クレアキーガンのレビュー一覧

  • ほんのささやかなこと

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    北海道恵庭市で元市会議員が経営する牧場で3人の知的障害者が、長い人では40年近く食事もまともに与えられない劣悪な環境で奴隷のように無給で働かされていた。恵庭市はことを荒立てないために虐待事案としての申し立てを無視し続けた。この人たちが解放されたのはなんと2022年のことだ。全く同じ話だし、昔の話ではない。この短い小説は社会の問題を外側から糾弾しているのではない。そんな社会のなかで生きていく中で、どうやって己の倫理を守り通せるのかということだ。そのための行動は確かに未来において大きな難題を産むかもしれない。でも、少なくともいまその倫理や徳を守るための行動はささやかなことなのだ。

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    2026年03月31日
  • あずかりっ子

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    短いのに、読み終えたあとにじんわり余韻が残る物語。多くを語りすぎない文章だからこそ、行間から家族の事情や少女の気持ちを想像しながら読めた。両親も悪い人ではないのだろうけれど、少女に愛情を注ぐ余裕がなかったのだと思う。特に父親にはがっかり。おじさんとおばさんのもとで、少女が少しずつ本来の明るさを取り戻していく様子がよかった。人に大切にされる経験の大きさを感じた。『コット、はじまりの夏』も見てみたい。

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    2026年03月31日
  • ほんのささやかなこと

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    見て見ぬ振りをするべきか、果たして見なかったことになんて出来るのか。

    自分だったらどうだろう。きっと家族は見なかったことにしろって言うんだろうな。あなたひとりが動いたからってなにになるのって。
    でも、あの時助けられなかった、声を上げなかったから辞めてしまった会社の後輩の顔、今でも思い出すよ。声をあげればよかったし、ちゃんと味方になればよかったと思う。
    罪滅ぼしにもならないけど、今はおかしいことはおかしいというし、飄々と、でも長いものに巻かれないように自分なりに抗って生きている。小さなことだけれど、小さなことから。

    映画も楽しみです。

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    2026年02月19日
  • あずかりっ子

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    ここの湧き水はこれまで飲んだどんなものにも負けないぐらいひんやりして、澄んでいる
    お父ちゃんがいなくなった味、ここに一度もいなかったような味、なにも残していかなかったあような味がした

    あとがきにあるように徹底して贅肉をそぎ落としたミニマルな語り それでも想像力を湧かせる言葉がありました

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    2026年02月02日
  • ほんのささやかなこと

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    かつてアイルランドにあった「ふしだらな娘」の収容所に閉じ込められた少女をみた主人公が……の話。

    アトウッドの「侍女の物語」とは違って、これは100%真実。
    最近も、この種の施設から乳幼児数百人の遺体が見つかったらしい。
    1996年まで実在していたそうで、私が最初の妊娠をした時にもあったんだと思うと恐ろしい。

    自分の家族が不利益を被るとしたら、私はどう行動するだろうか……と思う。

    ファーロングは、自分自身が「助けられた」ことを理解していたからこんな行動ができた。
    「ウィルソンさんがいなければ、うちの母さんは十中八九、あの施設に入れられていただろう。自分がもっと昔に生まれていたら、いま助けよ

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    2025年11月27日
  • ほんのささやかなこと

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    訳者の鴻巣友季子氏が好きなので手にとった。
    1985年のアイルランドで商売をする石炭商ビルが主人公。働き者の妻と5人の娘と苦しい家計ながら「真っ当に」暮らしている。善良で物欲に囚われないビルが配達に行った修道院で逃亡を図る少女と会う事で自らの出自や取り巻く環境に改めて想いを巡らす。史実に基いた中編小説。1996年までこの修道院はカトリック教会とアイルランド政府の結託の元、女性虐待や強制労働を強いてきたらしい。 ビルのその後が気になる所、余韻を残す作品。

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    2025年11月23日
  • ほんのささやかなこと

