飯尾潤のレビュー一覧
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非常に高く評価されているため、気になっていた本。
日本独特の政治のあり方について考察を深めることができて大変勉強になった。自民党や霞が関について理解を深めるうえでも最適な一冊。
ただ、出版されたのが2007年と、やや古い点には留意が必要。安倍政権での「官邸一強」・岸田政権での派閥解消・ここ最近の選挙結果など、現在の状況について筆者がどのようにコメントするのか気になる。
以下、特に印象に残った内容をメモ程度に記しておく。
◯議院内閣制は、本来的には大統領制よりも権力集中的である(議会多数派と行政トップの一致)はずだが、日本ではそのイメージが希薄。
◯日本の内閣では、各大臣はそれぞれの省庁を -
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日本政治の仕組みについて、議院内閣制を中心に据え構造的な力学・問題点を解説した一冊。
大きく3部構成をなしており、第1・2章では官僚、第3・4章では与党を切り口に日本型の議院内閣制を解説する。そして第5・6・7章では比較による日本政治の分析や提言が加えられる。
各章内では読んでいて飽きることもままあったが、章ごとに明確な役割が与えられているため、全体としては議論の位置付けを見失いにくい構成となっている。
紛れもない名著と言って差し支えないだろうが、2007年発行のため現在では少々時代遅れの感が否めない。
後半で一応、小泉内閣に象徴される行政改革にも触れてはいるが、本論として扱っているのは8 -
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ネタバレこの本は日本の統治構造の歴史や、国際比較から、現状と課題を提示してくれる本。
日本の統治構造の現状
まず、日本は議院内閣制の国であるのだが、戦後の日本の政府構造を観察してみると、議院内閣制のカタチが本来の議院内閣制のモデルから独自に発展してきた経緯がわかる。
議院内閣制とは、一元代表制、つまり、行政権を持つ内閣が、議会の信任によってのみ成立しているということ。(大統領制は、大統領と議会が別々に選出され、民意が二元的に代表される)
したがって、議院内閣制においては、権限の委任関係が以下のような1つの流れになる。
有権者→国会議員→首相→大臣→官僚
しかし、日本では、あまりに長い間政権交代 -
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2007年に初版が出た本であるが、現在の統治構造に当てはまる部分も多々あると感じた。
議会を背景とする議院内閣制に対する、官僚からなる省庁の代理人が集まる「官僚内閣制」、というワーディングが印象的だった。
自分も一時期霞ヶ関で働いていたが、官僚の積み上げ式の意思決定、場当たり的な政策、振り付け通りに動くだけの大臣、などを目の当たりにし驚いたが、これらに対して鋭く論評がなされる本書は爽快にすら感じた。
何よりも、民意の集約や一般化がなされないまま政策が形成されていく過程に非常に懸念をしていたところ、責任の所在(政党)や改革手法(選挙改革から意識改革まで)に触れられていた本書は、非常に勉強になっ -
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■省庁の枠組みは人事をベースとしながら予算や組織運営手法でも,それぞれ自律性を主張する単位となる。そのため公共事業の分野別予算比率が長らく一定であったように,局ごとの予算枠や,局ごとの運営手法などを守ろうとする強い力が働く。
■予算に関しては,毎年,わずかな増減を付けて調整する「漸変主義的」編成が基本。
■予算を確保することが次へとつながるため,自らの予算を減らさず,少しでも増やすことを第一目的とする行動を生む。これは官僚制の一般的特質で,どこの国でもあること。
■日本の省庁では所轄権限が極めて重要な意味を持つため,いわゆる「権限争議」という,自ら所轄権限を確保しようという省庁間の争いが一層激 -
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良書。現在読書中ですが、書いちゃいます。
第二次大戦中なぜあのような責任体系が不明確なまま、戦争に至ったかの1つの原因が、1885年に取り入れ明治憲法にもその存在が明記されないまま続けられた、戦前の内閣制度にある、とした点は明瞭でした。
志向していたイギリス流の議院内閣制の基礎となる、政党内閣がその権限が非常に弱められ、本来とるべき責任の所在の取り方 ”有権者→国会議員→内閣総理大臣→大臣→官僚(任命責任は大臣にあるとする考え方)” という体系が、議院内閣制であったにもかかわらず取られなかった。
体制上では東条英機内閣でさえも、各大臣という「指導者」の意思をも集約できず、しかし責任はあいま -
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生い立ち、従軍、共産党東大細胞の思い出、政治記者として立ち会った権力闘争の修羅場、鳩山一郎、大野伴睦、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、中曽根康弘、橋本龍太郎、村山富市、小沢一郎、小渕恵三ら為政者たちの横顔。読売新聞主筆による生々しい証言。(親本は2000年刊、2007年文庫化)
