畑浩一郎のレビュー一覧

  • サラゴサ手稿(上)

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    紙に書かれていた外国語の手記を口頭で翻訳してもらったものを口述筆記したという設定の物語。さらにその中の登場人物が物語を語り、その物語の中の登場人物も物語を語り始める・・・
    すごい入れ子構造の物語で、いまどの階層を読んでいるのか見失うことが多々ある。深い階層の物語が意外に長いので、最上位階層ではそれほど話が進んでいなかったりする。
    千夜一夜物語のような枠物語の一種だが、一人の語り手がたくさんの物語を語る線形構造ではなく、たくさんの語り手による物語が複雑に絡み合っている。
    この複雑な構造の物語を18世紀に書いたポトツキ氏は本当にすごい。
    ここまで約400ページ読んで全体の3分の1。読むのは少し疲れるが、先が楽しみでもある。

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    2024年01月02日
  • サラゴサ手稿(下)

    Posted by ブクログ

    【第五デカメロン】(41日目〜50日目)
    読書会に参加しました。皆様ありがとうございました。

    総括。
    この下巻の巻末に、誰が何について話しているかの「通覧図」があったーー。上巻、中巻一生懸命読み取ってたよ(笑)

    読書とは「本を読む」行為だが、この本は(上巻で書いてあったように)旅の途中で旅籠に寄って飲んで食って踊ってお話しての輪に参加しているような気持ちになるんですよ。

    大きな枠組みとして、スペインのイスラム一族が守ってきた秘宝と血筋を受け継いでいく話がある。
    その中に、総計30人程度の人たちがそれぞれの人生を語っていく。この一つ一つの話が大変面白い。400ページで三巻なので長いかと思いきや、話の途中で次の話に繋がってゆくので読み終わりのタイミングが難しく、ある程度一気読みしてしまう。これに関しては登場人物のいつも肝心なところで話しが中断しちゃう(o・3・)」と言うんだが、作者わかってて書いてるか!?

    そして登場人物たちが語る人生は、過酷だったり皮肉だったりするのだが、なんだか笑えてしまう。悲劇も突き詰めれば喜劇となる、他人の悲劇は他所からは喜劇。
    恋愛カップルはたくさん出てくるのだが「結婚して末永く幸せに」とはならないし、なにかの宿命を帯びて生まれた子供は奇人振りを見せる。

    以下、下巻だけの内容
    ===

    衛兵隊長に任命されたアルフォンソは、マドリードに行くためにシエラ・モエナ山脈を旅している。旅がなかなか進まないのは、絞首台から抜け出して旅人に悪さをする死体だとか、イスラムのシャイフ(宗教的・公共的な長老・首長)の秘宝に関係することに巻き込まれているから。
    だが名誉を重んじて豪胆なアルフォンソはこの状況を楽しんでもいる。
    今はジプシー一団のキャンプに加わり、ジプシー族長の語りを楽しく聞いている。

    『第四デカメロン』までで、ジプシー族長は自分の若い頃の経験を物語った。そこへ豪華な旅する一団が通りかかる。それは『第二デカメロン』で語られた当時のロンセト、今ではトレス・ロベラス侯爵と、その娘のエルビラ(妻エルビラは亡くなり同じ名前の娘がいる)、エルビラの婚約者ベレス侯爵(ベレス副王の甥)、そして二死体に誑かされた幾何学者、そして神父の一行だった。
    すっかり老人となったジプシー族長とロベラス侯爵は再会を喜ぶ。
    幾何学者と元カバラ学者のレベッカ(本人はラウラと名乗る)はそれぞれ、ジプシー族長やロベラス侯爵の話を聞きながらなんか幾何学的?論理的??な自己解釈を語って、話が合っているような合っていないような感じになっている。

    ❐トレス・ロベラス侯爵(以前のロンセト):
     従妹で幼馴染のエルビラとの結婚には貴族社会や宗教上の手続きが必要だった。離れ離れになった二人は熱烈は愛の手紙、ただし恋愛小説に書かれた言葉を使っての愛の手紙を交わし合う。
     だがロンセトは、パドゥリ侯爵未亡人とその侍女シルヴィアとの快楽に溺れちゃって。
     エルビラとの結婚許可が出たが、どうやらエルビラも多くの求愛者からのアプローチを楽しんでいたらしい。
     結婚後は上流社会の政治・軍事・社交生活を送っていくが、エルビラは俗っぽくなっていき、ロンセトは他の女性との恋愛を楽しんできた。
     やがてエルビラは死に、娘が遺された。その娘は、かつての恋のライバルであるベレス副王の甥の息子のベレス侯爵と婚約して、年取った自分は若いもんの行く末を見守りたいな、と思っている。
     ロンセトとエルビラは、数多出てくるロマンチックバカのなかでも一番のお騒がせカップル 笑 まあ当時の貴族ってこんなもんだったんでしょうねえ。

    ❐ロンセトと関係を持った、パドゥリ侯爵未亡人とその侍女シルヴィア:
     貧しい少女ラウラは、リカルディ猊下の「あどけない少女を自分の思い通りに教育して自分を完璧に幸せにしてくれる女性に仕立て上げるんだ★」という、なんか源氏物語で聞いたことのあるような、古今東西普遍的らしい男の夢のために、リカルディ猊下に引き取られる。ラウラの幼馴染シルヴィアは彼女を探しあて側で仕えることになった。だがパドゥリ侯爵未亡人(ラウラ)は、豪奢だがリカルディ猊下の籠の中の生活より独立したいと願う。その練習のためにロンセトを誘ってみたのでした★