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    妖精や魔女の国、アイルランドのクリスマス。
    カトリックの絶対支配の階級社会。
    その中で誠実に生きる労働者の男性。
    寒くて暗い中の仄明るいアイルランドのクリスマス。幻想的にも見えるクリスマスの様子が実態として浮かんでくる筆致がよい。
    精一杯労働し、家族との生活を守る1人の男性の虐げられた女性の救済への葛藤が読んでいて苦しい。(これまで必死で守ってきたものが絶対的な権力に抗うことで失ってしまうかもしれない、これは普遍的なテーマだろう。)
    キリスト教の暗部と共同体としての機能を明示しており、辺境の文学としての面白さもあった。アイルランドの空気感がよい。(イギリス児童文学への系譜を感じる。)

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    2025年11月01日
  • ほんのささやかなこと

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    ネタバレ

    自らが過去に受けた恩恵と助けを思い返し、「最終的に、この町の不正と犠牲を見てみぬ振りをしたまま、キリスト者として生きていけないとビルは結論する。自らの良心に従わず、沈黙を通して声をあげずにいるなら、個人の幸福は成り立たないと考えたのだ。」(「訳者あとがき」P.154)「…ファーロングはあらゆる感情を圧倒する恐れを感じつつも、おれたちならやり遂げるさ、と心のどこかで愚かしくも楽観するどころか、本気で信じているのだった。」(P.137)

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    2025年10月11日
  • ほんのささやかなこと

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     1985年、不景気で閉塞感漂うアイルランドの小さな町が舞台です。政治・宗教的な背景があるものの、簡潔な文章で分かりやすく、本編が130ページほどの中編小説です。その割に奥深く、当時の時代の空気感が上手く表現されていると感じました。

     当時のアイルランドには、カトリック教会が運営する母子収容施設と洗濯所があり、洗濯場では恵まれない少女や女性が監禁、労働、虐待を受けていた史実(「マグダレン洗濯所」の闇)があったようです。

     主人公は、40手前の石炭商を営むビル・ファーロング。妻と5人の娘がいて、家族思いで真面目に慎ましく暮らしています。ただ、彼の母親が未婚の母で、父親を知らないという出自があ

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    2025年10月10日
  • ほんのささやかなこと

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    ネタバレ

    1985年クリスマス間近、アイルランド南東部の町ニューロスで燃料屋を営むファーロング。
    婚外子の自分を身ごもった女中の母だったが、仕えていたウィルソン夫人の計らいにより、その出自に比して最低限の困難で今の生活にたどり着くことが出来た。
    決して大金持ちでも大物でもないが、この不況の中、それなりの稼ぎもあり5人の娘にも恵まれ、望む教育を与えることができ、和やかで心温まるクリスマスを迎えることができている。
    ある日、燃料を届けに行った女子修道院で出会った少女達の姿に、この町の暗部に気付いてしまう。。。

    訳者鴻巣さんのあとがきでは5人の娘を育てる家庭像から若草物語への言及があったが、
    自分的には直近

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    2025年09月21日
  • ほんのささやかなこと

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    アイルランドでの実際にあった大規模で長期にわたる人権侵害を題材にとった中編。人間は神の名の下にいくらでも残酷になれるが、神の名の下に善意を発揮することもできる。

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    2025年09月06日
  • ほんのささやかなこと

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    1996年までアイルランドに存在していた「マグダレン洗濯所」。ここは政府からの財政支援を受け、協会が運営していた。未婚や婚外関係で妊娠した女性が無償労働を強いられ、ひどい女性虐待が行われていたという。
    この物語には、この洗濯所をモデルとした施設が登場する。主人公ビルは、女子修道院に石炭を配達しにいった時にある少女と出会う。彼女がそこでずさんな扱いを受けているのを目にするのだ。
    彼自身、母親は未婚で彼を産み、父親を知らない。しかし運よく母が女中をしていた屋敷で育てられ、キリスト教徒として真面目に生きて来た。
    生活は決して豊かではないが、妻や娘たちに誠実なビルのセリフはいちいち心温まる。
    ラストは

