あらすじ
庭のその木は、人の生殖に力を与えるという。人類の業を抉る三島賞受賞作。幼い頃に2階から落ちたが庭の橘の木のおかげで助かったことがある恵実。以来、木の力を恵実が媒介するという噂が流れ、子どもを望む人々が大勢家を訪れるようになった。自分にすがる彼らの気持ちに戸惑いながらも役割を果たす恵実だったが、そのことが自身や家族に暗い影を落とし――子孫繁栄という常識を揺さぶる問題作。
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Posted by ブクログ
家の庭の
橘の木の不思議な力の媒介者として
人々の欲と業をただ一身に浴び続けるだけの
主人公の半生が不憫でやるせなかった。
他者に喜びをもたらす一方
搾取され、抑圧され
自分や家族はどんどん壊れていく…
女と家にとって子どもとはなんだろう。
男にとって女はただ
欲望のひとつにすぎないのだろうか。
なぜ人は子孫繁栄を願うのだろう。
そんな答えの出せない問いを
考えずにはいられなかった。
Posted by ブクログ
不思議な力が宿るとされる橘の木と、その木に飜弄される家族の話。終始不穏な空気感が漂う。
どうしても子供が欲しい。
女性達の切実な願いと、その熱量の全てを引き受けさせられた主人公の恵美が不憫でならなかった。
Posted by ブクログ
(こういう言い方をすると性差別と言われかねませんが)
女性作家の作品――特に純文学系の方の作品を読むと、起承転結の「転」が上手くないものが多く思います。この作品も、そこが惜しい
Posted by ブクログ
橘の木に導かれていく一家の不穏な空気に、引き込まれて一気読み。
狂ったように子供を欲する女たちの熱量をそのまま受け取り、恵実の手によって子供を授ける橘の木。
その禍々しいエネルギーは、一家を翻弄し、一家の精気を吸い取っていく。
子供も授かりたい、授からねば自分の存在が無くなってしまう!という底知れぬ女性たちの熱量を小説にうまく取りこんで、人間の禍々しさと物言わぬ植物の不気味さが絡み合って、なんとも気持ち悪ーい世界を作り上げている。
なんで、子どもを産む事って,オカルトチックになってしまうんでしょう。
そういうノリはなんだかなぁと思ってるけど、小説にすると面白いですね。
Posted by ブクログ
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願いも恨みも幸福も。
ぐるぐる巻きで駆け抜ける、
女と家と木の一生。
こんなけ面白い騒動が、
圧倒的な耳のよさ、堂々たる文章で語られて、
こんなんもう、たまらんわ
川上未映子氏
第38回三島賞受賞作
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以前、同賞を受賞した「オールグリーンズ」が良くて。
本作も気になっていたのですが、
くたくたに疲れた金曜に立ち寄った書店で見つけ、
思わず手に取りました。
表紙からしてとても不穏。
今の私は仕事で精神がザワザワしてるため、
読めるか不安でしたが。
全く問題なく読めました。
そして圧倒されました。
家を購入したとある一家。
庭には橘の木が。
この木を守ることを約束として安価に譲り受けた土地。
そこで過ごす家族の話。
奇妙な感覚、薄寒い感覚、
気持ち悪いけれど、
なぜか他人事でない感覚が。
橘の木の存在が膨らみ、
家族の形が歪んでいく。
歪んだ先に群がる人々。
妊娠を、出産を、子どもを求めている人々。
わかりたくないけれど、
わかる気がする切実な願いと欲求。
ずっと悪い夢を見てる気分でした。
読後に著者のプロフィールを見たら、同い年で。
他の作品も読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
「子孫繁栄をどうして人間は願うのでしょうね」
子がいなくなれば種は滅ぶ
だから生き物は繁殖するのだろうけど、それだけが生きる目的ではない
でも気がつけばそれに囚われそれだけを願いそのためだけに生きてしまうこともある
ものすごく面白い設定だけど、思ったほど刺さらなかったのが残念
Posted by ブクログ
『橘の家』を読んで、家族と家のつながりについて深く考えさせられました。物語に描かれる橘の家は古く落ち着いた雰囲気を持ちながら、そこに暮らす人々はそれぞれ悩みや秘密を抱えています。しかし、日常の会話や小さな出来事を通じて少しずつ心を通わせ、家族の絆を確かめ合う姿が印象的でした。
特に主人公が「家はただ住む場所ではなく、心が戻れる場所だ」と感じる場面が心に残りました。私も普段、家を当たり前の存在として意識していませんでしたが、この本を読んでからは家族がいるからこそ家が成り立つのだと気づきました。また、代々受け継がれてきた習慣や思い出が「家族の証」となり、未来へとつながっていくことにもあらためて価値を感じました。
読後には温かな余韻が残り、家族との時間をもっと大切にしようと思いました。
・・・て感想から、もしこの本を読んだら、『なんてものを読ますんだ』と怒られそう笑 これは、子孫繁栄に取り憑かれた人々の物語。なかなかに来るものがあった。
それにしても、これだけの内容を150ページにまとめる構成力はすごい。これから、益々面白い作品を生み出しそうな予感を感じさせる作家。 ★3.6