    ❐幾何学者ペドロ・ベラスケス:
     身の上話。一族は大貴族だったが、父であるエンリケはちょっとしたミスのため地位と財産を婚約者を失い学者として引きこもったこと。そのエンリケの妻(ペドロの母)の母は、イスラムシャイフの秘密を握るゴメレス一族だということ。エンリケはペドロを学問に触れさせないようにする。だが幼いペドロは数学に夢中になり、そのせいで周りから頭がおかしいと思われていたこと。
     エンリケがペドロに言い聞かせたことは、世間とは違った趣味を持ち突き詰める人間の言葉だ。「自分たち親子は他の人々からは追放された世界に属している。おまえは世間の軽薄さを身に付けず、感じやすい魂と良識ある精神とを備えた人間となった。自分たちには自分たちなりの楽しみがある。人知れず、孤独なものだが、甘美で、混じり気のないものだ。人々から侮辱や中傷など不当な仕打ちを受けてもそのまま返すのではなく、自ら身を引いて、自分のうちに閉じこもり、心を本来の養分で養うのだ。」
     こうして成長したペドロは、世間とは外れてぼんやりした人間と見られるが、学術への情熱を持ち続けている。ペドロの話には、幾何学的、天文学的、論理的、植物学的、数学的…な説明が行われている。
    さっきまで話していたロベラス侯爵(ロンセト)の経験談を数値と上昇値により解明しようとしたり、自分自身の性的興奮を学術的に解明しようとしたけれど無限に上昇する感覚の前に解明どころでなくなったとか(笑)、旧約聖書の「神は7日間で世界を作った」ことを学術的に解説するとか、学問に対する情熱と信頼と冷静さを感じるんだが、だが、わからん。私にはさっぱりわからん、全くわからん(@@;)
     アルフォンソは、ペドロが学問を重んじるが宗教にも敬意を払っていることに感心を寄せる。
    <(神は直接人間に声を聞かせることはなく、)神はより高度な競技を古代の神秘の中に隠されたのです。(…中略…)私達自身も、そうとは知らずにさまざあな要因に取り囲まれて生きていますが、そこから生じる結果は校正を驚かせることになるのです、このようにして思考の神のご移行は達成されるのです、だからこそ私達は、摂理という名を神に与えるのです、神がこのように振る舞うのでなければ、私達はそれを力と呼んだでしょう。P228>
     話の最後に、ペドロは父エンリケが手に入れられなかった公爵家の跡取りに選ばれたことが語られる。


    【第六デカメロン】(51日目〜61日目)
    トレス・ロベラス侯爵(ロンセト)、娘のエルビラ、エルビラの婚約者ベレス侯爵は、ジプシー一行と別れて旅を続ける。
    ジプシー族長は自分の若かりし頃の話の続きを聞かせる。

    ジプシー族長は、自分でも知らないうちに熱愛するアビラ女侯爵と秘密の結婚をして娘も生まれていた。
    だが相続の関係でこの結婚と出産は極秘にしなければいけない。
    社交界では、アルコス公(女装が似合うフラケスタの恋人)一派であるブスケロスが重要なくらいにつき、ジプシー族長たちの秘密を探り当てて脅迫を仄めかしてくる。
    そこでアビラ女侯爵は、娘をシエラ・モエナ山脈のユダヤ人カバラ学術研究家ウセダ一族に預ける。

    ジプシー族長とアビラ女侯爵の秘密の結婚について。
    アビラ女侯爵は、相続の関係で結婚することが出来ない。さらに自身が大変高慢であり人を愛することもなく、ご主人を持つことなどまっぴらだった。そして彼女には政治的、福祉的な野心もあった。だが自分に熱愛純愛を捧げるジプシー族長に心を動かされ、トレド騎士やシドニア侯爵未亡人の協力のもと、極秘結婚への運びとなった。
    だがこの秘密が明かされることは彼女の野心はすべて崩れる。アビラ女侯爵はジプシー族長に「愛情を完全に捨て去る前に試してみたかったけれど、愛に対する心は変わらなかった。あなたに与えた権利(夫の立場、愛情)はすべてなかったこと」と宣言する。そして娘はシエラ・モエナに隠し、ジプシー族長をスペインから離れさせた。
    シエラ・モエナ山脈は、込み入った土地に、人種や宗教の争いを組み込んだ雑多で中立地帯となっているのだ。
    <あなたがおられるのは不思議な土地で、誰もがここでは秘密を抱えている。山脈には巨大な洞穴がいくつもあり、ムーア人たちが住んでいる。(…中略…)眼の前に見えるこの谷には、いわゆるジプシーたちが住み着いている、あるものはイスラーム教徒、別の者はキリスト教徒、またどちらでもない者もいる。(…中略…)今おられるこの家はイスラエル人の住まいで、七年ごとにスペインとポルトガルのユダヤ人がここに集まり、安息年を祝う。(…中略…)宿坊のドミニコ会修道士は、そこに礼拝堂を構えている。P263>