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    2025年08月08日
  • ほんのささやかなこと

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    クリスマスを目前に控えたアイルランドのお話
    愛する妻と5人の娘に恵まれ、石炭や薪など燃料の販売を商いとする中年男性ファーロングが主人公

    未婚の妊婦の収容施設、人身売買のような養子制度、カトリック教会と政府の癒着など、この本を読まなかったら知ることのなかった差別に驚いた
    解説までしっかり読むべきだと思った

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    2025年07月13日
  • ほんのささやかなこと

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    ネタバレ

    マグダレン修道院が舞台の映画、「決断のとき」を見て原作を読んでみた。映画ではっきり語られていなかったことが語られていたし、原作ではわかりにくい所が映画では可視化されていた。ファーロングの母がネッドと結婚していればファーロングの過去の問題は解決したのでは?と思った。
    修道院で起こったことは宗教を使った虐待と人権侵害なんだけど、これがつい最近まで隠されていたことに驚愕。

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    2026年04月16日
  • あずかりっ子

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    1時間もかからず読み終えてしまう中編で、情報量は非常に制限されている。その分、少女の心の動きについて、預かった夫妻の悲しみと繰り返される痛みについて、限られた言葉のその奥にあるものをじっくりと想像させてくれる。

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    2026年02月21日
  • ほんのささやかなこと

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    妻と5人の娘たちと仲睦まじい生活をおくっている石炭と木材の商人ファーロング。

    彼の周りではいつも淡々と時間が過ぎて行くが、そんな中でも家族や近所の人々との触れ合いを通じてささやかな幸せが伝わってくる。

    しかしある日、仕事のために訪れた女子修道院で史実に基づく事件が起こる。そこでファーロングが取った選択は、「ささやかなこと」とはかけ離れたものだった。

    物語は起伏がなく淡々と進むため読み手によって好みが分かれると思う。

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    2026年02月03日
  • あずかりっ子

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    ちょっと、西の魔女が死んだを思い出した。
    子供にとってひと夏という短い時間が、一生の中でどれだけ大切なものになりうるかが、さらっと描かれた文章の中に詰まっている。

    楽しいときを留めておけないくらいなら、いっそ素っ気なく振る舞う感じ。
    願望や喜びの感情をあえてセーブすることで、避け難い現実からのダメージを大したことではないかのように、やり過ごす感じ。
    そんな子どもならではの心の防衛反応が、あぁ分かるなーと思う。いろいろと思い出す。
    だからラストの一言が、ぐっとくるね。
    ここは、クレア・キーガンがうまい。実に鮮やか。
    映像やセリフでは、この一言に込められた想いの半分も伝えられないのではないだろう

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    2025年11月22日
  • あずかりっ子

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    シェーンの「カムバアアアック!」とか、時かけの「いっっけええええ!」見たいな。

    しかしおじさんおばさんいい人すぎて、その反動で、父ちゃん母ちゃん含め周りの市井の人たちがなかなかのイヤな感じだったな。。

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    2025年11月12日
  • ほんのささやかなこと

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    1985年、アイルランドの小さな町。
    クリスマスが迫り、寒さが厳しくなるなか、
    石炭と木材の商人であるビル・ファーロングは
    ある日、石炭の配達のために女子修道院を訪れる。
    そこでファーロングは「ここから出してほしい」と願う娘たちに出くわす。
    修道院には未婚で妊娠した娘たちが送り込まれているという噂が立っていた。
    隠された町の秘密に触れ、決断を迫られたファーロングは
    己の過去と向き合い始める。

    そんなあらすじ。この物語を読むまで存在すら知らなかった。
    1996年まで存在したマグダレン洗濯所。
    婚外交渉により身ごもった女性ばかりでなく、
    堕落する可能性があると恣意的に判断された女性、
    身寄りのな

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    2025年10月08日