・まえがき
・第一章 恋と哲学と共産党
・第二章 新聞記者への道
・第三章 保守合同と岸政権の裏側
・第四章 六〇年安保と池田政権の核心
・第五章 ワシントン支局長時代と角福戦争の内幕
・第六章 田中角栄とその時代
・第七章 盟友・中曽根康弘
・第八章 平成の九宰相
・終 章 我が実践的ジャーナリズム論
渡邉恒雄は毀誉 -
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初版は2007年、議院内閣制確立のために「政権担当政党が時により交代する事態が起こり、その期待が定着するのが最も有効である。だが、それはなかなか実現しない。」(p209)と言われた時代である。国民は、自民党内における擬似政権交代によって、劇の観客としてカタルシスを味わっていたにすぎず、民主的統制を行うことはできなかった。(p112、179)一方、小選挙区制度下の小泉政権は、従来の派閥政治を破壊し、政治と国民との距離を近づけた。特に首相選びは派閥のパワーゲームでしかなかったが、小選挙区制で初めて国民は政権選択の権利を得たのである。
この後、マニフェストによる政権選択選挙によって民主党政権が誕生、 -
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戦後の日本で統治構造の特質を官僚内閣制、省庁代表制などととらえ、理念型としての民意の反映、権力の集中の度合いとしては、大統領制より議院内閣制の方が強力である点などを指摘する一方、比較法的に各国の代表制を整理しています。
特に新しい視点は少ないかもしれませんが、統治機構に関する制度を概観して、各種の論点を上手に整理しており、さらに官僚や族議員の実態の記述はかなり詳細に触れられており、理論と実態がバランスよく記述されておりますので、憲法での統治機構を学ぶ法律学科の学生さんや政治学を学ぶ学生さんのみならず、代表制や統治構造について関心のある社会人の方にもすすめしたい一冊です。 -
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単行本化にあたり、「回顧録」ともっともらしいタイトルにはなっているが、インタビューの内容としては連載時の「政治記者一代記」のタイトルの方がしっくり来るし、何なら「大放談~ナベツネ大いに吠える~」でもいい位だ。ただ読み物としては面白い。
これで終わると中央公論を寝転みながら読んで終わり、となるが、流石に終章の「我が実践的ジャーナリズム論」と御厨教授の解説で話がまとまる。ロングインタビューが苦痛ならこの120ページ余りで十分だと思う。
本書はオーラルヒストリーという歴史研究の手段の一つだが、このインタビューの時点ではまだ試行錯誤の段階だからか、著者の押しの強さからか、「話し手と聞き手」の枠に収 -
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出版が2007年と少し古いが今でも妥当する部分が多いのではないだろうか。筆者は、日本の統治機構の特徴について、人事グループによって組織された省庁による代表性とする。この点、閣僚すらも省庁の代弁者に過ぎない。もっとも、本書を読み進めれば官僚・政治への批判に徹しているわけではないことが分かる。官僚も自立的な支配層を形成しているわけではなく、所管業界との利益・相互調整関係や脆弱な政党組織に端を発する政官関係など、根深い日本社会の特質の中で官僚制が規定されている。閣僚が省庁の利益を代弁するのはそうすることが動きやすいからであり、それは自民党支配の安定に伴って閣僚ポストが専門知識などではなく褒賞として差
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前半は目新しさを感じなかった(学校で教師がこれの受け売りを話していたからか)。本来首相に権力が集中するはずの議院内閣制で省庁による官僚内閣制が戦前から行われてきたこと、自民党と政府の二元体制が続いて政策立案と実行の垣根が曖昧になったことで日常的な政府活動は安定するが大きい政策転換は難しくなった。二大政党制による政権選択で強固な政党が誕生し、首相に権力核が出現すれば政策課題が解決できるに違いないというのが筆者の見立てっぽい。
正直論点が多く、話の筋をぼんやりと理解した程度なので勉強しなおしてくる。特に後半はなかなか難しく読めてない気もするのでいつかもう一回読むつもりではある。効果的な政策を実現 -
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『近代とは何か』の流れで、議院内閣制について学ぶつもりで読み始める。
不案内な領域なので、まだ消化しきれていないが、、
議院内閣制の理解は、民主政治の理解につながるとして、日本における議院内閣制の特徴を諸外国のモデルとも比較しながら論じた本。
各国比較を読んでのキーワードとしては、議院内閣制対大統領制、三権分立、政官の関係、小選挙区制対比例代表制 などなど・・・統治構造のモデルを学ぶというのが、本書を読む最大の意義。
先進民主政に限れば、政治体制のモデルとしては、大統領制か議院内閣制。前者は、二元代表制であり、後者は一元代表制であるというとらえかたはわかりやすい。
議院内閣制のモデルは