    はたしてアビラ女侯爵は全く愛情を持たなかったのか?中巻のラストの二人の恋愛模様は結構楽しそうだったんだけどな。

    さて、スペインを離れたジプシー族長だが、彼は名前も変えざるを得なくなり、スペイン継承戦争での捨て駒にされる。
    何年もたち、彼はシエラ・モエナ山脈に戻ってきた。

    そして現在。
    ジプシー族長はアルフォンソに自分の話の真意を伝える。そう、アルフォンソはシャイフとゴメレス一族に深い関わりを持つ者なのだ。

    ジプシー族長の話は終わり、アルフォンソは現在のシャイフ本人と対面して、彼が聞くべき話を聞く。
    スペイン覇権争いの世界でイスラム教徒たちは、ユダヤ教、キリスト教徒たちと混じり合ってきた。いつか秘宝を使ってイスラム教を世界に知らしめるのだ。
    キリスト教の貴族は男が継ぐ。ゴメレス一族は女が継いでいく(この物語で出てくる多くの夫婦の間に生まれたのはすべて「娘」)。ゴメレス一族は、キリスト教徒のゴメレスとイスラムのゴメレスを一つにさせて、秘密を受け継ぐ者を探し当てた。ゴメレス一族の母を持つアルフォンソだ。この『サラゴサ』で語られたシエラ・モエナでの出来事はすべてアルフォンソがゴメレス一族の後継者に相応しいかを試すための芝居だったのだ。

    物語の終盤では、ここまでして守ってきたシャイフの秘宝が尽きたこと、この秘密の場所は爆破させることが明かされる。
    だがゴメレスの血脈は世界に受け継がれてゆく。
      世界にイスラムを広めるために秘宝を守ってきたシャイフ
      シャイフの秘密を守るゴメレス一族のエミナとジベデ
      キリスト教徒の父と、ゴメレス一族の母をもつアルフォンソ
      キリスト教徒の父と、ゴメレス一族の母をもつ幾何学者ベラスケス
      キリスト教徒のジプシー族長
      キリスト教徒のアビラ女侯爵を母に、ジプシー族長を父に持つオンディーナ
      シャイフの後ろ盾となり、オンディーナを匿ったカバラ学者ウセダ(マムーン)
      イスラムのシャイフの父と、オンディーナを母に持つユダヤ教のレベッカ
      ユダヤ教徒でゴメレス一族の資金を支えるモロ一族
      シャイフを守る盗賊のゾト一家
    そして彼らがまた結婚して生まれた子供たちは世界に散らばっていく。

    <いつの日か、あたなの物語も同じように自然に説明がつけられるでしょうね P399>

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    2023年07月20日
  • サラゴサ手稿(中)

    Posted by ブクログ

    騎士アルフォンソの手記の中に、彼に物語る人々の語りが入れ子入れ子で組み込まれていく物語。
    語る人々は、幽霊だか人間だかわからん美女、ジプシー族長、カバラ学者、悪魔に取り憑かれた狂人、政略渦巻く上流社会に属する人々、神に見捨てられた巡礼者、人のゴシップを掘り出しのし上がる厄介者…。彼らも民族も宗教も、キリスト教徒、ユダヤ人、スペインのイスラム教徒など多岐にわたる。
    出てくる人たちはなぜか美男美女ばっかり(笑)。特に男性陣は「盗賊」「ジプシー老人」と書かれているので野性的なおっさんを想像していたら「美しい男」だの「少年の頃女装して人を騙してた」とか、なんかお耽美な人たちだな 笑

    彼らが語る内容も多岐にわたる。地方に伝わる伝説、幽霊や化け物の伝奇譚、ロマンス、宗教の教え、宗教の違い、カバラ学術と哲学(カバラのほうが上位で哲学者と言われるのは心外らしい)、旅の楽しさ、地方の歴史、色ごと、政治工作…。直接は語られないのだが、アルフォンソが滞在している山間の自然描写も良い。


    【第三デカメロン】(21日目〜30日)
    アルフォンソは、エミナとジベデの存在を近くに感じながらもジプシー一団のもとに留まる。カバラ学者の妹レベッカは、天上のお告げよりも現世を大事にしたいと、カバラ秘術の勉強を辞めるといってジプシー一団に合流する。
    二人はジプシー族長の話を楽しみにしている。
    「第三デカメロン」は、ジプシー族長が語る話、の中に出てくる人から聞いた話、の中に出てくる人が語る話、と、入れ子入れ子入れ子方式。しかも話に出てきた人たちが「実は繋がりがあった」ことが判明するので、読者としては、自分が誰が誰に語った話を読んでいるのか把握していないといけないんですよね。

    ❐ジプシー族長:
     異端審問に掛けられそうになったアバドロ少年(後のジプシー族長)は修道院から脱出する。大人たちがうまく取り計らってくれて二年間の謹慎で済むことになったので、物乞い少年としていたずらと自由の日々を謳歌することにした。
     彼の考えでは「貴族の生まれである自分は、他人の下僕にはならない。物乞いは自分の身分を汚すことのない稼業だ。」物乞い少年時代の名前はアバリト。
     以下はジプシー族長が出会った人たちから聞いた話。

    ❐シドニア公爵夫人:
     (過去)両親の代から、自分の幼い頃の話。自分の乳母ラ・ヒローナ、その息子エルモシトとの幼年時代。父の親友シドニア公爵と結婚したが、エルモシトとの不義を疑われてしまったこと。
     (話当時の現在)シドニア公爵はエルモシトを殺し、ラ・ヒローナがシドニア公爵を毒殺したこと。

