27日