中西智佐乃のレビュー一覧
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子孫繁栄の力を持つと謳い、スピリチュアルな稼業を営むことになる家族の物語。スピ要素を除いても、人間関係の不和にせよ、思春期の迷いにせよ、女の抑圧にせよ、いろんな要素が入っている。すべて不幸な形でだが。
ジェットコースター的に不幸が続くので、飽きることなく読める。ところで作者は大阪育ちの85年生まれだそうで、自分とは同い年で育った場所も同じである。
ただ、この世代は実はそこまで不幸な世代ではない(とされている)。生まれたときに親世代はバブル期の好景気であり、そのあとのバブル崩壊からの就職氷河期は小学生から高校生、ストレートに大学卒業した年はリーマンショック直前で就職活動は売り手市場とされていた。実はそうでないのだ、という話もあるが、世間からのイメージとしては間違っていないと思う。
本小説に出てくる兄妹はそれより10年ほど早い世代である。この設定は、より不幸の密度を上げるためなのではないか、と思ってしまうほど150頁のあいだずっと不幸である。
ただ、その不幸の質がとにかくベタである。(怪しい占い師に利用されるとか、父親が愛人を作って出ていくとか、就職氷河期で路頭に迷うとか、チンピラみたいな男に騙されるとか)
また150頁で50年の人生を描くには明らかに文量が足りていないのではないかと思う。 -
Posted by ブクログ
『橘の家』を読んで、家族と家のつながりについて深く考えさせられました。物語に描かれる橘の家は古く落ち着いた雰囲気を持ちながら、そこに暮らす人々はそれぞれ悩みや秘密を抱えています。しかし、日常の会話や小さな出来事を通じて少しずつ心を通わせ、家族の絆を確かめ合う姿が印象的でした。
特に主人公が「家はただ住む場所ではなく、心が戻れる場所だ」と感じる場面が心に残りました。私も普段、家を当たり前の存在として意識していませんでしたが、この本を読んでからは家族がいるからこそ家が成り立つのだと気づきました。また、代々受け継がれてきた習慣や思い出が「家族の証」となり、未来へとつながっていくことにもあらためて価値を感じました。
読後には温かな余韻が残り、家族との時間をもっと大切にしようと思いました。
・・・て感想から、もしこの本を読んだら、『なんてものを読ますんだ』と怒られそう笑 これは、子孫繁栄に取り憑かれた人々の物語。なかなかに来るものがあった。
それにしても、これだけの内容を150ページにまとめる構成力はすごい。これから、益々面白い作品を生み出しそうな予感を感じさせる作家。 ★3.6 -
Posted by ブクログ
38歳、派遣社員、女。同居している両親はともに高校の教師だった人で、彼らに完全にコントロールされた人生を歩んでき、彼らの言うとおりに保育士になったものの、体調を崩して退職。現在も両親と同居、家事を担い、門限を守る生活をしている。母親の、保育士に戻らないのかという圧と、父親の、結婚して子供を産めという圧に苦しみ、老いていく自分の体について、子宮が劣化していると認識している。仕事は通販のコールセンターで、理不尽なクレームを受けている。唯一、妹の子供の保育園のお迎えに行ったり、添い寝したりすることに、安らぎを覚えている。が、妹も、娘の話を一切きかない両親に嫌気がさし、子供を連れて実家を出てしまう。
女は、転職先を見つけ、子供を育てている同僚の若さに嫉妬し、同じ両親の下に生まれたにも関わらず、好き勝手生きている妹を憎んでいる。妹が家を出た理由は男であり、それゆえ、子供が不幸な目に合っていないか心配になって、見張りを始める。親の言うとおりに生きてきたのに、親の望むことの出来ていない自分を責め、逃げ道として過食嘔吐に走る。追い詰められていく女に、救いは現れない。ずっと苦しい。
自分が間違えたことを言っても、「ほんまに僕が間違ってたんか。僕はそんな風に言うてへん。お前が聞き間違えたんとちゃうか」と言い、幼稚園教諭の資格を取得し、晴れて就職が決まった娘が、「単位取るの難しかった」と喜びの中、照れ笑いするのに、「僕らのほうが難しいからな。驕りなや」と牽制する父親が、一人称が「僕」なのも含め、限りなく気持ち悪かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ中西さんの作品が読みたくて2作目です。
これは…結構感情にきました。苦笑
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親からの「教育」という形の「暴力」。
閉ざされた「日常」。
三十八歳、独身、派遣社員。
私には何もない。
どうすべきか教えて欲しい。
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これは…結構重たかったです。
両親が「教育」した結果、
小さな家の中で無力な子供は、
従うしかない。
誰が悪い?自分が悪い。
そこから両親が年をとって、
なんか間違ってたかも…なんて思っても、
もう遅い。
なかったことにはできないし、
あなた達が敷いたレールから、
いまさら降りるなんて言わせない。
本作の地の文は、
主人公のことを「あなた」と表現し、
ずっと客観的な他人事のように思えて、
常に誰かを意識して、縋り、怒り、
壊れていく姿を、ただただ見るしかできない。
行き着く先を息を呑んで見守りました。
家族という閉鎖的な空間で、
一歩間違えば…というようなヒヤリとする場面や、
本当にあるかもしれないと思わられる場面があり、
胸が痛くなりました。 -
Posted by ブクログ
こちらもあらすじを読んで気になっていた一冊。
表題作の「狭間の者たちへ」は、痴漢加害者側の心理を描いたという触れ込みで、一石を投じるような鋭さを楽しみにしていたのだけど、その点ではちょっと拍子抜けだった。
ただ、うだつのあがらない中年男性が朝の電車で乗り合わせる女子高生から「ただ元気をもらっていただけ」という屁理屈はずいぶんに悪質で、しっかりと痴漢の醜悪さをみた。
新潮新人賞受賞作であるという「尾を喰う蛇」は、かなり仕上がったデビュー作でとても面白かった。
病棟の介護士として日々心身を削りながら労働する主人公の、拭えぬ疲労感や鬱憤が文章全体ににじみだしていて素晴らしい。
本作における主人公の元カノや姉や職場のパートさん達、「狭間の者たちへ」の主人公の妻なんかは、顔が見えないわかりやすくステレオタイプな女性が集まってるんだけど、男性の書き方はとても巧いと思う。人間の厭な感情がふくらんでいくさまは、小説でこそ読みたいものだから。次回作にも期待。