    ❐女好きのトレドの騎士:
     物乞いアバリト少年(ジプシー族長)の利発さを気に入り小僧として使う。目下の恋人はウスカリツ夫人。だが親友が死に、その亡霊から警告を受け、修道院に籠もった。

    ❐貿易商の息子ロペ・ソアレス:
     (過去)貿易商のソアレス家と、銀行家モロ家の因縁話。祖父の時代から、なんかギャグですか?というような行き違いすれ違いを繰り返している。
     (話当時の現在)しかし自分が恋したのはモロ家の娘イネスだった!そんなとき押しかけ従者(?)ブロスケスが現れたこと。

    ❐ブスケロス:
     人の秘密を探りみんなに言いふらすことを何よりとして、そして成長した今は金持ちの太鼓持ちになり楽して暮らそうとしている。
     彼の話は相当イライラするんだが、案外周りの人たちは便利に協力を求めている。「仕える」と言いながら偉そうで集ってくるやつってこの時代にそれなりにいたのかな。

    トレド騎士が受けたと思った亡霊からの警告は勘違いだと分かり、トレド騎士は張り切って女遊びの道に戻ってくる!
    トレド騎士やブスケロス達の仲立ちによりロペ・ソアレスと、イネス・モロは結婚することができた。
    多くの人のおせっかいお芝居が真面目に不真面目に大袈裟というか、まあこの時代は他人へのおせっかいにより社会が成り立っていたんだな。

    【第四デカメロン】(31日目〜40日目)
    アルフォンソは、シャイフの手下たちが自分を取り囲み、みんなで自分をイスラム教徒に回教させようとしてないか?と思いながらも、まあ豪胆で若いので現状をそれなりに楽しんでいる。
    シャイフとゴメレス一族のまとめ。
     スペインのイスラム社会のシャイフ(宗教的・公共的な長老・首長)は、秘宝を守っているという噂がある。シャイフを守る主だった一族の一つがゴメレス一族で、シャイフの秘密を守っている。アルフォンソの母もゴメレス一族の出身。そして現在アルフォンソに近づいているのはエミナとジベデという二人の美女。
     盗賊ゾト、ジプシー族長も、シャイフを守る一団のメンバーらしい。ユダヤ人のカバラ秘術研究ウセダ一族もシャイフ一団に関係あるみたい??

    そんなアルフォンソと、カバラ秘術研究を辞めたレベッカは、ジプシー一団のキャンプにいて、族長の話を楽しんでいる。
    以下族長の話。

    ❐フラスケタ・サレロ、またはドニャ・フラスケタ・カブロネス夫人、実はもう一つの名前がある。(ブスケロスが、彼女から聞いた話をトレド騎士とアバリト少年に話す):
     (過去)独身時代の話。アルコス公という女装が似合う公爵に求愛されたこと。
     (話当時の現在)それぞれ結婚したが、まだ会ってるってこと。だってフラスケタ・カブロネス夫人の夫は、隣の御夫人を信頼して目付役にしたんだもの。その御夫人がアルバロ公その人だって気が付かずにね!
     …なんか楽しそうだな(笑)。
     他の人の話で、夫は自分の妻が不義を「疑われた」というだけで、自分の名誉をなくされたとして妻を追放する事が出てくる。それならお互いに結婚してるけどじ、女装した恋人と夫の前でデートするの★って、むしろ前向きだ(笑)

    ❐フラスケタの夫のカブロネス氏(ブスケロスが、彼のことをトレド騎士とアバリト少年に話す):
     妻にベンナ・ブロスという伯爵からラブレターが届き気が気でない。そこでベンナ・ブロス伯爵殺害を依頼したが、その幽霊に悩まされる。でも実はベンナ・ブロス伯爵やら殺し屋やら司法官やらは、アルバロ公がカブロネスを錯乱させるために仕掛けた<観念的存在P233>だった。しかもカブロネス氏が見たと思った幽霊は、実はたまたまそこに現れたブスケロスで、この出来事によりブスケロスとフラスケタ・カブロネス夫人が知り合った。

    ❐カブロネス氏が知り合った、神に見捨てられた巡礼者のブラス・エルバス(ブスケロスが、彼のことをトレド騎士とアバリト少年に話す):
     父のディエゴはすべての知識を100巻の書に記して出版して有名になろうとしたが、ギャグのような不運続き、いや本人には大真面目なんだが、とにかく肝心なところで行き違いまくってその書物は破壊された。ディエゴは無神論者になり自死した。<人々は、われに霊があると言い、われは肉体を犠牲にしてまで、その魂と取り組んだ。(…中略…)あとには何も残らないだろう。われはこのまま亡びる。生まれてこなかったの大人軸、世に知られぬままで。虚無よ。お前の餌食を受け取るが良い。P271>
     息子のブラスは、サンタレス家の未亡人イネスと二人の娘セリアとソリアと知り合う。そして「ゲヘナのベリアル」といういかにも怪しい名前(地獄の悪霊、みたいな)を名乗る貴族に気に入られ金やら媚薬やらをもらう。まあ想像通りの展開になり、ブラスは悪魔に魂の契約をしてしまう……
     …と思ったら、天使が現れ「神に見捨てられた印を持つ者を救いなさい」と言葉をくだされる。
     だから巡礼になった。そしてカブロネス氏に「神に見捨てられた印」を見つけた。昔救ったトラルバ騎士分団長の話をして、カブロネス氏にも巡礼を勧める。
     …あれ?ベンナ・ブロス伯爵に取り憑かれているようなこと言っているけれど、ブロス伯爵って「観念的存在」じゃなかったっけ(ーー)??

