井波陵一のレビュー一覧

  • 新訳 紅楼夢 第7冊

    Posted by ブクログ

    第6冊と最終巻の本冊は補作とのことだが、作品世界をきちんと締めくくっており、読後感は収まりが良い。読書もこのあたりまでくると、登場人物の行く末に何かしらの感慨があり、長い物語につきあった時の独特の感動がある。堪能した。なお、各冊の巻頭にある「本冊の読みどころ」は、ネタバレなので、物語世界に慣れてきた第5冊あたりからは、先に読まない方がよかったなと、今になって思う。

    0
    2014年06月07日
  • 新訳 紅楼夢 第6冊

    Posted by ブクログ

    6巻からは補作者によるものだが、物語はここがクライマックス。物語の運びがやや先を急ぎすぎる感はあるが、5巻までの長い読書で、頭はすでに紅楼夢の物語世界に入り込んでいるので、むしろそれくらいのテンポの方が小気味よい。ヒロインの死はあっけなく、周りの反応もややそっけないが、それがかえって胸にしみる。

    0
    2014年05月25日
  • 新訳 紅楼夢 第5冊

    Posted by ブクログ

    主人公の宝玉が、彼の理想とする少女たちとの宴を楽しんだ第63回あたりを境にして、主人公一族がついに没落の道筋をたどりはじめる。一族に関わる人々の関係がぎくしゃくし始め、ある者は病に倒れ、ある者は死を選ぶ。いびり殺し、殺されたようなケースも一つだけでない。様々な悲劇が矢継ぎ早に起こり、それは、大観園の夢を打ち壊す持ち物検査と主人公の侍女晴雯の死で、ひとつのクライマックスを迎える。悲劇はその後も、次巻からの補作に引き続き描かれるが、本巻だけでも十分、破滅のカタルシスを味わうことができる。それまでの一族の繁栄と宴の描写がとてつもなく長かっただけに。

    0
    2014年05月18日
  • 新訳 紅楼夢 第4冊

    Posted by ブクログ

    主人公一族の庭園では相変わらず、主人公美少年とそれをとりまく様々なタイプの少女たちが、漢詩をつくり宴会を開き浮き世離れした生活を続けている。ただ、それを支える一族の財政に影が差してくる。いよいよ物語が動き出す予感。次巻が楽しみ。

    0
    2014年04月19日
  • 新訳 紅楼夢 第3冊

    Posted by ブクログ

    本冊では、主人公一族の女たちが次々と催すイベントが描かれる。ひとつのイベントが開かれるとその答礼としてすぐ別のイベントが開かれると言った調子で、物語の進展はほぼない。ただそれぞれの女たちのキャラクターや人間関係が、読者にとって馴染みのものとなっていく。筋を追う楽しみは求めてはいけない。この世界の身を浸すことを楽しめるかどうか。暇のない人には勧めない。

    0
    2014年02月17日
  • 新訳 紅楼夢 第2冊

    Posted by ブクログ

    この第二冊では、主人公の少年とそれを取り巻く少女たちの関係が動き始める。また彼らの小者・侍女なども同世代の少年・少女でたくさん登場する。その舞台となるのは、大観園という広大だがひとつの閉じた空間で、見方によっては学園ドラマのようでもある。もちろん皆で一緒に勉強したり、行事を作り上げたりするわけではないが、少年・少女間の恋愛・嫉妬・冷やかし等々に注目すれば、そう言いうるのではないかと思う。いずれにせよ、物語はまだまだこれから。

    0
    2014年02月09日
  • 新訳 紅楼夢 第1冊

    Posted by ブクログ

    中国古典小説の最高峰らしい。煽り文句に背中を押され読み始めたが、はじめの100頁ほどが苦しかった。登場人物が、それぞれ十分な描写もないまま、次々と入れ替わる。巻頭の系図や第3話末の屋敷平面図を常に見ながら、行を行きつ戻りつ読み進めた。ある程度系図が頭に入ってくる第8話あたりになると、物語も動きはじめ普通に読み進められるようになってくる。この第1巻ではまだ、一族の繁栄ぶりを描くところで終わっているので、物語としては次巻以降に期待するしかない。しかし、清朝時代の有力一族の生活風俗を知るには役立った。

    0
    2014年01月29日
  • 新訳 紅楼夢 第6冊

    Posted by ブクログ

    大観園をめぐる環境は一気に厳しく変わる。賈宝玉と林黛玉の二人は会う機会が減り、史太君、王煕鳳の策により、宝玉と薛宝釵の結婚が進められていく。黛玉はその噂を知り絶望するが病状はどんどん悪化。宝玉の結婚の瞬間に生命を失う黛玉の悲劇の最期はドラマティック。侍女の紫鵑そして、駆けつけた探春と李紈だけに見守られて・・・。椿姫の最期に似ている。妙玉と宝玉が黛玉の琴の音と憂いに満ちた詩を吟じる声に静かに耳を傾ける情景が悲しく美しい。悲劇へ向けた序奏である。(87回)宝釵の賢女ぶりが健気で可愛く、それだけに彼女にも悲劇を感じる。薛宝釵の兄・薛藩の殺人事件を巡る裁判の場面を通して250年前の中国の法治国家ぶりが

    0
    2014年08月17日