トムスタンデージのレビュー一覧
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19世紀のヨーロッパ。遠くへ情報を伝えるには、手紙で伝えるしかなかった時代から、モールス信号を電気で伝える電信が登場した。当初は国内に張り巡らされたケーブルはヨーロッパ中に広がり、ついに大西洋を渡る。
情報が速く、安く伝わるようになった世界はさまざまな変革を迫られ、そして電話の登場により衰退するまでのノンフィクション。
19世紀にすでに大陸間横断ケーブルが存在していたのは驚きだったし、ネットワークのなかで起こる悲喜こもごもの話達は、いまのインターネット世界とさして変わらないように感じる。
どんなテクノロジーも、まだ見ぬ未来のテクノロジーに埋もれていくのが常。電信も電話の登場により駆逐され、電話ももはらコモディティ化して久しい。
インターネットの一般普及から30年ほど、今後どんな未来が来るのか、楽しみしかない。 -
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トム・スタンデージ『謎のチェス指し人形「ターク」』ハヤカワ文庫。
2011年12月にNTT出版から単行本として刊行された作品の文庫化。
なかなか面白いノンフィクションであった。現代でこそ、スーパーコンピュータやAIといった情報技術が進歩し、チェスや将棋といった分野で機械が人間を打ち負かすのは当たり前になっているが、1770年にチェス指し人形という物が創られていたとは驚いた。
勿論、チェス指し人形にはトリックがあるのだが、当時の機械制御の技術が垣間見ることが出来、それが後のスーパーコンピュータやAIなどにつながっていくという点が面白い。
1770年、ウィーン宮廷の官吏ケンペルはチェスを指す自動人形、オートマトンを創り出した。中東風の衣装を身に纏った自動人形は『ターク』と呼ばれ、欧米各地で興行を行ない、チェスのチャンピオンでさえも打ち負かした。
人びとが驚愕した『ターク』は本当に思考し、チェスを指す自動人形なのか。創造主であるケンペルの手を離れた『ターク』は、ベンジャミン・フランクリンを破り、ナポレオンとも対局し、エドガー・アラン・ポーがその秘密に挑む。
そして、『ターク』の系譜は1990年代の『ディープ・ブルー』、現代のAIへと受け継がれていくのだ。
本体価格1,200円
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ネタバレ通信技術を扱う仕事をしていてとても興味深い教養雑学本に感じたので購入した1冊
技術普及の研究テーマを技術の専門家でない人たちに伝える機会があったときの小話にも使えるのではないかと。
歴史は繰り返すというか今最先端の研究テーマってすでに150年以上前から問題意識としてあったものなんだな、と思う。今でいう変調や符号化の技術が原始的になるとモールス信号だったり、文字通り「信号処理」に対する技術解決競争という感じでとても納得感がある。
昔から高速大容量化と低遅延、信頼性などのテーマ向かう努力の息づかいがうかがえる。ホント今の5Gや6Gの最先端の解決したい技術課題や要素技術の研究動機と酷似している。あぁここは省電力化とか電力効率の話だなとか、海底ケーブルを通すことや、ここは多重化や変調の話しだなとか。今と対比させるとその原始的なやり方だけど真摯に解決に向かって腐心している様子がとても共感できる。さらに興味深いのは、通信の利用のされ方だ。通信の秘匿性を高めるためのセキュリティや暗号、認証の技術に通じるものがあるし(さすがに貨幣流通へのインパクトまではまだないが)、当時のネットワークを通じたロマンスもあったというのは興味深い。
通信はTelecommunication(テレコミュニケーション)とかCommunication(コミュニケーション)と訳されるが、今一つ語感がピンとこなかったのだが、通信の本質が人との対話がトラフィックという概念(バフチンの研究だったはず)でとらえられると、通信トラフィックがコミュニケーションの本質なんだなと思えてくるようになったのは、いくつかの本をこれまでに読んできたおかげでようやく自分なりにたどり着くことができたのかな、と感じる。ある場所からある場所への通信において機器構成を冗長化する考え方は、メッセージの配達郵便に通信経路を飛行機(Air)か船(Ship)かという物流的な冗長ともリンクして考えるし、伝え方(表現)は今やマルチなメディア活用しているし。
本の登場人物も象徴的だ。特にモールス信号のモールスとホイートストンが印象的だった。モールスが2進数で通信する原点を築いた人なんだなぁと思う。「ホイートストン」の文字を見たときは、「えっ!?あの回路(ホイートストンブリッジ)の人?こんなこともやってたの?」とちょっとした発見をした気分になった。なんだかんだ自分の電子工学の学生だったのだな、今じゃ回路の「か」の字もふれてないが(笑)。