    ❐トラルバ騎士分団長:
     巡礼守護隊にいた頃の風習とか、国によって兵士の気質の違い。遊ぶ女性を巡ってフールケールという男を決闘で殺したが、彼の亡霊に取り憑かれてしまった。ブラスが彼を巡礼に行くように説得し、亡霊から解放された。良かったね。
     ※なおこの話は、トラルバ分団長が神に見捨てられた巡礼者に話し、その話を神に見捨てられた巡礼者がカブロネスに話し、その話をブスケロスがトレド騎士とジプシー族長に話し、その話をジプシー族長がアルフォンソたちに話している、という状況です。本文でも<トラルバ分団長はここで話すのをやめた。いやむしろ、神から見捨てられた巡礼者が、ここで運団長の話をカブロネスに語るのをやめたのだ。そして巡礼者は次のように、自分自身の物語を続けた。P331>って書いてある(笑)。わけわからんかもしれないけれど、これが案外読みやすいってどういうことよ(笑)

    ここまでで、トレド騎士の恋人ウルスカツ夫人が、実はフラスケタ・カブロネス夫人だと明かされる!!
    カブロネス氏は巡礼で死んだ。未亡人フラスケタ・カブロネス夫人はスペインのサラマンカで暮らし、女装の恋人アルバロ公はロンドン大使になった。(ん?別れたの?)その後フラスケタは再婚してウルスカツ夫人となった。

    ここでジプシー族長本人の話に戻る。
    ブスケロスは、自分の親族の女性をジプシー族長の父親であるドン・フェリペ・アバドロと財産目当てで結婚させる。ドン・アバドロは、ブスケロス一族に精神を喰い尽くされたかたちで死ぬ。ジプシー族長は物乞いのアバリト少年から貴族の子息ホアン・アバドロに戻り、自分の相続分だけ受け取り、マルタ騎士団員に序列される。

    第四デカメロン終盤は、青年騎士なったジプシー族長(ホアン・アバドロ)の恋物語。かつて交流の合ったトレドの騎士とは対等の立場で友情を結んだ。そしてアビラ女公爵へ崇拝と恋を捧げるようになる。この恋愛進行は手が込んでいて読んでいてちょっと楽しい 笑。

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    2023年07月11日
  • サラゴサ手稿(上)

    Posted by ブクログ

    読書会に申し込んだので準備中。

    作者はポーランドの大貴族で1761年にピキウ(現ウクライナ)で生まれた。政治家で軍人、数々の歴史書や旅行記も書いている。
    『サラゴサ手稿』の「第一デカメロン」が1805年(作者44歳)に発表されたが、その後全体手直しが行われ、1810年に作者無許可で手直し版が出版された。こちらの岩波全三巻は手直し後の1810年版による。
    あとがきの訳注で「1804年版はこうなっていた」と書かれているんだがそっちの版も面白そうで気になる。

    【まえがき】
    フランス軍将校がたまたまサラゴサで、スペイン語で書かれた古い手書きの書物を見つけた。将校はスペイン兵に捕まったが、スペインの大尉がその書物に関係する人物だったころから身柄は保証された。そしてスペイン大尉によりフランス語に翻訳してもらったのが、これから語られる物語。

    【第一デカメロン】(第一日目から第十日目)
    衛兵隊長に任命されたアルフォンソは、マドリードに行くためにシエラ・モエナ山脈を旅している。旅籠の主人たちは言う。「最近この土地に幽霊たちが居座ってしまった。旅籠は幽霊たちに明渡し、人間たちは小屋に引っ込んで過ごさなければいけない。」
    だが幼い頃からの教育で豪胆さと名誉を重んじる性質を身に着けているアルフォンソは、その言葉に耳を傾けずに山道を行く。

    幽霊話というのは、どうやら絞首台にぶら下がる二人の死刑囚が夜になると絞首台を抜け出して人間に悪さをしているということらしい。
    それはアルフォンソも体験することになる。人気のない旅籠に泊まったら、夜に二人の美女に歓待された。二人はエミナとジベデという名前でイスラム統治下のスペインの有力一族ゴメレス一族の末裔だという。
    ゴメレス一族はシャイフ(宗教的・公共的な長老・首長)に忠誠を誓っていた。しかしあるシャイフがその秘密をスペイン王に明かそうとしたために彼を暗殺した。以来シャイフの秘密はゴメレス一族を中心とした種族の選ばれた者たちが伝えていくことになった。
    アルフォンソはエミナとジベデから「あなたがイスラム教徒に回教してくだされば、あらゆる富が手に入り、私達はあなたの妻になるのに。」と言われる。アルフォンソはこの話に胡散臭いものを感じたり、名誉を重んじる性質からキリスト教を捨てるつもりもなく、だがせっかくなので饗応は受け…要するにこの二人と一緒にベッドに入ってあんなことやこんなことをしたってことだ。しかし朝になり目が覚めたら絞首台の下で二つの遺体に挟まれて寝ていたってわけ。

    この二つの死体は、この地方を荒らし回るゾトという盗賊の弟たちだ。他の旅人たちも同じような経験をして発狂したり悪魔に取り憑かれたりしている。だがアルフォンソはエミナとジベデは幽霊ではなく生身の人間だったと感じている。そしてこの謎を解かなければと思った。

    エミナとジベデに再会したアルフォンソは、二人のボディガードである盗賊ゾトとともに地下の隠れ家に匿われる。そこで出会ったのは、絞首刑になったはずのゾトの二人の弟たち。
    ん?実は生きていたの?それともこの地下の隠れ家の出来事自体が悪霊の幻想なのか?

