一色伸幸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
鬱病を患った主人公が自殺をするために侵入した、廃墟となった映画館で、7年前に配達されるはずだった郵便物の束を見つけ、自殺へのカウントダウンとしてそのうちの7通を配達する物語。
7年前の手紙を受け取った人たちとの対話から、主人公が得るものとは。
鬱を題材にした作品は数多ありますが、この作品のディテールには驚くばかり、自分がいかに鬱を誤認していたかを思い知らされました。
作者さん自身が鬱病だったそうです。
小説ではありますが、周囲の人々が読むべき一冊です。
ラスト1通からの心情変化と振り落とされそうなほどのスピード感、最終章で明らかとなる状況と主人公の心境。
今まで出会ったことのない、とてつも -
Posted by ブクログ
ネタバレ鬱のときの無気力さや、心が動かなくなる感じがリアルに表現されている。経験者ならではの描写。
でも、そういう傾向のない人にはくどく感じられるのかもしれない。私は、最初の方の主人公の状態がやけに身近に感じられた。
1通ずつ手紙を配達していくのだが、いつも予想外の展開で関わりを持ってしまう。そうすることで少しずつ心が動き始めるので、もしかしてこれは7通配り終わって回復してしまうというような展開になるのかと思いきや、まさかの幻想、そして自殺の実行、さらには植物状態という怒涛の展開にびっくりした。結局自殺は一度実行されてしまうのか。
死が救いに思える精神状態、朝が来ると「まだ生きている」と思ってしまう心 -
Posted by ブクログ
32歳、ウツ、妻子あり。
感情は喪失し、毎日を芋虫のように暮らす澤野。
ある日、死に場所として入った廃墟で、届けられず捨てられた7年前の手紙の束を発見する。
そうだ、この7通の手紙を届けてから死のう。
心を亡くした男が届ける、心を繋ぐ7通の手紙の物語。
知人に勧められて借りました。
著者がうつ病だったということがあり、鬱の描写がとてもリアル。
感情の喪失や色のない世界、動けない体に、取り纏う希死観念。
体験記ではなく小説でこんな風に鬱独特の症状を描いている作品は希少かもしれないですね。
7年前に届けられるはずだった手紙が時を越えて届くことで様々な物語が生まれますが、共通して思ったのは、タイ