ビクトリア朝時代(江戸の終わりから明治あたり)の話を今の技術と対比させて、通信の雑談ネタとして自分の中にストックしておこうと思う。 -
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その時代に存在した技術では、作り上げることが不可能と思われるもの。
現代の技術をもってしても、再現ができない/難しいもの。
エジプトのピラミッドやイースター島のモアイ像に代表される、これらの「不思議な存在」には、子供の頃から興味を持っていました。
本書については書評で知り、そのような不思議な存在について書かれたものかな?と期待して、文庫版を読むことにしました。
主人公となる人形が世に知られるようになったのは、1770年のヨーロッパ。
科学技術が発達しつつあった各国の宮廷では、オートマンと呼ばれる、凝った機械玩具が流行していたそうです。
女帝マリア・テレジアにより、奇術の解説を求められた文官ケンペレンは、その解説を完璧にこなすとともに、「自分なら、もっと優れた動きをする機械を、作ることが出来る」と、女帝に宣言します。
定められた期間を経てケンペレンが女帝に披露したのは、人間とチェスの対戦をするという、タークと名付けられた人形。
半信半疑でその対戦を見ていた宮廷の人々は、ほとんどの対戦相手を負かせてしまった、タークの能力に驚きます。
駒の数が多いチェスの競技において、次にどの駒をどのように進めるのか、無数と言える選択肢がある。
その動きを事前に設定して、機械を動かすことができるのか?
登場したその日から、タークは人々の注目の的になります。
それに対し、タークのカラクリについては頑なに口を閉ざす、ケンペレン。
彼自身は望んでいなかったものの、年月を経てタークは、ヨーロッパ中に知られるようになります。
その動きについては、「中で人が操作している」、「磁石を使っている」など、多くの説が提唱されます。
その論争はなんと、作者であるケンペレンの死後も、続いたとのこと。
タークという人形の存在について、自分自身は本書を読んで初めて知りました。
なので、85年にも渡るタークに関する騒動を、推理小説を読むような感覚で先へ先へと、読み進めました。
その経緯とあわせて著者が書いているのが、タークが後世にもたらした影響について。
コンピュータ、さらには推理小説の発展にも影響を与えることになるとは、作者ケンペレンも想像していなかったでしょうね。
機械は人間の肉体的活動を代替し、人間以上の能力を発揮するようになった。
頭脳の面においても、人間以上の能力を発揮している。
では、人間は自らが作り出した機械に、支配されてしまうのか?
現代のAIを巡る議論は、250年も前から行われていた。
そのことと、その議論の意味について気づかせてもらえたという意味でも、記憶に残った一冊でした。
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電信の歴史を追ったもの。語り口や取り上げるエピソードもわかりやすい。おもしろくて一気に読んでしまった。インターネットとの相似性にびびる。「世界を平和にする」みたいな希望とか。これはまあ飛行機というか海外旅行が一般化された際もそう言われたらしいが。「他の国のことを知れば敵意はなくなる」「飛行機の戦力が強すぎて陸海軍が無意味になるので戦争がなくなる」とか。そうではないことは電信が世界大戦を防げなかったし、インターネット後もいくつも戦争が起きていることを見れば明らかだけど。
暗号化の話や、オペレーターがコミュニティや業界用語、職業の特殊性で現在のITエンジニアとかと同じ文化ってところも非常に興味深い。
電信が実用化されたのって、黒船が来る前だし、よく考えたらマルクスが「共産党宣言」を書いたのものこのころなんだよな。20世紀は技術革新のスピードがすごかった、21世紀はもっとすごい、とか言われてるけど、19世紀も相当だと思う。
いまAIでやいやい言われてるけど、また歴史は繰り返すということなのか……。 -
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歴史に詳しくなくても電報というサービスを知っている人は多いだろう。現代の日本では儀礼的な利用にとどまり、冠婚葬祭をメインに綺麗なパッケージとともにメッセージを伝えるサービスに変化しているのだが、かつては遠隔地に情報を伝えるための実用的な通信手段であった。
実用サービスとしての電報は19世紀末、急速に発展した電信技術を用いて運用されていた。トム・スタンデージ『ヴィクトリア朝のインターネット』は電信技術の栄枯盛衰を楽しく解説しつつ、電信技術に人々が向けていた視線がインターネットへのそれと相似する部分があったことを示す一冊だ。