    …こんな感じで、この『サラゴサ手稿』はアルフォンソを中心に彼が関わった人々が自分の話をして繋いでゆく物語のようだ。
    しかしそれが一直線には進まない。自分の経験談の最中に人から聞いた話を入れてきたり、聞いた相手が途中で自分の話をしたり、読者に向かって話をする場合と聞いている相手に向かって話をしているがあったりと、どんどん話と話が入り組み合っていく。
    語っている内容も、幽霊や悪霊が出てくるような幻想譚、自分や家族の身の上話といった歴史や地理背景を感じさせられる現実的なもの、カバラ秘術や異教徒など半ば幻想半ば現実のものなど、あらゆる種類のお話が語られていく。

    「第一デカメロン」の章で語られたのはこんな感じ。
    ❐アルフォンソ:
     (過去)自分と父親の身の上話。父は名誉と決闘を重んじた。母はゴメレス一族。自分が幼い頃に聞いた不思議な話。
     (現在)エミナとジベデと過ごした夜のこと。その後異端審問員に拷問されそうになったこと。エミナとジベデと共に盗賊ゾトに地下の隠れ家に匿われたこと。

    ❐エミナとジベデ:
     (過去)身の上話。スペインでのイスラム社会のこと。ゴメレス一族はシャイフの秘宝を守っているということ。
     なお、二人は幼いときに「殿方を知らず、姉妹で書物で知った恋人との睦言を交わしていた」んだそうな。(〃∇〃)
     (現在)上記を話した上で、アルフォンソにイスラム回教を望む。

    ❐盗賊ゾト:
     父親と自分の身の上話。ゾトの母と叔母が女同士の見栄っ張り合戦をしたため、父ゾトが収入のために殺し屋になったんだとか、この時代にこの地方で殺し屋や盗賊は人々のヒーローで、父ゾトも自分も侠気ある悪漢たちと友情を結んでいたという話。
     ゾトの話は、ピカレスクロマンとして面白い。

    ❐悪魔に取り憑かれた若者、パチェコ(アルフォンソより前に、二美女と二死体に誑かされた):
     (過去)身の上話。
     (現在)二人の女に誘惑されて一晩を共にしたこと。幽霊に誑かされ、体を引き裂かれたこと。

    ❐ユダヤ人カバラ学者、ペードレ・デ・ウセダ:
     (過去)身の上話。妹のレベッカのこと。カバラ学者の父により、自分にはソロモン王の娘である不死の二人の妻を約束されたこと。
     (現在)しかし秘術に失敗して、異教徒エミナとジベデに誘惑され、気がついたら絞首台の下で二死体と寝ていたこと。

    【第二デカメロン】(第十一日から第二十日)
    アルフォンソは、カバラ学者の城に泊るが、ウセダとレベッカ兄妹とはどうも話が合わない。そこへ通りかかった旅のジプシー一団。一団の女芸人は遠目にはエミナとジベデに見えた。しかし近ずいてみたら全然違う女性たちだった。
    そして族長パンデソウナと話してみたら、どうやら彼もシャイフの秘密を守る結社(?)の一員らしい。
    アルフォンソは、自分の周りに配置されるシャイフ秘密結社に仕組まれた怪しさを感じながらも旅を続ける。

    「第二デカメロン」で語られた話。
    ❐カバラ学者、ペードレ・デ・ウセダ:
     カバラ秘術やその思想について。昔のカバラ学者の伝説。カバラ学者と哲学者について。異教徒は亡霊に悩まされていたのか、いなかったのか論など、カバラ学術についてのお話になる…あまり理解できず^^;。

    ❐ウセダの妹、レベッカ:
     カバラ秘術により天上の双子(カストルとポルック)の妻になると予言されているけど困ってること。
     アルフォンソがイスラム教徒だったら理想の夫なのになあ、というようなことを仄めかす。
     アルフォンソは、レベッカの話は嘘っぽいなあ、みんなして自分を取り囲もうとしていないか?と疑っている。

    ❐ジプシー族長の老人、パンデソウナ(本名ホアン・アバドロ):
     この長老の話が入れ子式というか、自分の身の上話の途中に、「子供の頃聞いた伝説」「旅人が語った話」「その旅人の話に出てくる登場人物の話」と話がどんどん突っ込まれていく。しかも肝心なところで「夕食の時間になったので中断された」という状態。
     話を聞いていたアルフォンソとレベッカが「いつも肝心なところで終わっちゃって(o・3・)」と言うのだが、まさに読者の言いたいことなんだよね 笑

    ❐ジプシー族長の話は恋愛話ばっかりで次々にロマンチックバカが出てくる。「みんな揃って何やってんだ!!」と突っ込みたくなる 笑
     ・イタリア人の彼がジプシーになったのは、一つのところに閉じ込められることが我慢ならないいたずら小僧だったこと、自分が旅に出たり旅人の話を聞いて旅暮らしに魅了されたことによる。宿に泊まればご主人も女将も客たちもざっくばらんに気の利いた言葉をいい、火鉢の周りに集まり歌や音楽に合わせて歌い踊り、自己紹介からそれぞれの話をする。<よい時代だった。今の旅籠は居心地はよくなったが、あの当時の旅先での騒々しい人付き合いが持っていた魅力は例えようもない。P263>

     ・旅で知り合ったジュリオ・ロマティ:
     旅の途中で盗賊ゾトと知り合ったこと。モンテ・サルレノの城で歓迎を受けたが、ここは廃城で公女は悪霊だった!?

     ・モンテ・サルレノ公女の身の上話:
     最後はオカルトになりジュリオの話と交じる。
     このあたりのオカルト奇談は読んでいて楽しい。

     ・旅で知り合ったマリア・デ・トーレス:
     身の上話。妹のエルビラの悲運。エルビラは結婚後になんか不義を疑われてしまい、娘のエルビラ(母と同名)を残して死んだ。
     マリアがエルビラを育てていたが、自分の息子のロンセトと恋に落ちてしまって困ってしまった。なぜかというと、母のほうのエルビラとの不義を疑われたベレス伯爵が今では副王となり「不義がない証として、エルビラの遺児エルビラと結婚する(自分の娘ではないという証)」と言ってきたから。これを受けないと一族の名誉は晴れないし、財産も取り戻せない。
     結局、当時12歳だったアバドロ少年(後のジプシー族長)が女装してエルビラの身代わりとなり(!?)、厳しい副王の花嫁になりかけたが(!?)、なんとか切り抜けた。

     ・アバドロ少年は、父の命令で修道院で勉強させられるんだがどうにも性に合わない。悪友と一緒に厳格な神父をからかう(またしても女装する)が、目論見がバレて異端審問にかけられることに!

    『サラゴサ手稿 上』は、アバドロ少年が監禁されている修道院から抜け出したところまで。

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    2023年07月09日
  • サラゴサ手稿(中)

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    そろそろ、誰が何を語っているのかメモをとったほうが良いかもと思いつつ族長の話を聞く日々。そして解説を見るに1804年版も読んでみたい

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    2023年06月16日
  • サラゴサ手稿(上)

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    サラゴサ手稿をどこでいつ知ったのか思い出せないのだけどようやく読むことができるようになって嬉しい。デカメロンの系譜というかなぞらえていたのか。今のところ話がどう転がっていくのか捉えどころなく目眩く感じが楽しい

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    2023年06月03日
  • サラゴサ手稿(下)

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    時間があったので読んでいたら終わってしまった。ここまで広がった大風呂敷をよくぞ大団円にまで持っていけたなと思う。もっとずっと読んでいたかったのだが、残念ながら終わってしまった。でもまあ、また読めばいいか。訳した人が、何度読んでも面白いと役者解説で述べているとおり、これは再読に値する本だと思う。今回で一通り読んだので、次はもっとじっくり味わいながら読みたいと思う。

    話の中で「さまよえるユダヤ人」というのを目にした気がした(見返してみてもなかなか見つからないけど)。この岩波文庫で訳されたバージョンの『サラゴサ手稿』には、もう一つのバージョンの中には含まれていたのだがオミットされた挿話があり、そのタイトルがたしか「さまよえるユダヤ人」というらしい。(中巻の「役者解説」)この話も、せっかくなら読んでみたかった。というか、もう一つのバージョンがやはり気になるので、なんらかの形で邦訳が出るといいなあ、なんて思う。

    あと、作品紹介の「主人公アルフォンソが六十一日目に目にしたものは?」という煽りは、読んだ後に見ると的外れに思われた。もっといい煽りはなかったのか……

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    2023年04月20日
  • サラゴサ手稿(中)

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    2/3を読み終えてしまった。まだ面白い。複数に分冊されていふ長編小説は、もし面白くなかったら損した感が大きいので、読む前は少し懸念していたが、読み終えない今のうちにすでに満足してしまっている。もちろん、下巻まで読むつもりだが、とにかく非常に面白い。

    上巻では、幻覚や悪魔や魔術などが多く登場し、そういった類の小説かと思っていたのだが、この中巻では、一部悪魔が出てきはするものの、基本的にはそういったものの登場しない人間模様が展開される。

    覗き見好きのブスケロスという怪人物が、いちいち憎らしくも話に豊かな展開を与えてくれてくれる。現実では絶対に知り合いたくない種の人間ではあるが、小説においてはこうした人物がいると一層面白くなるように思う。

    解説で語られる、この『サラゴサ手稿』自体が経てきた紆余曲折も興味深く、未完でありながら複雑かつエネルギッシュで魅力があるという「1804年版」も読んでみたくなる。この邦訳は「1810年版」とのことだが、こちらも充分過ぎるほど面白く、すでにこの物語の壮大さに感激している。

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    2023年04月18日
  • サラゴサ手稿(上)

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    まったく前情報を入れないまま、邦訳が完結まで刊行されたということで読み始めた。これで1/3読んだことになる。今のところ面白い。