本書はおおまかに序盤で電信技術の開発史を解説し、中盤で電信技術によって起こった世界の変革を描き、終盤で電信技術の終焉を描く。一冊で電信の興亡がわかるようになっている。
序盤の開発史は最初期のカオスな状況も面白いのであるが、最大の盛り上がりは大西洋を横断する海底ケーブルの敷設にまつわる話だろう。当初技術面のデザインを担当していたのはエドワード・オレンジ・ワイルドマン・ホワイトハウスという人物だったのだが、彼は工学的には素人だったのだ。その結果、せっかく繋がった大西洋の海底ケーブルはすぐに不通となってしまった。工学という分野がまだ未発達だったことを強く感じさせる挿話である。
その後、きちんと改良された海底ケーブルにより大西洋を越えての通信はきちんとできるようになったのだが、グローバルな通信が可能になったことはどうも過大に評価されていたらしい。
> 電気式テレグラフの効果は「マスケット銃を燭台に」変えるものという標語も流行した。実際にブリッグスやメイヴェリックや多くの人が、グローバルな電網の構築が世界平和をもたらすと期待していた。「地球上のすべての国が考え方を交換できるこうした手段が創造された以上、もう古い偏見や敵愾心は存在してはならない」。(pp.86)
リアルタイムに言葉が交わせるのならば、対話を通して相互理解が進み平和が訪れるであろうというこの楽観的な考え方は19世紀の後半からあったようだ。
このように、本書では電信技術の華やかなりし時代に、かつてインターネット黎明期で起こったようなことがたくさんあったことが分かるのである。
通信技術の進歩に関して、最も敏感なのはビジネスパーソン、とくに証券関係者であった。本書によれば、ロンドンではメッセージの半分が証券取引所に関係していたという。現在でも超高速取引という手法があり、どことなく現代と関係性を感じるものである。
もちろん、新しい技術に敏感なのはビジネスパーソンだけではない。犯罪者も同様である。電信を利用した詐欺も増えており、本書では詳細に触れられていないがこちらは『詐欺師入門 騙しの天才たち、その華麗なる手口』に詳しい。私はこちらを先に読んでおり、「競馬の結果が馬券の発売締め切り前にわかる」という嘘の信憑性がよくわからなかったのだが、当時の電信の仕組みを考えると騙される人がいても仕方なかったかもしれない、と思い直した。
現代でもインターネット詐欺は多いし、最近では生成AIを利用した詐欺も増えている。この辺りも現代との相似を感じる。
通信技術の進歩で大きな影響を受けるのは(詐欺を「仕事」と呼ぶのは少し気が引けるが)仕事の面だけではない。人間関係も大きな影響を受けたようだ。なかでも通信を最も必要とする人間関係は恋愛である。電信のメッセージを介した恋愛や、電信での結婚宣誓なども行われていたようで、「メッセージから受ける印象と実際の印象が異なる」という現代あるあるも当時から発生していたようである。
終盤では電信の衰退が語られるのだが、まず減らされたのは電信オペレーターであった。この事例はワープロの普及でタイピストが減ったことや、最近では生成AIの進歩で複雑なプロンプト芸自体が廃れていったことを思わせるものである。そして電話が登場することで電信技術自体が廃れていったのは言うまでもない。
1つの技術の興亡を眺めていると、最初期のカオス、決定的な発明を受けての受容と社会変容、別の破壊的技術による衰退という流れを辿りがちだということに気付く。社会変容は世界平和のような楽観的な考えには結びつかず、むしろ犯罪のような使われ方に波及するが、かといって全てが悪い方に転がるわけでもない。そして何より、コミュニケーション技術は人間関係に大きく作用する。
「歴史は繰り返さないが韻を踏む」とよく言われるが、電信技術の衰亡とインターネットの興隆はまさに「韻」である。そして世はまさに大生成AI時代である。かつての技術史から「韻」を掴むことは今後を生き抜くヒントになるだろう。 -
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チェス指し自動人形の誕生からその真相までのノンフィクション
以下、公式のあらすじ
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1770年、ウィーン宮廷。官吏ケンペレンによる前代未聞の発明、チェスを指す自動人形(オートマトン)がベールを脱いだ。中東風の衣装をまとい「トルコ人(ターク)」と呼ばれた彼は人の手から手に渡り、欧米各地で興行が催される。チャンピオンすら打ち負かす腕前に観客たちは驚き、困惑した。本当に機械が「思考」しているのか? ベンジャミン・フランクリンを破りナポレオンとも対局、エドガー・アラン・ポーがその秘密に挑んだ、知られざる「AIの祖先」の世にも数奇な命運と真相。『ヴィクトリア朝時代のインターネット』著者、もうひとつの傑作!
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「猫を抱いて象と泳ぐ」(小川洋子)を読んだのと、去年末の読書会でこの本を紹介していた人がいたので読んでみた
ケンペレンにより作られた自動人形
果たして本当にすべてが自動なのか、何かトリックがあるのか
机の扉を開けると歯車などが詰まっていて、向こうの蝋燭の光が感じられる
他の扉を開けても空洞があるばかり
狭い空間に入れるような子供が中にいるのか
ケンペレンが怪しい動きをしている事から、何か操作しているのではという疑惑
仕掛けがあるとしたら、どんなものか
人々の反応と推測の歴史
マリア・テレジアの命で作られ
後に様々な偉人を魅了する事になる
ナポレオン、ベートーヴェン、エドガー・アラン・ポー等など
ケンペレン亡き後も所有者が変わりながら人々の前でパフォーマンスが続けられていた
当時、記者をしていたエドガー・アラン・ポーが、仕組みを推測し
当たっているものもあれば、外れていたものもあった
その記事が後に推理小説の元祖となったらしい
中に入っていたとされる人達の変遷
そして、コンピュータが人間のチェスマスターに勝利したエピソード
ディープブルーは人間のチェスのトップであったカスパロフに勝ったコンピュータ
チューリングテストの基準で言えば、カスパロフも指し方を認めるところとなる
今でこそコンピュータが盤上遊戯で人間より遥か上を行くようになったけど
当時の人達もどこまでチェス指し人形を信じていたんだろ?
まぁ、普通に考えれば無理な話ではあるけれども
そこはタークが披露されていたのがオートマトンの発表のメインとしての流れがあったとか
ケンペレンのパフォーマンスの妙があったとかのでしょうね -
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ヴィクトリア朝時代のインターネットを読んだ。電信の発明やその発展が詳しく書かれている。
電信って、「チチキトク、スグカエレ」みたいなメッセージを送る、古い時代のものだとぼんやりイメージしていたけれど、当時は蒸気機関と並んで称賛された技術革命だったそうで、そのイメージが覆った。考えてみれば、電信が出来る前は飛脚や伝書鳩で連絡をとっていたのだから、そりゃそうだ。
発明された当時はペテンや黒魔術の類だと思われて、なかなか社会に受け入れられなかったが、一度電信の有用さが知られると熱烈的に普及していったらしい。そういった全く新しい技術がどのように受け入れられていったのか、当時の空気感が伝わるエピソードがたくさん紹介されていて、面白かった。 -
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ヴィクトリア朝時代から比べると現代はいろいろなものが大きく様変わりした。
そのなかでも現代において欠かせないものの一つに”インターネット”がある。インターネットの登場で情報へのアクセスの量は飛躍的に増大した。そして人々のコミュニケーションにも影響を与えており、インターネット以前以後でまったく違うものになった。
と、自分は思っていた。だから仮に昔の人が現代にタイムスリップしたらインターネットに最も驚くだろう、と。
しかし、違うのだと本書に記されている。
インターネットの原型であるものがヴィクトリア朝時代には既にあったのだと。
それが”電信”技術である。
腕木通信という腕の形をした木の形で遠くに情報を知らせる技術の誕生から、電気による通信技術の誕生、そしてテレグラフや電報、電話と姿を変えていく。
インターネットの誕生によってテキストメッセージのやり取りが手紙というフィジカルからデータへと変化したが、既に通っていた道だったのかという驚き。
電信オペレーターによる会ったことのない誰かとのやり取りやロマンスもSNSにも通じるようで面白かった。 -
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【概要】
19世紀はヴィクトリア朝時代。
新しい発明であった「電気」を使って、国中でいや世界中で瞬く間に情報のやり取りが出来る「電信」が生み出された。
電信はビジネスを加速化させ、恋愛を生み出し、悪用しようする人間を生み出した。
まるで現代のインターネットを先駆けたかのような発明が100年以上前に生み出されていた!