    「第1デカメロン」とか「第2デカメロン」とか、「デカメロン」ってなんだっけ、と思って『デカメロン』を書店で軽く読んだけど、作中人物による語りによって物語が展開される形式をとっているってことなのかな?『デカメロン』も『千夜一夜物語』も読んだことがないけど、このへんと似ているらしい。

    作中の語りの中で、さらにほかの話が語られることが多く、「いま誰が何の話してるんだっけ?」と混乱しがちと思いきや、(たぶん訳者の方が?)それぞれの挿話にタイトルをつけて、目次にもそれを載せているので、迷子になりにくい。

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    2023年04月14日
  • サラゴサ手稿(下)

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    サラゴサ手稿の完結。今まで語られていた話が一気に収束していき、まさに大団円を迎える。個々のエピソードもさることながら、この物語構造自体が味わうに値する。

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    2023年04月06日
  • サラゴサ手稿(中)

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    前巻の後半からのジプシーの族長の話が一巻まるまる続く。
    シドニア侯爵夫人の話、ソアレスの話、フラスケタの話、神に見棄てられた巡礼者の話、族長自身の恋の話。これらは族長の少年時代から青年時代の思い出でもある。彼が主人公のように思えてくる。従姉妹どこ行った。

    登場人物が増えてだんだん話がこんがらがってくる。後半、別の話に出てきた人物の再登場などもあるがどんな人だったか、どんな挿話があったか思い出せず遡った。この小説は電子書籍より紙の方がめくりやすくて読むのに適しているかもしれない。

    前巻は怪奇幻想の趣が強かったがこの巻は控えめ。巡礼の話くらいか。悪魔の語りはサドの登場人物を連想させた。怪人ブスケロスの登場により陰謀めいた話が多い。あと男女の恋愛。

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    2025年05月30日
  • サラゴサ手稿(下)

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    うおー読み終わったけど上巻また読まなきゃ忘れちゃってる。。。下巻はそれまでと全然違った話者と内容で、これはもっと時間をかけて話されるべきなんじゃ?とも思う。アルハンブラ宮殿を知っててよかった。あれを読んだ時にスペインのイスラムとキリストの宗教に関係する話を齧ってたから、まだ読み進められたものの、全然宗教に覚えが無かったら無理だったかも。

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    2024年08月25日
  • サラゴサ手稿(中)

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    上巻よりあっさり読み終えてしまった。
    ファウストが思い出されて仕方がないのだが、とにかく残る下巻い進もう。

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    2024年08月21日
  • サラゴサ手稿(上)

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    「アルハンブラ宮殿」や「ドンキホーテ」のような世界で(どっちもスペインだからそりゃそうなのだけど)、「充たされざる者」のような取り止めのなさ、話の中に別の話が出てきて、さらにその中に別の話がといういくつもの入れ子に20夜目で流石にイライラして発狂するかと思ったところ、レビューによればこうした伏線は最後に回収されるというので一息ついてやっと落ち着いて読んでいこうと思い直した。
    ゆっくり読んだほうがいいなと思う。
    中巻を手に入れねば。

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    2024年08月16日
  • サラゴサ手稿(下)

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    ヤン・ポトツキの怪作。ようやく上中下3巻を読み終えました。語彙が足りないので、凄いとしか言いようがなく、不思議でとても面白い。フィクションとはこういうものかという驚きです。この入れ子になった物語構造をちゃんと設計して執筆しているのは、人間業とは思えません。

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    2024年02月03日
  • サラゴサ手稿(中)

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    サラゴサ手稿の中巻。この巻では、一人のトリックスターが登場し、いい具合に読者のヘイトを集めてくれる。ムカつくけど、このような人物がいるからこそ物語はより魅力的になっていくのだ。

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    2023年04月06日
  • サラゴサ手稿(上)

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    18世紀ポーランド人の書いた千夜一夜のようなもの。
    外人部隊の隊長に任命されたスペイン人がムーア人の美女らと関係を結ぶところから話は始まる。次々と現れる登場人物たちが語る話は、次々と入れ子構造を為していく。この時点では、個々のエピソードの関連性は見えてこないが、十分に魅力的である。

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    2023年04月06日
  • サラゴサ手稿(中)

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    入れ子構造が複雑になり、今何の話をしているのか掴みづらくなって来ているが、それに反して内容は面白さを増している。

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    2023年02月07日
  • サラゴサ手稿(下)

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    ここまでの展開で謎的に提示されたエピソードに、それなりの解決が付いて大団円を迎える。むろん今日の読者が「驚愕の真相」的に驚くようなものではないが、大量にあるらしいヴァリエーションも、広げすぎた大風呂敷を畳むための作者さんの苦闘の痕跡だと思うと、味わい深い。

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    2023年01月27日
  • サラゴサ手稿(中)

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    上巻と同様に入れ子構造の語りが迷宮的に入り組む構造。河出文庫の「東欧怪談集」にそこだけ切り出す形で収録された「トラルバ騎士分団長の物語」のように独立した怪奇掌編と見なせる部分も多い。一方でブスケロスに父親を殺されたとも言えるアバドロの、反応の薄さとか、下巻への伏線とも思える部分もちらほら。巻末の解説によるといちばん収まりのいいヴァージョンとのことだが、さてどうなることやら。

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    2022年12月18日