【感想】
電信の前段階として塔を立ててパネルを交換することによって光学的に情報を送るテレグラフがフランスで生まれたという所がまず面白い。
それでいて、光学式テレグラフに予算を投資してしまったので、電気式テレグラフ=電信を敷設するのが遅れたという話が世界史あるあるでまた面白い。
この新しい技術がすぐにまた新しい技術に取って代わられる……勿論電信もその例を違えず100年余りで電話に地位を奪われる!……これこそが技術の歴史の面白さだと思う。
そして毎回新しい発明が生まれると、人間は飽きもせずそれによって世界が良い方向に向かうと楽観視する。
電信の完全な民主化がインターネットだという著者の結論が的を射ていると思う。
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もちろん、19世紀に『インターネット」があったわけではない。しかし、『インターネット』に匹敵するものが実用化された。電信(テレグラフ)である。
腕木通信(手旗信号を機械化しリレー方式でつないでいくようなもの)から、やがて電気通信へ。さらに海底ケーブルの伸展による世界規模のネットワーク等々。現代のインターネットと同様のインパクトがあり、その発展と社会的影響は、現在のインターネットと驚くほど酷似していた。仕様の共通化、暗号化通信の導入や、電信を利用した犯罪などは、昔も今も変わらない。
あと、発明王のエジソンが電信で財を成したことにより、電球や蓄音機の開発につながったことなどは興味深い。
そして今では、電信(電報)は慶弔目的以外に目にしたことがない。 -
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ヴィクトリア朝時代には、インターネットのように全世界を繋ぐ情報ネットワークが既に存在した。電話以前に普及していた文字通信サービス「電信」をインターネットの前身と捉え、その繁栄と衰退を描きだしたノンフィクション。
電信とはモールス信号を使った文字通信のことで、要は今でも結婚式の謎風習として残っているあの電報である。19世紀半ばにアメリカとイギリスでほぼ同時に実用化され、誕生から20年足らずで海底ケーブルが大西洋を横断し、日本にまで電信網が引かれていた。1870年代には2万都市が繋がり、ロンドン-ボンベイ間通信の所要時間は4分!ものすごいオーバーテクノロジーだ。
偉人伝に興味を持たずに育ったため、本書で初めてモールスの経歴を知って今更驚いた。こんな技師でも科学者でもない山師じみたド素人だったなんて、歴史って面白いなぁ。電気が「目に見えない」という理由で心霊と同じ扱いを受けていた時代だから、スポンサーの前で実演してみせても詐欺師や手品師と一緒くたにされるモールスたちがモーセみたいで笑える。降霊術とか神智学会とか千里眼とか盛り上がってたのと完全に同時進行の話だもんなぁ。
電信局のオペレーター周りの話なんかはかなり"インターネット"で、独自に生みだした略語はプログラム言語の先祖のようだし、仕事の合間に上司の目を盗んでチャットしたりオンラインチェスをしたりも今のデスクワークと変わらない。なんとなく女性ばかりのイメージだったけど男女どちらも働いていて(部屋は別)、当時は最先端のイケてる職業だったとか。その後機械化され、猛スピードで信号を読み取る技術職だったオペレーターの地位は下がった。この辺はタイプライターの普及とも関係づけられそう(しかしタイプライターの実用化より電信の普及のほうが早いっていうのも考えてみるとタイムパラドックス感がある)。
情報がスピード勝負の時代になったビジネスマンたちの「通信スピードが上がれば上がるほど楽にならずに仕事が増えるだけじゃねえか!」という叫びはあまりにも21世紀的すぎる。電信誕生以前は新聞屋がニュースを余裕で2日寝かせてた話なんかも面白かった。しかしまもなく電話が発明されると、電信の天下は50年足らずで終わってしまう。
そして時代の中心は電話、ラジオ、テレビへ移り変わる。著者がこれらの音声・映像メディアよりも電信を"インターネット的"だと見做したのは、原書がでた1998年当時はインターネットの大半がまだ文字情報のやりとりだけで成り立っていたからだ。リアルタイムの情報を交換できるようになり、新聞や雑誌などのメディアが力を持ったオンラインテキスト文化。全世界を繋ぐ情報ネットワークが平和をもたらすという無邪気なユートピア幻想。この二つが100年の時を跨いで電信とインターネットを繋ぐ。97年にMITメディアラボ所長が語った「将来子どもはナショナリズムとは何かをわからなくなる」という展望とは真逆の未来にきちゃったけど、それを笑いたくはないなぁ。